たかはししげとし
~特別支援教育に30年の経験を地域の理解と啓発に貢献~

名前(年齢) たかはし しげとし
たかはし 重敏さん(80歳)
地域 秋田県北秋田市
活動概要 小学校の特殊学級や養護学校での経験をいかし、特殊教育地域センター報「絆」を平成5年から14年まで毎週自主発行し540号に達した。現在も障害児教育に関する講演や親の会への支援を行っている。
表章の類型 過去に培った知識や経験をいかして、それを高齢期の生活で社会に還元し活躍している事例
キーワード 特別支援教育/特別支援教育指導員

(注)年齢は、平成25年4月1日時点

活動のきっかけ

「絆」500号を記念した楯とともに

特別支援教育を地域社会に向けて啓発活動

 昭和38年(30歳)、赴任先の小学校に特別支援学級が設けられ、その第1号担任教諭に就任しました。「全ては児童から学び、反省の上に立って、新しい試みを愛と勇気をもって実践する」という教育哲学に基づき、当時まだ県内に数少なかった学級での障害児教育の先駆者として、知的障害、難聴、自閉症、情緒障害、病弱虚弱障害、視覚障害などの分野の児童教育に携わりました。
 小学校で3年間、中学校で8年間の特別支援学級を担任し、県教育委員会で特別支援教育行政に11年間携わり、特別支援学校、盲学校等で合わせて30年間にわたり、障害児の適正就学、特別支援教育内容の改善・充実、そして担当教諭の資質向上にと特別支援教育一筋の教員生活を送ってきました。教員生活で培った経験を、地域社会への理解や啓発の貢献にいかすことができればと考え、退職後も活動を続けています。

活動内容や現在の活動状況

特別教育地域センター報「絆」全540号をまとめた冊子


たかはしさんの特別支援教育実践記録展の様子

教育の資質充実を探求して38年

 平成5年3月に定年退職し、4月から特別支援教育指導員として特別支援教育地域センターで就学・教育相談活動、教育現場への支援活動、広報活動などを担当しました。中でも広報活動は、特別支援教育地域センター報「絆」を平成14年まで、毎週発行することに使命を抱き540号まで自主発行し、北秋田市内の小・中学校、教育機関へ配布し続けました。記事の内容は主に、30年間にわたる特別支援教育現場で蓄積した記録や資料、自ら開発した教材などを基にまとめたものです。平成15年3月の退任後は、たかはしさんの意思を継いで、「絆」から「サポート」に改称して特別支援教育課指導班から発行されることになりました。
 平成15年3月に特別支援教育指導員を退任した後も、県内の特別支援学級の要請に応じ、各種学校行事、授業研究会などに参加し、教育の資質充実を図るために必要な指導助言に当たっています。特別支援学級の第1号教諭として担任することになった鷹巣小学校で、平成22年に開設50周年記念式典が開かれました。これを機に、自らの活動の実践記録や自作教材など各種資料500点余りを展示する「特別支援教育実践記録展」を開催しました。この特別支援教育実践記録展示と講演会は、平成17年から評議員を務める比内養護学校で平成18年から5年続けて開催されました。

ポイント、工夫している点

教育の資質充実のための実践資料作り

 教育の資質充実を図るための資料は、継続的・具体的な実践資料が求められます。理論的な講義を受ける研修に加え、実践的指導資料や教材教具がよく整理され展示資料として収集されています。その内容は、手作りの創作教材教具、写真で見る児童生徒の成長記録、障害児の在宅訪問記録、就学並びに教育相談記録、写真や8mm記録映画、教育指導記録ビデオなどで、現場で体験し、蓄積したことを資料から学び取ることができるよう工夫されています。児童生徒の一人ひとりが正しい方向に向かうよう、小さな変容にも心を配り、記録して確認することが教育現場では大切であると考えているからです。

その他の活動

地域住民への理解と啓発を

 今でも要請があれば講演活動も続けています。そして、特別支援教育を市民の皆さんに理解していただく啓発資料として、これまでの実践活動を継続しつつ、20数年間継続して撮影してきた映像記録をDVDに編集し、教育現場になどに提供し、気軽に活用してもらおうとしています。また、障害児教育の指導現場の様子や成長の姿を追跡記録した映像を編集して、児童生徒一人ひとりの変容の姿を地域住民の方々にも理解してもらおうとしています。
 たかはしさんは、特別支援教育を阻む「三つの壁」を説いています。第一の壁は、施設、設備、教育機器、教材教具など「物的面の壁」です。第二の壁は、法律、制度の改革、など「制度的な壁」です。第三の壁は、「人間の心の壁」で、これを克服するためにライフワークとして取り組んでいます。平成17年より、秋田県立比内養護学校評議委員、平成19年より北秋田市虐待防止総合支援地域協議会会長を務めています。