鈴木 絹英さん
~高齢社会に求められる傾聴ボランティア養成で社会貢献~

名前(年齢) すずき きぬえ
鈴木 絹英さん(70歳)
地域 埼玉県さいたま市
活動概要 渡米して学んだ「傾聴ボランティア」を日本で確立し、高齢者施設などで実践したのち、全国的普及のために「傾聴ボランティア養成講座」の講師を務めている。14年間の講座修了生は全国で26,000名に及んでいる。
表章の類型 過去に培った知識や経験をいかして、それを高齢期の生活で社会に還元し活躍している事例
キーワード 傾聴ボランティア/心のケア

(注)年齢は、平成25年4月1日時点

活動のきっかけ

傾聴についてグループワーク
(写真右から3人目)

相談相手の心を癒すボランティアを目指そう

 平成4年(49歳)頃、高齢者を対象に、老後に支え合う仲間づくりの組織を立ち上げ活動する中で、中高齢者が自分のことを誰かに語り、聴いてもらいたいと願っていることを実感しました。また、実母と会話を交わすたびに、高齢者の不安、不満、愚痴などをしっかりと受け止めて聴くことの難しさ、大切さを痛感しました。その後、高齢者向けの電話相談にも携わりましたが、高齢者の話を対面で、直に、聴くことで、相手の心を癒すボランティア活動を本格的に実践したいと強く考えるようになりました。このような過程を経て平成11年4月、高齢者とその家族のための心のケアを行う団体「ホールファミリーケア協会」(平成14年3月にNPO法人化)を設立し、鈴木さんは理事長に就任しました。

活動内容や現在の活動状況

アメリカのシニア・ピア・カウンセリング研修
(写真左から3人目)


東日本大震災被災者支援のために現地を訪問
(写真中央)

現代社会で悩める人々へ目を向けよう

 平成14年、アメリカに「シニア・ピア・カウンセリング」というボランティア団体の活動があることを知り、アメリカへ渡りカウンセリングを学びました。帰国後は、その経験をいかして日本人に馴染むようにアレンジし、高齢者施設などで自ら傾聴ボランティア活動を実践する傍ら、傾聴ボランティア普及のため「傾聴ボランティア養成講座」の講師を務めています。
 孤独な高齢者や、うつ、認知症発症者数の増加などの問題は、今後ますます深刻になります。このような状況の中で、相手の話にひたすら耳を傾け、受容的に、共感的に受け止める「傾聴ボランティア」の活動は、高齢者の心を癒し、安心感、満足感を抱かせ、生活意欲を向上させる活動です。
 傾聴ボランティア普及活動として、全国各地の社会福祉関係機関、医療機関、ボランティア団体などで講演会、講座を行い、その回数は14年間で2,100回となり、鈴木さんの活動により「傾聴」を学んだ修了生は26,000名に及びます。
 今後は高齢化の進展に伴い、「認知症高齢者」が課題となります。そこで認知症の方々と向き合うための「認知症高齢者の傾聴講座」も開講しています。
 高齢者を対象にするほかに、「自殺予防のためのコミュニケーション研修」、「精神障害の方への関わり方研修」、「高齢者福祉事業従事者のための研修」、「介護家族のための研修」など、現代社会の課題に向き合う研修会を幅広く展開していこうとする計画が立てられています。

ポイント、工夫している点

著述にも精力的に取り組む

 月刊誌「傾聴ボランティア」の発行人も務めています。著作にも精力的に取り組み、「聴くことでできる社会貢献 新・傾聴ボランティアのすすめ」(三省堂)、「一目でわかる傾聴ボランティア」(NHK出版)、「傾聴 『聴き方次第で人間関係が決まる』」(ホールファミリーケア協会)、「傾聴ボランティア体験記」(三省堂)などを出版しています。現在は、傾聴ボランティア活動を行う人々のために、「傾聴ボランティア活動事例集」の発行を準備中です。

その他の活動

東日本大震災被災者の方々に寄り添う傾聴ボランティアの支援

 東日本大震災被災者の方々に寄り添う活動として、各方面から義援金を募り、被災地で傾聴ボランティア活動を行っている複数のグループを支援しています。そして、被災地での傾聴ボランティアグループのメンバーを育成することにも尽力しています。

ロールプレイによる訓練中の様子

 〔NPO法人ホールファミリーケア協会〕
 高齢社会において、高齢者ひとりひとりが生き生きと、かつ元気に生きられる社会を実現するために、高齢者に対する教育事業や、高齢者同士の交流促進事業や高齢者の持つあらゆる知識・技能を次の世代に伝える事業、あるいは高齢社会の変革に関する提言や啓発に関する事業などを行い、もって社会全体の利益の増進に寄与することを目的とする組織です。