第2章 高齢社会対策の実施の状況 第3節 分野別の施策の実施の状況

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1 就業・所得

○ 少子高齢化の急速な進行等を踏まえ、平成16年6月に成立・公布された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(平成16年法律第103号)により、18年4月から、少なくとも年金支給開始年齢までは働き続けることができるようにするため、男性の年金の支給開始年齢の引上げに合わせ、平成25年にかけて段階的に65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講ずることが事業主に対し義務付けられた。
○ 公共職業安定所においては、事業主に対して、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の指導を行い、その際は、都道府県高年齢者雇用開発協会の高年齢者雇用アドバイザーが同行又はフォローアップ相談を行うなど、各都道府県労働局と同協会とが密接な連携を図り、効果的かつ効率的な指導・援助等を実施している。
○ 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等を行った事業主、及びそれに伴う高年齢者の雇用割合が一定割合を超える事業主を対象として、継続雇用定着促進助成金の支給を行うことにより、継続雇用制度の推進及び定着を図っている。
○ 社会に参加、貢献したいと希望する者に対しては、地域社会に根ざした臨時的・短期的又は軽易な就業機会を提供するシルバー人材センター事業の推進を図っている(平成17年3月末現在、シルバー人材センターの団体数は1,820団体、会員数は約77万人)。また、シルバー人材センターの会員による乳幼児の世話や保育施設への送迎などの育児支援等を行う子育て支援事業を実施している(平成17年度の子育て支援実施団体は、118団体)。
○ 平成16年度からは、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構において、中高年齢者の募集・採用から職場定着するまでの体制づくりに係る具体的なノウハウ等の研究、個別企業に対する相談・援助等の支援や幅広い普及啓発等を行う、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた基盤づくり事業(エイジフリー・プロジェクト)を実施している。
○ 平成13年5月に「第7次職業能力開発基本計画」(計画期間:13~17年度)が策定され、職業能力のミスマッチの拡大に対応する観点から、労働市場が的確に機能するためのインフラストラクチャーの整備等を推進してきたところである。17年度は同計画を踏まえ、雇用・能力開発機構都道府県センターにおけるキャリア形成支援コーナーの運営、キャリア・コンサルティングを担う人材の養成、個々の労働者のキャリア形成を支援する事業主に対して、キャリア形成促進助成金の支給等を行った。
○ これまでの全労働者一律の計画的な労働時間の短縮を図る法律である「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(平成4年法律第90号)を、単に労働時間短縮を図るためだけでなく、労働時間、休日、休暇等の設定を個々の労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものに改善するための法律である「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(平成4年法律第90号)へと改正したところである(図2-3-4)。

図2-3-4 時短促進法から労働時間等設定改善法への改正

○ 育児休業制度等をより利用しやすい仕組みとするため、育児休業・介護休業の対象労働者の拡大、育児休業期間の延長や介護休業の取得回数制限の緩和等を内容とする「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律」(平成16年法律第160号)が平成16年12月に成立し、17年4月から施行されている。
○ 年金額については、物価の変動に応じて自動的に額を改定することとなっている。
  平成17年度の年金額については、16年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)が前年から変動しなかったため改定を行わなかったが、18年度については、17年平均の消費者物価の下落分に合わせて、実際に給付されている物価スライド特例水準の額を0.3%引き下げることとした。
○ 平成17年10月に「被用者年金制度の一元化等に関する関係省庁連絡会議」を設置し、同年12月に「被用者年金一元化に関する論点整理」を取りまとめた。また、与党年金制度改革協議会においても、同月「被用者年金一元化についての考え方と方向性」が取りまとめられた。
  これを受け、平成18年1月には「被用者年金一元化等に関する政府・与党協議会」の初会合が開催され、今後、政府・与党が連携してこの問題に取り組み、同年4月末を目途に、被用者年金一元化の基本方針を閣議決定する方針が示された。
○ 社会保険庁改革については、改革の具体的内容を検討する場として、平成17年7月より、厚生労働大臣主宰の「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」を開催し、新組織の発足に向け、更なる業務改革を推進するとともに、「ねんきん事業機構法案」及び「国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案」を第164回国会に提出するなど、国民の信頼を回復することのできる抜本的な改革を着実に実施していくこととしている。
○ 企業年金制度の安定化と充実を図るため、平成17年度は、「国民年金法等の一部を改正する法律」(平成16年法律第104号)で決定された〔1〕厚生年金基金の免除保険料率の凍結解除、〔2〕確定拠出年金の中途引出しの要件緩和、〔3〕確定給付型の企業年金制度の通算措置の拡充等が施行された。
○ 平成14年に都道府県社会福祉協議会において、所有する住居に将来にわたり住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯に対し、当該不動産を担保として生活資金の貸付けを行う長期生活支援資金貸付制度を創設したところであり、17年12月末現在、46の都道府県において貸付業務が開始され、378件の貸付決定がなされている。
○ 高齢者の財産管理の支援等に資する認知症高齢者等の権利擁護のための成年後見制度について周知を図っている。

2 健康・福祉

○ 生涯にわたる健康づくりを推進するために、平成12年から、9分野70項目の目標を掲げた「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を推進しており、14年には、「健康日本21」を中核とする国民の健康づくり・疾病予防をさらに積極的に推進するため、「健康増進法」(平成14年法律第103号)が制定され、15年5月に施行された。
  さらに、平成16年5月には、生活習慣病対策の推進と介護予防の推進を柱とした「健康フロンティア戦略」が取りまとめられ、17年度から10年間、同戦略に基づく施策を重点的に展開していくこととしている。
○ 介護保険制度については、「制度の持続可能性」を確保するために、予防重視型システムへの転換、施設入所者の居住費・食費の見直し、新たなサービス体系の確立、サービスの質の向上等を内容とする「介護保険法等の一部を改正する法律」(平成17年法律第77号)が平成17年6月に成立した。
○ 平成17年度を「認知症を知る1年」と位置付け、認知症の人が尊厳をもって地域で暮らし続けることを支える「地域づくり」の重要性について住民が自らのこととして考えることにより、理解者、支援者の輪を広げることをねらいとして、広報キャンペーンを実施している。具体的には、〔1〕認知症に関する理解を高めるための住民・企業・学校での学習会(認知症サポーター養成講座)、〔2〕当事者本位のケアプランを作成する取組や、〔3〕町づくりの実践例の集約・広報等を展開していくこととしている。
○ 医療費の適正化を総合的に推進し、超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系を実現することなどを柱とする「医療制度改革大綱」が平成17年12月1日に政府・与党医療改革協議会において決定され、この具体化を図るべく、「健康保険法等の一部を改正する法律案」を第164回国会に提出した(図2-3-22、図2-3-23)。

図2-3-22 新たな高齢者医療制度の創設


図2-3-23 健康保険法等の一部を改正する法律案の概要
趣旨
 国民皆保険を堅持し、将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとしていくため、「医療制度改革大綱」(平成17年12月1日政府・
与党医療改革協議会決定)に沿って、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編・統合等所要の措置を講ずる。
 
骨子
1 医療費適正化の総合的な推進
(1)生活習慣病対策や長期入院の是正など中長期的な医療費適正化のための医療費適正化計画の策定【平成20年4月】
(2)保険給付の内容・範囲の見直し等
 ・現役並みの所得がある高齢者の患者負担の見直し(2割→3割)、療養病床の高齢者の食費・居住費の見直し【平成18年10月】
 ・70~74歳の高齢者の患者負担の見直し(1割→2割)、乳幼児の患者負担軽減(2割)措置の拡大(3歳未満→義務教育就学前)【平成20年4月】
(3)介護療養型医療施設の廃止【平成26年4月】
 
2 新たな高齢者医療制度の創設【平成20年4月】
(1)後期高齢者(75歳以上)を対象とした後期高齢者医療制度の創設
(2)前期高齢者(65歳~74歳)の医療費に係る財政調整制度の創設
 
3 都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合
(1)国保財政基盤強化策の継続【平成18年4月】、保険財政共同安定化事業【平成18年10月】
(2)政管健保の公法人化【平成20年10月】
(3)地域型健保組合の創設【平成18年10月】
 
4 その他
 中医協の委員構成の見直し、団体推薦規定の廃止等所要の見直し【平成19年3月】 等

○ 平成17年度においては、16年6月に国の基本施策として閣議決定された「少子化社会対策大綱」の具体的実施計画として策定された「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について(子ども・子育て応援プラン)」に基づき、若者の自立や働き方の見直し、地域における子育て支援など幅の広い取組を進めている。
○ 平成17年4月の「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)の本格施行に伴い、地方公共団体においては、地域における子育て支援や母性、乳幼児の健康の確保・増進、教育環境の整備等を内容とする地域行動計画、企業等においては、仕事と子育ての両立支援のための雇用環境の整備、働き方の見直しに資する労働条件の整備等を内容とする一般事業主行動計画が策定され、これに基づく取組が進められた。
○ 平成18年3月、「国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第20号)が成立し、子育てを行う家庭の経済的負担の軽減等を図る観点から、18年4月から、児童手当制度における支給対象年齢の引上げ等を行うこととされた。
○ 平成17年度には、総合施設における教育・保育の内容、職員配置、施設の設備の在り方等について検討するため、総合施設モデル事業を全国35箇所で実施した。この実施状況も踏まえた上で具体的な制度設計を行い、18年度からの本格実施に向けて、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案」を第164回国会に提出した。

3 学習・社会参加

○ 国民の生涯を通じた多様な学習需要に対応した学習機会が適切に提供されるためには、国や地方公共団体を始め、民間の各種機関・団体など、様々な主体が連携・協力体制を作り上げることにより、生涯学習の振興について積極的・総合的に取り組んでいくことが重要である。このため、「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」(平成2年法律第71号)や中央教育審議会の答申等に基づき、生涯学習社会の実現に向けた取組を進めるとともに、民間における生涯学習推進のための取組を支援する窓口や、教育・文化及びスポーツの振興による市町村等の地域づくりを支援するための窓口を設置し、生涯学習の推進を図っている。また、平成17年6月、中央教育審議会に対し「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」諮問をし、生涯学習分科会において、国民の生涯を通じた学習活動を促進するための方策や、子どもたちが家庭や地域社会の中で伸び伸びと育まれるような環境を整備するための方策について審議を行っている。
○ 生涯学習の普及・啓発については、全国生涯学習フェスティバルを開催し、シンポジウム、体験教室等を行うことで、広く国民一般に対し生涯学習に係る活動を実践する場を全国的な規模で提供した(平成17年10月9~15日、鳥取県にて「夢砂丘 まなびのオアシス さがそうよ」をテーマに開催)。
○ 小・中・高等学校等の児童生徒が、ボランティアなど社会奉仕に関わる体験活動を始めとする多様な体験活動に取り組むことを促進する目的で、各都道府県に「体験活動推進地域・推進校」等を指定し、他校のモデルとなる体験活動の展開を図るなどの取組を行う「豊かな体験活動推進事業」を実施している。
○ 公民館を始め、図書館、博物館、女性教育施設等の社会教育施設や教育委員会において、幅広い年齢の人々を対象とした多くの学習機会が提供されている。この中には、高齢社会について理解を促進するためのものや高齢者を対象とする学級・講座も開設されている(表2-3-29)。

表2-3-29 教育委員会及び公民館における高齢者対象の学級・講座の状況
(講座)
区分 平成13年度間 平成10年度間
学級・講座数 45,501 37,078
教養の向上 25,215 23,272
体育・レクリェーション 9,898 5,036
家庭教育・家庭生活 2,845 2,193
職業知識・技術の向上 823 350
市民意識・社会連帯 4,334 4,289
その他 2,386 1,938
資料:文部科学省「社会教育調査」(平成14年度及び11年度)

○ 高齢者自身が社会における役割を見いだし、生きがいを持って積極的に社会に参加できるよう、各種社会環境の条件整備に努めることが重要になっている。このため、地域において、社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い、その振興を図っている。
○ 高齢者の生きがいと健康づくりを推進するため、市町村が行う高齢者の社会活動の啓発普及、高齢者ボランティア活動への支援等や、各都道府県に設置されている「明るい長寿社会づくり推進機構」で実施されている高齢指導者等の育成や組織ネットワークづくりに対し補助を行っている。さらに平成17年11月には全国健康福祉祭(ねんりんピック)を福岡県で開催した。
○ 市民の自由な社会貢献活動を促進するため、特定非営利活動法人の認証・監督等、「特定非営利活動促進法」(平成10年法律第7号)の施行や、市民活動に関する実態調査などを行った。また、特定非営利活動法人のうち相当の公益性を有すると認められる法人の活動を支援するための認定特定非営利活動法人制度について、普及啓発や制度の利用実態に関する調査を行った。

4 生活環境

○ 住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策について、基本理念及び国、地方公共団体等の責務を定めるとともに、国及び都道府県による基本的な計画の策定等を内容とする「住生活基本法案」を第164回国会に提出した。
○ 高齢者等誰もが社会の活動に参加・参画し、社会の担い手として役割と責任を果たしつつ、自信と誇りと喜びを持って生活できる社会の実現に向けて、平成16年6月に決定された「バリアフリー化推進要綱」(バリアフリーに関する関係閣僚会議決定)を指針として、政府一体となって社会のバリアフリー化の推進に取り組んでいる。
○ 「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号)に基づき、バリアフリー化の目標や交通事業者等が講ずべき措置、基本構想の指針等を示した、移動円滑化の促進に関する基本方針(平成12年国家公安委員会、運輸省、建設省、自治省告示第1号)が策定されている。このうち、平成16年10月に、市町村が作成する基本構想の指針となるべき事項について、重点整備地区内の建築物も含めた一体的なバリアフリー対応について配慮されるよう基本方針を改正しその旨を明確化した。
○ 高齢者の移動の円滑化を図るため、駅・空港等の公共交通ターミナルのエレベーターの設置等の高齢者の利用に配慮した施設の整備、ノンステップバス等の車両の導入などを推進している(表2-3-41)。

表2-3-41 高齢者等のための公共交通機関施設整備等の状況

○ 公共交通機関や建築物等のバリアフリー化、一定の地域内におけるこれらの施設等及びこれらの間の経路の一体的・連続的なバリアフリー化を促進し、バリアフリー施策を総合的に展開するため、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案」を第164回国会に提出した。
○ 平成18年3月に、中央交通安全対策会議において「第8次交通安全基本計画」(計画期間:平成18~22年度)を決定した。
○ 住宅リフォームに関する訪問販売などにおいて、悪質な事業者が高齢者を狙い、次から次へと契約させるなど、手口が悪質化していることから、高齢者や民生委員・ヘルパーなどの高齢者の周りの人々への啓発等が重要となっている。このため、高齢者及び民生委員・ヘルパーなどの高齢者の周りの人々に対して、消費者問題に関する啓発と対処策の学習を促進するために、「消費者問題出前講座」を全国各地の公民館等の施設において実施した。
○ 介護保険制度改正により、平成18年4月以降設置される「地域包括支援センター」が、支援を必要とする高齢者の実態把握や虐待への対応など、高齢者の権利擁護や総合相談窓口の業務を円滑に行うことができるよう、センター職員向けのマニュアル作成や職員予定者への研修を実施した。
○ 「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」(平成16年法律第65号)の施行(18年6月1日)に向けて、積極的に住宅用火災警報器等の広報・普及促進に努めるとともに、「住宅防火基本方針」(平成13年4月消防庁策定)に基づき、高齢者が過半を占める住宅火災による死者の低減を図るため、訪問防火指導等を行った。
  また、防災基盤整備事業の一つとして災害時要援護者緊急通報システムの普及に努めた。
○ 高齢者等の災害時要援護者の避難対策を進めていくため、有識者からなる検討会を立ち上げ、避難所での支援とともに、保健師、看護師、介護保険制度関係者等の様々な関係機関等の間の連携について検討を進め、市町村を中心とした取組方策を取りまとめる。併せて、昨年取りまとめた「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を改正し、新たな検討成果を盛り込んだ。
○ 「食料・農業・農村基本計画」(平成17年3月閣議決定)を踏まえ、意欲のある高齢農業者が、その知識と技能をいかしつつ、生きがいをもって活動できるよう、高齢農業者による新規就農者や担い手への支援、都市との交流、農地や農業用水などの地域資源の保全管理、高齢者活動支援施設等の整備を促進した。

5 調査研究等の推進

○ 平成17年度においては、長寿科学総合研究において、高齢者に特徴的な疾病・障害の予防、診断及び治療並びにリハビリテーションについて研究を実施した。また、高齢者を支える基盤としての介護保険制度にも着目し、介護ケアの確立、高齢者の権利擁護等の社会科学的検討及び保健・医療・福祉政策の連携方策に関する研究を行い、総合的な長寿科学研究を積極的に推進した。
○ 平成16年度からの「第3次対がん10か年総合戦略」に基づき、第3次対がん総合戦略研究等において、がんのさらなる本態解明を進めるとともに、基礎研究の成果を着実に新たな治療法につなげる橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)を推進した。
○ 生活習慣病や慢性疾患については、創薬等ヒューマンサイエンス総合研究において、画期的・独創的な医薬品等の創製のための技術開発を行うとともに、医療現場のニーズに密着した医薬品の開発及び長寿社会に対応した保健・医療・福祉に関する先端的基盤的技術開発に関する研究を推進するなど、各研究事業を行った。
○ 平成15年4月に、ヒトの遺伝情報であるヒトゲノムの精密解読が完了したことを踏まえ、我が国の強みをいかして、複雑な生命機能の解明や、画期的な創薬の実現につながる成果等が期待されるゲノムネットワーク研究等の基礎的・先導的な研究を引き続き積極的に推進した。先端的基盤開発研究においては、個人個人にあった予防・治療を可能とする医療(テーラーメイド医療)の実現に向けた研究を行うとともに、自己修復能力を利用した骨、血管等の再生医療の実現などに向けた研究を推進した。
○ 平成17年度より、生物を構成するタンパク質などの様々な分子の挙動を生きた状態のまま画像としてとらえることを可能にし、腫瘍診断及び脳機能の解明につながる成果等が期待される分子イメージング研究を新たに開始した。
○ 長寿科学総合研究事業において、老化、老年病、リハビリテーション、支援機器及び技術評価に関する研究を行う「老化・老年病等長寿科学技術分野」、介護予防、高齢者の健康増進、介護、保健サービスの評価及び社会科学に関する研究を行う「介護予防・高齢者保健福祉分野」、認知症、軽度認知障害、骨折及び骨粗しょう症について、より効果的かつ効率的予防、診断、治療、リハビリテーション及び介護を確立するための研究を行う「認知症・骨折等総合研究分野」に分けて研究を推進した。
○ がん対策については、研究開発された新薬、診断・治療法等の臨床応用を迅速かつ適切に行うため、平成17年10月に国立がんセンターに「臨床開発センター」を設置し、その着実な運営を進めた。
○ 将来の研究開発活動の中核を担う創造性豊かな優れた若手研究者が、その能力を最大限に発揮できるよう、独立行政法人日本学術振興会の特別研究員制度、海外特別研究員制度、外国人特別研究員制度など、大学院博士課程修了者等の若手研究者を対象とした多様な支援制度を推進している。
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