第1章 高齢化の状況(第2節 3(1))
第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向
3 高齢者と健康・福祉
(1)高齢者の健康
ア 高齢者の半数近くが何らかの自覚症状を訴えているが、日常生活に影響がある者は4分の1程度
高齢者の健康状態についてみると、平成16(2004)年における65歳以上の高齢者の有訴者率(人口1,000人当たりの病気やけが等で自覚症状のある者(入院者を除く)の数)は493.1と半数近くの者が何らかの自覚症状を訴えている。
一方、65歳以上の高齢者の日常生活に影響のある者率(健康上の問題で、日常生活の動作・外出・仕事・家事・学業・運動・スポーツ等に影響のある者の人口1,000人当たりの数。入院者を除く。)は、平成16(2004)年において、65歳以上の高齢者人口1,000人当たりで246.1と、有訴者率と比べると約半分になっている。これを年齢別、男女別にみると、年齢層が高いほど大きく上昇し、また、いずれの年齢層においても女性が男性を上回っている(図1-2-26)。
図1-2-26 65歳以上の高齢者の有訴者率及び日常生活に影響のある者率(人口千対)
この日常生活への影響を内容別にみると、65歳以上の高齢者では、日常生活動作(起床、衣服着脱、食事、入浴など)が105.7、外出(時間や作業量などが制限される)が105.2と高くなっており、次いで仕事・家事・学業(時間や作業量などが制限される)が95.6、運動・スポーツ等が64.2となっている。男女別では、男性は日常生活動作、女性は外出が最も高くなっている(図1-2-27)。
図1-2-27 65歳以上の高齢者の日常生活に影響のある者率(人口千対)
これを先にみた高齢者の有訴者率と比較すると、高齢者は、何らかの自覚症状があっても、必ずしも日常生活に支障を来しているわけではないことがわかる。
イ 国際的にみて日本では「自分は健康」と考えている人が多い
我が国は平均寿命だけでなく、健康寿命も世界で最も長いが(第1章第1節コラム参照)、健康についての高齢者の意識をアメリカ、ドイツ、フランス及び韓国の4カ国と比較してみても、「健康である」と考えている者の割合は、日本が64.4%で最も高い結果となっている。なお、日本に次いで高いのはアメリカ(61.0%)で、以下、フランス(53.5%)、韓国(43.2%)、ドイツ(32.9%)の順となっている(図1-2-28)。
図1-2-28 60歳以上の高齢者の健康についての意識(国際比較)
ウ 国際的にみて高齢者が医療サービスを利用する割合は高い
65歳以上の受療率(高齢者人口10万人当たりの推計患者数の割合)は、平成17(2005)年において、入院が3,639、外来が11,948となっており、他の年齢階級に比べて高い水準であるが、近年は安定的に推移している(図1-2-29)。
図1-2-29 年齢階級別にみた受療率の推移
高齢者の受療率が高い主な傷病をみると、入院では、脳血管疾患(男性697、女性847)、悪性新生物(がん)(男性511、女性254)となっている。外来では、高血圧性疾患(男性1,426、女性1,981)、脊柱障害(男性1,300、女性1,310)となっている(表1-2-30)。
男 | 女 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
65歳以上 | 65~74歳 | 75歳以上 | 65歳以上 | 65~74歳 | 75歳以上 | ||
入院 | 総数 | 3,476 | 2,456 | 5,042 | 3,759 | 1,816 | 5,748 |
悪性新生物 | 511 | 433 | 631 | 254 | 209 | 300 | |
高血圧性疾患 | 20 | 8 | 39 | 56 | 10 | 104 | |
心疾患(高血圧性のものを除く) | 179 | 104 | 294 | 210 | 58 | 366 | |
脳血管疾患 | 697 | 413 | 1,133 | 847 | 259 | 1,450 | |
外来 | 総数 | 11,297 | 10,094 | 13,144 | 12,427 | 11,817 | 13,051 |
悪性新生物 | 480 | 414 | 581 | 219 | 229 | 209 | |
高血圧性疾患 | 1,426 | 1,240 | 1,713 | 1,981 | 1,631 | 2,339 | |
心疾患(高血圧性のものを除く) | 444 | 328 | 622 | 385 | 244 | 529 | |
脳血管疾患 | 424 | 333 | 563 | 329 | 218 | 444 | |
脊柱障害 | 1,300 | 1,039 | 1,701 | 1,310 | 1,203 | 1,420 | |
資料:厚生労働省「患者調査」(平成17年)より作成 |
高齢者の死因となった疾病をみると、死亡率(高齢者人口10万人当たりに対する死亡者数の割合)は、平成17(2005)年において、悪性新生物(がん)が976.2と最も高く、次いで心疾患585.0、脳血管疾患456.1の順になっており、これら三つの疾病で高齢者の死因の約6割を占めている(図1-2-31)。
図1-2-31 65歳以上の高齢者の主な死因別死亡率の推移
医療サービスを日頃どのくらい利用するかについてアメリカ、ドイツ、フランス及び韓国の4か国と比較すると、日本は「健康である」と考える者は他の国よりも多いものの、医療サービスの利用状況は「ほぼ毎日」から「月に1回くらい」の割合の合計が56.8%と韓国(56.7%)とともに他の国と比較して高くなっており、医療サービスの利用頻度が高くなっている(図1-2-32)。
図1-2-32 医療サービスの利用状況(国際比較)