第1章 高齢化の状況(第3節 事例集)

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第3節 前例のない高齢社会に向けた対策・取組の方向性

事例集

(中高年齢者が第2の人生の準備に取り組むのを支援している事例)

○中高年齢者の再就職などの職業生活設計等を支援している事例

(社)沖縄雇用開発協会は、企業、事業主団体等が会員となって設立された公益法人で、高齢者等の諸問題に関する情報収集・提供、相談・援助などの事業を通じて高齢者の雇用の促進と安定等に取り組んでいる。同協会には、企業が行う定年延長、継続雇用制度の導入、雇用管理の改善などの諸条件の整備に対して、専門的・実務的立場から援助するために、高年齢者雇用アドバイザーが6名配置されている。

同協会が独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構から管理・運営を受託している沖縄高齢期雇用就業支援センターは、中高年齢者(概ね45歳以上65歳未満の在職者・離職者)に対し、再就職準備対策などの高齢期における職業生活設計に関する情報提供等を行うとともに、中高年労働者のキャリア支援、再就職援助を行う事業主からの相談対応など、事業主に対する援助にも取り組んでいる。中高年齢者は、同センターを利用するために先ず会員登録(会費無料)をする。登録をした中高年齢者には、セミナーの開催案内やセンターだよりが送付されるほか、図書の無料貸し出しが受けられる。また、能力開発、年金などの疑問について専門家に無料で個別相談することもできる。同センターの登録会員数は、平成19年2月現在で874人(在職者129人、離職者745人)、事業主等が50団体・企業となっている。同センターでは、在職者会員の拡充が今後の課題であると考えている。

同センターでは、会員を対象として「高齢期の生きがい」、「退職後の家計と資産の運用」、「消費生活のトラブル」、「介護保険制度」、「能力開発」、「キャリア設計」、「パートタイム労働の知識」、「独立・自営関係の情報」、「シルバー人材センター事業」、「余暇活動」など広範なテーマにより、就業、再就職、健康管理等のための職業生活設計セミナーを開催している。その頻度は、毎月4回で、うち1回は、在職者の参加を考慮して夜間に開催するなど工夫も行なっている。毎回50人程度の参加があり、参加者からは、分かりやすく勉強になった、大いに役立ったという声が寄せられている。同セミナーの講師には高年齢者雇用アドバイザーのほか行政・企業・医療・各種団体など県内の関係者が多数参加している。このセミナーの開催時に、それぞれの講師が相談員となって個別相談も併せて行っている。

また、同協会では、会員企業の管理者職を対象として、職場活性化研修を実施している。この研修は、高齢化が進む中で管理者に求められる知見、ノウハウを体系的に学ぶとともに、65歳までの継続雇用制度導入の必要性についての理解促進や、人事管理制度の見直しに関する専門知識の涵養などをねらいとしている。同研修は、高年齢者雇用アドバイザーが実施アドバイザーとして企業に出向いて行われるが、平成18年度の開催実績は、6社となっている。

沖縄高齢期雇用就業支援センター

○ボランティア活動への参加のきっかけづくりの取組を始めている事例

福岡県福岡市の特定非営利活動法人NPOふくおかでは、地元の福岡市社会福祉協議会、福岡県経営者協会と連携して「勤労者マルチライフ支援事業」(以下「事業」という。)を実施している。同事業は、厚生労働省が財団法人さわやか福祉財団を通じて全国12地域で実施しているもので、福岡も実施地域の1つとなっており、企業を通じて勤労者のボランティア活動への参加を推進することを目的としている。

福岡では、活動を開始した当初から、ボランティア活動の参加者の掘り起こしのためには、ボランティア活動を出来るだけ多くの人に体験をしてもらうことが重要と考え、「ボランティア体験プログラム」の提供を重視した。

具体的には、「川の清掃」、「街角の落書き消し」、「干潟の整備」など、プログラムを作成、提供してきたプログラムの作成過程において、ボランティア活動は安全で、わかりやすく、短時間でもできる活動であることが活動を始めるきっかけとして重要であることがわかってきたという。NPOふくおか理事の1人は「ボランティア活動を普及させていくためにはコツがあることに気付いたことは、NPO団体にとっても収穫でした。」と話す。

また、初年度はNPO団体が提案した50のプログラムを提供したが、36名しか集まらず、その原因として、数が多すぎて初めに何から取り組んでよいかわからないとの指摘を受けた。そのため、「おすすめボランティア」として毎月1つのボランティアプログラムを提供し、活動内容も工夫したところ、3年間の事業の最終年度にはプログラム数14に対し、1,000人以上が参加したという。

以前から、自らボランティア活動に取り組んでいたある企業の管理職は、事業への参加を機に社内企業ボランティア活動への参加の呼びかけを始めた。同氏は、「会社の同僚と参加するなら初めて参加する人でもやりやすいと思います。最初は練習のつもりで参加するぐらいがちょうどよい。続けていけば会社の外に人のつながりが出来てきます。そうなれば社縁はもう必要ありません。この事業には、きっかけをつくるしかけが揃っていた。」と話す。

ボランティア活動を個人で探すには限界もあり、企業が窓口となってボランティア活動の情報提供を行うことで、情報が届きやすくなる、また仲間で参加することもできるなど「きっかけ」を提供することには大きな効果がある。

先のNPOふくおかの理事は、「企業からのボランティア活動に対する問い合わせも増え、ボランティア活動の認知度が増してきたと感じます。また、社会福祉協議会や経営者協会とつながりができたこともこの事業の成果でした。3年間の事業終了でやめてしまってはもったいない。さらに活動を充実させていきたい。」と話している。

平成18年度で事業は終了するが、平成19年度以降も福岡市社会福祉協議会、福岡県経営者協会、NPOふくおかの3者が自主財源によって活動を継続していくこととしている。

ボランティア活動

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