平成19年度 高齢社会対策(第2 5(1))

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第2 分野別の高齢社会対策

5 調査研究等の推進

(1)各種の調査研究等の推進

ア 高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等

認知症、悪性新生物(がん)等の高齢期にかかりやすい疾患については、長寿科学総合研究事業等において研究を推進している。

長寿科学総合研究において、国民が安心して生涯を過ごすことができる社会へと転換するため、高齢者に特徴的な疾病・障害の予防、診断及び治療並びにリハビリテーションについて研究を行う。

また、老化に関する研究、骨・認知症に関する研究に加え、介護予防プランの臨床介入研究、介護保険の被保険者・受給者範囲の検討に資する研究、改正介護保険法施行による新たな要介護認定の枠組みに関する研究を積極的に推進する。

また、がんについては、「がん対策基本法」(平成18年法律第98号)が平成18年6月に制定されたところである。本法において、がんについての研究を促進することが定められており、がん対策に資する研究をより一層推進していくこととしている。具体的には、がんの臨床的特性の分子基盤等の研究を行い、がんのさらなる本態解明を進めるとともに、その成果を幅広く応用し革新的な予防、診断、治療法の開発をより一層推進していく。また、がん専門医等の育成やがん診療連携拠点病院の機能強化等に資する研究、がん患者の療養生活の質の維持向上を目的とした緩和ケアや精神的ケアに関する研究等に取り組んでいくとともに、効率的な医療スタッフの配置やがん医療と介護の連携のあり方に関する研究等についても実施していく。

さらに、科学的革新を有効に発展させて国民一人一人が実際に安全に利用できる診療技術として実用化するには、その橋渡しとなる研究を段階的に進展させていく必要があり、基礎研究の成果を着実に新たな治療法につなげる橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)を推進する。また、国内における停滞が指摘されている治験・臨床研究の活性化のために策定された「新たな治験活性化5カ年計画」を実施する。

また、引き続き、複雑な生命機能の解明、画期的な創薬の実現につながる成果等が期待されるゲノムネットワーク研究等の研究事業を引き続き推進する。

先端的基盤開発研究においては、ナノスケール(1mmの100万分の一程度)の超微細技術(ナノテクノロジー)を医学へ応用することにより、非侵襲・低侵襲を目指した医療機器等の研究・開発を産学官の連携の下、医学・薬学・化学・工学の融合的研究等を学際的に発展させながら推進し、患者にとってより安全・安心な医療技術の提供の実現を図っている。

また、高血圧、糖尿病、がん、認知症等の疾患を中心として、個々人にあった予防・治療を可能とする医療(テーラーメイド医療)の実現に向けた研究を行う。この研究により、最新の検査機器を揃えた大病院だけでなく、診療所レベルにおいても、薬剤に対する反応についてゲノムレベルでの個人差を明らかにしたうえで、最適な処方を行うことを可能とし、患者にとってより安全・安心な医療技術の提供が期待できる。

さらに、自己修復能力を利用した骨再生、重傷心不全に対する再生医療の実現などに向けた研究を拡充して推進する。再生医療分野において今後大きなインパクトを与える可能性を有している幹細胞研究分野等については、若手を育成する研究を継続して推進する。

また、平成17年度より開始した、生物を構成するタンパク質などの様々な分子の挙動を生きた状態のまま画像としてとらえることを可能にし、腫瘍診断及び脳機能の解明につながる成果等が期待される分子イメージング研究を引き続き推進する。

認知機能が低下した高齢免許保有者に対して効果的な安全教育を行うため、認知機能の低下と自動車の運転特性との相関関係、具体的な安全教育の在り方について調査研究を実施する。

イ 福祉用具等の研究開発

福祉用具及び医療機器については、福祉や医療に対するニーズの高い研究開発を効率的に実施するためのプロジェクトの推進、短期間で開発可能な医療福祉機器の民間による開発の支援等を行う。

ウ ユニバーサルデザインの生活用品等の研究開発

高齢化社会が進展する中で、安全安心で質の高い生活を送ることのできる社会形成に向け、高齢者を含め生活者の視点に立った生活用品等が円滑に提供される環境を整備するための調査研究を行う。

エ 情報通信の活用等に関する研究開発

高齢者等が情報通信の利便を享受できる情報バリアフリー環境の整備を図るため、高齢者等向けの通信・放送サービスに関する技術の研究開発を行う者に対する助成等を行う。また、高齢者等の情報通信技術を用いた社会参加を促進するための調査研究を実施する。

また、最先端の情報通信技術等を用いて、運転者に対し、周辺の交通状況等をカーナビゲーション装置を通じ視覚・聴覚情報により提供することで危険要因に対する注意を促す安全運転支援システム(DSSS)等、高齢者等の安全快適な移動に資するITS(高度道路交通システム)の研究開発を推進する。

そのほか、最先端の情報通信技術(IT)を活用して、高齢者等の歩行安全を確保するため、携帯端末を用いた情報提供、移動支援に関する研究開発等を推進する。

高齢化社会が進展する中で、年齢を重ねてもいきいきと健康に生活し続けることへのニーズにこたえるため、国民自身が自宅や洋服店等の店頭において繰り返し自分自身の身体特性データ(身体寸法・形状、体重、体脂肪、筋力、歩行量、睡眠時間、視力、聴力、酸素消費量など)の計測・蓄積ができ、蓄積データの時間的変化を見ることで、自分自身の健康状態を把握できるようなデータベースの構築に取り組む。

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