第1章 高齢化の状況(第3節4)

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第3節 高齢者の社会的孤立と地域社会 ~「孤立」から「つながり」、そして「支え合い」へ~

4 「孤立」から「つながり」、そして「支え合い」へと向かう取組

○元気な高齢者を孤立した高齢者の「支え手」に

  • 「困っている世帯に手助けしたい」と考える高齢者は8割(図1-3-14)である一方、実際に「手助けをしている」高齢者は3割にとどまる。
  • この「手助けをしたい」高齢者を実際の活動へと引き出すためには、引き出す役割を担う活動のまとめ役を発掘し養成していくことが重要。また、例えば「地域通貨」のような地域で「支え合い」を下支えする試み・工夫が必要。

コラム「さわやか福祉財団のインストラクター養成事業」

コラム「『共助』の活性化を目指す地域通貨の取組」

図1-3-14 困っている世帯への手助け

○人との「つながり」を持てる機会づくりを

  • 高齢者の就業の場を確保することは仕事を通じた社会との「つながり」をつくり、「孤立」を防ぐことに役立つ。
  • 高齢者が何らかの形で地域や近隣の人との接点をもつことによりふれあいが生まれ、さらには周囲が高齢者のニーズを把握することができ、「支え合い」を行う端緒となる

コラム「居場所づくり」(事例:特定非営利活動法人ふらっとステーション・ドリーム等)

コラム「見守り活動・安否確認」(事例:東京都日野市)

○民と官の「協働」によるネットワークづくりを

  • 孤立する高齢者の中には、経済的困窮者や社会生活上の困難を抱えた人など行政や専門家が対応する必要がある場合も少なくない。
  • 住民・ボランティア・NPOなどの民間と地方自治体や専門家が良好な「協働」関係を築き、それぞれの得意とする活動で対応していくためのネットワークをつくり、支えられる人の視点にたった柔軟かつ多様な対応が必要。

〔コラム3:高齢社会の支え手をいかにして増やすか〕
~「現場主義」「複眼的思考」「フォローアップ」を重視した地域活動のリーダー育成の取組(公益財団法人さわやか福祉財団の取組)~


地域活動を立ち上げるリーダーの人材不足はどこの地域でも課題となっている。
ここでは、地域の市民グループの立ち上げを支援する「さわやかインストラクター養成研修」(公益財団法人さわやか福祉財団)の取組を紹介
  • これまでに地域でふれあいボランティア団体やNPOを立ち上げた経験者たちが、その経験を生かして新しい団体の立ち上げを支援していきたいと、自ら手をあげて研修に参加。
  • 「自分のやり方」に固執しない柔軟な方法論を身につけたリーダーを育てることが目標。研修の特徴は「現場主義」「複眼的思考」「フォローアップ」。
  • 研修を受けたインストラクターが地域の他の団体の活動を支援し、さらには養成研修の指導役として次のインストラクターを育てる。研修を通じて第一線の経験が後輩に手渡され、支え合いの輪が拡がっていく。
  • 2009年現在、174名が財団からさわやかインストラクターの委嘱を受けて活動中。

〔コラム4:「共助」の活性化を目指す地域通貨の取組〕


地域通貨は、<1>地域の自治会、商店街組合等や市民団体等が発行し、<2>利用地域が限定され、<3>当該地域の中でサービスや財を交換するときに使われる、といった特徴を有している。
「地域の支え合い」を目的とした地域通貨は、金銭を介した「市場」では活かされないような個人の能力を活用し、「助けてほしい人」と「助けられる人」を直接・間接に結びつける媒介として機能している。
ここでは、みやのかわ商店街の商店街振興組合(埼玉県秩父市)の取組を紹介
  • みやのかわ商店街の商店街振興組合では、埼玉県及び秩父市と連携しながら、「ボランティアバンクおたすけ隊」という取組を平成19年から行っている。
  • これは、元気な高齢者が援助の必要な高齢者の生活支援を行い、その謝礼を地域の商店で利用できる地域商品券として受け取る仕組みである。この取組は援助の必要な高齢者等の日常生活の安心確保、元気な高齢者の介護予防及び地域経済活性化に寄与する一石三鳥の仕組みとなっている。
  • 現在では、支援を行うおたすけ隊員は111名、地域商品券を取り扱っている商店は、みやのかわ商店街に限らず、秩父市全体の453店舗に広がっている。
みやのかわ商店街振興組合の仕組み

〔コラム5:誰でも気軽に立ち寄れる「居場所」が増えている〕


自発的な人と人との交流があってこそ、生涯を通じて生き生きと暮らすことができる。誰でもが気軽に立ち寄って、おしゃべりしたり、お茶を飲んだりして時間を過ごせる場所づくりを目的とした取組が各地で広がりつつある。
気軽に立ち寄れる場所タイプや食事や喫茶をメインにしたカフェタイプなどの形態があり、高齢者向け、多世代対象向けなど対象者も開催頻度も実にさまざまである。
運営者は、住民グループや特定非営利活動法人、社会福祉協議会が多いが、お寺や社会福祉法人が主体になっているところもあり、ここでは違うタイプの3つの取組を紹介
  • ニュータウンの団地住民をつなぐ地域のカフェ「ふらっとステーション・ドリーム」(神奈川県横浜市戸塚区)は毎日オープンのカフェタイプの居場所である。ここには、サロン、カレッジ、情報相談コーナーの3つの機能が備わっている。
  • 商店街の一角にあるみんなの広間「茶話(さわ)やか広間」(千葉県流山市)は市の遊休施設を活用した場所提供タイプの居場所。平日の午前10時から午後4時まで、お茶・コーヒーを飲みながらの癒しの場として、高齢者、障害者、子育て中のお母さんから子どもまでが自由に集まってくる。(写真)
  • 歓談の様子
  • 地域住民と行政、福祉施設が連携して運営するタイプの居場所「八城しあわせサロン」(山口県下関市)では、月2回(第1・3木曜日)サロンを開催。利用者の意見をもとにプログラムを決定しており、現在は健康チェックや健康づくり体操、食事や歓談などを行っている。

〔コラム6:見守りや安否確認の取組〕
東京都日野市や(独)都市再生機構等の取組を紹介


  • 日野市では、平成16年、高齢者の生活実態や見守り支援に関する意向等を把握するため、民生委員が市内に住む高齢者宅を一軒ずつ訪問する「ふれあい訪問調査」を実施し、支援の対象となりそうな高齢者像を12パターン、支援の内容を5パターンに整理した。
  • その調査結果をもとに、平成17年度から段階的に、5パターンの支援を提供する「高齢者見守り支援ネットワーク事業」を開始。
  • ボランティアからなる「ふれあい見守り推進員」が高齢者を対象に声かけや見守りを行っている。推進委員の見守り方法は2つあり、
    • <1>月に1回程度を目安に推進員が玄関先で高齢者に声かけ
    • <2>週に1回程度の割合で、郵便受けに何日もたまった新聞がないか等さりげない見守りを実施している。
  • 推進員による見守りに加えて、可燃ごみの回収時に見守りを行っている。連続3回ぐらい自宅前に可燃ごみを出していない世帯については、地域包括支援センターに連絡している。

*調査及び事業の実施にあたっては、個人情報保護の観点から、市の情報公開・個人情報保護運営審議会において検討を行ったうえで、調査では調査内容について福祉関係者で情報を共有することに関する同意の署名を得る、見守り支援ネットワークへの参加希望を確認するなどの配慮をした。

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