第1章 高齢化の状況

6 高齢者の生活環境

○高齢者の交通事故死者数は減少しつつあるが、交通事故死者数全体に占める割合は上昇

・65歳以上の高齢者の交通事故死者数は、平成22(2010)年は2,450人で14(2002)年より減少しつつあるが、交通事故死者数全体に占める割合は22(2010)年は50.4%と統計が残る昭和42(1967)年以降で最も高い(図1−2−16)。

図1−2−16 年齢層別交通事故死者数の推移
○振り込め詐欺の被害者の6割以上が高齢者

・振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺の総称)のうち、特に高齢者の被害が多いオレオレ詐欺の平成22(2010)年の認知件数は4,418件と前年より44.5%増加(表1−2−17)。振り込め詐欺の被害者は、65歳以上の割合が6割超。

表1−2−17 振り込め詐欺の認知件数・被害総額の推移(平成17〜22年)
区分\年次 17 18 19 20 21 22
認知件数(件) 21,612 19,020 17,930 20,481 7,340 6,637
オレオレ詐欺 6,854 7,093 6,430 7,615 3,057 4,418
架空請求詐欺 4,826 3,614 3,007 3,253 2,493 1,774
融資保証金詐欺 9,932 7,831 5,922 5,074 1,491 362
還付金等詐欺 482 2,571 4,539 299 83
被害総額(億円) 251.5 254.9 251.4 275.9 95.8 82.1
資料:警察庁の統計による。本表の被害総額には、キャッシュカードを直接受け取る手口のオレオレ詐欺におけるATMからの引出(窃取)額は含まれない。
○消費トラブルに関する相談が依然として10万件を超えている

・全国の消費生活センターに寄せられた契約当事者が70歳以上の相談件数は、10万件を超えている(図1−2−18)。

図1−2−18 契約当事者が70歳以上の消費相談件数
○高齢者による犯罪

・高齢者の刑法犯の検挙人員は,平成12(2000)年と比較すると、検挙人員では約2.7倍、犯罪者率では約2倍(図1−2−19)。

・前科・前歴や受刑歴などがある人ほど初犯者に比べ、単身者が占める割合が高く、親族や親族以外との接触がない人が多い(図1−2−20、図1−2−21)。

(注)「高齢初発群」とは、前歴及び前科がなく、初犯の者。「前歴あり群」とは、前歴を有しているが、前科はない者。「前科あり群」とは、前科を有しているが、受刑歴はない者。「受刑歴あり群」とは、受刑歴を有する者。

図1−2−19 高齢者による犯罪(高齢者の包括罪種別刑法犯検挙人員と犯罪者率)
図1−2−20 前科・前歴分類別同居者別構成比
図1−2−21 前科・前歴分類別 親族・親族以外との関係
○東日本大震災における高齢者の被害状況

・岩手県、宮城県、福島県の3県で収容された死亡者は、3月11日から4月11日までに13,154人にのぼり、検視等を終えて年齢が判明している人は11,108人で、そのうち60歳以上の高齢者は7,241人と65.2%を占めている(図1−2−22)。

図1−2−22 年齢階級別死亡者数

〔コラム<1>:高齢者の能力を活用したソーシャルビジネス〕

○我が国における高齢者の就業意欲は高い状態にあり、今後、労働力人口の減少と高齢化が同時進行することを踏まえると,高齢者が年齢にかかわらず、働き続けたり起業できる環境を整えることが重要である。

○信州西山地域の郷土食であった「おやき」を販売している株式会社小川の庄は,人口3,000人の長野県小川村において、地元の素材と伝統、高齢者の労働力を活用した「新しい村づくり」を目指して創業した。「集落一品づくり」(お年寄りが自宅の近くで働くことができるように集落ごとに工房を作ること)や「60歳入社、定年なし」(60歳以上でも入社でき、生涯現役で働き続けられること)を目標に事業を行っている。従業員は高齢者の技と経験を生かして楽しく働き続けている。

コラム1の写真

○特定非営利活動法人「よろずや余之助」は、定年後に仲間と一緒に楽しく過ごしたいという代表者の思いから結成され、雇用の増大や新たな産業の創出を目的に経済産業省が実施した平成14年度市民活動活性化モデル事業(市民ベンチャー事業)に採択されたことをきっかけに、コミュニティ・カフェや地域の物品販売等の事業を開始した。カフェには地域の人が気軽に相談できる無料相談窓口が常設され、代表の同級生であった専門家が対応しており、相談ごとの中からイベント事業など「よろずや余之助」の収益事業も生まれている。

〔コラム<2>:日本、スウェーデンにおける家族介護者支援に関する動き〕

○スウェーデンでは、介護を必要とする高齢者であっても、在宅介護サービスを受けながら自宅で暮らし続けるケースが多く、9割を超える高齢者が在宅で過ごしている。

・すべての地方自治体でレスパイトケア(家族介護者のための休養の提供等の支援)が提供されており、地方自治体によっては、24時間体制の緊急支援や一時預かりサービスを提供しているところもある。

○我が国においては、家族介護は家庭内の問題であり、やって当然だという考え方に縛られて、家族介護をする人のケアやサポートの必要性が見過ごされてきたが、近年、家族介護者を支える民間団体による活動が広がりを見せている。

・特定非営利活動法人「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」では、<1>電話や訪問などによる家族介護者に対する相談・援助、<2>家族介護者を支援する人材の養成、<3>家族介護者の交流の場(介護者の会)の立ち上げや運営の支援とネットワークの推進、<4>介護者調査や研修・フォーラムの開催など、家族介護者のケアやサポートのしくみづくりを実践している。

・家族介護者への支援基盤の充実を図るとともに、家族介護は家庭の中だけの問題ではないとの認識を社会全体に広めることで、より家族介護をしやすい社会環境が実現される。そのためには、こうした民間団体による活動の広まりが鍵になるだろう。

〔コラム<3>:高齢者の心を癒すアニマルセラピー〕

○高齢者医療や福祉の現場において、ペットとの触れ合いを通じて高齢者の心を癒す「アニマルセラピー」の取組が広がっている。

○JAHA(公益社団法人日本動物病院福祉協会)では、ボランティアが各家庭で愛情をもって育てた犬や猫などのペットと一緒に高齢者施設、病院などを訪問し、高齢者に動物の持つ温もりや優しさに触れてもらう活動を行っている。活動は昭和61(1986)年に始まり、これまでに訪問回数は1万回を超えている。

○特定非営利活動法人「日本レスキュー協会」では、セラピードッグメディカルセンターを設立・運営し、種を問わず犬たちを受け入れ、福祉施設等で高齢者の心と体を癒すセラピードッグとして活躍できるよう、高度な訓練を行っている。セラピードッグの派遣はこれまでに2,000回を超え、地震等で被害を受けた被災者の心を癒すため、被災地への派遣も行っている。

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〔コラム<4>:買い物弱者への生活支援〕

○日常の買い物に不便さを感じている高齢者が増加している。「買い物弱者」あるいは「買い物難民」などと表現される、こうした人たちを地域で支援する動きが広がっている。

・「買い物の場を提供する」事例(熊本県荒尾市)

商店主らが企業組合を立ち上げ、空き店舗を活用して徒歩圏内の高齢者をターゲットとしたミニスーパーマーケットを開設し、近隣農家による野菜の産直販売等を行っている。店内には、高齢者向けの休憩スペースを設けており、高齢者の憩いの場となっている。

・「商品を届ける」事例(高知県土佐市)

移動販売事業者が、人口減少に伴い採算が悪化し事業撤退も検討したが、高知県からの補助をきっかけに事業を継続。県及び民生委員・児童委員協議会と協定を結び、商品を届ける際に、顧客に異常を見つけたら民生委員に通報する役割を担うようになった。公益的な機能を併せ持つことにより、商品販売に加えた社会的価値を創出している。

・「買い物の場への移動を支援する」事例(青森県佐井村)

村が運営費を負担し社会福祉協議会が福祉有償運送を実施している。運行者は、村民(有償ボランティア)及び社会福祉協議会職員。タクシー利用よりも低価格で、また相乗りすると割安になる設定にしている。

○政府においても、地域での好事例を紹介したり、見守りや買い物支援等をする市町村への補助を行っている。このような取組を通じて、高齢者が安心して暮らせる地域社会を構築することが重要である。


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