第1章 高齢化の状況

(2)高齢者の「見守り」や「居場所づくり」の取組

ここでは、高齢者の社会的孤立を防ぐための「見守り」や「居場所づくり」の取組を紹介する。


事例<1>:地域における見守りネットワークの推進

東京都足立区の「あんしんネットワーク事業」は、閉じこもり、認知症、介護問題など高齢者が抱える問題を早期発見し、見守りや声かけ、適切な機関との連携などを行うことにより、安心して暮らせるまちづくりを目指すものである。

具体的には、地域住民である「あんしん協力員」や、商店街、銭湯、薬局、老人クラブ、配食サービス事業者、消防署、郵便局、電力会社、ガス会社、新聞配達店などの「あんしん協力機関」が、地域の高齢者を見守り、気がかりな人を発見したときに地域包括支援センターに連絡を行う仕組みである。地域包括支援センターでは、連絡を受けた場合に、専門相談協力員(民生委員)とも協力しながら、高齢者の自宅を訪問するなどして状況を確認した上で、必要な支援を行っている。

現在、「あんしん協力員」は430人登録されており、年齢は60歳代の人が多い。協力員集めは、区や地域包括支援センターの広報により行っている。また、「あんしん協力機関」については、法人からの応募と区からの働きかけの両方があるが、参加する法人はこの活動を社会貢献の一環と捉え、また、社会的イメージのアップにつながると考えている。最近、区から働きかけて協力機関になってもらった新聞配達店については、そこからの連絡で無事支援に結び付いた事例がいくつか出てきている。

地域包括支援センターでは、介護の相談をただ待っているのではなく、町内会の行事に参加するなどして地域に出ていくようにし、町内会や老人クラブが抱えている高齢者に関する課題に一緒に取り組むようにしている。足立区は下町であるため町内会活動がまだ健在であるが、それでも町内会に参加しないマンション住人が増えている。そのような中で、地域包括支援センターが、マンションの管理組合と話をして住民交流会等を実施し、住民同士の交流のきっかけづくりも行っている。

事例<2>:地域の茶の間

高齢者が、いつでも人に会い、話ができ、人と一緒に食事をとることができる「居場所」をつくる取組が全国に広がっている。

事例2の写真

「地域の茶の間」は、新潟市在住の河田珪子さん(「うちの実家」代表)が始めた有償の助け合い活動の事務所が、平成2(1990)年から自然発生的に、子供からお年寄りまでの居場所となったことから始まった。そこでは、話し相手を欲しがっていた大勢のお年寄りが見違えるように元気になっていく様子や、そこで知り合った人達がいつの間にか、自然に相手の不自由な部分に手を貸しあっている姿が見られたという。9(1997)年には地元自治会の協力を得て、月1回、自治会館で居場所を開くことを決め、「地域の茶の間」と命名した。その後、新潟県が長期総合計画で、全県普及を打ち出したこともあり、あっという間に県内各地に広がった。

そして、15(2003)年には、常設型の「地域の茶の間」である「うちの実家」を新潟市に開設した。「地域の茶の間」に参加していたお年寄りが「このまま帰らないで泊まりたいね」と話しているのを耳にし、空き家を借りてつくったものだ。特別のプログラムはなく、参加者は好きなことをして過ごす。車椅子の人、認知症の人、目や耳が不自由な人、小さい子からお年寄りまで、お互い様の関係の中で、一緒に時間を過ごすことで、相手の不自由を知り、いつの間にか自然に助け合うようになっている。

「地域の茶の間」は、現在、新潟県内に2,000か所以上あるといわれている。

事例<3>:「時間通貨」の取組

特定非営利活動法人「たすけあい遠州」(静岡県袋井市)が運営する街の居場所「もうひとつの家」は、JR袋井駅の駅前商店街の一角で、週5日オープンしている。地域の高齢者や子どもと一緒に立ち寄る母親、300円のランチを食べに来るサラリーマン、代表の稲葉ゆり子さんを慕ってお茶を飲んだり話をしに来る人もいる。集まってきた人はそれぞれ自分のことを話したり世間話をしている。困ったことをお互いに話したり、助け合う光景も生まれている。

「たすけあい遠州」は、この「助け合い」を促すために、8年前から「時間通貨」の取組を行っている。助けられたときには「ありがとう」の気持ちを込めて、時間通貨である「周」というカードを渡す。たとえば、90歳代のおばあさんが、車で送迎をしてもらって1枚、食事を届けてもらって1枚渡す。逆に、得意の縫物をしてあげて1枚受け取り、お菓子を届けて1枚受け取る。こうして、「周」を介して「ありがとう」の気持ちが通貨のように周っていく。「周」があることで、困ったときに気兼ねなく頼むことができるし、助ける側も張り合いが出るという。

事例3の写真

袋井市の市役所、社会福祉協議会、地域包括支援センターとは、毎月、情報交換会を開いており、地域包括支援センターや市役所で紹介されて「もうひとつの家」に来る人もいる。地域に密着した取組である。

「時間通貨」は、公益財団法人さわやか福祉財団が平成12(2000)年頃から普及活動を行っており、すでに全国40か所以上に広がっている。

事例<4>:高齢者を対象にした昼食会の開催

秋田県鹿角市谷内地区にある4つの老人クラブの連合体である「谷内高砂会」(会員数約300人)では、月1回、一人暮らしの高齢者などに声をかけて「わいわいランチ」と名づけた昼食会を開催している。平成5(1993)年に始め、開催回数はすでに200回を超えている。参加費500円は弁当代で、その他の飲み物や果物、汁物、プレゼントなどは自治会福祉ネットワーク(各種団体で構成)と鹿角市福祉協議会の補助で対応している。単に食事をするだけではなく、1月には書初めになぞらえた短冊づくり、3月には折り紙によるお雛様づくり、8月には終戦記念日にちなんだ平和祈願の折鶴作成など季節に応じた企画をしている。多いときには80人が集まるが、参加者はお客様ではなく、お互いにもてなす役にもなる。また、「わいわいランチ」に欠席した高齢者に、その都度、電話等で安否を確認する「元気確認運動」も行っている。

クラブではこの昼食会のほかに、日常的にも訪問活動や声かけ運動を実施しており、毎年3月には、小学生が父兄とクラブ役員とともに一人暮らしの高齢者を訪問する見守り活動を行っている。小学生は手紙を持参し、一緒にクラブの会員が用意したいなり寿司を食べながら、3世代で楽しいひとときを過ごしている。


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