第1章 第2節 2 高齢者の経済状況
第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向
2 高齢者の経済状況
○暮らし向きに心配ない高齢者は約7割
- 60歳以上の高齢者の暮らし向きについてみると、『心配ない』(「まったく心配ない」と「それほど心配ない」の計)と感じている人の割合は全体で71.0%であり、年齢階級別にみると、「80歳以上」は約8割と高い割合となっている(図1-2-3)。
○高齢者世帯は、世帯人員一人当たりの年間所得が全世帯平均と大きな差はない
- 高齢者世帯(65歳以上の人のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯)の平均年間所得は307.9万円で、全世帯平均(549.6万円)の半分強(表1-2-4)。
- 世帯人員一人当たりでは、高齢者世帯の平均世帯人員が少ないことから、197.9万円となり、全世帯平均(207.3万円)との間に大きな差はみられない。
- 高齢者世帯の約7割において、公的年金・恩給の総所得に占める割合が80%以上となっている(図1-2-5)。
- 内閣府の調査で60歳以上の人に「今後の年金の給付水準と社会保障費負担のあり方についてどのように考えるか」を尋ねると、「給付水準を維持すべきで負担が重くなってもやむを得ない」が34.4%、「負担増をなるべく抑えるために給付水準を引き下げるのがよい」が12.6%、「現状より負担を重くすべきでなく、給付水準の引き下げもやむを得ない」が10.5%、「負担を軽くすべきで、給付水準の引き下げもやむを得ない」が8.9%となっている(図1-2-6)。
区分 | 平均所得金額 | |||
---|---|---|---|---|
一世帯当たり | 世帯人員一人当たり(平均世帯人員) | |||
高齢者世帯 | 総所得 | 307.9万円 | 197.9万円(1.56人) | |
稼働所得 | 53.2万円 | (17.3%) | ||
公的年金・恩給 | 216.2万円 | (70.2%) | ||
財産所得 | 18.2万円 | (5.9%) | ||
年金以外の社会保障給付金 | 2.5万円 | (0.8%) | ||
仕送り・その他の所得 | 17.7万円 | (5.7%) | ||
全世帯 | 総所得 | 549.6万円 | 207.3万円(2.65人) | |
資料:厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)(同調査における平成21年1年間の所得) | ||||
(注)高齢者世帯とは、65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう。 |
○世帯主が65歳以上の世帯では、一人当たりの支出水準は全世帯平均を上回り、貯蓄は全世帯平均の1.4倍で、貯蓄の主な目的は病気や介護への備え
- 世帯主が65歳以上の世帯の一人当たりの支出(年間)は129.4万円で、全世帯平均の120.1万円を上回る(図1-2-7)。
- 60歳以上の高齢者の支出に関する意識(優先的にお金を使いたいと考えているもの)をみてみると、「健康維持や医療介護のための支出」(42.8%)、「旅行」(38.2%)、「子どもや孫のための支出」(33.4%)の順になっている(図1-2-8)。
- 世帯主が60~69歳及び70歳以上の世帯では他の年齢階級に比べて大きな純貯蓄を有していることがわかる(図1-2-9)。
- 世帯主が65歳以上の世帯の平均貯蓄額は2,257万円で、全世帯平均1,664万円の約1.4倍、4,000万円以上の貯蓄を有する世帯主が65歳以上の世帯は16.1%であり、全世帯(10.2%)と比べて高い水準(図1-2-10)。
- 貯蓄の目的についてみると、「病気・介護の備え」が62.3%で最も多い(図1-2-11)。
○遺産相続や生前贈与に関する意識
- 遺産相続に関する国民の意識をみると、「残す財産がないので、遺産を残すことは考えていない」が31.4%で最も多く、次いで「遺産を残すかどうかは考えていない」が22.8%となっている。また、「子どもになるべく多くの遺産を残したい」は22.2%、「遺産は残したいが、誰に残すかは決めていない」は8.2%、「子どものためだけでなく、困っている人や社会・公共の役に立つような使い方を考えたい」が2.2%、「子どものためだけでなく、看護や介護をしてくれたボランティアや施設にも残したい」が1.5%となっている。一方で、遺産を残すことに否定的な考え方(「自分の人生を楽しみたいので、遺産を残すことは考えていない」)の人は8.9%に留まっている(図1-2-12)。
- 子どもへの財産の生前贈与に関しては、「望ましい」とする人が40.0%で、「したくない」(31.0%)を上回っているが、60~69歳では「望ましい」が35.4%、「したくない」が43.4%と逆転している(図1-2-13)。
○生活保護受給者(被保護人員)は増加傾向
- 平成21(2009)年における65歳以上の生活保護受給者数は69万人、65歳以上人口に占める65歳以上の生活保護受給者の割合は2.37%(図1-2-14)。
○相対的貧困率は高齢期に上昇する傾向
- 男女別・年齢別の相対的貧困率をみると、男女とも高齢期に上昇する傾向があるが、総じて男性よりも女性の貧困率は高く、その差は高齢期になるとさらに拡大している(図1-2-15)。