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コラム1 被災地の連携 ~神戸市から東日本大震災被災地に向けて~

平成7(1995)年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の被災地では、復興が進む中で、高齢者が転居先で誰にも見守られずに亡くなる事例が目立ち、社会的な注目を集めた。これは、震災で転居を余儀なくされた人の多くが、避難所から仮設住宅、さらに災害復興住宅へと転居を続ける中で、それぞれ個人(世帯)単位の抽選で高齢者を優先的に入居させたため、転居を繰り返すごとに高齢化率が上がり、また地域とのつながりを失っていったことが原因と見られている。

こうした高齢者の孤立問題に対処すべく、神戸市では高齢者の安否確認等、高齢者の見守り活動を進めてきた。現在、市内の地域包括支援センター(あんしんすこやかセンター)には市独自に「見守り推進員」を配置し、民生委員等と連携した見守り活動やガスメーターを利用した見守りサービス、新聞社等の協力事業者による見守り等、孤立防止対策は多岐にわたる。また、安否確認等の緊急事態対応だけではなく、緊急事態に至る前の「地域から孤立した状況」を回避するためのコミュニティづくり(高齢者と地域との関係づくり)も重視しており、大規模な災害復興住宅には、空き部屋等を利用して、高齢者が気軽に立ち寄れる「あんしんすこやかルーム」を設置する取組等を行ってきた。

こうした神戸市の経験は報告書(注1)にまとめられており、東日本大震災後、宮城県では、神戸市の取組を参考に県内の市町村や仮設住宅を訪問する支援員等を対象とした研修を実施している。

あんしんすこやかセンター

また、阪神・淡路大震災では、兵庫県内外から多数の市民がボランティアとして駆けつけ、震災が発生した平成7(1995)年は「ボランティア元年」とも呼ばれた。神戸市社会福祉協議会は、この際のボランティアの受け入れや避難所での活動経験を生かし、9(1997)年のナホトカ号重油流出事故や16(2004)年の新潟県中越地震などの際には、現地でボランティアセンターの立ち上げに協力するなど、被災地支援に取り組んでおり、また、他市で災害が起きた際を想定した災害ボランティアセンターの立ち上げ訓練も行っている(注2)

そして、東日本大震災においても、こうした神戸市の避難所や仮設住宅での活動経験、ボランティアの受け入れ・派遣経験が、震災直後の迅速な支援活動に結びついた。東日本大震災発生の翌日の23(2011)年3月12日には、神戸市は先遣職員4人を仙台市に派遣し、現地の状況や支援ニーズを直接確認し、神戸市からの応援隊の受け入れ調整を行った。3月14日からは、仙台市で避難所の運営支援、災害ボランティアセンターの立ち上げ等を行い、岩手県陸前高田市、宮城県南三陸町、福島県等でも、保健衛生活動、医療活動、インフラ復旧活動やボランティアセンター運営支援等の活動を実施した。派遣された神戸市や神戸市社会福祉協議会の職員は、震災直後の自治体の状況が想像されたことや、同じ被災経験都市であることで被災地からの信頼・共感が得られたことから、現地職員と連携して迅速な活動が実施できたという。

東日本大震災被災地の復興にあたっては、過去の大災害の経験を生かして、数々の課題に対処することが求められており、こうした被災地の連携は今後も重要となるだろう。

神戸市の被災地支援

(注1) 平成19年度孤立死ゼロ・モデル事業報告書「超・高齢社会先取地“こうべ”の地域見守り活動 ~震災経験から生まれた「孤独死防止」への取組~」(平成20年3月、神戸市)
(注2) 「こうべ災害ボランティア支援マニュアル」(平成20年3月改正、神戸市社会福祉協議会)より
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