第2章 第3節 3 学習・社会参加
第3節 分野別の施策の実施の状況
3 学習・社会参加
「学習・社会参加」分野については、高齢社会対策大綱において、次のような方針を明らかにしている。
高齢社会においては、価値観が多様化する中で、学習を通じての心の豊かさや生きがいの充足の機会が求められ、経済社会の変化に対応して絶えず新たな知識や技術を習得する機会が必要とされることから、生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される生涯学習社会の形成を目指す。
また、高齢者が年齢にとらわれることなく、他の世代とともに社会の重要な一員として、生きがいを持って活躍できるよう、ボランティア活動を始めとする高齢者の社会参加活動を促進するとともに、高齢者が自由時間を有効に活用し、充実して過ごせる条件の整備を図る。
さらに、ボランティア活動を始めとするNPO等やシルバー人材センターにおいて行う活動は、自己実現への欲求及び地域社会への参加意欲を充足させるとともに、福祉に厚みを加えるなど地域社会に貢献し、世代間、世代内の人々の交流を深めて世代間連帯や相互扶助の意識を醸成するものであることから、誰もが、いつでも、どこでも、気軽に活動に参加できるよう、自発性を尊重しつつ、基盤の整備を図る。
(1)生涯学習社会の形成
ア 生涯学習の推進体制と基盤の整備
生涯学習の振興に向けて、平成2年に「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」を策定し推進体制の整備を図ることとし、18年12月に改正した教育基本法に生涯学習の理念を明記した(第3条)。これらの法律や中央教育審議会の答申等に基づき、国民一人一人が生涯を通して学ぶことのできる環境の整備、多様な学習機会の提供、学習した成果が適切に評価されるための仕組みづくりなど、「生涯学習社会」の実現のための取組を進めた。
(ア)生涯学習の基盤の整備
全国生涯学習ネットワークフォーラムを開催した。これにより、生涯学習活動の成果を生かして社会的課題の解決(=「新しい公共」による社会づくり)に取り組む行政、大学、NPO等の団体、企業等の人々が一堂に会し、課題について研究協議等を行いその成果を情報発信するとともに、継続的な活動を充実させ関係者相互の情報交換等を日常的に行えるよう、様々な分野にまたがる関係者等のネットワークづくりを推進した。なお、分科会では「希望の高齢社会 -新たな可能性への挑戦-」というテーマのもと、高齢者の社会参画や自立につながる学習についての研究協議を行った。
また、都道府県及び市町村における社会教育行政の充実に資するため、優れた資質と専門的能力を有する社会教育指導者の養成等を図った。
(イ)学習成果の適切な評価の促進
様々な学習活動の成果が適切に評価される社会の実現に向け、各個人の学習成果を測る検定試験について、質の向上や信頼性の確保が図られるよう、民間事業者等が主体的に行う評価の取組の普及に向けた支援を行った。
また、高等教育レベルの学習成果を適切に評価するため、独立行政法人大学評価・学位授与機構において、大学等で一定の学習を行った短期大学、高等専門学校卒業者等に対して学士の学位授与を行った。
イ 学校における多様な学習機会の確保
(ア)初等中等教育機関における多様な学習機会の確保
新学習指導要領では、児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため、小・中・高等学校において、ボランティアなど社会奉仕に関わる体験活動や、高齢者との交流活動等を含む体験活動の充実を図ることとしている。
さらに、自治体における体験活動の推進を支援する「豊かな体験活動推進事業」において、「自然宿泊体験事業~子ども農山漁村交流プロジェクト~」の中で、小学校が実施する自然体験や集団宿泊体験のほか、ボランティアや高齢者との世代間交流などの体験活動に必要な経費の一部を補助した。
(イ)高等教育機関における社会人の学習機会の提供
生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、社会人入試の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、科目等履修生制度の実施、長期履修学生制度の実施などを引き続き行い、履修形態の柔軟化等を図って、社会人の受入れを一層促進した(図2-3-10)。
また、大学等が、その学術研究・教育の成果を直接社会に開放し、履修証明プログラムや公開講座を実施するなど高度な学習機会を提供することを促進した。
放送大学においては、テレビ・ラジオ放送の身近なメディアを効果的に活用して、幅広く大学教育の機会を国民に提供した。
なお、平成23年10月からは、CS放送からBSデジタル放送に移行し、更なる学習機会の拡大を図った(図2-3-11)。
(ウ)学校機能・施設の地域への開放
児童生徒の学習・生活の場であり、地域コミュニティの拠点でもある公立学校施設の整備に対し国庫補助を行うとともに、学校施設整備指針を示すこと等により、学校開放に向けて、地域住民の積極的な利用を促進するような施設づくりを進めている。
また、小・中学校の余裕教室について、地方公共団体が社会教育施設やスポーツ・文化施設などへの転用を図れるよう、取組を支援している。
ウ 多様な学習機会の提供
(ア)社会教育の振興
地域住民の身近な学習拠点である公民館をはじめとする社会教育施設等において、幅広い年齢層を対象とした多様な学習機会が提供された。
また、ICTを活用した生涯学習に関する調査研究等の実施を通じて、多様な学習機会の提供を図った。
(イ)文化活動の振興
国民文化祭の開催等による文化活動への参加機会の提供、国立の博物館等における高齢者に対する優遇措置やバリアフリー化等による芸術鑑賞機会の充実を通じて多様な文化活動の振興を図った。
(ウ)スポーツ活動の振興
総合型地域スポーツクラブの全国展開の推進、全国スポーツ・レクリエーション大会の開催等各種機会を通じて多様なスポーツ活動の振興を図った。
(エ)自然とのふれあい
自然公園等の利用者をはじめ、国民だれもが自然とふれあう活動が行えるよう、自然ふれあい施設や体験活動のイベント等の情報をインターネット等を通じて提供した。
エ 勤労者の学習活動の支援
有給教育訓練休暇制度の普及促進などを図るとともに、教育訓練給付制度の活用により、勤労者個人のキャリア形成を支援し、勤労者の自己啓発の取組を支援した。