第2章 第3節 3 (2)社会参加活動の促進
第3節 分野別の施策の実施の状況
3 学習・社会参加
(2)社会参加活動の促進
ア 「新しい公共」に係る取組
全ての人に「居場所」と「出番」のある社会の実現に向けて、官だけでなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、身近な分野において、共助の精神で活動する「新しい公共」を推進している。
(ア)寄附税制の拡充
平成23年6月、認証制度の見直しや財政基盤確立のための措置等を内容とする特定非営利活動促進法を改正するとともに、認定NPO法人の要件緩和や認定NPO法人等及びこれと同様の基準を満たした公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人への寄附金に係る所得税の税額控除の導入等を内容とする寄附税制を拡充した。
(イ)新しい公共支援事業
平成22年度補正予算(87.5億円)により、各都道府県に交付金を配分し、各都道府県に設置する基金を用いて、NPO等の活動基盤整備や寄附募集の支援等を行うとともに、NPO、地方公共団体、企業等が協働する取組の支援を実施している。
また、平成23年度第3次補正予算(8.8億円)により、東日本大震災被災地域等において、「新しい公共」の担い手による支援拠点の整備、地域づくりなどを支援するため、被災3県の基金の積み増しを行った。
(ウ)「新しい公共」推進会議
平成22年10月から開催している「新しい公共」推進会議において、「新しい公共」円卓会議からの提案に対する政府の対応をフォローアップするとともに、政府と市民セクターとの関係のあり方、情報開示・発信基盤のあり方、「新しい公共」による被災者支援活動のあり方に関する3つの報告をとりまとめ、平成23年7月にこれらの報告を受けた「政府の対応」をとりまとめた。
イ 高齢者の社会参加活動の促進
(ア)高齢者の社会参加と生きがいづくり
高齢者自身が社会における役割を見いだし、生きがいを持って積極的に社会に参加できるよう、各種社会環境の条件整備に努めることが重要になっている。このため、地域において、社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い、その振興を図っている(図2-3-12)。
高齢者の生きがいと健康づくり推進のため、地域を基盤とする高齢者の自主的な活動組織である老人クラブ等や都道府県及び市町村が行う地域の高齢者の社会参加活動を支援した。また、国民一人一人が積極的に参加し、その意義について広く理解を深めることを目的とした「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」を平成23年10月に熊本県で開催した。
また、「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」において、高齢者の学習活動及び社会参画の現状と課題について整理し、「長寿社会における生涯学習の在り方について」をとりまとめ、人生100年時代を想定した人生設計を行うことや、高齢者が、地域が抱える課題を解決する「地域社会の主役」として活躍できる環境を整備することの必要性等について提言がなされた。
さらに、学校の教育活動を支援する「学校支援地域本部」や、放課後や週末等に小学校の余裕教室等を活用して、体験・交流活動等を提供する「放課後子ども教室」、家庭教育に関する学習機会の提供等を行う「家庭教育支援」などを一体的・総合的に推進することなどにより、高齢者を含む幅広い世代の地域住民の参画による地域全体で子どもを育む環境づくりを支援した。
(イ)高齢者の海外支援活動
豊富な知識、経験、能力を有し、かつ途上国の社会や経済の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年齢者が、海外技術協力の一環として、途上国の現場で活躍できるよう、シニア海外ボランティア事業を独立行政法人国際協力機構を通じ引き続き推進した。また、団塊の世代の人々の知見を本事業に活用すべく情報提供、派遣形態・期間の多様化など参加しやすい環境を整備した(図2-3-13)。
(ウ)高齢者の余暇時間等の充実
高齢者等がテレビジョン放送を通じて適切に情報を得ることができるよう、字幕放送、解説放送等の充実を図るため、平成19年10月に策定した行政指針に定める普及目標(29年度までに、字幕放送については対象の放送番組のすべてに字幕付与、解説放送については対象の放送番組の10%に解説付与する等)の達成に向けて、字幕番組、解説番組等の制作に対する助成を行うこと等により、各放送局の自主的な取組を促している。
高齢者の社会参加や世代間交流の促進、社会活動を推進するリーダーの育成・支援、さらには関係者間のネットワーキングに資することを目的に、地域参加に関心を持つ者が情報交換や多様な課題についての議論を行う「高齢社会フォーラム」を7月に東京、11月に横浜市において開催した。
また、年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者(エイジレス・ライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を毎年広く紹介しており、平成23年度においては、個人60名及び31団体を選考し、「高齢社会フォーラム」等を通じて、社会参加活動等の事例を広く国民に紹介する事業を実施した。
ウ NPO等の活動基盤の整備
ボランティア活動の基盤の整備について、全国ボランティア・市民活動振興センターが実施する全国ボランティアフェスティバルの開催やボランティア活動等に関する広報・啓発活動、情報提供、研修事業等を引き続き支援した。また、地方自治体や民間団体等に対し、「地域福祉等推進特別支援事業」として、既存の制度のみでは充足できない問題や制度の狭間にある問題など地域社会における今日的課題の解決を目指す先駆的・試行的取組等へ補助を実施した。
高齢者の介護・福祉、共働き支援、まちづくり・まちおこしなど、地域の様々な社会的課題をビジネスの手法を用いて解決するソーシャルビジネスを振興することで、高齢者や女性等の社会進出を促進し、地域における新たな産業や雇用の創出による地域活性化を図った。
また、地域活性化・雇用促進資金(社会貢献型事業関連)の活用により、ソーシャルビジネス事業者の資金調達ニーズに対しては、民間金融を補完しつつ、日本政策金融公庫を通じてソーシャルビジネス事業者に対する融資を実施することで資金調達の円滑化に向けた環境整備を進め、事業活動の促進を図った。
さらに、内閣府NPOホームページにおいて、全国の特定非営利活動法人に関する基本情報やNPO関連施策情報が入手できる「NPOポータルサイト」の運用などを行い、市民活動に関する情報の提供などを行っている(表2-3-14)。
所轄庁名 | 認証数 | 所轄庁名 | 認証数 | 所轄庁名 | 認証数 | 所轄庁名 | 認証数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 1,735 | 神奈川県 | 2,784 | 大阪府 | 2,913 | 福岡県 | 1,503 |
青森県 | 322 | 新潟県 | 572 | 兵庫県 | 1,703 | 佐賀県 | 327 |
岩手県 | 375 | 富山県 | 301 | 奈良県 | 402 | 長崎県 | 419 |
宮城県 | 609 | 石川県 | 305 | 和歌山県 | 337 | 熊本県 | 576 |
秋田県 | 278 | 福井県 | 225 | 鳥取県 | 213 | 大分県 | 485 |
山形県 | 368 | 山梨県 | 353 | 島根県 | 242 | 宮崎県 | 358 |
福島県 | 614 | 長野県 | 872 | 岡山県 | 616 | 鹿児島県 | 706 |
茨城県 | 585 | 岐阜県 | 667 | 広島県 | 700 | 沖縄県 | 501 |
栃木県 | 491 | 静岡県 | 1,037 | 山口県 | 383 | 都道府県計 | 40,963 |
群馬県 | 710 | 愛知県 | 1,483 | 徳島県 | 287 | ||
埼玉県 | 1,614 | 三重県 | 586 | 香川県 | 286 | 内閣府 | 3,328 |
千葉県 | 1,703 | 滋賀県 | 525 | 愛媛県 | 359 | 全国計 | 44,291 |
東京都 | 7,123 | 京都府 | 1,139 | 高知県 | 271 | ||
資料:内閣府大臣官房市民活動促進課(平成23年12月末現在) |
さらに、国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員の研修を実施し、利用者指導の充実を図るとともに、地方環境事務所等においてパークボランティアを養成し、その活動に対する支援を実施した。
そして、多様な個人が能力を発揮しつつ、自立して共に社会に参加し、支え合う「共生社会」を築いていくためには、地域住民やNPO等による社会活動の充実が必要不可欠であるという認識のもと、社会活動の中心的担い手となるリーダーを養成する「青年社会活動コアリーダー育成プログラム」を実施している。
このプログラムは、高齢者関連、障害者関連、青少年関連のそれぞれの分野において社会活動に携わる日本の青年を海外へ派遣するとともに、海外の民間組織で活動する青年リーダーを日本に招へいして相互に交流することにより、我が国の社会活動の中核を担う青年リーダーの育成と各国、各分野の青年リーダー相互のネットワークの形成を目指すものである。
このうち高齢者関連分野については、平成23年度は、10月に日本青年9名をデンマークへ派遣し、翌24年2月にデンマーク、ニュージーランド及びドイツの青年リーダー13名を日本に招へいした。
派遣プログラムでは、日本参加青年は、「生きがいのある高齢者の生活」をテーマにデンマークを訪問し、デンマーク社会省において、デンマークの福祉モデルや高齢者施策についての講義を、デンマーク技術研究所において技術導入による高齢者へのケアにかかる環境の改善について講義を受けた後、様々な高齢者支援活動の現場を視察し、そこで活動する青年たちとの意見交換を行った。
招へいプログラムでは、外国参加青年は、東京で「NPOマネージメントフォーラム」 に参加し、別途公募により参加した日本人青年とともに「非営利団体と行政のさらなる連携強化と協働について」をテーマに合宿によるディスカッションを行った。その後、大分県を訪問し、県の高齢者施策の概要について説明を受けるとともに、県内の高齢者支援活動の現場等を視察し、意見交換を行った。また、高齢者関係の活動に携わる青年たちと「行政・団体・地域との連携による高齢者の認知症支援体制づくり」をテーマにセミナーを実施した。