第2章 第3節 4 (2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進
第3節 分野別の施策の実施の状況
4 生活環境
(2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進
バリアフリー施策を効果的かつ総合的に推進するため、平成12年3月、閣議口頭了解により「バリアフリーに関する関係閣僚会議」が設置され、16年6月、同会議は政府が一体となってバリアフリー化に取り組むための指針として「バリアフリー化推進要綱」を決定した。しかしながら、障害の有無、年齢、性別等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方であるユニバーサルデザインの浸透を踏まえ、20年3月、「バリアフリーに関する関係閣僚会議」において、同要綱を改定し、バリアフリーとともにユニバーサルデザインを併せて推進することを明確化し、取組方針として生活者・利用者の視点に立った施策の展開を明記した「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」を決定した。また、同様の趣旨から、同じく3月、閣議口頭了解の一部改正によって同会議を改組し、「バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する関係閣僚会議」を設置した。
ア 高齢者に配慮したまちづくりの総合的推進
高齢者等すべての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、自宅から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を推進する必要がある。このため、高齢者に配慮したまちづくりを総合的に推進し、地域全体を面的に整備している。
商店街振興組合等が行う商店街活性化の取組のうち、商店街の空き店舗を活用して、高齢者交流拠点としての機能を担うコミュニティ施設を設置・運営する事業等への支援を行っている。
イ 公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備
(ア)バリアフリー法に基づく公共交通機関のバリアフリー化の推進
公共交通機関のバリアフリー化については、平成12年11月に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号。)に基づく取組が行われてきたが、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー法」という。)においても、公共交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設若しくは大規模な改良又は車両等の新規導入に際しての移動等円滑化基準への適合を義務付けている。既設の旅客施設・車両等についても移動等円滑化基準に適合することに努めなければならないこととしている。
(イ)ガイドライン等の策定
公共交通機関の旅客施設、車両等について、バリアフリー化の望ましい内容を示し、交通事業者等がバリアフリー化を進める際の目安としてもらうことにより、利用者にとってより望ましい公共交通機関のバリアフリー化が進むことが期待される。旅客施設については、平成13年8月に策定された「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」について、バリアフリー法及び公共交通移動等円滑化基準の施行を契機に必要な見直しを行い、19年7月に「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」を策定し、これに基づきバリアフリー化を実施している。
車両等については、平成12年12月に策定した「旅客船バリアフリー~設計マニュアル~」(19年8月には、必要な見直しを行った「旅客船バリアフリーガイドライン」を策定)、13年3月に策定した「公共交通機関の車両に関するモデルデザイン」(19年7月には、必要な見直しを行った「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」を策定)、15年3月に策定した「次世代普及型ノンステップバスの標準仕様」に基づきそれぞれバリアフリー化を進めている。このうちノンステップバスについては、16年1月に標準仕様ノンステップバスの認定制度を創設した。
(ウ)公共交通機関のバリアフリー化に対する支援
高齢者の移動等円滑化を図るため、駅・空港等の公共交通ターミナルのエレベーターの設置等の高齢者の利用に配慮した施設の整備、ノンステップバス等の車両の導入などを推進している(表2-3-19)。
(1)旅客施設のバリアフリー化の状況(注1)
1日当たりの平均利用者数5,000人以上の旅客施設数 | 平成22年度末 | 1日当たりの平均利用者数5,000人以上かつトイレを設置している旅客施設数 | 平成22年度末 | ||
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段差の解消 | 視覚障害者誘導用ブロック | 障害者用トイレ | |||
鉄軌道駅 | 2,813 | 2,401(85.4%) | 2,736(97.3%) | 2,695 | 2,245(83.3%) |
バスターミナル | 37 | 34(91.9%) | 32(86.5%) | 27 | 15(55.6%) |
旅客船ターミナル | 6 | 6(100.0%) | 5(83.3%) | 5 | 5(100.0%) |
航空旅客ターミナル | 20 | 19(95.0%) (100.0% 注2) |
20(100.0%) | 20 | 20(100.0%) |
(注1)バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に基づく公共交通移動等円滑化基準に適合するものの数字。なお、1日当たりの平均利用者数が5,000人以上であり高低差5メートル以上の鉄軌道駅において、エレベーターが1基以上設置されている駅の割合は88.0%、エスカレーターが1基以上設置されている駅の割合は74.0%となっている。 | |||||
(注2)航空旅客ターミナルについては、障害者等が利用できるエレベーター・エスカレーター・スロープの設置はすでに平成13年3月末までに100%達成されている。 |
(2)車両等のバリアフリー化の状況
車両等の総数 | 平成22年度末移動等円滑化基準に 適合している車両等 |
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鉄軌道車両 | 52,871 | 26,180(49.5%) | |||
低床バス | 59,195 | 29,216(49.4%) | |||
うちノンステップバス | 16,534(27.9%) | ||||
旅客船 | 753 | 136(18.1%) | |||
航空機 | 499 | 406(81.4%) | |||
(注1)「移動等円滑化基準に適合している車両等」は、各車両等に関する公共交通移動等円滑化基準への適合をもって算定。 |
(3)福祉タクシーの導入状況
平成22年度末 12,256両
(タクシー車両総数 265,431両)
このための推進方策として、鉄道駅、旅客ターミナルのバリアフリー化、ノンステップバス、福祉タクシーの導入等に対する支援措置を実施している。
(エ)歩行空間の形成
また、移動はあらゆる生活活動に伴い発生する要素であり、また、就労、余暇を支える要素である。したがって、その障壁を取り除き、すべての人が安全に安心して暮らせる道路交通環境づくりを行うことが重要な課題となっており、信号機、歩道等の交通安全施設等の整備を推進した。
高齢歩行者等の安全を確保するため、①幅の広い歩道等の整備、②歩道の段差・傾斜・勾配の改善、③上下移動の負担を軽減するためのスロープや立体横断施設へのエレベーターの設置、④歩行者用案内標識の設置、⑤歩行者等を優先する道路構造の整備、⑥自転車道等の設置による歩行者と自転車交通の分離、⑦生活道路における通過交通の進入及び速度の抑制並びに幹線道路における交通流の円滑化を図るための信号機、道路標識、道路構造等の重点的整備、⑧バリアフリー対応型信号機の整備、⑨歩車分離式信号の運用、⑩携帯端末を用いて安全な通行に必要な情報提供及び信号機の青時間の延長を行う歩行者等支援情報通信システム(PICS)の整備、⑪信号灯器のLED(発光ダイオード)化を実施した。
また、「生活道路事故抑止対策マニュアル」を活用するなどして、路側帯の拡幅による歩行者通行環境の整備、車道の中央線抹消による車両の走行速度の抑制対策等を実施した。
積雪や凍結に対し、鉄道駅周辺や中心市街地等特に安全で快適な歩行空間の確保が必要なところにおいて、歩道除雪の充実、消融雪施設等の冬期バリアフリー対策を実施した。
(オ)道路交通環境の整備
高齢者が安心して自動車を運転し外出できるよう、ゆとりある道路構造の確保や視環境の向上、疲労運転の防止等を図るため、生活道路における交通規制の見直し、付加車線の整備、道路照明の増設、道路標識の高輝度化・大型化、道路標示の高輝度化、信号灯器のLED化、「道の駅」等の簡易パーキングエリア、高齢運転者等専用駐車区間の整備等、道路交通環境の整備を実施している。
(カ)バリアフリーのためのソフト面の取組
国民一人一人がバリアフリーについての理解を深めるとともに、ボランティアに関する意識を醸成し、だれもが高齢者等に対し、自然に快くサポートできるよう、高齢者等の介助体験・擬似体験等を内容とする「バリアフリー教室」の開催や目の不自由な方への声かけや列車内での利用者のマナー向上を図る「ひと声マナー」キャンペーンといった啓発活動等ソフト面での取組を推進している。ユニバーサル社会に向けて、高齢者や障がい者をはじめ、誰もが積極的に活動できるバリアフリー環境の構築をソフト施策の面から推進することが重要であり、そのため外部有識者を含めた勉強会を通じて、バリアフリー経路案内等にも活用できるICT(情報通信技術)による歩行者移動支援の推進を行った。
ウ 建築物・公共施設等の改善
バリアフリー法に基づき、高齢者等が円滑に移動等できる建築物の建築を促進するため、不特定多数の者又は主に高齢者等が利用する建築物の一定の新築・増改築・用途変更の際に建築主に基準への適合義務を課すことにより、建築物のバリアフリー化を推進している(図2-3-20)。
また、優良な建築計画については所管行政庁が認定をすることができ、これにより認定を受けた一定の建築物については、助成制度、税制上の特例等の支援措置を講じ、整備の促進を図っている(図2-3-21)。
さらに、ユニバーサルデザイン等の観点から配慮が望ましい事項の紹介(乳幼児連れの人への対応、災害時の避難安全確保の在り方、便所におけるオストメイト(人工肛門保持者等)対応の在り方、ホテル客室内のきめ細やかな対応の在り方等)や優れたバリアフリー対応建築物の具体例の紹介を加えた建築設計標準の普及を推進している。
窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、高齢者等すべての人が円滑かつ快適に施設を利用できるよう、窓口業務を行う事務室の出入口の自動ドア化、多機能トイレの設置等による高度なバリアフリー化を目指した整備を推進している。
都市公園については、バリアフリー法に基づく基準等により、高齢者や障害者を含むすべての人々が快適に利用できるよう、主要な園路の段差の解消、車いすでも利用可能な駐車場やトイレの設置など、公園施設のバリアフリー化を推進している。また、社会資本整備総合交付金等の活用によって、誰もが安全で安心して利用できる都市公園の整備を推進している。
エ 福祉施策との連携
高齢者に配慮したまちづくりを一層効果的に推進していくため、福祉施策との連携を図りつつ、施策を展開している。
大規模な公共賃貸住宅の建替えに際して、社会福祉施設等の併設を原則化するとともに、公的賃貸住宅の整備と併せて高齢者の生活を支援する施設を整備する場合に、国が直接支援しているほか、公的賃貸住宅団地等を地域の福祉拠点として再整備する事業に取り組んでいる。
また、高齢者等が利用する社会福祉施設を中心市街地等の利用しやすい場所に適正に配置するため、市街地再開発事業等において社会福祉施設等を一体的に整備する場合、助成の上乗せを行っている。
農山漁村においては、高齢者の生きがいに資する農園等の整備を推進した。