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第1章 第2節 6 高齢者の生活環境

第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向

6 高齢者の生活環境

高齢者の9割は現在の住居に満足している

  • 60歳以上の高齢者に現在の住宅の満足度について聞いてみると、「満足」又は「ある程度満足」している人は総数で89.3%、持家で91.2%、賃貸住宅で69.9%となっている(図1-2-27)。
図1-2-27 現在の住居に関する満足度

高齢者の交通事故死者数は減少しつつあるが、交通事故死者数全体に占める割合は上昇

  • 65歳以上の高齢者の交通事故死者数は、平成24(2012)年は2,264人で前年より減少したが、交通事故死者数全体に占める割合は51.3%と半数を超えている(図1-2-28)。
図1-2-28 年齢層別交通事故死者数の推移

高齢者による犯罪

  • 平成23(2011)年の65歳以上の高齢者の刑法犯の検挙人員は、13(2001)年と比較すると、検挙人員では約2.4倍、犯罪者率では約2倍(図1-2-29)。
図1-2-29 高齢者による犯罪(高齢者の包括罪種別刑法犯検挙人員と犯罪者率)

一人暮らしの男性に、人との交流が少ない人や頼れる人がいない人が多い

  • 60歳以上の高齢者の会話の頻度(電話やEメールを含む)をみてみると、全体では毎日会話をしている者が9割を超えるものの、一人暮らし世帯については、「2~3日に1回」以下の者も多く、男性の単身世帯で28.8%、女性の単身世帯で22.0%を占める(図1-2-30)。
  • 近所づきあいの程度は、全体では「親しくつきあっている」が51.0%で最も多く、「あいさつをする程度」は43.9%、「つきあいがほとんどない」は5.1%となっている。性・世帯構成別に見ると、一人暮らしの男性は「つきあいがほとんどない」が17.4%と高く、逆に一人暮らしの女性は「親しくつきあっている」が60.9%と最も高くなっている(図1-2-31)。
  • また、病気のときや、一人ではできない日常生活に必要な作業(電球の交換や庭の手入れなど)の手伝いについて、「頼れる人がいない」者の割合は、全体では2.4%であるが、一人暮らしの男性では20.0%にのぼる(図1-2-32)。
図1-2-30 会話の頻度(電話やEメールを含む)
図1-2-31 近所づきあいの程度
図1-2-32 困ったときに頼れる人がいない人の割合

孤立死と考えられる事例が多数発生している

  • 誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような「孤立死(孤独死)」の事例が報道されているが、死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案、解剖を行っている東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成24(2012)年に2,729人となっている(図1-2-33)。
  • (独)都市再生機構が運営管理する賃貸住宅約76万戸において、単身の居住者で死亡から相当期間経過後(1週間を超えて)に発見された件数(自殺や他殺などを除く)は、平成23(2011)年度に200件、65歳以上に限ると131件となり、20(2008)年度に比べ全体で約3割、65歳以上では約5割の増加となっている(図1-2-34)。
  • 誰にも看取られることなく、亡くなったあとに発見されるような孤立死(孤独死)を身近な問題だと感じる(「とても感じる」と「まあ感じる」の合計)人の割合は、60歳以上の高齢者では2割に満たなかったが、単身世帯では4割を超えている(図1-2-35)。
図1-2-33 東京23区内で自宅で死亡した65歳以上一人暮らしの者
図1-2-34 単身居住者で死亡から相当期間経過後に発見された件数
図1-2-35 孤独死を身近な問題と感じるものの割合

東日本大震災における高齢者の被害状況

  • 岩手県、宮城県、福島県の3県で収容された死亡者は、平成23(2011)年3月11日から25(2013)年3月11日までに15,812人にのぼり、検視等を終えて年齢が判明している15,681人のうち60歳以上の高齢者は10,360人と66.1%を占めている(図1-2-36)。
図1-2-36 年齢階級別死亡者数
コラム①:夢のみずうみ村~生活力を促す介護~

長寿化による高齢者人口の増加に伴い、介護を要する高齢者数も増加しており、介護現場の量や質の確保、向上が必要とされている。

山口県山口市の「夢のみずうみ村山口デイサービスセンター」では、リハビリを「生活できる能力を確認すること」、「生きるエネルギーを再生産すること」と位置付け、施設に通う要介護者に、楽しみながら自身に埋もれている能力を引き出すようなユニークな仕掛けを多数備えている。

「バリアアリー」という仕掛けでは、段差や坂、階段など日常生活で遭遇するバリアを意図的に配置し、利用者自らでバリアの克服方法を習得し、施設外での生活範囲を広げることを目的としている。

施設内の通貨「YUME(ユーメ)」という仕掛けでは、施設内のいたるところで通貨を入手、使用できるようになっており、この仕組みによって利用者の注意力や理解力、推測力、計算能力、計画性などを培っている。

また、施設内での過ごし方は、多くのプログラムの中から利用者が決める「自己選択・自己決定型」であり、一日を主体的に過ごすことで、利用者が楽しんで意欲的にリハビリに取り組んでいる。

利用者一人ひとりが異なるスケジュールで動き、かつ、あえて「バリアアリー」とするこれらの取組は、施設側には多大な負担とリスクが伴う。しかし、施設利用契約の際に利用者やその家族の理解と同意を得た上で、リスクを背負ってでも利用者の能力を引き出すことを優先する夢のみずうみ村の理念には、目を見張るものがある。

新しい高齢社会対策大綱では、「尊厳ある自立と支え合い」による超高齢社会の実現を謳っている。心身の機能が弱まったとしても誇りや尊厳を高め、意欲や能力を引き出すような介護・支援の取組が、今後さらに広がりをみせることが期待される。

コラム②:劇団包括~認知症の対応を知ってもらうために~

昨今、認知症の高齢者が増加しており、認知症への社会の理解が深まることが重要とされている。

平成24年7月愛知県豊田市では、豊田市役所高齢福祉課と地域包括支援センターとの共働による劇団「劇団包括」が結成された。行政と複数の地域包括センターが連携して劇団を結成し、認知症の知識の啓発活動を行うことはユニークな取組である。この劇団は、認知症の方々が住みなれた地域で安心して暮らせるよう、地域住民へ認知症状や対応の仕方などを、わかりやすく寸劇をとおして伝え、認知症の知識の啓発を行うことを目的としている。

アルツハイマーデーにちなみ平成24年9月8日(土)に行われた旗揚げ公演では、認知症の初期症状がみられる高齢者本人の不安と家族や友人のとまどい、地域包括支援センターと関わった後の周囲の対応の変化を、30分程度の寸劇をとおして伝えた。

劇団メンバーは、豊田市役所高齢福祉課職員、市内22カ所の地域包括支援センターのうち複数の地域包括支援センター職員、豊田市基幹包括支援センター職員で役者と裏方スタッフ合わせ総勢40名で、講演会にきていた550名の観客を魅了した。その後12月には、豊田市小原地区老人クラブの要請で公演も行った。

劇中では、認知症の方への対応の仕方を①怒らない、②否定しない、③目を見て話す、の3つのポイントに簡単にまとめて織り込み、それらを楽しく理解してもらうことを心がけており、笑いを誘うようなシナリオとなっている。劇を観終わった人からは、「認知症の人も悩んでいる事がわかった」、「もっと認知症のことを勉強したくなった」などの感想が聞かれた。

今後も、アルツハイマーデーでの公演とともに、市主催の講演会や地域行事など依頼があれば応じていく。シナリオはまだ1つしかないが、今後他バージョンを作成していく予定で、後々は市民も参加できる形にしたいという構想もある。

コラム③:東日本大震災被災地における高齢者の活動

東日本大震災では多くの人が被災し、今も多くの人が避難生活を送っている。被災者のために何かできないか、住民自らが復興の担い手になろうと、そういう思いをもって活動をしているボランティア団体やNPOも多い。

「ふくしま民話茶屋の会」は、主に福島市内の仮設住宅を訪問し、民話を通じて交流を図っている。震災と原発事故で、長期化し、先の見通しの立たない避難生活で沈みがちな気持ちを、少しでも癒すことはできないかと始められた活動である。

1回の訪問で、6~7話の民話を語り、紙芝居も行っている。福島市で語り伝えられている民話の中から、元気が出るような話や滑稽話を選んでいるとのこと。ときには、お手玉で遊んだりわらべ歌を楽しんだりすることもある。

あたたかい"ふくしま弁"で語られる民話は、参加者にとても喜ばれている。昔のことを懐かしく思い出されるのか、涙を浮かべて熱心に聞き入ってくれることも多いとのこと。

今後も定期的に来てほしいとの要望もあり、要望がある限り何回でも訪問したいとのことである。


「新生おおつち」(岩手県大槌町)は、自分たちの町のことは自分たちで考え、行動しようと「町内ぐるっと見守りたい」の基本理念を掲げ、地域で高齢者や子育て世帯、次世代の子供たちを見守っていこうとの思いから立ち上がったボランティア団体である。

平成24年7月から、地元の松ぼっくりに、全国の方々から頂いた端切れや着物等で細工した「華ぼっくり」というブローチやコサージュ、髪飾りの製作・販売を行っている。仮設住宅の集会所等で高齢の女性が製作したものを、団体を通じて販売している。

これまでに800個以上を売り上げており、諸経費を除いた利益のほとんどが製作者に渡るようにしてあり、収入と生きがいにつながっている。

平成25年4月からは、団体の事務所内にコミュニティサロン「華カフェ」をオープンした。華カフェの周辺一帯は津波により浸水した地域であり、震災以降、集会ができる場所がなかった地域だけに、気軽に立ち寄り、おしゃべりを楽しめる場所になったと喜ばれている。

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