平成25年度 高齢社会対策
第1 平成25年度の高齢社会対策
高齢社会対策の推進
平成25年度における主な施策は次のとおりである。
(1)総合的な推進のための取組
社会保障制度改革国民会議について
社会保障制度改革国民会議(会長:清家篤慶應義塾長)は、平成24年通常国会で成立した「社会保障制度改革推進法」(平成24年法律第64号。以下「改革推進法」という。)に基づき設置され、設置期限は平成25年8月21日とされている。有識者15名の委員により構成され、高齢者医療制度を含む医療保険制度、介護保険制度、公的年金制度、少子化対策の4分野について、改革推進法が規定する社会保障制度改革の基本的な考え方や改革の基本方針に基づき、社会保障制度改革の更なる具体化に向けた議論を行っている。
今後の社会保障制度改革については、改革推進法に基づき、自民党・公明党・民主党の3党による3党実務者協議の状況も踏まえながら、社会保障制度改革国民会議において議論を行うことになる。
(2)就業・年金
年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組
高年齢者が健康で、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会(以下「生涯現役社会」という。)の実現に向けた取組として、地域の中核的企業をモデル企業に選定し、当該企業における取組を通じ、生涯現役社会実現に向けた地域の機運醸成を図るほか、高年齢者に対して高齢期の職業生活設計に係るセミナーを開催する等、生涯現役社会の実現に向けた環境整備を図る生涯現役社会実現事業を実施する。
また、平成25年度からは、企業における高年齢者の活用を促進するため、高年齢者の職域の拡大、作業環境の改善又は雇用管理制度の整備等を行う事業主を支援するとともに、定年を控えた高年齢者で、その知識や経験を活かすことができる他の企業での雇用を希望する者を、職業紹介事業者の紹介により雇い入れる事業主を支援し、高年齢者の雇用の維持を図る。
持続可能で安定的な公的年金制度の確立
平成25年度の基礎年金国庫負担割合は、年金特例公債によって、2分の1とし、平成26年度以降についても、消費税収により、2分の1を維持することとしている。
社会保障制度改革推進法では、今後の公的年金制度改革については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ることとしている。この方針に沿って、持続可能で安定的な公的年金制度の確立に取り組む。
低年金・無年金問題への対応
年金の受給資格期間の短縮や、年金生活者支援給付金を支給など、平成24年度に成立した法律の円滑な施行に取り組む。
働き方やライフコースの選択に中立的な年金制度の構築
短時間労働者への社会保険の適用拡大や、産休期間中の社会保険料免除等など、平成24年度に成立した法律の円滑な施行に取り組む。
(3)健康・介護・医療
生涯にわたる健康づくりの推進
平成24年7月に今後10年間の国民健康づくり運動を推進するため、健康を支え、守るための社会環境の整備に関する具体的な目標等を明記した「健康日本21(第二次)」に基づき、地方公共団体、関係団体、企業などと連携し、健康づくりの取組の普及啓発を推進する「Smart Life Project」を引き続き実施していく。
認知症高齢者支援施策の推進
平成24年9月に公表された「認知症施策推進5か年計画」の着実な実施を図り、全国の自治体で、認知症の人とその家族が安心して暮らしていける支援体制を計画的に整備する。
具体的には、①標準的な認知症ケアパスの作成・普及、②早期診断・早期対応、③地域での生活を支える医療サービスの構築、④地域での生活を支える介護サービスの構築、⑤地域での日常生活・家族支援の強化、⑥若年性認知症施策の強化、⑦医療・介護サービスを担う人材の育成の7つの視点に立って施策を推進する。
こうした施策の推進により、認知症高齢者ができる限り住み慣れた地域のよい環境で生活できるような体制をつくる。
地域における包括的かつ持続的な在宅医療・介護の提供
平成25年度からの医療計画に、新たに「在宅医療について達成すべき目標、医療連携体制」等を明記すべきとされたことを踏まえ、地域医療再生基金を活用し、各都道府県が行う取り組みを支援する。また、地域において多職種がチームとして協働し、在宅医療・介護を提供する体制を構築するため、平成24年度より都道府県及び市町村単位で育成した人材が、地域で在宅医療・介護に関係する多職種を対象として行う研修を支援していく。
(4)社会参加・学習
高齢者の社会参加活動の促進
企業退職高齢者等が、地域社会の中で役割を持っていきいきと生活できるよう、有償ボランティア活動による一定の収入を得ながら自らの生きがいや健康づくりにもつながる活動を行い、同時に介護予防や生活支援のサービス基盤となる活動を促進する「高齢者生きがい活動促進事業」を実施する。
超高齢社会がもたらす政策課題を解決し、新たな社会モデルの確立に向けた情報通信技術(ICT)の在り方を検討するため、平成24年12月から「ICT超高齢社会構想会議」を開催しており、会議の基本提言において掲げられた、我が国が目指すべき3つのビジョン(「I健康を長く維持して自立的に暮らす」、「II生きがいをもって働き、社会参加する」、「III新産業創出とグローバル展開」)の実現に向けたICTの利活用方策について検討を進めていく。
学校における多様な学習機会の提供
児童生徒の学習・生活の場であり、地域コミュニティの拠点でもある公立学校施設の整備に対し国庫補助を行うとともに、学校施設整備指針を示すこと等により、学校開放に向けて、地域住民の積極的な利用を促進するような施設づくりを進めていく。
また、小・中学校の余裕教室について、引き続き、地方公共団体が社会教育施設やスポーツ・文化施設などへの転用を図れるよう、取組を支援していく。
(5)生活環境
既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備
中古住宅・リフォームトータルプラン(平成24年3月策定)に基づき、住宅の検査・調査を行うインスペクションの普及促進を図るとともに、インターネットを活用したリフォーム事業者に関する消費者向けの情報提供の充実、かし担保責任保険の充実などの施策を推進する。
住宅・建築物省エネ改修等推進事業により、エコリフォームと併せて行うバリアフリー改修・耐震改修について支援を行い、住宅の省エネ化と併せて、住宅のバリアフリー化・耐震化を促進する。
高齢者に配慮したまちづくりの総合的推進
被災地において、高齢化の進行や人口減少等の社会構造変化や環境等に配慮したまちづくりを進めることが不可欠であるところ、環境価値、社会的価値、経済的価値を新たに創造し、「誰もが暮らしたいまち」・「誰もが活力あるまち」として復興するため、少子高齢化、環境対応等の分野でのモデル事業の実施を支援する。
交通安全の確保
高齢者の歩行中・自転車乗用中の交通事故を減少させるため、高齢者による高齢者のための交通安全教育を実施することで、受講者の共感・理解が一層促進されることが考えられることから、高齢者を交通安全教育のためのシニア・リーダーとして育成する歩行者・自転車乗用者の交通安全教育のためのシニア・リーダー育成モデル事業を行う。
犯罪、人権侵害、悪質商法等からの保護
高齢者に対する悪質商法による二次被害を防止するため、地方自治体と連携しながら、①定期的な電話による見守り、②協力を希望する高齢者宅への通話録音装置の配置による情報や証拠の収集にモデル事業として取組み、被害防止と法執行強化の効果を実証的に把握する。
(6)高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進
医療関連分野におけるイノベーションの推進
国民が安心して利用できる最新の医療環境を整備する。また、我が国のものづくり力を活かし、世界に先駆けて我が国発の革新的医薬品・医療機器を開発するとともに再生医療を推進し、医療関連分野におけるイノベーションを一体的に推進する。これにより、健康長寿社会の実現と我が国の経済成長の実現、積極的な海外市場への展開を目指す。
(7)全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築
非正規雇用労働者対策の推進
派遣労働者、有期契約労働者及びパートタイム労働者といった非正規雇用の態様ごとの法制面での対応として、改正労働者派遣法(平成24年3月成立)の着実な実施を進めるとともに、改正労働契約法(平成24年8月成立)の周知等を行う。
また、パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保、正社員への転換を推進するため、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律に基づく指導、専門家による相談・援助、助成措置の活用による支援、職務分析・職務評価の導入支援等を行う。