第2章 第3節 5 高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進のための基本的施策
第3節 分野別の施策の実施の状況
5 高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進のための基本的施策
「高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進のための基本的施策」については、高齢社会対策大綱において、次のような方針を示している。
高齢者が健康で活躍しやすい環境づくりのために、高齢者に優しく、ニーズに合致した機器やサービスの開発を支援することで、高齢者向け市場を活性化させ、高齢者の消費を高めるとともに、高齢化に対応した産業の強化等を通じて高齢者が生活の質を保ち、安心で快適で豊かな暮らしを送ることができるような環境を形成する。
また、科学技術の研究開発とその活用は、高齢化に伴う課題の解決に大きく寄与するものであることから、高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究、高齢者の利用に配慮した福祉用具、生活用品、情報通信機器等の研究開発など各種の調査研究等を推進するとともに、そのために必要な基盤の整備を図る。
(1)高齢者向け市場の開拓と活性化
ア 医療・介護・健康関連産業の強化
公的保険に依存しない医療・介護機関と民間サービス事業者等が連携した新たなサービス産業創出のため、関連する規制・制度や事業化の可能性について調査・検討を行うとともに、サービスの創出・事業化に対する支援を行った。
イ 不安の解消、生涯を楽しむための医療・介護サービスの基盤強化
安心で質の高い医療・介護サービスを安定的に提供するためには、限られた医療資源を有効に活用する必要があるが、医療・介護従事者の不足や医師の診療科偏在・地域偏在等の課題の解決が求められる。
平成24年度は引き続き医学部入学定員の増員(平成24年度68人増)を行うとともに、医師不足病院の医師確保を支援する「地域医療支援センタ-」を全国15カ所から20カ所に拡大し、その運営に対する財政支援を行った。
また、地域の医師確保の取組を進めるため、「地域の医師確保対策2012」をまとめたほか、多種多様な医療スタッフによるチーム医療の推進等の取組を実施するとともに、平成24年4月から、一定の要件の下に介護職員等がたんの吸引等を実施できるよう制度改正をし、医療職種・介護職種の役割の見直し等を行った。
さらに、在宅医療や地域包括ケアを推進するため、平成24年度を「在宅医療・介護あんしん2012」と位置づけ、制度、報酬及び予算面から包括的に取組を実施した。
また、平成24年度補正予算において、医師確保対策の推進、介護と連携した在宅医療の体制整備の支援等を図るため、地域医療再生基金の積み増しを行った。
ウ 地域における高齢者の安心な暮らしの実現
医療、介護は地域密着型のサービス産業であり、地方の経済、内需を支えている。住み慣れた地域で生涯を過ごしたいと願っている高齢者は多く、地域主導による地域医療の再生や在宅介護の充実を図ることが、これからの地域社会において重要である。そのため、介護関係者のみならず、医療関係者や地域住民などの多職種で地域の課題把握等を行う「地域ケア会議」の取組の推進や、情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備などを進め、そこに暮らす高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会を構築する必要がある。
高齢者が安心して健康な生活が送れるようになることで、生涯学習や、教養・知識を吸収するための旅行など、新たなシニア向けサービスの需要も創造される。また、高齢者の起業や雇用にもつながるほか、高齢者が有する技術・知識等が次世代へも継承される。こうした好循環を可能とする環境を整備していく。