第2章 第3節 6 全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策
第3節 分野別の施策の実施の状況
6 全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策
「全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策」については、高齢社会対策大綱において、次のような方針を示している。
今後の超高齢社会に対応するために、高齢者のために対応が限定された社会ではなく、高齢社会に暮らす子どもから高齢者まで、全ての世代の人々が安心して幸せに暮らせる豊かな社会を構築する。そのために、高齢者のみならず、世代間の交流を通じた若者や子育て世代とのつながりを醸成するとともに、若年者や女性の能力を積極的に活用するなど、全ての世代が積極的に参画する社会を構築するための施策を推進する。
(1)全員参加型社会の推進
ア 若年者雇用対策の推進
(ア)新卒者・既卒者の就職支援
新卒者・既卒者の就職支援のため、全国に「新卒応援ハローワーク」(平成25年4月1日現在、57か所)を設置するとともに、ジョブサポーターを活用し、学生等にきめ細かな支援を行うとともに、大学等と一体となった就職支援や中小企業とのマッチングを進めている。
また、卒業後3年以内の既卒者の就職を促進するため、卒業後少なくとも3年間は新卒として応募できるようにすること等を盛り込んだ、雇用対策法に基づく「青少年雇用機会確保指針」の周知を進めている。
(イ)フリーター等の就労支援の推進
全国のハローワークにおいて、フリーター等に対し、支援対象者一人ひとりの課題に応じて、正規雇用化に向け、一貫したきめ細かな支援を実施している。平成24年度からは、特にフリーターの多い地域には、支援拠点として「わかものハローワーク」(平成25年4月1日現在、3か所)、「わかもの支援コーナー」等(平成25年4月1日現在、211か所)を設置し、正規雇用化の支援を強化している。
また、職業経験、技能、知識の不足等により就職が困難な若年者等(45歳未満)について、一定期間(原則3か月)試行的に雇用することにより、業務遂行に当たっての適性や能力などを見極めるとともに、求職者及び求人者の相互理解を促進し、その後の正規雇用を図る「若年者等トライアル雇用事業」(1人4万円、最大3か月)等を実施している。
イ 雇用・就業における女性の能力発揮
労働者が性別により差別されることなく、また、働く女性が母性を尊重されつつ、その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備するため、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号)に沿った男女均等取扱いが徹底されるよう周知啓発、指導を行うとともに、事業主と労働者の間に紛争が生じた場合には円滑かつ迅速な解決が図られるよう援助を行った。
また、実質的な男女労働者間の均等を確保するためには、男女労働者間に事実上生じている格差の解消を目指す企業の自主的かつ積極的な取組(ポジティブ・アクション)が不可欠である。このため、企業が具体的な取組を行うことができるよう、必要な助言及び情報提供を積極的に行い、ポジティブ・アクションの一層の促進を図った。具体的には、企業に対する取組促進の直接的な働きかけやポジティブ・アクション情報ポータルサイトを活用した女性の活躍状況の情報開示の促進、「均等・両立推進企業表彰」の実施、経営者団体と連携した「女性の活躍推進協議会」の開催、ポジティブ・アクション普及促進のためのシンボルマーク「きらら」の活用促進等を通じて、企業が自主的かつ積極的に、ポジティブ・アクションに取り組むことを促した。さらに、男女労働者間の格差について企業内での実態把握や気づきを促す「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」や「業種別『見える化』支援ツール」の作成・普及により、ポジティブ・アクションの具体的取組を支援するとともに、メンター制度等導入マニュアルの作成・普及により、女性労働者が就業を継続していけるような環境づくりを支援した。
また、「食料・農業・農村基本計画」等を踏まえ、農業経営や6次産業化の取組等において女性の更なる活躍を推進するため、補助事業の実施に当たって、プランづくりへの女性の参画の要件化や女性優先枠を設定する等、女性の能力発揮を促進する施策を実施した。
さらに、女性の活用に積極的な企業を表彰することで、そのような企業のすそ野を広げるため、東京証券取引所と共同で、「女性活躍推進」に優れた上場企業を、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄(「なでしこ銘柄」)として選定し、平成25年2月に17社を発表した(図2-3-20)。また、女性を始めとした、多様な人材の能力を最大限発揮させることにより、イノベーションの創出、生産性向上等の成果を上げている企業を表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」を創設し、平成25年3月に43社(大企業21社、中小企業22社)を表彰した(図2-3-21)。また、育児等で一度、退職し、再就職を希望する女性等(新戦力)に対し、職場経験のブランクを埋める機会を提供するために、中小企業・小規模事業者が実施する職場実習(インターンシップ)を支援する「中小企業新戦力発掘プロジェクト」を平成24年度補正予算において実施している。
ウ 非正規雇用労働者対策の推進
非正規雇用の労働者の数は近年増加傾向にあり、平成24年において、非正規雇用の労働者数は1,813万人、雇用者に占める割合は約3分の1を超える状況である。
非正規雇用の労働者は、正規雇用の労働者と比べて、雇用が不安定、経済的自立が困難、職業キャリアの形成が十分でないことや、非正規雇用に固定化しやすい等の問題があることから、将来安心して生活を送れるような収入を確保するという点で課題がある。
こうした問題に対応するため、派遣労働者、有期契約労働者及びパートタイム労働者といった非正規雇用の態様ごとに法改正等を行うなど、法制面での必要な施策を講じるとともに、日本経済の持続的な発展につなげる観点から、平成24年3月に非正規雇用問題に係るビジョンをとりまとめ、これを踏まえ、同年12月には「非正規雇用労働者の能力開発抜本強化に関する検討会」報告書をとりまとめた。
この報告書では、正規・非正規という雇用形態にかかわらず、将来に夢や希望を持ちながら安心して生活を送れるような収入を確保できるよう、能力開発機会を提供し、キャリアアップを支援すること等を基本的な視点とした上で、①フリーター等不本意非正規就業者の増加の防止、②複線的なキャリアアップの道の確保、労働者の選択に応じた能力機会の確保、③労働者の能力の労働市場での適切な評価等といった今後の施策の方向性を提示している。
今後、この報告書の方向性を踏まえ、企業内でのキャリアアップの取組への総合的な支援や非正規雇用労働者の特性に配慮した公共職業訓練の見直しなど、具体的な取組を推進することとしている。
エ 子育て支援施策の総合的推進
子どもと子育てを応援する社会の実現に向けて、平成22年度から26年度までの5年間で目指すべき施策内容と数値目標を盛り込んだ、「少子化社会対策基本法」(平成15年法律第133号)に基づく「少子化社会対策大綱」(平成22年1月閣議決定。以下「子ども・子育てビジョン」という。)に基づき、総合的な子育て支援を推進している。
社会保障・税一体改革においては、社会保障に要する費用の主な財源となる消費税の充当先が、現在の高齢者向けの3経費(基礎年金、老人医療、介護)から、少子化対策を含む社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化対策)に拡大されることとなった。
この子育て分野の受け皿となる、新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度の構築については、「子ども・子育てビジョン」においても検討することとされ、政府は、子ども・子育て関連3法案を第180回国会に提出した。その後、国会の審議過程で認定こども園制度の改善等の修正等がなされ、平成24年8月10日、子ども・子育て関連3法(「子ども・子育て支援法」(平成24年法律第65号)、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律」(平成24年法律第66号)、「子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成24年法律第67号))が成立し、同月22日に公布された。
子ども・子育て関連3法に基づく新たな子ども・子育て支援制度では、「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に、幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進することとしている。具体的には、(ア)認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設、(イ)認定こども園制度の改善、(ウ)地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図ることとしている。実施主体は基礎自治体である市町村であり、地域の実情等に応じて幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援に必要な給付・事業を計画的に実施していくこととしている。
また、平成17年4月に本格施行した「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号。以下「次世代法」という。)に基づき、地方公共団体においては、地域における子育て支援や母性、乳幼児の健康の確保・増進、教育環境の整備等を内容とする地域行動計画、企業等においては、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員をも含めた多様な労働条件の整備等を内容とする一般事業主行動計画が策定され、これに基づく取組が進められている。
地域行動計画は、5年を1期としてすべての地方公共団体に策定が義務付けられており、都道府県及び市町村においては、平成21年度中に策定した後期行動計画に基づき、取組が進められた。一方、一般事業主行動計画については、平成20年12月に次世代法が改正されたことにより、平成23年4月1日から届出等が義務となる企業は常時雇用する従業員数301人以上企業から101人以上企業へ拡大された。24年12月末現在で、都道府県労働局への届出が義務付けられている従業員101人以上の企業の97.2%が届出済みとなっており、策定・届出が努力義務となっている100人以下の企業においては23,952社が既に届出済みとなっている。さらに、次世代法に基づき企業が行動計画に定めた目標を達成したことなどの一定の基準を満たした場合は、申請を行うことで厚生労働大臣から認定される仕組みが平成19年4月から開始され、平成24年12月末現在で1,405社が認定を受けている。