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コラム3 被災者の声に耳を傾けて~高齢者が中心となったいわき傾聴ボランティア「みみ」の活動~

「傾聴ボランティア」とは、相手の話を否定しないで、ありのままに受け止めて聞くトレーニングを積んだボランティアである。その手法はアメリカのシニア・ピア・カウンセリングを日本人に馴染むようにアレンジされたものであり、日本でも広がりをみせている。

傾聴ボランティアが相手の話にひたすら耳を傾け、受容的・共感的に受け止めることで、相手の心を癒し、安心感を抱かせ、生活意欲を向上させることが期待されている。

東日本大震災の被災地では、傾聴ボランティアが自発的にケアを受ける人に対応するだけでなく、医師や社会福祉協議会などからの要請を受けて、避難所や仮設住宅で生活する人たちの心のケアにも当たっており、不安な気持ちや悩みを抱える人の不安や悩みを軽くする活動を続けている。

ここでは、震災と原発事故で不安を抱えて避難生活を送っている人たちを相手に、傾聴活動を行っているグループを紹介する。

「いわき傾聴ボランティア「みみ」」(以下「みみ」という。)は、平成20年にいわき市の勿来地区ボランティア連絡会が開催した「傾聴ボランティア養成講座」の受講生が「せっかく受講したのだから、なにか先輩高齢者の役に立つことをしよう」と立ち上げたボランティアグループである。個人宅を始め、特別養護老人ホームやグループホームなどの介護施設中心に活動を続けている。メンバーは48人でその多くは60代の女性である。

東日本大震災の後「みみ」は、それまでの活動に加えて、いわき市内の避難所や仮設住宅に出向いて被災者の声に耳を傾け、避難生活が長くなる中で「避難している人の不安や悩みを少しでも取り除きたい」と活動を続けている。

傾聴活動は、相手の心に寄り添いながら相手の言葉に耳を傾けるものであることから、まず自分たちのことを信頼してもらうことが大事と考え、まずは顔を覚えていただこうと、「みみ」のメンバーは、避難所となっている体育館やコミュニティホールなどに何度も通い、また、他のボランティア団体が主催するバザーや炊き出し、支援物資の配布にも参加した。そうするうち、避難所の集会所で被災者から話を聴くことができるようになった。

「みみ」代表の安島爵子さんは、「被災された方への傾聴活動は今までの活動と違い、戸惑いもありました。初めの頃は、『困っていることはありませんか』と声をかける程度で、ただただ寄り添わせていただくことしかできませんでした。しかし、お伺いするたびに少しずつ心を開いて話してくれるようになり、皆様のお顔が明るくなってきました」と、当時を振り返る。

仮設住宅の整備が進んだ平成23年10月頃からは、活動の場は次第に仮設住宅に移っていき、現在では仮設住宅が主な活動場所となっている。「みみ」のメンバーは「おはなしボランティア」と書かれたピンクのベストを着て、毎月2回、仮設住宅の集会所で開かれているサロン活動に参加して傾聴活動を行っている。サロンには、仮設住宅に住む人々のほか、近くの借上げ住宅に住んでいる人々の参加も増えてきている。借上げ住宅に住む人々は、知らない土地で周囲に知り合いがいないために孤独感を抱えていることも多く、サロン以外でも、個別に借上げ住宅を訪問して話を聴くこともある。

「みみ」は集会所のサロンで、傾聴のほかにも、折り紙やキーホルダー作り、手芸などの創作活動を行っている。また、震災被災者支援を行う他のボランティア団体からの協力要請を受けて、傾聴に出向いたり、仮設住宅でのプランター作りなどの活動にも協力したりなど、他のボランティア団体と連携した活動も続けている。

安島さんは、「これからも、避難者の方が笑顔になれるようお話し相手やサロン活動を続けていきます。」と話している。

最初はただ寄りそうだけでした。
毎月2回仮設住宅で開かれるサロン活動で傾聴活動
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