第2章 第2節 2 健康・介護・医療等分野に係る基本的施策
第2節 分野別の施策の実施の状況
2 健康・介護・医療等分野に係る基本的施策
「健康・介護・医療等分野に係る基本的施策」については、高齢社会対策大綱において次の方針を明らかにしている。
我が国において少子高齢化や疾病構造の変化が進む中で、生活習慣及び社会環境の改善を通じて、全ての国民が共に支え合いながら希望や生き甲斐を持ち、高齢期に至っても、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、長寿を全うできるよう、生涯にわたる健康づくりを総合的に推進する。
高齢者介護については、介護を国民皆で支え合う仕組みとして創設された介護保険制度の着実な実施を図る。また、高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするため、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の確立を目指す。加えて今後急速に増加することが予想される認知症を有する人が地域において自立した生活を継続できるよう支援体制の整備を更に推進する。
また、今後も高齢化の進展等で医療費の増加が見込まれる中、引き続き安心して良質な医療を受けることができるよう、人口構造の変化に対応できる持続可能な医療保険制度を構築する。
(1)健康づくりの総合的推進
ア 生涯にわたる健康づくりの推進
健康寿命の延伸や生活の質の向上を実現し、健やかで活力ある社会を築くため、がんなど生活習慣病の一次予防に重点を置いた対策として平成12年度から進めてきた「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が24年度で終了することから、23年10月に取りまとめた最終評価を基に「厚生科学審議会地域保険健康増進栄養部会」などで議論を行い、24年7月に10年間の国民健康づくり運動を推進するため、健康を支え、守るための社会環境の整備に関する具体的な目標等を明記した健康日本21(第二次)を告示した。
健康日本21(第二次)に基づき、地方公共団体、関係団体、企業などと連携し、健康づくりの取組の普及啓発を推進する「スマート・ライフ・プロジェクト」を引き続き実施していく。
さらに、健康な高齢期を送るためには、壮年期からの総合的な健康づくりが重要であるため、市町村が健康増進法に基づき実施している健康教育、健康診査、機能訓練、訪問指導等の健康増進事業の一層の推進を図った(表2-2-3)。
種類等 | 対象者 | 内容 | 実施場所 | ||
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健康手帳の交付 |
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健康教育 |
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市町村保健センター 医療機関等 |
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健康相談 |
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市町村保健センター等 | |
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健康検査等 | 健康検査 |
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市町村保健センター 保健所 検診車 医療機関等 |
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保健指導 |
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市町村保健センター、 保健所 医療機関等 |
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歯周疾患検診 |
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骨粗鬆症検診 |
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肝炎ウイルス検診 |
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市町村保健センター 保健所 検診車 医療機関等 |
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機能訓練 |
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市町村保健センター 老人福祉センター 介護老人保健施設等 |
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訪問指導 |
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対象者の居宅 | ||
総合的な保健推進事業 |
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資料:厚生労働省 | |||||
(注)65歳以上の者については、介護予防の観点から別事業を実施している。 | |||||
平成10年度より一般財源化されているがん検診についても、健康増進法に基づく健康増進事業として位置づけられている。 |
また、高齢化の進展等により今後も医療費の増加が見込まれる中で、国民皆保険を堅持していくためには、必要な医療は確保しつつ、効率化できる部分は効率化を図ることが重要であり、特定健診等の生活習慣病対策など中長期的な各般の取組を引き続き進めていく。
健康で活力に満ちた長寿社会を実現するため、「高齢者の体力つくり支援事業」として、生活基盤の比重が仕事中心から地域社会へ大きく移行する年齢層が、それぞれの適性や健康状態に応じて無理なく継続できる運動・スポーツプログラムの普及啓発を行うとともに、高齢者の体力つくりに係るシンポジウムを開催した。
「第2次食育推進基本計画」に基づき、家庭、学校・保育所、地域等における食育の推進、食育推進運動の全国展開、生産者と消費者の交流促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化、食文化の継承のための活動への支援、食品の安全性の情報提供等を実施した。高齢受刑者で日常生活に支障がある者の円滑な社会復帰を実現するため、リハビリテーション専門スタッフを配置した。
イ 健康づくり施設の整備等
一定の要件を満たした運動施設及び温泉施設を「運動型健康増進施設」、「温泉利用型健康増進施設」及び「温泉利用プログラム型健康増進施設」として認定し、健康を増進するための民間サービスの振興を図った。
また、散歩や散策による健康づくりにも資する取組として、地方公共団体等のまちづくりと一体となった「かわまちづくり」の推進を図った。
そのほかに、国有林野では、優れた自然景観を有し、森林浴や自然観察、野外スポーツ等に適した「レクリエーションの森」において、利用者ニーズに対応した施設整備等を行い、レクリエーションの場の提供を図った。
国立公園においては、主要な利用施設であるビジターセンター、園路、公衆トイレ等についてバリアフリー化を推進するなど、高齢者にも配慮した自然とのふれあいの場の整備を実施した。
都市公園においては、健康づくりに関する様々な活動が広く行われるよう高齢者等にも配慮した整備を推進している。
ウ 介護予防の推進
要介護状態等になることを予防し、要介護状態等になった場合でもできるだけ地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援するため、地域支援事業を推進するとともに、日常生活圏域で高齢者の生活の継続性が確保できるように、建物等の改修等により、介護予防サービス提供のための拠点整備を行った。
自立支援に効果の高い支援手法を明らかにする観点から、平成24年度から2年間かけて、13の自治体と協働して、二次予防事業対象者、要支援1から要介護2までの者を対象として、市町村介護予防強化推進事業を実施した。
(2)介護保険制度の着実な実施
介護保険制度については、平成12年4月に施行されてから10年以上を経過したところであるが、介護サービスの利用者数はスタート時の2倍を超えるなど、高齢期の暮らしを支える社会保障制度の中核として確実に機能しており、少子高齢社会の日本において必要不可欠な制度となっているといえる(表2-2-4)。
利用者数 | 介護給付費 | |||||||||||||
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平成12年4月 | 平成15年4月 | 平成18年4月 | 平成21年4月 | 平成23年4月 | 平成24年4月 | 平成25年4月 | 平成12年4月 | 平成15年4月 | 平成18年4月 | 平成21年4月 | 平成23年4月 | 平成24年4月 | 平成25年4月 | |
居宅(介護予防)サービス | 97万人 | 201万人 | 255万人 | 278万人 | 310万人 | 328万人 | 348万人 | 618億円 | 1,825億円 | 2,144億円 | 2,655億円 | 3,041億円 | 3,240億円 | 3,538億円 |
地域密着型(介護予防)サービス | - | - | 14万人 | 23万人 | 28万人 | 31万人 | 34万人 | - | - | 283億円 | 445億円 | 552億円 | 625億円 | 696億円 |
施設サービス | 52万人 | 72万人 | 79万人 | 83万人 | 85万人 | 86万人 | 89万人 | 1,571億円 | 2,140億円 | 1,985億円 | 2,141億円 | 2,195億円 | 2,242億円 | 2,296億円 |
合計 | 149万人 | 274万人 | 348万人 | 384万人 | 423万人 | 445万人 | 471万人 | 2,190億円 | 3,965億円 | 4,411億円 | 5,241億円 | 5,787億円 | 6,107億円 | 6,530億円 |
資料:厚生労働省「介護保険事業状況報告」 | ||||||||||||||
(注)端数処理の関係で、合計の数字と内訳数が一致しない場合がある。 | ||||||||||||||
地域密着型(介護予防)サービスは、平成17年の介護保険制度改正に伴って創設された。 |
高齢者が住み慣れた地域で生活し続けることを可能とするために医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを一体的に提供する地域包括ケアシステムの基盤を強化する観点から、平成24年4月の介護報酬改定で、在宅サービスの充実と施設の重点化、自立支援型サービスの強化と重点化、医療と介護の連携・役割分担、介護人材の確保とサービスの質の向上を柱とする改定を行った。
また、近年の介護サービスを巡っては、介護従事者の離職率が高く、人材確保が困難であるといった状況にあるため、第169回通常国会で「介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律」(平成20年法律第44号)が成立し、21年度介護報酬改定において、プラス3.0%の介護報酬改定を行い、21年度第一次補正予算において、23年度までの間介護職員(常勤換算)1人当たり平均月額1.5万円の賃金引き上げに相当する介護職員処遇改善交付金により介護職員の処遇改善に取り組んできた。24年度介護報酬改定においても、プラス1.2%の改定を行い、これまでの処遇改善の取組が確実に継続されるよう、「介護職員処遇改善加算」を創設するなど、引き続き、これらの取組を着実に実施し、介護従事者の処遇改善を図った。
(3)介護サービスの充実
ア 必要な介護サービスの確保
地域住民が可能な限り、住み慣れた地域で介護サービスを継続的・一体的に受けることのできる体制(地域包括ケアシステム)の実現を目指すため、訪問介護と訪問看護が密接に連携した「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の機能をあわせ持つ「複合型サービス」等の地域密着型サービスの充実や、サービス付き高齢者向け住宅等の高齢者の住まいの整備や、特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム等)を適切に運用するための支援を行った。
また、認知症の人や要介護高齢者等に対する住まい、医療、介護、予防、生活支援のサービスが一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を全国的に推進していくための手法として、全国の自治体に「地域ケア会議」の普及・定着を図った。
地域における高齢者支援の中核を担う地域包括支援センターでは、医療、介護の専門家など多職種が協働して個別事例のケア方針を検討し、高齢者の自立支援、認知症の人の地域支援等を推進するための「地域ケア会議」を実施し、市町村への地域課題の解決に向けた資源開発・政策形成等を行った。また国においては、「地域ケア会議」の運営ノウハウの蓄積、人材育成、体制づくり等を推進する事業を実施した。
あわせて、介護人材の確保のため、介護労働者の雇用管理改善や人材の参入促進を図った。具体的に介護労働者の雇用管理改善については、労働環境の改善に役立つ介護福祉機器・雇用管理制度を導入する事業主への助成措置や、介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習などを実施した。人材の参入促進を図る観点からは、介護に関する専門的な技能を身につけられるようにするための離職者訓練の充実を図るとともに、全国の主要なハローワークに設置する「福祉人材コーナー」において、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人者への助言・指導等を実施することに加え、「福祉人材コーナー」を設置していないハローワークにおいても、福祉分野の職業相談・職業紹介、職業情報の提供及び「福祉人材コーナー」への利用勧奨等の支援を実施した。さらに、各都道府県に設置されている福祉人材センターにおいて、当該センターに配置された専門員が求人事業所と求職者双方のニーズを的確に把握した上で、マッチングによる円滑な人材参入・定着支援、職業相談、職業紹介等を推進した。
また、今後の介護人材のキャリアパスを簡素で分かりやすいものにするため、ホームヘルパー研修の体系を見直し、在宅・施設を問わず必要となる基本的な知識・技術を修得する「介護職員初任者研修」を創設し、各都道府県において実施した。
平成20年7月には、介護についての理解と認識を深め、介護サービス利用者及びその家族、介護従事者等を支援するとともに、これらの人たちを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進するため、「11月11日」を「介護の日」とし、介護に関する啓発を重点的に実施している(図2-2-5)。
イ 介護サービスの質の向上
介護保険制度の運営の要である介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質の向上を図るため、引き続き、実務研修及び現任者に対する研修を体系的に実施した。なお、研修水準の平準化を図るため、実務研修及び現任者に対する研修の指導者用のガイドラインを策定し周知した。また、地域包括支援センターにおいて、介護支援専門員に対する助言・支援や関係機関との連絡調整等を行い、地域のケアマネジメント機能の向上を図っている。
また、高齢者の尊厳の保持を図る観点から、特別養護老人ホームにおけるプライバシーの保護に配慮するとともに、介護従事者等による高齢者虐待の防止に向けた取組を推進している。
平成24年4月より、一定の研修を受けた介護職員等は、一定の条件の下に喀痰吸引等の行為を実施できることとなった。25年度においては、引き続き各都道府県と連携のもと、研修等の実施を推進し、サービスの確保、向上を図っている。
ウ 認知症高齢者支援施策の推進
今後、高齢者の増加に伴い認知症の人は更に増加することが見込まれていることから、平成24年9月に公表された「認知症施策推進5か年計画」(オレンジプラン)の着実な実施を図り、全国の自治体で、認知症の人とその家族が安心して暮らしていける支援体制を計画的に整備している。
具体的には、①標準的な認知症ケアパスの作成・普及、②早期診断・早期対応、③地域での生活を支える医療サービスの構築、④地域での生活を支える介護サービスの構築、⑤地域での日常生活・家族支援の強化、⑥若年性認知症施策の強化、⑦医療・介護サービスを担う人材の育成の7つの視点に立って施策を推進している。
こうした施策の推進により、認知症高齢者ができる限り住み慣れた地域のよい環境で生活できるような体制をつくる。
(4)高齢者医療制度等について
ア 高齢者医療制度について
国民会議の報告書では、「後期高齢者医療制度については、創設から既に5年が経過し、現在では十分定着していると考えられる。今後は、現行制度を基本としながら、実施状況等を踏まえ、必要な改善を行っていくことが適当」とされた。
これに基づき、社会保障制度改革プログラム法では、後期高齢者医療等の保険料に係る低所得者の負担軽減、後期高齢者支援金の全面総報酬割、低所得者の負担に配慮しつつ行う70歳から74歳までの者の一部負担金の取扱い等について検討し、平成27年の法案提出を目指すとされた。また、高齢者医療制度の在り方については、医療保険制度改革の実施状況等を踏まえ、必要に応じ、見直しに向けた検討を行うとされた。
イ 地域における包括的かつ持続的な在宅医療・介護の提供
国民が可能な限り住み慣れた地域で療養することができるよう、地域包括ケアシステムの実現を目指し、医療・介護が連携して必要な支援を提供する必要がある。
平成25年度からの医療計画に、新たに「在宅医療について達成すべき目標、医療連携体制」等を明記すべきとされたことを踏まえ、地域医療再生基金を活用し、各都道府県が行う取組を支援した。また、地域において多職種がチームとして協働し、在宅医療・介護を提供する体制を構築するため、24年度から都道府県及び市町村単位で育成した人材が地域で在宅医療・介護に関係する多職種を対象として行う研修を支援した。
(5)住民等を中心とした地域の支え合いの仕組み作りの促進
ア 地域の支え合いによる生活支援の推進
住民参加による地域づくりを通じて、地域住民の社会的孤立を防ぎ、誰もが社会との「絆」を感じながら、安心して生活できる基盤を構築していくため、平成21年度より実施している「安心生活創造事業」の基本理念(抜け漏れのない把握、漏れのない支援、自主財源の確保)を引き継ぐとともに、これまでの安心生活創造事業の成果・課題を踏まえ、分野横断的な相談支援体制の構築や権利擁護の推進等を実施する総合的な取組へと拡充した「安心生活基盤構築事業」を実施した。また、地域の支え合いを推進するため、地域福祉等推進特別支援事業において、高齢者等の地域社会における今日的課題の解決を目指す先駆的・試行的取組を行う自治体等への支援を行った。
さらに、「寄り添い型相談支援事業」として、ワンストップで電話相談を受け、必要に応じて、具体的な解決につなげるための面接相談、同行支援を行う事業を実施した。
イ 地域福祉計画の策定の支援
福祉サービスを必要とする高齢者を含めた地域住民が、地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるよう地域福祉の推進に努めている。このため、福祉サービスの適切な利用の推進や福祉事業の健全な発達、地域福祉活動への住民参加の促進等を盛り込んだ地域福祉計画の策定の支援を引き続き行った。