第2章 第2節 3 社会参加・学習等分野に係る基本的施策
第2節 分野別の施策の実施の状況
3 社会参加・学習等分野に係る基本的施策
「社会参加・学習等分野に係る基本的施策」については、高齢社会対策大綱において、次の方針を明らかにしている。
高齢社会においては、価値観が多様化する中で、社会参加活動や学習活動を通じての心の豊かさや生きがいの充足の機会が求められるとともに、社会の変化に対応して絶えず新たな知識や技術を習得する機会が必要とされる。
このため、高齢者を含めた全ての人々が、生涯にわたって学習活動を行うことができるよう、学校や社会における多様な学習機会の提供を図るとともに、その成果の適切な評価の促進を図る。
また、高齢者が年齢や性別にとらわれることなく、他の世代とともに社会の重要な一員として、生きがいを持って活躍したり、学習成果を活かしたりできるよう、ボランティア活動を始めとする高齢者の社会参加活動を促進するとともに、高齢者が自由時間を有効に活用し、充実して過ごせる条件の整備を図る。
さらに、ボランティア組織やNPO等における社会参加の機会は、自己実現への欲求及び地域社会への参加意欲を充足させるとともに、福祉に厚みを加えるなど地域社会に貢献し、世代間、世代内の人々の交流を深めて世代間交流や相互扶助の意識を醸成するものである。このため、高齢者を含めた市民やNPO等が主体となって公的サービスを提供する「新しい公共」を推進する。
(1)社会参加活動の促進
ア 高齢者の社会参加活動の促進
(ア)高齢者の社会参加と生きがいづくり
高齢者の生きがいと健康づくり推進のため、地域を基盤とする高齢者の自主的な活動組織である老人クラブ等や都道府県及び市町村が行う地域の高齢者の社会参加活動を支援した(図2-2-6)。国民一人ひとりが積極的に参加し、その意義について広く理解を深めることを目的とした「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」を平成25年10月に高知県で開催した。
また、高齢者が生涯学習を通じて地域づくりに主体的に参画することを促進するため、高齢者の生涯学習に関する研究成果や各地域の先進的な取組事例等を活用した研究協議会を開催した。
さらに、学校の教育活動を支援する「学校支援地域本部」や、放課後や週末等に学校の余裕教室等を活用して、学習・体験・交流活動等を提供する「放課後子供教室」、家庭教育に関する学習機会の提供等を行う「家庭教育支援」などを一体的・総合的に推進することなどにより、高齢者を含む幅広い世代の地域住民の参画による地域全体で子供を育む環境づくりを支援した。
また、企業退職高齢者等が、地域社会の中で役割を持って生き生きと生活できるよう、有償ボランティア活動による一定の収入を得ながら自らの生きがいや健康づくりにもつながる活動を行い、同時に介護予防や生活支援のサービス基盤となる活動を促進する「高齢者生きがい活動促進事業」を実施した。
加えて、高齢者を含む誰もが旅行を楽しむことができる環境を整備するため、地域の受入体制を強化するための取組やユニバーサル旅行商品の供給促進に向けた検討を実施した。
(イ)高齢者の海外支援活動の推進
豊富な知識、経験、能力を有し、かつ途上国の社会や経済の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年齢者が、海外技術協力の一環として、途上国の現場で活躍できるよう、シニア海外ボランティア事業を独立行政法人国際協力機構を通じ引き続き推進した。また、団塊の世代の人々の知見を同事業に活用すべく情報提供、派遣形態・期間の多様化など参加しやすい環境を整備した(図2-2-7)。
(ウ)高齢者の余暇時間等の充実
高齢者等がテレビジョン放送を通じて適切に情報を得ることができるよう、字幕放送、解説放送等の充実を図るため、平成19年10月に策定し、24年10月に見直しを行った行政指針の普及目標(29年度までに、字幕放送については対象の放送番組のすべてに字幕付与、解説放送については対象の放送番組の10%に解説付与、大規模災害等緊急時放送については、できる限りすべてに字幕付与する等)の達成に向けて、放送局の自主的な取組を促してきている。さらに、25年11月の基幹放送事業者の再免許に当たり、上述の取組やCMへの字幕付与の普及に留意することについて文書により要請を行った。また、26年1月から「スマートテレビ時代における字幕等の在り方に関する検討会」を開催し、字幕付きCMの普及に向けた具体的方策等について検討を行っている。
高齢者の社会参加や世代間交流の促進、社会活動を推進するリーダーの育成・支援、さらには関係者間のネットワーキングに資することを目的に、地域参加に関心を持つ者が情報交換や多様な課題についての議論を行う「高齢社会フォーラム」を行っており、平成25年度においては7月に東京、10月に福島市において開催した。
また、年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者(エイジレス・ライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を毎年広く紹介しており、平成25年度においては、個人53名及び46団体を選考し、「高齢社会フォーラム」等を通じて、社会参加活動等の事例を広く国民に紹介する事業を実施した。
(エ)高齢者の社会参加活動に資するICT利活用の推進
超高齢社会がもたらす政策課題を解決し、新たな社会モデルの確立に向けた情報通信技術(ICT)利活用の推進方策を検討するため、平成24年12月から「ICT超高齢社会構想会議」を開催し、25年5月に「ICT超高齢社会推進会議報告書―『スマートプラチナ社会』の実現―」を取りまとめた。この報告書に基づき、「スマートプラチナ社会」の実現を早期かつ着実に図るべく、より具体的に検討することを目的として、12月から「スマートプラチナ社会推進会議」を開催した。
イ 市民やNPO等の担い手の活動環境の整備
被災地における様々な社会的課題(高齢者の介護・福祉、買い物支援、まちづくり・まちおこしなど)をビジネスの手法を用いて解決するソーシャルビジネスを振興することで、被災地における新たな産業や雇用の創出による地域活性化を図った。
市民の自由な社会貢献活動を促進するため、拡充された寄附税制の活用促進や改正特定非営利活動促進法の円滑な施行・周知に向けて取り組んだ。また、内閣府NPOホームページなどで、市民活動に関する情報の提供を行うとともに、NPO等による地域の絆を活かした共助の活動を推進するため、「共助社会づくり懇談会」を、平成25年4月から経済財政政策担当大臣の下で開催した。この他、26年1月に活力あふれる共助社会づくりの推進に向けて、「共助社会づくりシンポジウム」を開催するなど、普及・啓発に努めた(表2-2-8)。
所轄庁名 | 認証数 | 所轄庁名 | 認証数 | 所轄庁名 | 認証数 | 所轄庁名 | 認証数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 1,126 | 山梨県 | 418 | 香川県 | 331 | 相模原市 | 186 |
青森県 | 371 | 長野県 | 943 | 愛媛県 | 423 | 新潟市 | 234 |
岩手県 | 447 | 岐阜県 | 748 | 高知県 | 305 | 静岡市 | 293 |
宮城県 | 342 | 静岡県 | 663 | 福岡県 | 797 | 浜松市 | 225 |
秋田県 | 334 | 愛知県 | 1,028 | 佐賀県 | 353 | 名古屋市 | 767 |
山形県 | 395 | 三重県 | 661 | 長崎県 | 453 | 京都市 | 797 |
福島県 | 777 | 滋賀県 | 604 | 熊本県 | 377 | 大阪市 | 1,513 |
茨城県 | 724 | 京都府 | 506 | 大分県 | 505 | 堺市 | 248 |
栃木県 | 577 | 大阪府 | 1,670 | 宮崎県 | 408 | 神戸市 | 706 |
群馬県 | 814 | 兵庫県 | 1,287 | 鹿児島県 | 831 | 岡山市 | 305 |
埼玉県 | 1,589 | 奈良県 | 496 | 沖縄県 | 594 | 広島市 | 377 |
千葉県 | 1,574 | 和歌山県 | 370 | 都道府県計 | 38,002 | 北九州市 | 273 |
東京都 | 9,289 | 鳥取県 | 245 | 札幌市 | 876 | 福岡市 | 641 |
神奈川県 | 1,389 | 島根県 | 268 | 仙台市 | 410 | 熊本市 | 325 |
新潟県 | 407 | 岡山県 | 418 | さいたま市 | 374 | 指定都市計 | 10,607 |
富山県 | 346 | 広島県 | 454 | 千葉市 | 343 | 合計 | 48,609 |
石川県 | 348 | 山口県 | 422 | 横浜市 | 1,384 | ||
福井県 | 250 | 徳島県 | 325 | 川崎市 | 330 | ||
資料:内閣府政策統括官(経済社会システム)付参事官(市民活動促進担当) | |||||||
(注)平成25年12月末現在 |
そして、多様な個人が能力を発揮しつつ、自立して共に社会に参加し、支え合う「共生社会」を築いていくためには、地域住民やNPO等による社会活動の充実が必要不可欠であるという認識のもと、社会活動の中心的担い手となるリーダーを養成する「青年社会活動コアリーダー育成プログラム」を実施している。
このプログラムは、高齢者関連、障害者関連、青少年関連のそれぞれの分野において社会活動に携わる日本の青年を海外へ派遣するとともに、海外の民間組織で活動する青年リーダーを日本に招へいして相互に交流することにより、我が国の社会活動の中核を担う青年リーダーの育成と各国、各分野の青年リーダー相互のネットワークの形成を目指すものである。
このうち高齢者関連分野については、平成25年度は、10月に日本青年8名をデンマークへ派遣し、翌26年2月にデンマーク、ニュージーランド及び英国の青年リーダー13名を日本に招へいした。
派遣プログラムでは、日本参加青年は、「生きがいのある高齢者の生活」をテーマにデンマークを訪問した。社会庁では、デンマークの福祉テクノロジーにおける状況と戦略について講義を受け、社会福祉・児童及び人種統合省(旧社会及び統合省)では、福祉サービスの内容、入居施設やリハビリテーションの抱える今後の課題について意見交換を行った。オーデンセ市では、デンマーク国内初のオープンハウス(主に高齢者向け)やオーデンセ市役所を訪問し、認知症への取組や在宅支援の状況について説明を受けた。その他、様々な高齢者支援活動の現場を視察し、そこで活動する青年たちと意見交換を行った。
社会庁にて、デンマークの福祉制度についての講義
招へいプログラムでは、外国参加青年は、東京で「NPOマネジメントフォーラム」に参加し、別途公募により参加した日本青年とともに「ボランティアの育成~ボランティアの力を発揮するには~」をテーマに合宿によるディスカッションを行った。その後、鳥取県を訪問し、県の高齢者施策の概要について説明を受けるとともに、県内の高齢者支援活動の現場等を視察し、意見交換を行った。また、高齢者関係の活動に携わる青年たちと「行政・福祉団体・ボランティアの連携による、認知症及び介護家族者に対する支援体制の構築を目指して」をテーマにセミナーを実施した。
社会福祉法人敬仁会 地域ケアセンターマグノリア
(2)学習活動の促進
ア 学習機会の体系的な提供と基盤の整備
生涯学習の振興に向けて、平成2年に「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」が制定され推進体制の整備が図られた。その後、平成18年に改正された教育基本法で生涯学習の理念(第3条)が、さらにこの理念の実現のために、20年に改正された社会教育法でも「生涯学習の振興への寄与」が明示された(第3条2項)。これらの法律や中央教育審議会の答申等に基づき、国民一人一人が生涯を通して学ぶことのできる環境の整備、多様な学習機会の提供、学習した成果が適切に評価されるための仕組みづくりなど、「生涯学習社会」の実現のための取組を進めた。
(ア)生涯学習の基盤の整備
岩手県において、「全国生涯学習ネットワークフォーラム(メインフォーラム)」を平成25年11月に開催し、行政、大学等の教育機関、生涯学習に関するNPOなどの民間の団体、企業等の関係者が一堂に会し、多様な主体が協働した地域づくり・社会づくりについての研究協議等を行い、その成果を発信するとともに、継続的な取組が推進されるよう、様々な分野にまたがる関係者等のネットワーク化を図った。
また、都道府県及び市町村における社会教育行政の充実に資するため、優れた資質と専門的能力を有する社会教育指導者の養成等を図った。
(イ)学習成果の適切な評価の促進
様々な学習活動の成果が適切に評価される社会の実現に向け、各個人の学習成果を測る検定試験について、質の向上や信頼性の確保が図られるよう、引き続き、民間事業者等が主体的に行う評価の取組の普及に向けた支援を行うとともに、大学や自治体、民間団体等における人材認証制度の事例についてインターネット等を通じて情報提供を行った。
また、高等教育レベルの学習成果を適切に評価するため、独立行政法人大学評価・学位授与機構において、科目等履修制度などを利用し大学等の単位を修得した短期大学卒業者、高等専門学校卒業者、専門学校修了者等に対し、審査の上、「学士」の学位授与を行っている。
イ 学校における多様な学習機会の提供
(ア)初等中等教育機関における多様な学習機会の確保
学校教育においては、生涯にわたって自ら学び、社会に参画するための基盤となる能力や態度を育むこととしている。このような観点から、新学習指導要領では、児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため、小・中・高等学校において、ボランティアなど社会奉仕に関わる体験活動や、高齢者との交流活動等を含む体験活動の充実を図っている。
さらに、学校教育における体験活動の充実を図るため「健全育成のための体験活動推進事業」において、小・中・高等学校等が実施するボランティアや高齢者との世代間交流などの児童生徒の健全育成を目的とした宿泊体験活動の取組を行う自治体を支援した。
(イ)高等教育機関における社会人の学習機会の提供
生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、社会人入試の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、科目等履修生制度の実施、長期履修学生制度の実施などを引き続き行い、履修形態の柔軟化等を図って、社会人の受入れを一層促進した。
また、大学等が、その学術研究・教育の成果を直接社会に開放し、履修証明プログラムや公開講座を実施するなど高度な学習機会を提供することを促進した(図2-2-9)。
放送大学においては、テレビ・ラジオ放送などの身近なメディアを効果的に活用して、幅広く大学教育の機会を国民に提供した(図2-2-10)。
(ウ)学校機能・施設の地域への開放
児童生徒の学習・生活の場であり、地域コミュニティの拠点でもある公立学校施設の整備に対し国庫補助を行うとともに、学校施設整備指針を示すこと等により、学校開放に向けて、地域住民の積極的な利用を促進するような施設づくりを進めている。
また、小・中学校の余裕教室について、引き続き、地方公共団体が社会教育施設やスポーツ・文化施設などへの転用を図れるよう、取組を支援している。
ウ 社会における多様な学習機会の提供
(ア)社会教育の振興
地域住民の身近な学習拠点である公民館を始めとする社会教育施設等において、幅広い年齢層を対象とした多様な学習機会の充実を促進した。
また、地域におけるきずなづくりや地域コミュニティの再生のため、高齢化問題等の地域の様々な現代的課題について、公民館等を中心に様々な主体が連携・協働して解決を図る取組を支援した。
(イ)文化活動の振興
国民文化祭の開催等による文化活動への参加機会の提供、国立の博物館等における高齢者に対する優遇措置やバリアフリー化等による芸術鑑賞機会の充実を通じて多様な文化活動の振興を図った。
(ウ)スポーツ活動の振興
「高齢者の体力つくり支援事業」を実施するとともに、「体育の日」を中心とした体力テストやスポーツ行事の実施等、各種機会を通じて多様なスポーツ活動の振興を図った。
(エ)自然とのふれあい
国立公園等の利用者を始め、国民誰もが自然とふれあう活動が行えるよう、自然ふれあい施設や体験活動イベント等の情報をインターネット等を通じて提供した。
また、国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員の研修を実施し、利用者指導の充実を図るとともに、地方環境事務所等においてパークボランティアを養成し、その活動に対する支援を実施した。
(オ)消費者教育の取組の促進
消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育、すなわち消費者教育は、幼児期から高齢期までの各段階に応じて体系的に行われるとともに、年齢、障害の有無その他の消費者の特性に配慮した適切な方法で行わなければならない。こうした消費者教育を総合的かつ一体的に推進するため、平成24年12月に「消費者教育の推進に関する法律」(平成24年法律第61号)が施行された。同法に基づき、25年6月に「消費者教育の推進に関する基本的な方針」を閣議決定し、同基本方針の「今後検討すべき課題」等を、消費者教育推進会議に置かれた3つの小委員会(消費者市民育成小委員会、情報利用促進小委員会、地域連携推進小委員会)で検討した。
エ 勤労者の学習活動の支援
有給教育訓練休暇制度の普及促進などを図るとともに、教育訓練給付制度の活用により、勤労者個人のキャリア形成を支援し、勤労者の自己啓発の取組を支援した。