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第2章 第2節 4 生活環境等分野に係る基本的施策

第2節 分野別の施策の実施の状況

4 生活環境等分野に係る基本的施策

「生活環境等分野に係る基本的施策」については、高齢社会対策大綱において、次の方針を示している。

住宅は生活の基盤となるものであり、生涯を通じて豊かで安定した住生活の確保を図っていく必要がある。このため、将来にわたり活用される良質な住宅の供給を促進し、併せて、それらが適切に評価、循環利用される環境を整備することを通じ、高齢者が保有する住宅の資産価値を高め、高齢期の経済的自立に資するとともに、その資産の次世代への適切な継承を図る。さらに、高齢者の居住の安定確保に向け、重層的かつ柔軟な住宅セーフティネットの構築を目指す。

高齢者等全ての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、自宅から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を推進するとともに、子育て世代が住みやすく、高齢者が自立して健康、安全、快適に生活できるような、医療や介護、職場、住宅が近接した集約型のまちづくりを推進するものとし、高齢者向け住宅の供給促進や、地域の公共交通システムの整備等に取り組む。

また、関係機関の効果的な連携の下に、地域住民の協力を得て、交通事故、犯罪、災害等から高齢者を守り、特に一人暮らしや障害を持つ高齢者が安全にかつ安心して生活できる環境の形成を図る。

さらに、快適な都市環境の形成のために水と緑の創出等を図るとともに、活力ある農山漁村の再生のため、高齢化の状況や社会的・経済的特性に配慮しつつ、生活環境の整備等を推進する。

(1)豊かで安定した住生活の確保

「住生活基本計画(全国計画)」(平成23年3月閣議決定)に掲げた目標(〔1〕安全・安心で豊かな住生活を支える生活環境の構築、〔2〕住宅の適正な管理及び再生、〔3〕多様な居住ニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備、〔4〕住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保)を達成するため、必要な施策を着実に推進している(表2-2-11)。

表2-2-11 「住生活基本計画(全国計画)」(平成23年3月閣議決定)における高齢社会対策に関する目標、成果指標及び基本的な施策

目標1 安全・安心で豊かな住生活を支える生活環境の構築

② 住生活の安心を支えるサービスが提供される環境の整備

【指標】

[高齢者の安定した住まいの確保]

  • 高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合 【0.9%(平成17年)→3~5%(平成32年)】

[地域における福祉拠点等の構築]

  • 生活支援施設を併設している公的賃貸住宅団地(100戸以上)の割合 【16%(平成21年)→25%(平成32年)】

【基本的な施策】

  • 医療・介護・住宅が連携し高齢者が安心できる住まいを確保するため、サービス付きの高齢者向け住宅の供給を促進する。
  • ライフステージに応じた住み替えの促進を図るため、住み替え時の金銭負担の軽減等を図るリバースモーゲージの普及の促進等を行う。
  • 高齢者、障害者、子育て世帯等(以下「高齢者等」という。)の地域における福祉拠点等を構築するため、公的賃貸住宅団地等において、民間事業者等との協働による医療・福祉サービス施設や子育て支援サービス施設等の生活支援施設の設置を促進する。
  • 公的賃貸住宅の計画的な建替え、ニュータウン再生の支援等を通じて、高齢者をはじめとする居住者の生活の利便性の向上を図る。
④ 移動・利用の円滑化と美しい街並み・景観の形成

【指標】

[ユニバーサルデザイン化の推進]

  • 共同住宅のうち、道路から各戸の玄関まで車椅子・ベビーカーで通行可能な住宅ストックの比率【16%(平成20年)→28%(平成32年)】

【基本的な施策】

  • 住宅及び住宅市街地のユニバーサルデザイン化を促進する。
  • 高齢者等の利便性の向上の観点を踏まえつつ、都心居住や街なか居住、中心市街地の活性化等を促進する。

目標4 住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保

【指標】

[高齢者等への配慮]

  • 高齢者(65歳以上の者)の居住する住宅のバリアフリー化率
    一定のバリアフリー化(注1) 【37%(平成20年)→75%(平成32年)】
    うち、高度のバリアフリー化(注2) 【9.5%(平成20年)→25%(平成32年)】
    (注1)一定のバリアフリー化:2箇所以上の手すり設置又は屋内の段差解消に該当
    (注2)高度のバリアフリー化:2箇所以上の手すり設置、屋内の段差解消及び車椅子で通行可能な廊下幅のいずれにも該当

【基本的な施策】

  • 高齢者等が、地域において安全・安心で快適な住生活を営むことができるよう、住宅のバリアフリー化や見守り支援等のハード・ソフト両面の取組を促進する。また、民間事業者等との協働により、公的賃貸住宅団地等の改修・建替えに併せた福祉施設等の設置を促進する。
資料:国土交通省
※「住生活基本計画(全国計画)」(平成23年3月閣議決定)における「住生活の安定の確保及び向上の促進に関する目標」は、上記のほか「2 住宅の適正な管理及び再生」、「3 多様な居住ニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備」がある。
ア 次世代へ継承可能な良質な住宅の供給促進
(ア)持家の計画的な取得・改善努力への援助等の推進

良質な持家の取得・改善を促進するため、勤労者財産形成住宅貯蓄の普及促進等を図るとともに、独立行政法人住宅金融支援機構の証券化支援事業及び勤労者財産形成持家融資を行っている。

また、住宅ローン控除等の税制上の措置により、引き続き良質な住宅の取得を促進した。

(イ)高齢者の持家ニーズへの対応

住宅金融支援機構において、親族居住用住宅を証券化支援事業の対象とするとともに、親子が債務を継承して返済する親子リレー返済(承継償還制度)を実施している。

(ウ)将来にわたり活用される良質なストックの形成

「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(平成20年法律第87号)に基づき、住宅を長期にわたり良好な状態で使用するため、その構造や設備について、一定以上の耐久性、維持管理容易性等の性能を備え、適切な維持保全が確保される「認定長期優良住宅」の普及促進を図った。

イ 循環型の住宅市場の実現
(ア)既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備

売買時点の中古住宅の状態を把握するための現況検査に対する消費者等の信頼の確保と円滑な普及を図るため、検査方法やサービス提供に際しての留意事項等について指針を示す「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を平成25年6月に取りまとめた。

一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会が運営するリフォーム事業者検索サイトの提供情報について、リフォームに活用可能な瑕疵担保責任保険の直近年度の利用実績を追加するなど、リフォーム事業者に関する消費者向け情報提供の充実を行った。

中古住宅売買に活用可能な瑕疵担保責任保険について、従来5年間であった保険期間を個人間の売買の場合は1年間、事業者が販売する場合には2年間とした商品等を追加した。

さらに、消費者が安心してリフォーム工事を依頼することができる市場環境を整備するため、「事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会」において、消費者保護及び適正なリフォーム工事の推進という観点から、事業者の団体及びその会員が取り組むべき事項について検討を行っている。

住宅・建築物省エネ改修等推進事業により、省エネ改修と併せて行うバリアフリー改修・耐震改修について支援を行い、住宅の省エネ化と併せて、住宅のバリアフリー化・耐震化を促進した。

(イ)高齢者に適した住宅への住み替え支援

高齢者等の所有する戸建て住宅等を、広い住宅を必要とする子育て世帯等へ賃貸することを円滑化する制度により、高齢者に適した住宅への住み替えを促進した。

また、同制度を活用して住み替え先住宅を取得する費用について、住宅金融支援機構の証券化支援事業における民間住宅ローンの買取要件の緩和を行っている。

さらに、高齢者が住み替える先のサービス付き高齢者向け住宅に係る入居一時金について、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関のリバースモーゲージの推進を支援している。

ウ 高齢者の居住の安定確保
(ア)良質な高齢者向け住まいの供給

平成23年10月の「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律」の施行により創設された「サービス付き高齢者向け住宅」の供給促進のため、整備費に対する補助、税制の特例措置、住宅金融支援機構の融資による支援を行った。

さらに、民間賃貸住宅を活用した住宅セーフティネットを構築するため、地方公共団体との連携を図りつつ、増加傾向にある民間賃貸住宅の空家をリフォームし、子育て世帯・障害者世帯等の住宅確保要配慮者向けに適切な契約・管理の下で賃貸する事業について支援を行った。

また、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅について、利用者を保護する観点から、前払金の返還方法や権利金の受領禁止の規定の適切な運用を引き続き支援している。

(イ)高齢者の自立や介護に配慮した住宅の建設及び改造の促進

「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」(平成13年国土交通省告示第1301号)の普及など住宅のバリアフリー化施策を展開した(表2-2-12)。

表2-2-12 高齢者が居住する住宅の設計に係る指針の概要

○ 趣旨

  • 高齢者が居住する住宅において、加齢等に伴って心身の機能の低下が生じた場合にも、高齢者がそのまま住み続けることができるよう、一般的な住宅の設計上の配慮事項を示すとともに、現に心身の機能が低下し、又は障害が生じている居住者(要配慮居住者)が住み続けるために必要とされる、当該居住者の状況に応じた個別の住宅の設計上の配慮事項を示すもの。

○ 主な内容

  • 一般的な住宅の設計上の配慮事項
    • ①住宅の住戸専用部分に関する部屋の配置、段差、手すり、通路・出入口の幅員、階段、便所、浴室等
    • ②一戸建て住宅の屋外部分のアプローチ、階段等
    • ③一戸建て住宅以外の住宅の共用部分及び屋外部分の共用階段、共用廊下、エレベーター、アプローチ等
  • 要配慮居住者のために個別に配慮した住宅の設計の進め方
    • ①要配慮居住者及び住宅の特性の把握
    • ②住宅の設計方針の検討及び住宅の設計
    • ③設計の反映の確認
資料:国土交通省

住宅金融支援機構においては、高齢者自らが行う住宅のバリアフリー改修について高齢者向け返済特例制度を適用した融資を実施している。また、証券化支援事業の枠組みを活用したフラット35Sにより、バリアフリー性能等に優れた住宅に係る金利引下げを行っている。さらに、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関が提供する住宅改良等資金に係るリバースモーゲージの推進を支援している。

バリアフリー構造等を有する「サービス付き高齢者向け住宅」の供給促進のため、整備費に対する補助、税制の特例措置、住宅金融支援機構の融資による支援を行った。

(ウ)公共賃貸住宅

公共賃貸住宅においては、バリアフリー化を推進するため、原則として、新たに供給するすべての公営住宅、改良住宅及び都市再生機構賃貸住宅について、段差の解消等一定の高齢化に対応した仕様により建設している。

この際、公営住宅、改良住宅の整備においては、中高層住宅におけるエレベーター設置等の高齢者向けの設計・設備によって増加する工事費について助成を行った。都市再生機構賃貸住宅においても、中高層住宅の供給においてはエレベーター設置を標準としている。

また、老朽化した公共賃貸住宅については、計画的な建替え・改善を推進した。

(エ)住宅と福祉の施策の連携強化

「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(平成13年法律第26号)に基づき、都道府県において高齢者の居住の安定確保のための計画を定めることを支援した。また、生活支援・介護サービスが提供される高齢者向けの賃貸住宅の供給を促進し、医療・介護と連携した安心できる住まいの提供を実施した。

また、市町村の総合的な高齢者住宅施策の下、シルバーハウジング・プロジェクト事業を実施するとともに、公営住宅等においてライフサポートアドバイザー等のサービス提供の拠点となる高齢者生活相談所の整備を促進した(図2-2-13)。

図2-2-13 シルバーハウジング・プロジェクトの概念図
(オ)高齢者向けの先導的な住まいづくり等への支援

高齢者等居住安定化推進事業により、高齢者等の居住の安定確保に資する住まいづくり・まちづくり等を行う事業の提案を公募し、先導性や普及性等に優れた事業に対して補助を行った。

(カ)高齢者のニーズに対応した公共賃貸住宅の供給

公営住宅については、高齢者世帯向公営住宅の供給を行った。また、地域の実情に応じて、高齢者世帯の入居収入基準を一定額まで引き上げるとともに、入居者選考において優先的に取り扱うことを可能としている。

都市再生機構賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対する入居又は住宅変更における優遇措置を行っている(表2-2-14)。

表2-2-14 公営住宅等の高齢者向け住宅建設戸数
年度 老人世帯向公営
住宅建設戸数
地域優良賃貸住宅
(高齢者型)管理開始戸数
都市再生機構賃貸住宅の優遇措置戸数 住宅金融支援機構の
割増貸付け戸数
賃貸 分譲
平成10年度 2,057 305 3,143 571 3,714 34,832
11 2,333 3,974 4,349
(946)
531 4,880 11,831
12 1,476 65 8,265
(2,317)
212 8,477 4,951
13 1,216 5,392 10,344
(4,963)
123 10,467 2,822
14 1,203 4,751 8,959
(4,117)
149 9,108 1,115
15 627 4,204 7,574
(3,524)
45 7,619 558
16 724 4,380 5,510
(3,353)
0 5,510 244
17 1,333 4,362 2,944
(1,662)
0 2,944 60
18 859 3,370 2,957
(1,294)
0 2,957 18
19 507 3,160 1529
(843)
0 1,529 0
20 303 2,981 1221
(684)
0 1,221 0
21 537 1,955 1,286
(612)
0 1,286 0
22 747 1,722 773
(386)
0 773 0
23 238 2,182 453
(309)
0 453 0
24 433 2,010 522
(309)
0 522 0
資料:国土交通省
(注1)地域優良賃貸住宅(高齢者型)管理開始戸数は高齢者向け優良賃貸住宅の管理開始戸数を含む。
(注2)都市再生機構賃貸住宅の優遇措置戸数には、障害者及び障害者を含む世帯に対する優遇措置戸数を含む(空家募集分を含む)。
(注3)優遇措置の内容としては、当選率を一般の20倍としている。(平成20年8月までは10倍)
(注4)( )内は高齢者向け優良賃貸住宅戸数であり内数である。
(注5)住宅金融支援機構の割増(平成10年に制度改正)貸付け戸数は、マイホーム新築における高齢者同居世帯に対する割増貸付け戸数である。この制度は平成17年度をもって廃止されたが、平成17年度中に申込みを受け付けた貸付け戸数を平成18年度以降に表示した。
(キ)高齢者の民間賃貸住宅への入居の円滑化

高齢者等の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、地方公共団体や関係事業者、居住支援団体等が組織する居住支援協議会が行う相談・情報提供等に対する支援を行った。

(2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進

バリアフリー施策を効果的かつ総合的に推進するため、平成12年3月、閣議口頭了解により「バリアフリーに関する関係閣僚会議」が設置され、16年6月、同会議は政府が一体となってバリアフリー化に取り組むための指針として「バリアフリー化推進要綱」を決定した。その後、障害の有無、年齢、性別等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方であるユニバーサルデザインの浸透を踏まえ、20年3月、「バリアフリーに関する関係閣僚会議」において、同要綱を改定し、バリアフリーとともにユニバーサルデザインを併せて推進することを明確化し、取組方針として生活者・利用者の視点に立った施策の展開を明記した「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」を決定した。また、閣議口頭了解の一部改正によって同会議を改組し、「バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する関係閣僚会議」を設置した。

ア 高齢者に配慮したまちづくりの総合的推進

高齢者等すべての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、高齢者に配慮したまちづくりを総合的に推進するため、市町村に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下、「バリアフリー法」という。)に基づく基本構想の作成を働きかけるとともに、バリアフリー環境整備促進事業を実施した。

東日本大震災の被災地において、高齢化の進行や人口減少等の社会構造変化や環境等に配慮したまちづくりを進めることが不可欠であることから、環境価値、社会的価値、経済的価値を新たに創造し、「誰もが暮らしたいまち」・「誰もが活力あるまち」として復興するため、少子高齢化、環境対応等の分野でのモデル事業の実施を支援した(表2-2-15)。

表2-2-15 平成25年度少子高齢化・環境対応等復興モデル事業費補助金採択案件
単位:千円
番号 自治体名 事業名 補助額
(総事業費)
1 福島県
新地町
環境未来都市の創造に向けた環境・経済・社会の価値を高める
「スマート・ハイブリッドタウン」構築事業
22,350
(44,700)
2 福島県
会津若松市
簡単ゆびナビ窓口事業
~ICTを活用したしんせつ窓口の実現~
18,473
(36,946)
3 宮城県
東松島市
健康維持増進を含む環境共生型生活サービス提供モデル住宅整備事業
~スマート&スリム 東松島おらいの家プロジェクト~
44,518
(89,079)
※本表はモデル事業費補助採択時点のもの、補助額は総事業費の2分の1以内

商店街振興組合等が行う商店街活性化の取組のうち、商店街の空き店舗を活用して、高齢者交流拠点としての機能を担うコミュニティ施設を設置・運営する事業等への支援を実施した。

イ 公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備
(ア)バリアフリー法に基づく公共交通機関のバリアフリー化の推進

公共交通機関のバリアフリー化については、バリアフリー法により、公共交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設若しくは大規模な改良又は車両等の新規導入に際しての移動等円滑化基準への適合義務、既設の旅客施設・車両等に対する適合努力義務を定めるとともに、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、平成32年度末までの整備目標を定め、バリアフリー化の推進を図っている。

(イ)ガイドライン等の策定

公共交通機関の旅客施設、車両等について、ガイドライン等でバリアフリー化整備の望ましい在り方を示し、公共交通事業者等がこれを目安として整備することにより、利用者にとってより望ましい公共交通機関のバリアフリー化が進むことが期待される。旅客施設については、平成25年6月に必要な見直しを行った「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」に基づきバリアフリー化を実施している。

車両等については、平成19年8月に必要な見直しを行った「旅客船バリアフリーガイドライン」、25年6月に必要な見直しを行った「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」、15年3月に策定した「次世代普及型ノンステップバスの標準仕様」に基づきそれぞれバリアフリー化を進めている。このうちノンステップバスについては、16年1月に標準仕様ノンステップバスの認定制度を創設した。

(ウ)公共交通機関のバリアフリー化に対する支援

高齢者の移動等円滑化を図るため、駅・空港等の公共交通ターミナルのエレベーターの設置等の高齢者の利用に配慮した施設の整備、ノンステップバス等の車両の導入などを推進している(表2-2-16)。

表2-2-16 高齢者等のための公共交通機関施設整備等の状況

(1)旅客施設のバリアフリー化の状況(注1)

  1日当たりの平均利用者数
3,000人以上の旅客施設数
平成24年度末 1日当たりの平均利用者数
3,000人以上かつトイレを
設置している旅客施設数
平成24年度末
段差の解消 視覚障害者
誘導用ブロック
障害者用トイレ
鉄軌道駅 3,457 2,829(81.8%) 3,229(93.4%) 3,236 2,561(79.1%)
バスターミナル 52 43(82.7%) 44(84.6%) 41 26(63.4%)
旅客船ターミナル 16 14(87.5%) 9(56.3%) 14 10(71.4%)
航空旅客ターミナル 33 28(84.8%)
(100%(注2))
32(97.0%) 33 33(100.0%)
(注1)バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に基づく公共交通移動等円滑化基準に適合するものの数字。
(注2)航空旅客ターミナルについては、障害者等が利用できるエレベーター・エスカレーター・スロープの設置はすでに平成13年3月末までに100%達成されている。

(2)車両等のバリアフリー化の状況

  車両等の総数 平成24年度末移動等円滑化
基準に適合している車両等
鉄軌道車両 52,669 29,385(55.8%)
ノンステップバス
(適用除外認定車両を除く)
45,495 18,672(41.0%)
リフト付きバス
(適用除外認定車両)
13,499 485(3.6%)
旅客船 706 173(24.5%)
航空機 537 479(89.2%)
(注1)「移動等円滑化基準に適合している車両等」は、各車両等に関する公共交通移動等円滑化基準への適合をもって算定。

(3)福祉タクシーの導入状況

平成24年度末 13,856両
(タクシー車両総数 243,247両)

資料:国土交通省

このための推進方策として、鉄道駅等旅客ターミナルのバリアフリー化、ノンステップバス、福祉タクシーの導入等に対する支援措置を実施している。

(エ)歩行空間の形成

移動はあらゆる生活活動に伴い発生する要素であり、また、就労、余暇を支える要素である。したがって、その障壁を取り除き、全ての人が安全に安心して暮らせる道路交通環境づくりが重要な課題となっており、信号機、歩道等の交通安全施設等の整備を推進した。

高齢歩行者等の安全を確保するため、①幅の広い歩道等の整備、②歩道の段差・傾斜・勾配の改善、③道路の無電柱化、④立体横断施設へのエレベーターや傾斜路の設置、⑤歩行者用案内標識の設置、⑥歩行者等を優先する道路構造の整備、⑦自転車道等の設置による歩行者と自転車交通の分離、⑧生活道路における通過交通の進入及び速度の抑制並びに幹線道路における交通流の円滑化を図るための信号機、道路標識、道路構造等の重点的整備、⑨高齢者等の道路横断時の安全を確保する機能を付加したバリアフリー対応型信号機の整備、⑩歩車分離式信号の運用、⑪見やすく分かりやすい道路標識・道路標示の整備、⑫信号灯器のLED(発光ダイオード)化を実施した。

また、生活道路において、区域を設定して最高速度時速30kmの区域規制や路側帯の設置・拡幅等の対策を行う「ゾーン30」の整備を推進した。

積雪や凍結に対し、鉄道駅周辺や中心市街地等特に安全で快適な歩行空間の確保が必要なところにおいて、歩道除雪の充実、消融雪施設等の冬期バリアフリー対策を実施した。

(オ)道路交通環境の整備

高齢者が安心して自動車を運転し外出できるよう、生活道路における交通規制の見直し、付加車線の整備、道路照明の増設、道路標識の高輝度化・大型化、道路標示の高輝度化、信号灯器のLED化、「道の駅」等の簡易パーキングエリア、高齢運転者等専用駐車区間の整備等、道路交通環境の整備を実施した。

(カ)バリアフリーのためのソフト面の取組

国民一人ひとりがバリアフリーについての理解を深めるとともに、ボランティアに関する意識を醸成し、誰もが高齢者等に対し、自然に快くサポートできるよう、高齢者等の介助体験・擬似体験等を内容とする「バリアフリー教室」の開催や目の不自由な方への声かけや列車内での利用者のマナー向上を図る「ひと声マナー」キャンペーンといった啓発活動等ソフト面での取組を推進している。

ユニバーサル社会に向けて、高齢者や障害者を始め、誰もが積極的に活動できるバリアフリー環境の構築をソフト施策の面から推進することが重要である。そのため外部有識者等の意見の活用や現地での実証実験によりICT(情報通信技術)を活用した歩行者移動支援を推進した。特に平成25年度は、歩行者移動支援サービスのベースとなる歩行空間ネットワークデータを安価で整備するための簡易計測手法の検討などの技術開発や地方公共団体等が導入を検討できるガイドラインの作成を行った。

ウ 建築物・公共施設等の改善

バリアフリー法に基づき、建築物のバリアフリー化を引き続き推進するとともに、同法に基づく認定を受けた優良な建築物(認定特定建築物)のうち一定のものの整備に対して支援措置を講じることにより、高齢者・障害者等が円滑に移動等できる建築物の整備を促進している(図2-2-17、図2-2-18)。

図2-2-17 バリアフリー化された建築物のイメージ

窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、高齢者等すべての人が円滑かつ快適に施設を利用できるよう、窓口業務を行う事務室の出入口の自動ドア化、多機能トイレの設置等による高度なバリアフリー化を目指した整備を推進している。

社会資本整備総合交付金等の活用によって、誰もが安全で安心して利用できる都市公園の整備を推進している。また、都市公園については、バリアフリー法に基づく基準等により、主要な園路の段差の解消、車いすでも利用可能な駐車場やトイレの設置など、公園施設のバリアフリー化を推進している。

(3)交通安全の確保と犯罪、災害等からの保護

ア 交通安全の確保

平成25年中の交通事故死者数のうち、高齢者の占める割合は半数以上となっており、今後、高齢化が更に進むことを踏まえると、高齢者の交通安全対策は重点的に取り組むべき課題である。

高齢者にとって安全で安心な交通社会の形成を図るため、平成23年3月に中央交通安全対策会議で決定した「第9次交通安全基本計画」(計画期間:平成23~27年度)等に基づき、①生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備、②参加・体験・実践型の交通安全教育、③交通安全教育を受ける機会の少ない高齢者を対象とした家庭訪問による個別指導、④シルバーリーダー(高齢者交通安全指導員)を対象とした交通安全教育、⑤高齢運転者対策等の交通安全対策を実施した。

また、高齢者の歩行中・自転車乗用中の交通事故を減少させるため、高齢者による高齢者のための交通安全教育を実施することで受講者の共感・理解が一層促進されると考えられることから、高齢者を交通安全教育のためのシニア・リーダーとして育成する歩行者・自転車乗用者の交通安全教育のためのシニア・リーダー育成モデル事業を行った。

さらに、歩行中及び自転車乗車中の交通事故死者に占める高齢者の割合が高いことを踏まえ、高齢者、歩行者、自転車事故の削減に向けて、歩行者、自転車事故が多発する交差点等での対策の重点化や、歩行者、自転車、自動車が適切に分離された空間の整備を図った。

イ 犯罪、人権侵害、悪質商法等からの保護
(ア)犯罪からの保護

高齢者が犯罪や事故に遭わないよう、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問し、困りごとや要望、意見等を把握するとともに、必要に応じて関係機関や親族への連絡を行ったほか、認知症等によってはいかいする高齢者を発見、保護する体制づくりを関係機関等と協力して推進した。

振り込め詐欺については、特に高齢者の被害が多いオレオレ詐欺等に重点指向した取締活動を強化するとともに、高齢者への複線的な広報啓発活動、関係機関等と連携した官民一体となった予防活動を推進した。このほか、東日本大震災に絡み、震災に便乗した詐欺が依然として発生していることから、引き続き注意を呼び掛けるとともに、取締活動を推進した。

さらに、高齢者をねらう悪質商法等の取締りを推進するとともに、口座凍結等の被害拡大防止対策、悪質商法等からの被害防止に関する広報・啓発及び悪質商法等に関する相談活動を行った。

また、振り込め詐欺や利殖勧誘事犯の犯行グループは、被害者や被害者になり得る者等が登載された、いわゆる「闇の名簿」を利用している。当該名簿登載者の多くは高齢者であり、今後更なる被害に遭う可能性が高いと考えられるため、捜査の過程で警察が入手したこれらの名簿をデータ化し、都道府県警察が委託したオペレーターがこれを基に電話による注意喚起を行うなどの被害防止対策を実施した。

加えて、今後、認知症高齢者や一人暮らし高齢者が増加していく状況を踏まえ、市民を含めた後見人等を確保できる体制を整備・強化する必要があることから、平成24年度に引き続き、市町村において地域住民で成年後見に携わろうとする者に対する研修や後見活動が行われるよう支援した。

(イ)人権侵害からの保護

「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年法律第124号)に基づき、養介護施設従事者等による虐待及び養護者による虐待の状況について、平成24年度に引き続き必要な調査等を実施し、各都道府県・市町村における虐待の実態・対応状況の把握に努めるとともに、高齢者に対する虐待の防止等の取組が推進されるよう必要な支援を行った。

なお、支援を必要とする高齢者の実態把握や虐待への対応など、高齢者の権利擁護や総合相談窓口の業務を円滑に行うことができるよう、各市町村に設置された「地域包括支援センター」の職員に対する研修については、引き続き実施した。

法務局・地方法務局等において、高齢者の人権問題に関する相談に応じるとともに、家庭や高齢者施設等における虐待等、高齢者を被害者とする人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、その結果を踏まえ、事案に応じた適切な措置を講じるなどして、被害の救済及び人権尊重思想の普及高揚に努めている。平成25年度においても、引き続き高齢者施設等の社会福祉施設において入所者等及び家族が気軽に相談できるよう、特設相談所を開設するほか、全国一斉の「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間を設け、電話相談の受付時間を延長するとともに、休日も相談に応じるなど、相談体制の強化を図った。

(ウ)悪質商法からの保護

高齢者を狙った特殊詐欺(振り込め詐欺等)などを未然に防止するため、政府広報として、昨年に引き続き平成25年9月から「『高齢者の消費者トラブル未然防止』啓発キャンペーン」を実施し、被害の未然防止に向けた啓発と相談窓口の周知に取り組んだ。

また、高齢者被害の掘り起こしと注意喚起を目的に「ねらわれてます高齢者 悪質商法110番」を9月に実施した。

高齢者等の消費者被害の未然防止・拡大防止のため、消費者の不安を払拭し、安全・安心を確保するためにとりまとめられた「消費者安心戦略」のうち「消費者安全・安心対策」の中で、トラブルに遭うリスクの高い消費者(高齢者等)を見守る「地域ネットワーク」の構築や啓発活動等を推進することとした。

この「地域ネットワーク」の重要性について、「地方消費者行政の体制整備の推進に関する建議」(平成25年8月6日消費者委員会)を踏まえ、消費者の安全・安心確保のための「地域体制の在り方」に関する意見交換会を開催し、報告書を取りまとめた。さらにこれを踏まえ、不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律案を第186回通常国会へ提出した。

高齢者の周りの人々による見守りの強化の一環として、高齢者団体のほか障害者団体、行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」を平成25年6月に開催し、「高齢者、障害者の消費者トラブル防止のため積極的な情報発信を行う」「多様な主体が緊密に連携して、消費者トラブルの防止や「見守り」に取り組む」等を申し合わせた。その後、同年12月に開催した同協議会において、申し合わせ事項についてフォローアップ状況を報告した。

加えて、高齢者に対する悪質商法による二次被害を防止するため、地方自治体と連携しながら、①定期的な電話による見守り、②協力を希望する高齢者宅への通話録音装置の配置による情報や証拠の収集にモデル事業として取り組み、被害防止と法執行強化の効果を実証的に把握し、その成果を地方自治体向けガイドラインとして取りまとめた。

また、全国各地からの要請を元に「消費者問題出前講座」を実施したほか、消費者側の視点から注意点を簡潔にまとめたメールマガジン「見守り新鮮情報」を月2回程度高齢者や高齢者を支援する民生委員や介護関係者等に向けて配信した。

平成24年度以降、高齢者等に対して担保価値のない物品を質に取り、実際には年金等を担保として違法な高金利で貸付けを行ういわゆる「偽装質屋」に関する消費生活相談が増加したことから、こうした偽装質屋からの借入を行わないよう、広く国民へ注意喚起を行った(平成25年6月3日)。

消費者基本法(昭和43年5月30日法律第78号)に基づき取りまとめた「平成24年度消費者政策の実施の状況」(平成25年版消費者白書)において、高齢者の消費者トラブルを特集とし、広く国民や関係団体等に情報提供を行った。

消費者安全法については、「多数消費者財産被害事態」が発生し、他の法律で対応できない「隙間事案」である場合に、不当な取引を行う事業者に対する行政措置をとることができることを内容とした改正法が平成25年4月1日に施行された。

消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害の回復を容易にするため、特定適格消費者団体が消費者に代わって損害賠償等の請求に関する訴訟を提起することができるようにするための「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」を平成25年4月に第183回通常国会に提出した。同法案は、同年12月に成立し、公布された。成立後は、施行(公布の日から3年を超えない範囲内で政令で定める日)に向けた準備(政令、内閣府令、ガイドラインの策定に向けた作業)及び制度の周知活動を行った。

ウ 防災施策の推進

病院、老人ホーム等の災害時要援護者関連施設を守る土砂災害防止施設の整備、激甚な水害、土砂災害を受けた場合の再度災害防止等を図った。さらに、災害時における高齢者等災害時要援護者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、「水防法」(昭和24年法律第193号)及び「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(平成12年法律第57号)に基づき、浸水想定区域内又は土砂災害警戒区域内の高齢者等災害時要援護者が利用する施設への洪水予報又は土砂災害警戒情報等の伝達方法を定めることを推進した。また、土砂災害防止対策基本指針に基づき災害時要援護者の避難支援体制の強化を図るとともに、「土砂災害警戒避難ガイドライン」(平成19年4月)(国土交通省砂防部)により市町村の警戒避難体制の準備が円滑に行えるように引き続き支援を行った。あわせて、土砂災害特別警戒区域(急傾斜地の崩壊等が発生した場合には、建築物に損壊が生じ、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域)における災害時要援護者関連施設の建築の許可制等を通じて高齢者等の安全が確保されるよう、基礎調査や区域指定の促進等に関する支援を実施した。

住宅火災で亡くなる高齢者等の低減を図るため、春・秋の全国火災予防運動を通じて「高齢者等の災害時要援護者の把握とその安全対策に重点を置いた死者発生防止対策の推進」等を重点に地域が一体となって、住宅用火災警報器等の設置対策や防炎品の普及促進を含めた総合的な住宅防火対策を推進するとともに、「敬老の日に「火の用心」の贈り物」をキャッチフレーズとする「住宅防火・防災キャンペーン」を実施し、高齢者等に対して住宅用火災警報器等の普及促進を図った。

また、高齢者が安心して生活を営み、社会参加することができるよう、火災に対する安全性を効果的に確保するため、ユニバーサルデザイン等の観点を取り入れた消防用設備・機器等の導入・普及方策等の検討を進めた。

現行の消防法令では火災警報は音によるものとされ、音以外の警報装置は、その導入・普及がほとんど進んでいない状況であるため、火災警報を高齢者・障害者に的確に伝える装置の円滑な導入に向けて、公共的な施設をモデルとして、光による警報装置を設置し、効果的な設置・維持管理方法について検討を行った。

市町村における災害時要援護者の避難支援対策の取組状況を調査するとともに、先進的取組事例を紹介するなどして、市町村における災害時要援護者の避難支援対策の取組を促進した。

情報を迅速かつ確実に伝達するため、全国瞬時警報システム(J-ALERT)により防災行政無線による放送(音声)のみならず、携帯メール等多様な手段を自動起動するための整備を促進した。

山地災害からの生命の安全を確保するため、病院、社会福祉施設等の災害時要援護者関連施設が隣接している山地災害危険地区等について、治山施設の設置や荒廃した森林の整備等を計画的に実施した。

平成25年6月の災害対策基本法改正において、高齢者や障害者、乳幼児などの防災上の施策において配慮を要する者のうち災害発生時の避難に特に支援を要する者の名簿として「避難行動要支援者名簿」の作成を市町村長に義務付けるとともに、消防機関や民生委員等の地域の支援者との間で情報共有するための制度を設けた。

あわせて、上記法改正を受けた事務に係る取組方法の指針として、市町村向けに「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」を策定・公表した。

法改正においては、避難所における生活環境の整備等に関する努力義務規定も設けられ、そのような、取組を進める上で参考となるよう、主に市町村向けに、避難所運営に当たって高齢者を含む避難者の支援に関して留意すべき点等も盛り込んで、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を策定・公表した。

なお、平成25年10月から11月にかけて全国9か所で開催したブロック会議において、市町村の防災担当者や福祉担当者を対象として両取組指針の内容を説明するとともに、先進的な取組事例も合わせて紹介するなど、周知徹底を図った。

エ 東日本大震災への対応

東日本大震災に対応して、「介護基盤緊急整備等臨時特例基金」を活用し、日常生活圏域で医療・介護等のサービスを一体的・継続的に提供する「地域包括ケア」の体制を整備するため、被災市町村が策定する復興計画等に基づき実施される、①小規模の特別養護老人ホーム・認知症高齢者グループホーム等に加え、在宅サービス等を行う拠点の整備等や、②長期化する避難生活による高齢者等の日常生活を支えるため、当面必要となる、介護等のサポート拠点(応急仮設住宅での総合相談、高齢者等の活動支援等を包括的に提供)の整備等に係る事業に対して財政支援を行った。

あわせて、介護保険において、被災者を経済的に支援する観点から、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難指示区域等(警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域、特定避難勧奨地点(ホットスポット)として指定された4つの区域等であり、既に解除・再編された場合も含む。)の住民について、介護保険の利用者負担や保険料の減免を行った保険者に対する財政支援を1年間延長した。なお、避難指示区域等以外の住民については、保険者の判断により、引き続き利用者負担等の減免措置を行った場合は、特別調整交付金を活用して、財政の負担が著しい場合に減免額の一定の額について財政支援を行っている。

日本司法支援センター(法テラス)では、平成24年度に引き続き、震災に起因する法的トラブルを抱え、経済的・精神的に不安定な状況に陥っている被災者を支援するため、震災以降の取組を継続し、「震災 法テラスダイヤル」(フリーダイヤル)や被災地出張所における業務の適切な運用を行うなど、生活再建に役立つ法制度などの情報提供及び民事法律扶助を実施した。

被災地出張所は、弁護士のいる都市部への移動が困難な高齢者を始めとする被災者に対する法的支援の拠点として、平成24年度までに7か所(岩手県2か所、宮城県3か所、福島県2か所)設置されたが、上記の業務に加えて、出張所に来所することが困難な被災者のために、車内で相談対応可能な自動車を利用した仮設住宅等での巡回相談も実施した。

また、東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律(平成24年4月1日施行)に基づき、東日本大震災法律援助事業(東日本大震災に際し災害救助法が適用された市町村の区域(東京都を除く。)に23年3月11日において住所等を有していた者の東日本大震災に起因する紛争について、その者の資力状況にかかわらず、訴訟代理、書類作成、法律相談等に係る援助を行う業務)を実施した。

(4)快適で活力に満ちた生活環境の形成

ア 快適な都市環境の形成

誰もが身近に自然とふれあえる快適な環境の形成を図るため、歩いていける範囲の身近な公園を始めとした都市公園等の計画的な整備を行っている。

また、良好な水辺空間の整備を行うことにより、河川等は、高齢者にとって憩いと交流の場を提供する役割を果たしている。

イ 活力ある農山漁村の形成

「食料・農業・農村基本法」(平成11年法律第106号)に基づき策定された「食料・農業・農村基本計画」(平成22年3月閣議決定)を踏まえ、農村高齢者がいきいきと活躍できる環境づくりのため、農村の高齢者が、農業に関する豊富な知識や技術、経験を活かし、新規就農者など地域の農業者等の育成や技術指導を行う取組を支援するとともに、高齢者活動支援施設等の整備を実施した。

また、集落が市町村、NPO法人等多様な主体と連携を行い、農山漁村の持つ豊かな自然と「食」を健康等に活用する取組を支援した。さらに、社会福祉法人等が高齢者のデイサービスの一環として利用する農園の整備や、高齢者を対象とした生きがい農園の整備を実施した。

農山漁村の健全な発展と活性化を図るため、農山漁村地域の農林水産業生産基盤と生活環境の一体的・総合的な整備を推進し、都市にも開かれた美しくゆとりある農山漁村空間の創出を図った。

また、高齢者が安心して活動し、暮らせるよう、農山漁村における農業施設等のバリアフリー化等を推進した。高齢者等による農作業中の事故が多い実態を踏まえ、地域ぐるみでの農作業安全活動を実践する体制の整備を図るとともに、高齢農業者の安全意識を高めるため、農作業安全の全国運動の実施や啓発方法の検討を行った。

さらに、近年、高齢化の進展や食料品小売店・飲食店数の減少等社会・経済構造の変化によって、中山間地域はもとより都市部においても、住民に食料品の購入や飲食に不便や困難をもたらす「食料品アクセス問題」が発生しており、地域の実態に応じた有効な食料品のアクセス改善を図ることが緊急の課題となっている。このため、食料品へのアクセスが困難となっている地域において、高齢者等への食料品の円滑な提供を図るため、民間事業者等が「食料品アクセス問題」を抱える市町村等と連携して行う地域の実態を踏まえた取組を支援した。

加えて、「水産基本法」(平成13年法律第89号)に基づき策定された「水産基本計画」(平成24年3月閣議決定)を踏まえ、高齢者に配慮した浮桟橋や屋根付き岸壁等の施設整備を実施した。

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