平成27年度 高齢社会対策

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第2 分野別の高齢社会対策

2 健康・介護・医療等分野に係る基本的施策

(1)健康づくりの総合的推進

ア 生涯にわたる健康づくりの推進

平成25年4月に開始した健康日本21(第二次)に基づき、企業、関係団体、地方公共団体などと連携し、健康づくりについて取組の普及啓発を推進する「スマート・ライフ・プロジェクト」を引き続き実施していく。

さらに、健康な高齢期を送るためには、壮年期からの総合的な健康づくりが重要であるため、市町村が健康増進法に基づき実施している健康教育、健康診査、機能訓練、訪問指導等の健康増進事業について一層の推進を図る。

また、高齢化の進展等により今後も医療費の増加が見込まれる中で、国民皆保険を堅持していくためには、必要な医療は確保しつつ、効率化できる部分は効率化を図ることが重要であり、特定健診等の生活習慣病対策など中長期的な各般の取組を引き続き進めていく。

いつまでも健康で活力に満ちた長寿社会を実現するため、スポーツや健康づくりに無関心な層や、健康づくりの必要性を感じているものの行動に移せない高齢者などを対象として、スポーツによる健康増進の取組を支援することにより、健康寿命の延伸を図り、超高齢化や人口減少社会の進展にも対応できるスポーツを通じた地域の活性化を推進する。27年10月には、文部科学省の外局としてスポーツ庁を設置し、スポーツを通じた健康増進に積極的に取り組む。

「第2次食育推進基本計画」に基づき、家庭、学校・保育所、地域等における食育の推進、食育推進運動の全国展開、生産者と消費者の交流促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化、食文化の継承のための活動への支援、食品の安全性の情報提供等を実施する。

高齢受刑者で日常生活に支障がある者の円滑な社会復帰を実現するため、引き続きリハビリテーション専門スタッフを配置する。

イ 健康づくり施設の整備等

一定の要件を満たした運動施設及び温泉施設を「運動型健康増進施設」、「温泉利用型健康増進施設」及び「温泉利用プログラム型健康増進施設」として認定し、健康を増進するための取組を引き続き進める。

また、散歩や散策による健康づくりにも資する取組として、地方公共団体等のまちづくりと一体となった「かわまちづくり」の推進を図る。

そのほかに、国有林野では、優れた自然景観を有し、森林浴や自然観察、野外スポーツ等に適した「レクリエーションの森」において、利用者ニーズに対応した施設整備等を行い、レクリエーションの場の提供を図る。

国立公園においては、主要な利用施設であるビジターセンター、園路、公衆トイレ等についてバリアフリー化を推進するなど、高齢者にも配慮した自然とのふれあいの場の整備を実施する。

都市公園においては、健康づくりの様々な活動が広く行われるよう高齢者等にも配慮した整備を推進する。

ウ 介護予防の推進

要介護状態等になることを予防し、要介護状態等になった場合でもできるだけ地域において自立した日常生活を営むことができるよう市町村における地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防の取組を推進する。

平成27年度からは、新しい「介護予防・日常生活支援総合事業」が開始される。これは、多様な生活支援の充実、高齢者の社会参加と地域における支え合い体制づくり、介護予防の推進等を図るものであり、地域包括ケアシステムの構築に向け、市町村の取組を支援していく。

(2)介護保険制度の着実な実施

介護保険制度が定着し、サービス利用の大幅な伸びに伴い、介護費用が急速に増大している。このような介護保険制度の状況等を踏まえ、平成26年6月に成立した医療介護総合確保推進法において、介護分野の制度改革として、地域包括ケアシステムの構築と介護保険制度の持続可能性の確保のための見直し事項が盛り込まれている。

具体的には、地域包括ケアシステムの観点からは、消費税増収分を用いて、在宅医療・介護連携の推進、認知症施策の充実、地域ケア会議の推進及び生活支援サービスの基盤強化のため、地域支援事業の充実等を図ることとしている。

また、費用負担の公平化の観点からは、消費税増収分を用いて、低所得の高齢者の保険料軽減を強化する一方、一律に1割であるサービス利用時の自己負担を一定以上の所得がある高齢者は2割とする措置や、低所得の施設利用者に対して一定の食費・居住費を補助する「補足給付」の要件に資産の状況などを追加する措置を講じることとしている。

今後、これらの施策を着実に実施していくため、必要な準備や周知等を図る。

(3)介護サービスの充実

ア 必要な介護サービスの確保

地域住民が可能な限り、住み慣れた地域で介護サービスを継続的・一体的に受けることのできる体制(地域包括ケアシステム)の実現を目指すため、平成27年度においても訪問介護と訪問看護が密接に連携した「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の機能をあわせ持つ「複合型サービス」等の地域密着型サービスの充実、サービス付き高齢者向け住宅等の高齢者の住まいの整備、特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム等)を適切に運用するための支援を進める。

また、地域で暮らす高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法として、全国の自治体に「地域ケア会議」の普及・定着を図る。

「地域ケア会議」は、地域における高齢者支援の中核機関である地域包括支援センターにおいて、医療、介護の専門家など多職種が協働して個別事例の支援方針を検討し、この取組を積み重ねることにより地域の共通課題を抽出していく。市町村では、地域包括支援センターから提供された地域課題等に基づき、課題の解決や地域包括ケアの基盤整備に向けた資源開発・政策形成等を行う。国においては、「地域ケア会議」の運営に係る技術的な支援、実務者の養成、円滑な実施に向けた体制づくり等自治体の取組を支援する。

あわせて、介護人材の確保のため、介護労働者の雇用管理改善や人材の参入促進に取り組む。具体的には、27年度に改正する「介護雇用管理改善等計画」に基づき、介護労働者の雇用管理改善を促進する。また、従前から実施してきた介護福祉機器・雇用管理制度を導入する事業主への助成措置や、介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習を引き続き実施する。人材の参入促進を図る観点からは、介護に関する専門的な技能を身につけられるようにするための離職者訓練の充実を引き続き図るとともに、全国の主要なハローワークに設置する「福祉人材コーナー」において、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人者への助言・指導等を実施することに加え、「福祉人材コーナー」を設置していないハローワークにおいても、福祉分野の職業相談・職業紹介、求人情報の提供及び「福祉人材コーナー」への利用勧奨等の支援を実施していく。さらに、各都道府県に設置されている福祉人材センターにおいて、当該センターに配置された専門員が求人事業所と求職者間双方のニーズを的確に把握した上で、マッチングによる円滑な人材参入・定着促進、職業相談、職業紹介等を推進する。

また、介護の業務に従事する際に、在宅・施設を問わず必要となる基本的な知識・技術を修得する介護職員初任者研修を引き続き各都道府県において実施する。

26年度に引き続き、都道府県・市区町村、介護事業者、関係機関・団体等の協力を得つつ、「介護の日」に合わせ、国民への啓発のための取組を重点的に実施する。

イ 介護サービスの質の向上

介護保険制度の運営の要である介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質の向上を図るため、引き続き、実務研修及び現任者に対する研修を体系的に実施する。また、研修水準の平準化を図るため、実務研修及び現任者に対する研修の指導者用のガイドラインを引き続き周知する。なお、地域包括支援センターにおいては、介護支援専門員に対する助言・支援や関係機関との連絡調整等を行い、地域のケアマネジメント機能の向上を図っていく。

また、高齢者の尊厳の保持を図る観点から、特別養護老人ホームにおけるプライバシーの保護に配慮するとともに、養介護施設従事者や医師等高齢者の福祉に関係のある者に早期発見に努めてもらうよう周知を行うなど、高齢者虐待の防止に向けた取組を推進していく。

平成24年4月より、一定の研修を受けた介護職員等は、一定の条件の下に喀痰吸引等の行為を実施できることとなった。27年度においては、引き続き各都道府県と連携の下、研修等の実施を推進し、サービスの確保、向上を図っていく。

ウ 認知症高齢者支援施策の推進

平成27年1月に「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」(以下「総合戦略」という。)を関係省庁と共同して策定した。策定・公表にあたって、認知症施策推進関係閣僚会合が開催され、総合戦略に基づき、関係省庁が一丸となって認知症施策に取り組んでいくことが確認された。

総合戦略は、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる37年を目指し、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現すべく、7つの柱に沿って、認知症施策を総合的に推進していくもので、29年度末等を当面の目標年度として、施策ごとの具体的な数値目標などを定めている。

具体的には、①認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進、②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供、③若年性認知症施策の強化、④認知症の人の介護者への支援、⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進、⑥認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進、⑦認知症の人やその家族の視点の重視の7つの柱に沿って施策を推進することとしている。

(4)高齢者医療制度等について

ア 高齢者医療制度について

社会保障制度改革プログラム法に基づき、より負担能力に応じた負担とし、被用者保険者の支え合いを強化するため、被用者保険者の後期高齢者支援金について、総報酬割部分(現行制度では3分の1)を段階的に引き上げ、平成27年度は2分の1、平成28年度は3分の2、平成29年度から全面総報酬割を実施するなどを内容とする法律案を第189回国会に提出している。

イ 地域における包括的かつ持続的な在宅医療・介護の提供

持続可能な社会保障制度を確立するためには、高度急性期医療から在宅医療・介護までの一連のサービス提供体制を一体的に確保できるよう、質が高く効率的な医療提供体制を整備するとともに、国民が可能な限り住み慣れた地域で療養することができるよう、医療・介護が連携して地域包括ケアシステムの実現を目指すことが必要である。このため、平成26年度に引き続き、地域医療介護総合確保基金を活用し、在宅医療・介護サービスの充実等のための地域の取組を支援していく。また、在宅医療・介護の連携推進に係る事業は、介護保険法の地域支援事業に位置づけ、市区町村が主体となって郡市区医師会等と連携しながら取り組むこととしている。実施可能な市区町村は27年4月から取組を開始し、30年4月には全ての市区町村で実施していく。

(5)住民等を中心とした地域の支え合いの仕組み作りの促進

ア 地域の支え合いによる生活支援の推進

平成27年度においては、既存の地域福祉関係事業を再編し、年齢や性別、その置かれている生活環境などにかかわらず、身近な地域において誰もが安心して生活を維持できるよう、地域住民相互の支え合いによる共助の取組を通じて、高齢者を含め、支援が必要な人を地域全体で支える基盤を構築するため、自治体が行う地域のニーズ把握、住民参加による地域サービスの創出、地域のインフォーマル活動の活性化等の取組を支援する「地域における生活困窮者支援等のための共助の基盤づくり事業」を創設し、引き続き地域福祉の推進に取り組むこととしている。

また、「寄り添い型相談支援事業」として、24時間365日ワンストップで電話相談を受け、必要に応じて、具体的な解決につなげるための面接相談、同行支援を行う事業を実施する。

近年の人口減少社会を踏まえ、地域住民が主体となった将来ビジョンづくりや、集落営農組織等を活用した集落間のネットワーク化により、地域の維持・活性化に必要なサービス(農産物の庭先出荷、高齢農家に対する声かけや農業資材の購入サポート等)の提供が可能な体制の構築を支援する。

農村地域のみならず都市部においても、高齢者を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる消費者が増加しているため、食品流通業者と市町村等の地域の関係者が連携して食料品アクセス環境の改善に向けた方策を策定する取組を支援する。

イ 地域福祉計画の策定の支援

福祉サービスを必要とする高齢者を含めた地域住民が、地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるよう地域福祉の推進に努めている。このため、福祉サービスの適切な利用の推進や福祉事業の健全な発達、地域福祉活動への住民参加の促進等を盛り込んだ地域福祉計画の策定の支援を引き続き行う。

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