平成28年度 高齢社会対策

[目次]  [戻る]

第1 平成28年度の高齢社会対策

 

平成28年度における主な施策は次のとおりである。

○一億総活躍社会の実現に向けて

我が国の構造的な問題である少子高齢化に真正面から挑み、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」の取組を通じて「一億総活躍社会」の実現を目指す。

そのため、平成27年11月26日の一億総活躍国民会議(第3回)では、「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策-成長と分配の好循環の形成に向けて-」が取りまとめられ、「ニッポン一億総活躍プラン」策定に向けて、検討すべき方向性が示された。

  • ①必要な介護サービスの供給確保の観点から、ニーズに見合った介護施設・在宅サービス整備、介護人材の育成・確保・待遇改善、介護事業の生産性向上に取り組む。
  • ②介護サービスを必要とする人の目線に立った支援推進のため、様々な働き方や暮らしぶりを踏まえた家族に対する相談・支援体制を充実するとともに、長時間労働を是正し、テレワークやフレックスタイム制などによる多様で柔軟な働き方を推進する。さらに、介護休業・休暇を取得しやすい職場環境づくりを進める。
  • ③予防に重点化した医療制度改革などにより健康寿命の延伸を図る。高齢者の活躍の場を広げるため、多様な就労機会の提供等を進めるとともに、年金も含めた所得全体の底上げを図ることで、高齢者世帯の自立を健康面と経済面から支援する。

また、働きたいと考えている高齢者の希望を叶えるためにも、人口減少する中で我が国の成長力を確保していくためにも、高齢者の就業率を高めていくことは重要である。そのため、高齢者雇用促進について、企業の自発的な動きが広がるよう、65歳以降の雇用継続や65歳までの定年延長を行う企業等に対する支援・環境整備策のパッケージを検討する。

これらの方向性をもとに、「ニッポン一億総活躍プラン」を平成28年5月に策定することとしている。

(1)就業・年金

○高齢者等の再就職の援助・促進

「事業主都合の解雇」又は「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に該当しなかったこと」により離職する高年齢離職予定者の希望に応じて、その職務の経歴、職業能力等の再就職に資する事項や再就職援助措置を記載した求職活動支援書を作成・交付することが事業主に義務付けられており、交付を希望する高年齢離職予定者に求職活動支援書を交付しない事業主に対しては、公共職業安定所が必要に応じて指導・助言を行う。求職活動支援書の作成に当たって、ジョブ・カードを求職活動支援書としても活用することが可能となっていることから、その積極的活用を促す。

また、高齢者の雇用が進展している状況を踏まえ、失業中のセーフティネットを確保するため、平成29年1月1日より、65歳以降に新たに雇用される者を雇用保険の適用の対象とする。

○仕事と家庭を両立しやすい職場環境整備

中高年を中心として、家族の介護のために離職・転職する労働者が増加していることから、平成27年度に改定した介護離職を予防するための両立支援対応モデルの普及促進を図るとともに、介護休業を取得する労働者が発生した場合の企業の対応モデル「介護支援プラン」モデルを構築し、周知を図ることで、労働者の仕事と介護の両立を支援し、継続就業を促進する。

また、「雇用保険法等の一部を改正する法律」が28年3月に成立したことを受けて、同法の周知及び着実な履行確保に取り組む。

○情報通信を活用した遠隔型勤務形態の開発・普及

平成27年6月30日に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」に基づき、テレワークが高齢者等の遠隔型勤務形態に資するものとして、一層の普及拡大に向けた環境整備、普及啓発等を関係省庁が連携して推進する。

○高齢期に備える資産形成等の促進

勤労者財産形成貯蓄制度の普及等を図ることにより、高齢期に備えた勤労者の自助努力による計画的な財産形成を促進する。

また、認知症高齢者等の財産管理や契約に関し本人を支援する成年後見制度について周知する。

成年後見制度は、認知症、知的障害その他の精神上の障害があることにより財産の管理又は日常生活等に支障がある者を支える重要な手段であり、その利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、平成28年4月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が成立した。今後、同法の円滑な施行に取り組む。

(2)健康・介護・医療

○生涯にわたる健康づくりの推進

平成25年4月に開始した健康日本21(第二次)に基づき、企業、関係団体、地方公共団体などと連携し、健康づくりについて取組の普及啓発を推進する「スマート・ライフ・プロジェクト」を引き続き実施していく。

さらに、健康な高齢期を送るためには、壮年期からの総合的な健康づくりが重要であるため、市町村が健康増進法に基づき実施している健康教育、健康診査、機能訓練、訪問指導等の健康増進事業について一層の推進を図る。

○介護予防の推進

要介護状態等になることを予防し、要介護状態等になった場合でもできるだけ地域において自立した日常生活を営むことができるよう市町村における地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防の取組を推進する。

平成27年度から開始された「介護予防・日常生活支援総合事業」は、多様な生活支援の充実、高齢者の社会参加と地域における支え合い体制づくり、介護予防の推進等を図るものであり、引き続き地域包括ケアシステムの構築に向け、市町村の取組を支援していく。

○必要な介護サービスの確保

地域住民が可能な限り、住み慣れた地域で介護サービスを継続的・一体的に受けることのできる体制の実現を目指すため、平成28年度においても訪問介護と訪問看護が密接に連携した「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の機能をあわせ持つ「看護小規模多機能型居宅介護」等の地域密着型サービスの充実、サービス付き高齢者向け住宅等の高齢者の住まいの整備、特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム等)を適切に運用するための支援を進める。

○認知症高齢者支援施策の推進

平成27年1月に策定した「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」を①認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進、②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供、③若年性認知症施策の強化、④認知症の人の介護者への支援、⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進、⑥認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進、⑦認知症の人やその家族の視点の重視の7つの柱に沿って推進していく。

また、今般の最高裁判決を受けて、政府としても、関係省庁で構成する「認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議」において、認知症の方による事件・事故に社会としてどのように備えていくのか、実態把握の方法など検討していくこととしており、認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて取り組んでいく。

○地域の支え合いによる生活支援の推進

年齢や性別、その置かれている生活環境などにかかわらず、身近な地域において誰もが安心して生活を維持できるよう、地域住民相互の支え合いによる共助の取組を通じて、高齢者を含め、支援が必要な人を地域全体で支える基盤を構築するため、自治体が行う地域のニーズ把握、住民参加による地域サービスの創出、地域のインフォーマル活動の活性化等の取組を支援する「地域における生活困窮者支援等のための共助の基盤づくり事業」などを通じて、引き続き地域福祉の推進に取り組むこととしている。

(3)社会参加・学習

○高齢者の社会参加と生きがいづくり

中央教育審議会答申(新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(平成27年12月))を踏まえ、地域住民等、高齢者が自らの経験や知識を生かして行う学校支援活動や、放課後等に学校の余裕教室等を活用して、学習・体験・交流活動等を提供する放課後子供教室、家庭教育に関する学習機会の提供等を行う家庭教育支援など、地域と学校が連携・協働して、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支える地域学校協働活動を推進する新たな体制(地域学校協働本部)を全国的に整備する。

○学習機会の体系的な提供と基盤の整備

教育基本法、社会教育法など生涯学習の理念・推進等を定める関係法律や中央教育審議会の答申等に基づき、国民一人一人が生涯を通して学ぶことのできる環境の整備、多様な学習機会の提供、学習した成果が適切に評価されるための仕組みづくりなど、「生涯学習社会」の実現のための取組を進める。

(4)生活環境

○高齢者の居住の安定確保

住宅に困窮している低所得の高齢者等の居住の安定確保に向け、居住支援協議会等との連携や適切な管理の下で、空き家等を活用し一定の質が確保された賃貸住宅の供給促進のため、空き家等のリフォームやコンバージョンに対する支援を行う。

また、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅について、利用者を保護する観点から、前払金の返還方法や権利金の受領禁止の規定の適切な運用を引き続き支援する。

○悪徳商法からの保護

平成28年4月1日に施行される改正消費者安全法により、地方公共団体において設置することが可能となる消費者安全確保地域協議会について、多くの地方公共団体において設置されるよう支援することを始め、高齢者等の消費者被害の未然防止・拡大防止のため、トラブルに遭うリスクの高い消費者(高齢者等)を見守る「地域ネットワーク」の構築や啓発活動等を推進する。

(5)高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進

○高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等

高齢者の健康保持等に向けた取組を一層推進するため、要介護状態になる要因の一つである認知症等に着目し、それらの予防、早期診断及び治療技術等の確立に向けた研究を行う。

○情報通信の活用等に関する研究開発

高齢者等が安全で快適に移動できるよう、最先端の情報通信技術等を用いて、運転者に周辺の交通状況等を視覚・聴覚情報により提供することで、危険要因に対する注意を促し、ゆとりをもった運転ができる環境を作り出すことによって交通事故を防止する安全運転支援システム(DSSS)やETC2.0等のITS(高度道路交通システム)に関する研究開発及びサービス展開を実施する。

(6)全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築

○雇用・就業における女性の能力発揮

平成28年4月1日に全面施行される「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)において、常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主については、一般事業主行動計画の策定や女性の活躍に関する情報の公表等が義務付けられていることから、着実な法の履行確保に取り組む。

一方、労働者の6割以上は、努力義務である300人以下の事業主に雇用されているのが実情であるため、中小企業においても女性の活躍推進の重要性を理解し、取組を加速化させていく必要があることから、中小企業のための支援体制を構築し、集中的に中小企業の女性の活躍推進を支援する取組を講じる。

○非正規雇用労働者対策の推進

平成27年7月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」を受けて、職務等に着目した「多様な正社員」モデルの普及・拡大を図るため、多様な正社員の導入事例等の取組事例を収集し、ホームページへの掲載や全国主要地域でのシンポジウムの開催、雇用管理上の留意事項及び成功事例の周知・啓発を行うとともに、多様な正社員の導入を検討している企業に対するコンサルティングや助成制度等、支援措置を講じる。

○子育て支援施策の総合的推進

少子化社会対策基本法第7条に基づく大綱等に基づき、子育て支援施策の一層の充実や結婚・出産の希望が実現できる環境の整備など総合的な少子化対策を推進していく。

子ども・子育て関連3法に基づく子ども・子育て支援新制度が、平成27年4月に本格施行されたことを受け、同制度の円滑な実施並びに充実に取り組むとともに、28年4月1日に施行される「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」の着実な履行に取り組む。

[目次]  [戻る]