第1章 高齢化の状況(第3節 コラム5)
第3節 国際比較調査に見る日本の高齢者の意識(コラム5)
コラム5 「新しい東北」の創造に向けた取組
東北地方は、震災前から人口の減少や高齢化等、現在の地域が抱える課題が顕著であった。このため、復興を単なる原状復帰にとどめるのではなく、これを契機に地域の課題を克服し、我が国や世界のモデルとなる「新しい東北」を創造することが期待されており、先進的な取組を加速するための先導モデル事業等を実施してきた。
事業実施の最終年度となる平成27年度先導モデル事業では、医療・介護、健康管理等様々な観点から、高齢社会対応の取組が進められている。
《保育所を活用した生活不活発病防止の取組》(ほっこりふれあい食事プロジェクト)
仮設住宅の高齢者が保育所・幼稚園で子どもと一緒に給食を食べ、ふれあうことにより、孤食の解消や、生活の不活発化を原因とする心身機能の低下等の課題に対応するとともに、高齢者の生きがいを創出する取組。
日本栄養士会及び被災3県の栄養士会の協力を得て実施しており、都道府県栄養士会が運営する地域住民のための食生活支援活動拠点(栄養ケア・ステーション)の管理栄養士等が、高齢者への栄養指導等を実施している。
平成26年度当初は栄養士が作った栄養バランスを考えたお弁当を保育所等に受け取りに来てもらうことを予定していたが、保育所等から「園児と一緒に食事をしてはどうか」と提案があり、イベントの際に保育所等で子どもと一緒に給食を食べる方式で「ほっこりふれあい食事プロジェクト」を行った。高齢者の外出の機会の提供だけでなく、園児や保育士と一緒に食事や会話を楽しむ「供食」により世代間交流を生み出し、地域社会のつながりを築く活動となっている。平成26年度は、被災3県の4か所の保育所等で、事業を計9回実施した(延べ105名参加)。
平成27年度においては、実施拠点数を増やすとともに、イベントの際だけでなく平時においても事業を実施。平成27年度は、被災3県の12か所の保育所等で、事業を計30回実施した(延べ393名参加)。
《住民主体の地域支え合い活動と事業の立ち上げ支援》
少子高齢化や人口流出が進む東北では、「高齢者などがなじみ深い地域で生きがいをもって暮らし続けられるまちづくり」が喫緊の課題である。特定非営利活動法人全国コミュニティライフサポートセンターでは、「地域包括ケアシステム」の一翼を担う、住民の主体的な支え合い活動や生活支援サービス事業の立ち上げを後押しするとともに、新たな活動分野の開拓を進めている。
具体的には、岩手県、宮城県、福島県の各県において、住民や、行政、社会福祉協議会などを対象とした研修講座を実施するとともに、東北を中心に集めた実践事例集の発行やアドバイザーの派遣等を実施しており、東北地方も含めた全国の中山間地域等で、高齢者等の生きがいづくりや、改正介護保険法の「新しい総合事業」を担う福祉人材の確保などを目指している。
また、福島県郡山市においても、地域の個性を活かした住民主体の通いの場を調査し、事例として広く紹介するとともに、健康体操等の介護予防ツールを普及させる取組を進めている。