第2章 高齢社会対策の実施の状況(第2節 4)

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第2節 分野別の施策の実施の状況(4)

4 生活環境

○公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備

公共交通機関のバリアフリー化については、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)に基づき、公共交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設若しくは大規模な改良又は車両等の新規導入に際しての公共交通移動等円滑化基準への適合義務、既設の旅客施設・車両等に対する適合努力義務を定めるとともに、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、平成32年度末までの整備目標を定めている。なお、公共交通移動等円滑化基準については、公共交通分野のバリアフリー水準の底上げを図るため、28年10月から開催している検討委員会の下、28年度末までに改正の内容の方向性を整理すべく、検討を進めた。交通政策基本法(平成25年法律第92号)に基づく交通政策基本計画(平成27年2月閣議決定)においても、バリアフリーをより一層身近なものにすることを目標の1つとして掲げており、これらを踏まえながらバリアフリー化の更なる推進を図っている。

○ユニバーサルデザインの促進

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機としての、共生社会の実現に向けたユニバーサルデザイン、心のバリアフリーを推進し、大会以降のレガシーとして残していく施策を実行するため、28年2月、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣を座長とし、関係府省庁担当局長等を構成員とする「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議」が設置された。本会議の下で、空港から競技会場等に至る連続的かつ面的なバリアフリー化、全国のバリアフリー水準の底上げ、心のバリアフリーの推進等取り組むべき施策について検討し、29年2月に関係閣僚会議を開催し、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を決定した。

○交通安全の確保

高齢運転者対策の推進を図るため、臨時の認知機能検査を導入すること等を内容とする「道路交通法の一部を改正する法律」(平成27年法律第40号)の円滑な施行(29年3月12日施行)に向けて、関連事務の実施体制・予算の確保、医師会等関係機関・団体との一層の連携、新制度の周知・広報等を推進した。

また、28年中に高齢運転者による交通事故が相次いで発生したことを受け、28年11月15日に「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」が開催された。これを受け、高齢運転者の交通事故防止について、関係行政機関における更なる対策の検討を促進し、その成果等に基づき早急に対策を講じるため、28年11月24日、交通対策本部(本部長:内閣府特命担当大臣)の下に関係省庁局長級を構成員とする「高齢運転者交通事故防止対策ワーキングチーム」を設置した。同ワーキングチームでは、内閣総理大臣からの指示を踏まえ、各種対策についてそれぞれ担当する省庁を中心に検討し、取り得る対策を早急に講じていくこととし、29年6月を目途に全体的な取りまとめを行うとともに、それ以降も検討が必要なテーマについては引き続き検討を継続していくこととしている。

○成年後見制度の利用の促進

認知症高齢者等の財産管理や契約に関し、本人を支援する成年後見制度について、周知を図った。

成年後見制度は、認知症、知的障害その他精神上の障害があることにより、財産の管理又は日常生活等に支障がある者を支える重要な手段であり、その利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、平成28年4月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(平成28年法律第29号)が成立し、本法律に基づき、「成年後見制度利用促進委員会」における議論を踏まえ、平成29年3月に「成年後見制度利用促進基本計画」を閣議決定した。基本計画には、利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり、不正防止の徹底と利用しやすさとの調和などの観点からの施策目標等を盛り込んでいる。

○悪質商法からの保護

高齢者を狙った特殊詐欺(振り込め詐欺等)などを未然に防止するため、政府広報として、平成24年度より継続的に様々な媒体を活用したキャンペーン広報を実施している。28年度は、11月より「高齢者詐欺・トラブル予防は、みんなが主役!」を合言葉に、高齢者本人及び家族を含む周囲層を主なターゲットとして、こまめな声かけ、日頃の連絡が大切であることなどを啓発している。

また、平成28年4月から施行された消費者安全法の改正を一部内容とする「不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律」(平成26年法律第71号。以下同法による改正後の消費者安全法を「改正消費者安全法」という。)では、地域社会における高齢者等の見守りネットワークの構築のため、地方公共団体において消費者安全確保地域協議会を設置できることが盛り込まれており、地方公共団体向けの説明会等を行った。また、消費者安全確保地域協議会を設置した地方公共団体の先進的事例を収集し、公表に向けて準備を行う等、各地域における見守りネットワークの設置促進に向け取り組んだ。

高齢者の周りの人々による見守りの強化の一環として、高齢者団体のほか障害者団体、行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」を29年3月に開催し、「高齢者、障害者の消費者トラブル防止のため、積極的な情報発信を行う」「多様な主体が緊密に連携して、消費者トラブルの防止や「見守り」に取り組む」等を申し合わせた。

○生涯活躍のまち(日本版CCRC)の推進

地方創生の観点から、中高年齢者が、希望に応じて地方や「まちなか」に移り住み、様々な世代の地域の住民と交流しながら、就労や生涯学習、社会活動への参加等を通じて健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような「生涯活躍のまち」づくりを推進している。平成28年4月には改正地域再生法(平成28年4月20日施行)が国会で可決・成立し、地方公共団体が地域再生計画の認定を受けた場合に講じられる措置として、新たに交付金の交付や、「生涯活躍のまち」に取り組む場合の事業者の手続き上の特例が盛り込まれた。この特例措置に係る「生涯活躍のまち」の地域再生計画は、平成28年度中に13市町、13計画について認定を行った。また、地方創生推進交付金に関しては、「生涯活躍のまち」分野で51事業を交付決定した。

なお、平成28年10月現在で実施した自治体に対するアンケート調査によると、71団体が、既に「生涯活躍のまち」の取組を開始していると回答している。

また、関係府省が連携して地方公共団体の取組を支援する「生涯活躍のまち形成支援チーム」を開催し、取組の過程で浮上した課題の解決に向け、検討、助言等を行った。さらに、自治体による取組を一層促進するため、「生涯活躍のまち」づくりを担う人材の育成カリキュラムやビジネスモデルの調査・研究等を行い、「生涯活躍のまち」の取組を進める上で参考となるマニュアルをとりまとめた。

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