第1章 高齢化の状況(第2節 6)
第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向(6)
6 高齢者の生活環境
(1)高齢者の住まい
ア 高齢者のいる主世帯の8割以上が持ち家に居住している
高齢者のいる主世帯について、住宅所有の状況をみると、持ち家が82.7%と最も多い。ただし、世帯別にみると、高齢者単身主世帯の持ち家の割合は65.6%となり、高齢者のいる主世帯総数に比べ持ち家の割合が低い(図1-2-6-1)。
イ 高齢者は家庭内事故が多く、最も多い事故時の場所は「居室」
医療機関ネットワーク事業の参画医療機関から国民生活センターに提供された事故情報によると、65歳以上の高齢者が20歳以上65歳未満の人より住宅内での事故発生の割合が高い。事故の発生場所は、「居室」が45.0%と最も多く、「階段」18.7%、「台所・食堂」17.0%が多い(図1-2-6-2)。
(2)高齢者の居住環境
60歳以上の高齢者が、外出時の障害と感じていることをみてみると、「特にない」が44.5%であるが、障害と感じている事柄は、「道路に階段、段差、傾斜があったり、歩道が狭い」が15.2%と最も多く、「ベンチや椅子等休める場所が少ない」(13.7%)、「バスや電車等公共の交通機関が利用しにくい」(13.4%)と続いている(図1-2-6-3)。
(3)高齢者の安全・安心
ア 交通事故死者数に占める高齢者の割合は過去最高
平成28(2016)年中における65歳以上の高齢者の交通事故死者数は、2,138人で、前年より109人減少したが、交通事故死者数全体に占める高齢者の割合は54.8%となり、過去最高となった(図1-2-6-4)。
他方、75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数の割合は減少傾向にある(図1-2-6-5)。
イ 高齢者の刑法犯罪被害認知件数に占める割合は増加傾向
犯罪による65歳以上の高齢者の被害の状況について、高齢者の刑法犯被害認知件数でみると、全刑法犯被害認知件数が戦後最多を記録した平成14(2002)年に22万5,095件となり、ピークを迎えて以降、近年は減少傾向にあるが、高齢者が占める割合は、27(2015)年は13.8%と、増加傾向にある(図1-2-6-6)。
ウ 振り込め詐欺の被害者の8割以上が60歳以上
振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺の総称)のうち、特に高齢者の被害が多いオレオレ詐欺の平成28(2016)年の認知件数は、5,753件と前年から微減となった一方、還付金等詐欺は3,682件と前年比で55.0%増加した。また、振り込め詐欺の被害総額は約375億円であった(表1-2-6-7)。
年次 区分 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
認知件数(件) | 20,481 | 7,340 | 6,637 | 6,233 | 6,348 | 9,204 | 11,256 | 12,741 | 13,605 |
オレオレ詐欺 | 7,615 | 3,057 | 4,418 | 4,656 | 3,634 | 5,396 | 5,557 | 5,828 | 5,753 |
架空請求詐欺 | 3,253 | 2,493 | 1,774 | 756 | 1,177 | 1,522 | 3,180 | 4,097 | 3,742 |
融資保証金詐欺 | 5,074 | 1,491 | 362 | 525 | 404 | 469 | 591 | 440 | 428 |
還付金等詐欺 | 4,539 | 299 | 83 | 296 | 1,133 | 1,817 | 1,928 | 2,376 | 3,682 |
被害総額(億円) | 275.9 | 95.8 | 100.9 | 127.2 | 160.4 | 258.7 | 379.8 | 393.7 | 375.0 |
資料:警察庁統計。平成22年以降の被害総額は、キャッシュカードを直接受け取る手口の振り込め詐欺(ただし、22年から24年はオレオレ詐欺のみ)におけるATMからの引出(窃取)額を含む。 |
28(2016)年中の振り込め詐欺の被害者を見ると、60歳以上の割合は83.2%、オレオレ詐欺の被害者に限ると98.6%となっており、特に70歳以上の女性はオレオレ詐欺被害者の71.7%を占めている。また、還付金等詐欺の被害者についても、60歳以上の割合は97.7%となっており、特に70歳以上の女性は54.3%を占めている。
エ 高齢者の関与する消費トラブルの相談は約18万件
全国の消費生活センターに寄せられた契約当事者が70歳以上の相談件数は、平成20(2008)年から増加傾向にあり、25(2013)年には20万件を超えた。26(2014)年は197,146件で、前年より減少に転じ、27(2015)年も183,136件と前年より減少した(図1-2-6-8)。
また、平成27(2015)年度に70歳以上の高齢者から寄せられた相談を販売方法・手口別にみると、電話勧誘販売が28,255件(15.4%)、次いで家庭訪販が24,336件(13.3%)となっている。
オ 住宅火災における死者数は約7割が高齢者
65歳以上の高齢者の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)についてみると、平成27(2015)年は611人と、前年より減り、全死者数に占める割合は66.8%となっている(図1-2-6-9)。
カ 養護者による虐待を受けている高齢者の約7割が要介護認定
平成27(2015)年度に全国の1,741市町村(特別区を含む。)で受け付けた高齢者虐待に関する相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが1,640件で前年度(1,120件)と比べて46.4%増加し、養護者によるものが26,688件で前年度(25,791件)と比べて3.5%増加した。また、平成27年度の虐待判断事例件数は、養介護施設従事者等によるものが408件、養護者によるものが15,976件となっている。養護者による虐待の種別(複数回答)は、身体的虐待が66.6%で最も多く、次いで心理的虐待(41.1%)、介護等放棄(20.8%)、経済的虐待(20.0%)となっている。
養護者による虐待を受けている高齢者の属性を見てみると、女性が76.8%を占めており、年齢階級別では「80~84歳」が24.1%と最も多い。また、虐待を受けている高齢者のうち、66.7%が要介護認定を受けており、虐待の加害者は、「息子」が40.3% と最も多く、次いで、「夫」21.0%、「娘」16.5%となっている(図1-2-6-10)。
(4)高齢者による犯罪
高齢者の刑法犯の検挙人員は、平成27(2015)年は47,632人と前年に比べほぼ横ばいであった一方、犯罪者率は、19(2007)年にピークを迎えて以降は低下傾向となっている。また、27年における高齢者の刑法犯検挙人員の包括罪種別構成比をみると、窃盗犯が72.3%と7割を超えている(図1-2-6-11)。
(5)高齢者の日常生活
ア インターネットを活用する高齢者が増加
過去1年間にインターネットを利用したことがあるかについて、利用者の年齢階級別に5年前と比較すると、70~79歳が14.3ポイント増と最も大きく、次いで60~69歳が12.2ポイント増などとなっており、インターネットを利用する高齢者が増加傾向にある(図1-2-6-12)。
また、インターネットを利用したことがあると回答した65歳以上の高齢者の使用頻度についてみると、半数近くの45.2%が「毎日少なくとも1回」は利用していると回答している(図1-2-6-13)。
イ 高齢者のネットショッピングでは、他の世代に比べて、医薬品・健康食品の支出割合が高い
ネットショッピングで購入した品目・サービス別の支出割合について、世帯構成別にみると、「医薬品・健康食品」では高齢者世帯6.9%と、世帯主が65歳未満の世帯3.8%に比べて、ネットショッピングで購入する金額に占める割合が高い (図1-2-6-14)。
ウ 人との交流が少ない人や頼れる人がいない男性が多い
現在住んでいる地域での付き合いの程度について、60歳以上の高齢者をみると『付き合っていない』(「あまり付き合っていない」と「全く付き合っていない」の計)とする人は、女性19.8%に対して男性25.3%となっている(図1-2-6-15)。
65歳以上の一人暮らし高齢者が、病気などの時に看病や世話を頼みたいと考える相手は、子供がいる人は男女ともそれぞれ「子」が男性41.0%と女性58.2%と最も多い。子供がいない女性は「兄弟姉妹・親戚」(35.4%)が最も多く、次いで「あてはまる人はいない」(21.5%)となっている。一方、子供がいない男性は「あてはまる人はいない」(35.0%)が最も多く、次いで「そのことでは頼りたいと思わない」(22.6%)となっている(図1-2-6-16)。
エ 一人暮らしの高齢者の4割超が孤立死(孤独死)を身近な問題と感じている
孤独死(誰にも看取られることなく亡くなったあとに発見される死)を身近な問題だと感じる(「とても感じる」と「まあ感じる」の合計)人の割合は、60歳以上の高齢者全体では17.3%だが、一人暮らしでは45.4%と4割を超えている(図1-2-6-17)。
オ 孤独死と考えられる事例が多数発生している
死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案、解剖を行っている東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成27(2015)年に3,127人となっている(図1-2-6-18)。
また、独立行政法人都市再生機構が運営管理する賃貸住宅約74万戸において、単身の居住者で死亡から相当期間経過後(1週間を超えて)に発見された件数(自殺や他殺などを除く)は、平成27(2015)年度に179 件、65歳以上に限ると136 件となっている(図1-2-6-19)。
(6)高齢者の自殺
平成28(2016)年における60歳以上の自殺者数は8,871人で、前年から減少している。年齢階層別にみると、60~69歳(3,626人)、70~79歳(2,983人)、80歳以上(2,262人)と全ての年齢階層で前年に比べ減少している(図1-2-6-20)。
(7)東日本大震災における高齢者の被害状況
平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災における高齢者の被害状況をみると、被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県の3県で収容された死亡者は29(2017)年2月28日までに15,824人にのぼり、検視等を終えて年齢が判明している15,755人のうち60歳以上の高齢者は10,409人と66.1%を占めている(図1-2-6-21)
また、東日本大震災における震災関連死の死者1数は、平成28(2016)年9月30日時点で3,523人にのぼり、このうち66歳以上が3,123人と全体の88.6%を占めている。