第1章 高齢化の状況(第2節 トピックス2)

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第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向(トピックス2)

トピックス2 都市と山村、若者と高齢者をつなぐ~おいでん・さんそんセンターの取組~

愛知県豊田市は、市内の中心を流れる矢作川に沿って、上流に市面積の6割以上を占める山村地域、中流から下流にかけて都市部と全国有数の工業地帯が広がる。市の人口1の95%が都市部に住み、山村地域では急速な人口減少と高齢化が深刻な問題となっている。

以下では、日本の縮図とも言えるここ豊田市で、山村地域に住む高齢者と都市部の若者との交流を通して豊かなまちづくりを目指す「おいでん・さんそんセンター(以下、センター)」について紹介する。

センターは、2013年に“まちとむらをつなぐプラットホーム”として豊田市役所足助支所内に開所された。事務所を置く足助地区は、2005年の合併を機に、東加茂郡足助町から豊田市となった山村地域2だ。山村地域では現在、高齢化率が37.9%と、3人に1人以上が65歳以上という状況にある。

主な事業実施の内容は、企業・団体、地域住民から成るプラットホーム会議で協議され、その他、5つの専門部会3でそれぞれの課題解決の方策等が話し合われている。センターはここで話し合われた事業支援の他、市民等からの移住・交流事業に関する問い合わせへの応対や、コーディネータとして企業・団体と人とを結ぶ役割を担っている。

1 企業と山村地域のマッチング事業

センターが行う取組の一つに、人材育成やCSRの一環としての活動の場を探している企業と、農林業の担い手不足による里山環境の維持に課題を抱える山村地域のマッチング事業がある。

(伊熊営農クラブ×企業)

伊熊営農クラブでは、これまで町内で余力のある人が耕作を請け負い、地域で支え合って農地を守る仕組みを維持してきたが、近年は構成員の高齢化等による農業の担い手不足に困っていたところ、センターの紹介で、農地を若手社員の積極性等を育てる人材育成の場を求める企業に貸し出すこととなった。

マッチング事業では、単に企業や団体に土地や場所を提供するだけでなく、地域の高齢者達が、各々のもつ技術や知識を提供し、一緒になって活動を行っている。

活動に参加する地域の高齢者達は、時には孫世代の若者達が感嘆の声をあげたり熱心に取り組む姿を見たりして、自分の技術や知識に自信を持ち、活動に生きがいを見いだしている。その一方で、活動に参加する若手社員たちは、生き生きと活躍する高齢者に刺激を受けて、本来の自社ファームでの活動の他、畑で出来た野菜を地域住民に振る舞ったり、地元の景観を良くして名所をつくる取組やイベント企画などを次々に立ち上げたりと、地域の活性化にも自らのアイディアや行動力を生かして積極的に取り組んでいるという。

こうした相乗効果の他、事業は地域住民にとって貴重な収入源となっている。農地や山林だけでなく山村地域に住む高齢者の技術や知恵も魅力的な地域資源として、それらを必要としている都市とマッチングさせることで、地域経済への好影響も生みだされているのだ。

伊熊営農クラブの写真1
伊熊営農クラブの写真2
伊熊営農クラブの写真3
伊熊営農クラブの写真4

2 移住の促進における高齢者による主体的なまちづくりの支援
(いなか暮らし総合窓口)

センターに設置されている「いなか暮らし総合窓口」では、空き家情報バンクを活用した移住に関する情報を一元的に紹介するとともに、民間活動団体等との連携により生業や暮らしを支援している。

近年の農村回帰の高まりにより、20歳代~40歳代の男性、30歳代~40歳代の女性で、田舎暮らし等の新しいライフスタイルを見いだそうとする動きがみられる4。こうした状況を追い風としつつも、地域のまとめ役や空き家の大家の高齢化は進んでおり、地域の高齢者と移住者との間のトラブルを事前に防ぐ取組が進められている。

センターでは、まず地域の住民自身に、子育てしやすい町など、どんな地域にしたいかを考えてもらい、その上で「暮らしの参観日」や「地域面談」の実施を支援している。これらの事業は、地域住民から移住希望者に自分達の思いや行事への参加などの地域ルールを伝えるとともに、移住者自身の希望を聞くなど移住後のビジョンを共有する機会を作ることで、移住後のトラブルを防ぎ、住民自身が考える町づくりの実現を後押ししているものだ。

旭地区敷島自治区では、「暮らしの作法」として、地域を維持することを宣言し、地域を愛する人を受け入れ、空き家を放置しないことをみんなで話し合って取り決めた。この話し合いには子育て真っ最中の若い世代も参加するが、中心となっているのは地元の高齢者だ。受け身ではなく、積極的に町の将来について考えて町づくりに関わる機運が生まれている。

こうした様々な取組により、2010年から2016年までの6年間に111世帯278人が山村地域へ移住し、それぞれの町で高齢者と移住者とがお互いに助け合って生活している。

3 おわりに

鈴木辰吉センター長は、「人口減少、高齢化が進む山村地域は、日本の未来の姿であると同時に豊かな暮らしの先進地にもなり得る。そして、自然の摂理にかなった暮らしとそこから生まれる農村景観、支え合いの社会、エネルギーの自給や伝統的な食文化など高齢者が元気で居続けられるための資源に満ちている。高齢者が生涯現役で、田舎らしさを磨き上げ、次代に引き継ぐことが高齢者にとっても、社会にとっても良いことだと思う。センターは、そのために全力を尽くす。」と話している。


1 423,865人(2017年1月1日現在。市ホームページより)
2 豊田市における「山村地域」とは、都市計画区域ではない旭地区、足助地区、稲武地区、小原地区、下山地区の全域
3 1移住・定住専門部会 2地域スモールビジネス研究会 3次世代育成部会 4食と農専門部会 5森林部会
4 2014年内閣府「農山漁村に関する世論調査」
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