平成29年度 高齢社会対策(第2 3)

[目次]  [前へ]  [次へ]

第2 分野別の高齢社会対策(3)

3 社会参加・学習等分野に係る基本的施策

(1)社会参加活動の促進

ア 高齢者の社会参加活動の促進
(ア)高齢者の社会参加と生きがいづくり

高齢者の生きがいと健康づくり推進のため、地域を基盤とする高齢者の自主的な活動組織である老人クラブ等や都道府県及び市町村が行う地域の高齢者の社会参加活動を支援する。また、国民一人ひとりが積極的に参加し、その意義について広く理解を深めることを目的とした「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」を平成29年9月に秋田県で開催する。

また、高齢者の主体的な地域参画に関する事例及び関係者やアクティブシニアのネットワークづくりに関するノウハウを共有し、地域参画に意欲を持つ高齢者と活動の場を結びつける環境整備を促進するためのフォーラム(長寿社会における生涯学習政策フォーラム)を開催する。

さらに、中央教育審議会答申(新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(平成27年12月))、「『次世代の学校・地域』創生プラン」(平成28年1月)及び平成29年3月に改正された社会教育法を踏まえ、高齢者等の幅広い地域住民や企業・団体等の参画により、地域と学校が連携・協働して、学びによるまちづくり、地域人材育成、郷土学習、放課後等における学習・体験活動など、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支え、地域を創生する「地域学校協働活動」を全国的に推進する。

また、企業退職高齢者等が、地域社会の中で役割を持って生き生きと生活できるよう、有償ボランティア活動による一定の収入を得ながら自らの生きがいや健康づくりにもつながる活動を行い、同時に介護予防や生活支援のサービス基盤となる活動を促進する「高齢者生きがい活動促進事業」を実施する。

加えて、高齢者を含む誰もが旅行を楽しむことができる環境を整備するため、観光案内所へバリアフリー旅行相談窓口機能を付加させ、バリアフリー旅行相談対応能力の向上を図るとともに、情報発信等の対応能力も同時に向上させ、ユニバーサルツーリズムの更なる促進を図る。

(イ)国立公園におけるユニバーサルデザインの推進

国立公園において、主要な利用施設であるビジターセンター、園路、公衆トイレ等についてユニバーサルデザイン化や情報発信の充実等により、高齢者にも配慮した環境の整備を推進する。

(ウ)高齢者の海外支援活動の推進

豊富な知識、経験、能力を有し、かつ途上国の社会や経済の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年齢者が、海外技術協力の一環として、途上国の現場で活躍できるよう、シニア海外ボランティア事業を独立行政法人国際協力機構を通じ引き続き推進する。

(エ)高齢者の余暇時間等の充実

高齢者等がテレビジョン放送を通じて適切に情報を得ることができるよう、平成24年10月に見直しを行った行政指針の普及目標(29年度までに、字幕放送については対象の放送番組のすべてに字幕付与、解説放送については対象の放送番組の10%に解説付与、大規模災害等緊急時放送については、できる限りすべてに字幕付与する等)の達成に向けて、引き続き、放送局の自主的な取組を促すとともに、字幕番組、解説番組等の制作に対する助成を行うこと等により、字幕放送、解説放送等の拡充を図っていく。あわせて、字幕付きCM番組の普及についても、字幕付きCM普及推進協議会と連携して取り組んでいく。

高齢者の社会参加や世代間交流を促進するため、東京及び地方都市において「高齢社会フォーラム」を開催する。同フォーラムを通じて、年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者(エイジレス・ライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を紹介する。

(オ)医療・介護・健康分野におけるICT利活用の推進

少子高齢化の進展や疾病構造の変化、これに伴う社会保障費の増大など我が国の医療・介護を取り巻く環境は大きく変化してきている。こうした中、ICTの活用による地域の医療機関、介護事業者等のネットワーク化とともに、個人が自らの医療・介護・健康データを管理、活用できる環境を実現し、個人が良質な医療・介護・健康サービスを受けるメリットを享受することを通じて、国民の健康寿命が延伸する「健康長寿社会」の構築を図るべく、平成27年11月に公表した「クラウド時代の医療ICTの在り方に関する懇談会報告書」を踏まえ、個人の医療・介護・健康情報を時系列的に管理できるPHR(Personal Health Record)機能の実現や医療・介護従事者の情報連携ネットワークの普及推進のための課題の解決に向けた取組等を推進する。

イ 市民やNPO等の担い手の活動環境の整備

市民の自由な社会貢献活動を促進するため、寄附税制の活用促進や特定非営利活動促進法の円滑な施行・周知を行う。また、市民活動に関する情報の提供を行うため、内閣府NPOホームページやポータルサイト等の情報公開システムの機能向上に取り組む。

さらに、多様な個人が能力を発揮しつつ、自立して共に社会に参加し、支え合う「共生社会」を築いていくため、地域住民やNPO等による社会活動の充実が必要不可欠であるという認識のもと、平成27年度までの青年社会活動コアリーダー育成プログラムの成果を生かしつつ、地域課題対応人材育成事業「地域コアリーダープログラム」を実施する。高齢者関連分野の日本青年9名をドイツに派遣するとともに、ドイツ、ニュージーランド及びオーストリアから高齢者関連分野の青年リーダー13名を招へいし、それぞれ日本青年と各国青年リーダーとの意見交換や高齢者関係施設の訪問などを行う。

(2)学習活動の促進

ア 学習機会の体系的な提供と基盤の整備

高齢者を含めた一人一人の生涯にわたる学習活動の成果が適切に評価され、企業・学校・地域等での社会的な活用につながるようにすることが重要である。中央教育審議会答申(個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について(平成28年5月))を踏まえ、様々な学習活動の成果が適切に評価される社会の実現に向け、「検定試験の評価等の在り方に関する調査研究協力者会議」において検定試験の自己評価や第三者評価に関する検討を行い、検定試験の質の保証・社会的活用の促進等を行う。

また、高等教育段階の学習機会の多様な発展に寄与するため、短期大学卒業者、高等専門学校卒業者、専門学校等修了後、大学における科目等履修生制度などを利用し一定の学習を修めた者に対し、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構において審査の上、「学士」の学位授与を行う。

また、都道府県及び市町村における社会教育行政の充実に資するため、優れた専門的能力を有する社会教育主事等の専門職員の養成等を図る。

イ 学校における多様な学習機会の提供
(ア)初等中等教育機関における多様な学習機会の確保

学校教育においては、児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため、小・中・高等学校において、ボランティアなど社会奉仕に関わる体験活動や、高齢者との交流活動等を含む体験活動の充実を図った学習指導要領を着実に実施する。

(イ)高等教育機関における社会人の学習機会の提供

生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、社会人入試の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、科目等履修生制度の実施、長期履修学生制度の実施などを引き続き行い、履修形態の柔軟化等を図って、社会人の受入れを一層促進する。

また、大学等が、その学術研究・教育の成果を直接社会に開放し、履修証明プログラムや公開講座を実施するなど高度な学習機会を提供することを促進する。

放送大学においては、テレビ・ラジオ放送やインターネットなどの身近なメディアを効果的に活用して、幅広く大学教育の機会を国民に提供する。

(ウ)学校機能・施設の地域への開放

児童生徒の学習・生活の場であり、地域コミュニティの拠点でもある公立学校施設の整備に対し国庫補助を行うとともに、学校施設整備指針を示すこと等により、学校開放に向けて、地域住民の積極的な利用を促進するような施設づくりを進めていく。

また、小・中学校の余裕教室について、引き続き、地方公共団体が社会教育施設やスポーツ・文化施設などへの転用を図れるよう、取組を支援していく。

ウ 社会における多様な学習機会の提供
(ア)社会教育の振興

地域住民の身近な学習拠点である公民館を始めとする社会教育施設等において、幅広い年齢層を対象とした多様な学習機会の充実を促進する。

また、高齢化問題等の地域の様々な現代的課題について、行政、企業、NPO、各種団体等で社会教育に携わる者が幅広く集まり、学びを通じた実践的な解決方策を検討するための研究協議会(地域力活性化コンファレンス)を全国各地で開催し、地域課題解決の取組の普及・啓発を図る。

(イ)文化活動の振興

国民文化祭の開催等による文化活動への参加機会の提供、国立の博物館等における高齢者に対する優遇措置やバリアフリー化等による芸術鑑賞機会の充実を通じて多様な文化活動の振興を図る。

(ウ)スポーツ活動の振興

いつまでも健康で活力に満ちた長寿社会を実現するため、「スポーツによる地域活性化推進事業」を行い、スポーツを通じた地域の活性化を推進するとともに、「体育の日」を中心とした体力テストやスポーツ行事の実施等、各種機会を通じて多様なスポーツ活動の振興を図る。

(エ)自然とのふれあい

国立公園等の利用者を始め、国民誰もが自然とふれあう活動が行えるよう、自然ふれあい施設や体験活動イベント等の情報をインターネット等を通じて提供する。

また、国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員及びパークボランティアの連絡調整会議等を実施し、利用者指導の充実を図る。

(オ)消費者教育の取組の促進

平成27年7月から第2期消費者教育推進会議が始動し、これまで①「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(平成25年6月閣議決定)の見直しに向けた論点整理、②若年者に対する消費者教育の機会の充実など社会情勢等の変化への対応、を行ってきた。平成29年度については、第3期消費者教育推進会議において、「消費者教育の推進に関する基本的な方針(中間的見直し)」を踏まえ、議論を深める。

エ 勤労者の学習活動の支援

就業に向けた高齢期の能力形成にも資するよう、有給教育訓練休暇制度の普及促進などを図るとともに、教育訓練給付制度の活用により、勤労者個人のキャリア形成を支援し、自己啓発の取組を引き続き支援する。また、平成29年3月31日に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第14号)に基づき、専門実践教育訓練給付の給付率等を引き上げることについて、着実な施行が図られるよう、改正後の法の内容の周知を図る。

[目次]  [前へ]  [次へ]