第1章 高齢化の状況(第2節 4)

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第2節 高齢期の暮らしの動向(4)

4 生活環境

(1)65歳以上の者の住まい

ア 高齢者(65歳以上)のいる主世帯の8割以上が持家に居住している

高齢者(65歳以上)のいる主世帯について、住宅所有の状況をみると、持ち家が82.7%と最も多い。ただし、世帯別にみると、高齢者(65歳以上)単身主世帯の持家の割合は65.6%となり、高齢者(65歳以上)のいる主世帯総数に比べ持ち家の割合が低い(図1-2-4-1)。

イ 65歳以上の者は家庭内事故が多く、最も多い事故時の場所は「居室」

医療機関ネットワーク事業の参画医療機関から国民生活センターに提供された事故情報によると、65歳以上の者が20歳以上65歳未満の人より住宅の屋内での事故発生の割合が高い。事故の発生場所は、「居室」が45.0%と最も多く、ついで「階段」18.7%、「台所・食堂」17.0%が多い(図1-2-4-2)。

(2)60歳以上の者の日常の買物の仕方

内閣府が平成28(2016)年に行った調査では、日常の買い物について、自分でお店に買いに行くと回答した者に主たる交通手段を尋ねたところ、全体では「自分で自動車等を運転」が55.6%と高く、「徒歩」(28.4%)が約3割を占める。大都市では、約半数が「徒歩」(50.1%)と回答し、ついで「自分で自動車等を運転」(32.9%)、「家族等が運転する自動車やタクシー」(6.4%)との回答が多い。町村では、7割近くが「自分で自動車等を運転」(67.1%)と回答し、ついで「徒歩」(18.7%)、「家族等が運転する自動車やタクシー」(9.7%)との回答が多い(図1-2-4-3)。

また、年齢別にみると、女性の75歳以上では「自分で自動車等を運転」の割合が18.3%と、60~74歳に比べ大幅に低く、他方で、「徒歩」(51.3%)が多い(図1-2-4-4)。

(3)安全・安心

ア 交通事故死者数に占める65歳以上の者の割合は54.7%

平成29(2017)年中における65歳以上の者の交通事故死者数は、2,020人で、前年より118人減少したが、交通事故死者数全体に占める65歳以上の者の割合は54.7%であった(図1-2-4-5)。

他方、75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数の割合は減少傾向にある。平成29(2017)年における80歳以上の高齢運転者による死亡事故件数は235件で、運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は10.6件であった(図1-2-4-6)。

イ 65歳以上の者の刑法犯罪被害認知件数に占める割合は増加傾向

犯罪による65歳以上の者の被害の状況について、65歳以上の者の刑法犯被害認知件数でみると、全刑法犯被害認知件数が戦後最多を記録した平成14(2002)年に22万5,095件となり、ピークを迎えて以降、近年は減少傾向にあるが、65歳以上の者が占める割合は、平成28(2016)年は14.1%と、増加傾向にある(図1-2-4-7)。

ウ 振り込め詐欺の被害者の約8割が60歳以上

振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺の総称)のうち、還付金等詐欺の平成29(2017)年の認知件数は、3,137件と前年から減少となった一方、オレオレ詐欺は8,475件と前年比で47.3%増加した。また、振り込め詐欺の被害総額は約374億円であった(表1-2-4-8)。

表1-2-4-8 振り込め詐欺の認知件数・被害総額の推移(平成21~29年)
年次
区分
21 22 23 24 25 26 27 28 29
認知件数(件) 7,340 6,637 6,233 6,348 9,204 11,256 12,741 13,605 17,915
オレオレ詐欺 3,057 4,418 4,656 3,634 5,396 5,557 5,828 5,753 8,475
架空請求詐欺 2,493 1,774 756 1,177 1,522 3,180 4,097 3,742 5,754
融資保証金詐欺 1,491 362 525 404 469 591 440 428 549
還付金等詐欺 299 83 296 1,133 1,817 1,928 2,376 3,682 3,137
被害総額(億円) 95.8 100.9 127.2 160.4 258.7 379.8 393.7 375.0 373.7
資料:警察庁の統計による。平成29年の値は暫定値。
平成22年以降の被害総額は、キャッシュカードを直接受け取る手口の振り込め詐欺(ただし、22年から24年はオレオレ詐欺のみ)におけるATM からの引出(窃取)額を含む。

平成29(2017)年中の振り込め詐欺の被害者を見ると、60歳以上の割合は77.9%、特に高齢者が被害者である割合が高いのは、オレオレ詐欺及び還付金等詐欺であった。オレオレ詐欺については、60歳以上の割合は98.0%となっており、特に70歳以上の女性はオレオレ詐欺被害者の77.6%を占めている。また、還付金等詐欺の被害者についても、60歳以上の割合は98.0%となっており、特に70歳以上の女性は50.8%を占めている。

エ 65歳以上の者の犯罪者率は低下傾向

65歳以上の者の刑法犯の検挙人員は、平成28(2016)年は46,977人と前年に比べほぼ横ばいであった一方、犯罪者率は、平成19(2007)年にピークを迎えて以降は低下傾向となっている。また、平成28(2016)年における65歳以上の者の刑法犯検挙人員の包括罪種別構成比をみると、窃盗犯が72.3%と7割を超えている(図1-2-4-9)。

オ 70歳以上の者の関与する消費トラブルの相談は約17.6万件

平成20(2008)年度から平成29(2017)年度の全国の消費生活センター等に寄せられた契約当事者が70歳以上の相談件数についてみると、相談件数は平成25(2013)年度まで増加傾向にあり、同年度には20万件を超えた。平成26(2014)年度から平成28(2016)年度は減少傾向にあったが、平成29(2017)年度は175,810件で前年度より微増となっている(図1-2-4-10)。

また、平成29(2017)年度に70歳以上の高齢者から寄せられた相談を販売方法・手口別にみると、家庭訪販が21,429件(12.2%)、ついでインターネット通販が18,979件(10.8%)となっている。

カ 住宅火災における死者数は約7割が65歳以上の者

住宅火災における65歳以上の死者数(放火自殺者等を除く。)についてみると、平成28(2016)年は619人と、前年より増え、全死者数に占める割合は69.9%となっている(図1-2-4-11)。

キ 養護者による虐待を受けている高齢者の約7割が要介護認定

平成28(2016)年度に全国の1,741市町村(特別区を含む。)で受け付けた高齢者虐待に関する相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが1,723件で前年度(1,640件)と比べて5.1%増加し、養護者によるものが27,940件で前年度(26,688件)と比べて4.7%増加した。また、平成28年度の虐待判断事例件数は、養介護施設従事者等によるものが452件、養護者によるものが16,384件となっている。養護者による虐待の種別(複数回答)は、身体的虐待が67.9%で最も多く、次いで心理的虐待(41.3%)、介護等放棄(19.6%)、経済的虐待(18.1%)となっている。

養護者による虐待を受けている高齢者の属性を見てみると、女性が77.3%を占めており、年齢階級別では「80~84歳」が24.3%と最も多い。また、虐待を受けている高齢者のうち、66.8%が要介護認定を受けており、虐待の加害者は、「息子」が40.5%と最も多く、次いで、「夫」21.5%、「娘」17.0%となっている(図1-2-4-12)。

ク 成年後見制度の利用者数は増加傾向

平成29(2017)年12月末時点における成年後見制度の利用者数は210,290人で、各類型(成年後見、保佐、補助、任意後見)で増加傾向にある(図1-2-4-13)。

ケ 人との交流が少ない人は女性に比べ男性に多い

現在住んでいる地域での付き合いの程度について、60歳以上の人をみると(付き合っていない)(「あまり付き合っていない」と「全く付き合っていない」の計)とする人は、女性18.8%に対して男性26.5%となっている(図1-2-4-14)。

コ 一人暮らしの60歳以上の者の4割超が孤立死(孤独死)を身近な問題と感じている

孤独死(誰にも看取られることなく亡くなったあとに発見される死)を身近な問題だと感じる(「とても感じる」と「まあ感じる」の合計)人の割合は、60歳以上の者全体では17.3%だが、一人暮らし世帯では45.4%と4割を超えている(図1-2-4-15)。

サ 孤立死と考えられる事例が多数発生している

死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案、解剖を行っている東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成28(2016)年に3,179人となっている(図1-2-4-16)。

(4)60歳以上の者の自殺

平成29(2017)年における60歳以上の自殺者数は8,521人で、前年から減少している。年齢階層別にみると、60~69歳(3,339人)、70~79歳(2,926人)、80歳以上(2,256人)と全ての年齢階層別で前年に比べ減少している(図1-2-4-17)。

(5)東日本大震災における被害状況

平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災における被害状況をみると、被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県の3県で収容された死亡者は平成30(2018)年2月28日までに15,825人にのぼり、検視等を終えて年齢が判明している15,763人のうち60歳以上の人は10,416人と66.1%を占めている(図1-2-4-18)

また、東日本大震災における震災関連死の死者6数は、平成29(2017)年9月30日時点で3,647人にのぼり、このうち66歳以上が3,233人と全体の88.6%を占めている。


(注6)「震災関連死の死者」とは、「東日本大震災による負傷の悪化等により亡くなられた方で、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、当該災害弔慰金の支給対象となった方」と定義。(実際には支給されていない方も含む。)
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