第1章 高齢化の状況(第2節 2)
第2節 高齢期の暮らしの動向(2)
2 健康・福祉
(1)健康
ア 65歳以上の者の新体力テストの合計点は向上傾向
令和元年の70~74歳の女子、75~79歳の女子の新体力テスト(握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行)の合計点は、それぞれ平成13年の65~69歳女子、70~74歳の女子の新体力テストの合計点を上回っている(図1-2-2-1)。
イ 60~65歳層の数的思考力と読解力は各国に比べて高い
OECDの国際成人力調査(PIAAC)によると、60~65歳層の数的思考力、読解力は各国に比べて高い(図1-2-2-2、図1-2-2-3)。
ウ 健康寿命は延伸し、平均寿命と比較しても延びが大きい
日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、平成28年時点で男性が72.14年、女性が74.79年となっており、それぞれ平成22年と比べて延びている(平成22年→平成28年:男性1.72年、女性1.17年)。さらに、同期間における健康寿命の延びは、平均寿命の延び(平成22年→平成28年:男性1.43年、女性0.84年)を上回っている(図1-2-2-4)。
平均寿命と健康寿命の差を都道府県別に見ると、男性では青森県(平均寿命と健康寿命の差:7.03年)が最も差が短く、奈良県(平均寿命と健康寿命の差:9.97年)が最も長い。また、女性では栃木県(平均寿命と健康寿命の差:10.51年)が最も差が短く、広島県(平均寿命と健康寿命の差:13.71年)が最も長い。
平均寿命と健康寿命の関係を都道府県別に見ると、男女とも平均寿命が全国平均より長い都道府県では、平均寿命と健康寿命の差も全国平均より大きいところがやや多い。また、平均寿命については女性より男性の方がばらつきが大きいが、平均寿命と健康寿命の差については女性の方がばらつきが大きい(図1-2-2-5)。
エ 75歳以上の運動習慣のある者の割合は4割前後で、男性の割合が高い
運動習慣のある者の割合(令和元年)を見ると、65~74歳で男性38.0%、女性31.1%、75歳以上で男性46.9%、女性37.8%と男性の割合が女性よりも高くなっている。また、男性、女性いずれも、それぞれの20~64歳の23.5%、16.9%と比べ高い水準となっている(図1-2-2-6)。
オ 65歳以上の者の死因は「悪性新生物(がん)」が最も多い
65歳以上の者の死因別の死亡率(65歳以上人口10万人当たりの死亡数)を見ると、令和元(2019)年においては、「悪性新生物(がん)」が920.2と最も高く、次いで「心疾患(高血圧性を除く)」539.6、「老衰」341.0の順になっている(図1-2-2-7)。
(2)65歳以上の者の介護
ア 65歳以上の者の要介護者等数は増加しており、特に75歳以上で割合が高い
介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人(以下「要介護者等」という。)は、平成30年度末で645.3万人となっており、平成21年度末(469.6万人)から175.6万人増加している(図1-2-2-8)。また、要介護者等は、第1号被保険者の18.3%を占めている。
また、65~74歳と75歳以上の被保険者について、それぞれ要支援、要介護の認定を受けた人の割合を見ると、65~74歳で要支援の認定を受けた人は1.4%、要介護の認定を受けた人が2.9%であるのに対して、75歳以上では要支援の認定を受けた人は8.8%、要介護の認定を受けた人は23.0%となっており、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇する(表1-2-2-9)。
単位:千人、( )内は% | |||
65~74歳 | 75歳以上 | ||
---|---|---|---|
要支援 | 要介護 | 要支援 | 要介護 |
235 (1.4) |
495 (2.9) |
1,586 (8.8) |
4,137 (23.0) |
資料:厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」(平成30年度)より算出 | |||
(注1)経過的要介護の者を除く。 | |||
(注2)( )内は、65~74歳、75歳以上それぞれの被保険者に占める割合 |
要介護者等について、介護が必要になった主な原因について見ると、「認知症」が18.1%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.0%、「高齢による衰弱」13.3%、「骨折・転倒」13.0%となっている。また、男女別に見ると、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が24.5%、女性は「認知症」が19.9%と特に多くなっている(図1-2-2-10)。
イ 介護を頼みたい人は、男性の場合配偶者、女性の場合ヘルパーなど介護サービスの人が最も多い
内閣府の調査で、55歳以上の人に介護を頼みたい人について聞いたところ、男性の場合は「配偶者」が56.9%、女性の場合は「ヘルパーなど介護サービスの人」が39.5%と最も多くなっている(図1-2-2-11)。
ウ 介護費用について、「年金等の収入でまかなう」と考えている人が63.7%と最も多い
介護が必要になった場合の介護費用について、内閣府の調査で55歳以上の人に尋ねたところ、「年金等の収入でまかなう」が63.7%、「貯蓄でまかなう」が20.5%、「収入や貯蓄ではまかなえないが、資産を売却するなどして自分でまかなう」が4.0%、「子などの家族・親戚からの経済的な援助を受けることになると思う」が3.2%、「特に考えていない」が8.1%となっている。また、男女別に比較をしてみると、「年金等の収入でまかなう」との回答はどの年齢層でも女性より男性の方が高い(図1-2-2-12)。
エ 主に家族(とりわけ女性)が介護者となっており、「老老介護」も相当数存在
要介護者等からみた主な介護者の続柄を見ると、5割強が同居している人が主な介護者となっている。その主な内訳を見ると、配偶者が23.8%、子が20.7%、子の配偶者が7.5%となっている。また、性別については、男性が35.0%、女性が65.0%と女性が多くなっている。
要介護者等と同居している主な介護者の年齢について見ると、男性では72.4%、女性では73.8%が60歳以上であり、いわゆる「老老介護」のケースも相当数存在していることがわかる(図1-2-2-13)。
オ 要介護4では45.8%、要介護5では56.7%がほとんど終日介護を行っている
令和元年の同居している主な介護者が1日のうち介護に要している時間を見ると、「必要なときに手をかす程度」が47.9%と最も多い一方で、「ほとんど終日」も19.3%となっている。要介護度別に見ると、要支援1から要介護2までは「必要なときに手をかす程度」が最も多くなっているが、要介護3以上では「ほとんど終日」が最も多くなり、要介護4では45.8%、要介護5では56.7%が「ほとんど終日」介護している。平成28年と比較すると、令和元年には「ほとんど終日」が2.8ポイント低下し、時間の上では負担の改善がみられる(図1-2-2-14)。
カ 介護や看護の理由により離職する人は女性が多い
家族の介護や看護を理由とした離職者数は平成28年10月から平成29年9月までの1年間で99.1千人であった。とりわけ、女性の離職者数は75.1千人で、全体の75.8%を占めている(図1-2-2-15)。
キ 介護施設等の定員数は増加傾向で、特に有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の定員が増加
介護施設等の定員数は、増加傾向にある。施設別に見ると、令和元年では、有料老人ホーム(573,541人)、介護老人福祉施設(特養)(569,410人)、介護老人保健施設(老健)(374,767人)等の定員数が多い。また、近年は有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の定員数が特に増えている(図1-2-2-16)。
ク 介護に従事する職員数は増加
要介護(要支援)認定者数の増加に伴い、介護に従事する職員数は大幅に増加している。令和元年度は、平成12年度(54.9万人)の約3.8倍の210.6万人となっている(図1-2-2-17)。
ケ 依然として介護職員の不足感は高まっており、有効求人倍率は全職業に比べ高い水準にある
介護関係の職種の有効求人倍率を見ると、全職業の有効求人倍率に比べ、高い水準を維持し続けている。平成18年から平成20年までは全職業の有効求人倍率が低下した一方で、介護関係の職種の有効求人倍率は1.68倍から2.31倍まで上昇した。リーマンショック後は、介護関係の職種の有効求人倍率も低下したが、平成23年から再び上昇し、特に平成26年からは介護関係の職種の有効求人倍率の伸びは全職業の有効求人倍率に比べ、高くなっている。しかし、令和2年の介護関係職種の有効求人倍率は3.99倍、全職業の有効求人倍率(1.08倍)と共に低下した(図1-2-2-18)。