第3章 令和3年度高齢社会対策(第2節 1)

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第2節 分野別の高齢社会対策(1)

1 就業・所得

(1)エイジレスに働ける社会の実現に向けた環境整備

ア 多様な形態による就業機会・勤務形態の確保
(ア)多様な働き方を選択できる環境の整備

70歳までの就業確保を事業主の努力義務とする内容等の高年齢者雇用安定法の一部改正を含む「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)」が令和2年3月に成立し、改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月に施行となる。施行後は、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、および65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、高年齢者の安定した就業機会の確保のため、170歳までの定年引上げ、270歳までの継続雇用制度の導入(他社との契約に基づく継続雇用も含む。)、3定年の定めの廃止、470歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、570歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入(a.事業主が自ら実施する社会貢献事業b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業)のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講ずるよう努めなければならない。地域の多様なニーズに応じた活躍を促す観点から、地方自治体を中心に設置された協議会等が実施する高齢者の就労促進に向けた事業等への支援を拡充し、先駆的なモデル地域の取組の普及を図ることとしている。

また、シルバー人材センター事業について、シルバー人材センターが人手不足の悩みを抱える企業を一層強力に支えるため、シルバー人材センターにおけるマッチング機能を強化するとともに、女性会員の拡充を含めたシルバー人材センターの機能強化を図る等高齢者の就業機会の促進を図る。

また、高齢者を含め多様な人材の能力を最大限発揮させることにより、イノベーションの創出等の成果につなげるダイバーシティ経営を全国に普及させる取組を行う。多様な人材のうち、女性については、企業における取組の加速化を目的に、東京証券取引所と共同で、「女性活躍推進」に優れた上場企業を「中長期の成長力」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として、選定・公表を行う。

また、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けて、引き続き「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成5年法律第76号)に基づく是正指導等により同法の着実な履行確保を図るとともに、パートタイム・有期雇用労働者の均等・均衡待遇の確保に向けた各企業の取組を支援するために、個別企業に対し、職務分析・職務評価の意義や手法について丁寧に説明し、適切な助言を行うことができる専門家を育成する。

加えて、企業における非正規雇用労働者の待遇改善等を支援するため、平成30年度より47都道府県に設置している「働き方改革推進支援センター」において、労務管理の専門家による個別相談やセミナー等を引き続き実施する。

さらに、職務、勤務地、労働時間を限定した「多様な正社員」制度の普及・拡大を図るため、オンラインセミナーを開催するとともに、企業に対し、「多様な正社員」制度導入支援員による導入支援を実施する。また、「多様な正社員」の一類型である「短時間正社員制度」についても、引き続き、制度導入・運用支援マニュアルやパート・有期労働ポータルサイトにより、制度の概要や企業の取組事例について周知を行っていく。

加えて、副業・兼業については、令和2年9月に改定したガイドライン等について、わかりやすい解説パンフレットを活用した周知等を行い、企業も労働者も安心して兼業・副業を行うことができる環境整備に努める。

(イ)情報通信を活用した遠隔型勤務形態の普及

テレワークが高齢者等の遠隔型勤務形態に資するものであることから、テレワークの一層の普及拡大に向けた環境整備、普及啓発等を関係府省が連携して推進する。

ウィズコロナ・ポストコロナの「新たな日常」、「新しい生活様式」に対応した働き方として、適切な労務管理下における良質なテレワークの導入・実施を進めていくことができるよう、令和3年3月に改定した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」や、情報セキュリティに関するガイドラインの周知を図るとともに、企業等に対する労務管理や情報通信技術に関する専門家による相談対応、事業主を対象としたセミナーの開催、中小企業を支援する団体と連携した全国的なテレワーク導入支援制度の構築、テレワークに先進的に取り組む企業等に対する表彰の実施、テレワーク導入経費に係る支援、企業によるテレワーク宣言を通じての取組の紹介、「テレワーク・デイズ」等の広報を実施する。

また、テレワークによる働き方の実態やテレワーク人口の定量的な把握を行う。

イ 高齢者等の再就職の支援・促進

「事業主都合の解雇」又は「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に該当しなかったこと」により離職する高年齢離職予定者の希望に応じて、その職務の経歴、職業能力等の再就職に資する事項や再就職援助措置を記載した求職活動支援書を作成・交付することが事業主に義務付けられており、交付を希望する高年齢離職予定者に求職活動支援書を交付しない事業主に対しては、公共職業安定所が必要に応じて指導・助言を行う。求職活動支援書の作成に当たって、ジョブ・カードを活用することが可能となっていることから、その積極的な活用を促す。

公共職業安定所において、特に65歳以上の高年齢求職者を対象に、本人の状況に即した職業相談や職業紹介、求人開拓等の支援を行う生涯現役支援窓口を設置するとともに、当窓口において、高年齢求職者を対象とした職場見学、職場体験等を実施する。

また、常用雇用への移行を目的として、職業経験、技能、知識の不足等から安定的な就職が困難な求職者を公共職業安定所等の紹介により一定期間試行雇用する事業主に対する助成措置(トライアル雇用助成金)や、高年齢者等の就職困難者を公共職業安定所等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対する助成措置(特定求職者雇用開発助成金)を実施する。

さらに、再就職が困難である高年齢者等の円滑な労働移動を実現するため、労働移動支援助成金により、離職を余儀なくされる高年齢者等の再就職を民間の職業紹介事業者に委託した事業主や、高年齢者等を早期に雇い入れた事業主、受け入れて訓練(OJTを含む。)を行った事業主に対して、助成措置を実施し、生産指標等により一定の成長性が認められる企業が、事業再編等を行う企業等から離職した者を雇い入れた場合の助成において、新型コロナウイルス感染症の影響により離職した45歳以上の者を離職前と異なる業種の事業主が雇い入れた場合の助成額の上乗せを新たに行う。あわせて、中途採用者の能力評価、賃金、処遇の制度を整備した上で45歳以上の中高年齢者を初めて雇用した事業主に対して、60歳以上の高年齢者を初めて雇用した場合の助成額の上乗せも含めた助成措置を引き続き実施する。

また、高年齢退職予定者のキャリア情報等を登録し、その能力の活用を希望する事業者に対してこれを紹介する高年齢退職予定者キャリア人材バンク事業を(公財)産業雇用安定センターにおいて実施し、高年齢者の就業促進を図る。

ウ 高齢期の起業の支援

日本政策金融公庫(国民生活事業・中小企業事業)において、高齢者等を対象に優遇金利を適用する融資制度(女性、若者/シニア起業家支援資金)により開業・創業の支援を行う。

日本政策金融公庫(国民生活事業・中小企業事業)の融資制度(地域活性化・雇用促進資金)において、エイジフリーな勤労環境の整備を促進するため、高齢者(60歳以上)等の雇用等を行う事業者に対しては、当該制度の利用に必要な雇用創出効果の要件を緩和(2名以上の雇用創出から1名以上の雇用創出に緩和)する措置を継続する。

また、中高年齢者等の雇用機会の創出を図るため、40歳以上の中高年齢者等が起業する際に必要となる、雇用の創出に要する経費の一部を助成する措置等を引き続き実施する。

エ 知識、経験を活用した高齢期の雇用の確保

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(昭和46年法律第68号)は、事業主に対して、65歳までの雇用を確保するために継続雇用制度の導入等の措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)を講じるよう義務付けており、高年齢者雇用確保措置を講じていない事業主に対しては、公共職業安定所による指導等を実施する。

また、令和3年4月から施行される改正高年齢者雇用安定法を踏まえ、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の高年齢者雇用アドバイザー及び65歳超雇用推進プランナーにより、70歳までの就業機会の確保に関する技術的事項についての相談・援助を行う。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(昭和41年法律第132号)第9条に基づき、労働者の一人一人により均等な働く機会が与えられるよう、引き続き、労働者の募集・採用における年齢制限禁止の義務化の徹底を図るべく、指導等を行う。

また、企業における高齢者の雇用を推進するため、65歳以上の年齢までの定年延長や66歳以上の年齢までの継続雇用制度の導入、または、他社による継続雇用制度の導入を行う事業主、高齢者の雇用管理制度の見直し又は導入等や高年齢の有期雇用労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対する支援を実施する。また、継続雇用延長・定年引上げに係る具体的な制度改善提案を実施し、企業への働きかけを行う。

「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)の周知及び労働災害防止団体による個別事業場支援の利用勧奨を行う。また、高年齢労働者の安全・健康確保の取組を行う中小企業等に対し、エイジフレンドリー補助金による支援を行うとともに、高年齢者の特性に配慮した独創的・先進的な取組の実証試験を行い、その結果を公表することで、高年齢労働者の安全衛生対策を推進する。

公務部門における高齢者雇用において、国家公務員については、現行の「国家公務員法」(昭和22年法律第120号)に基づく再任用制度を活用し、65歳までの雇用確保に努めるとともに、特に雇用と年金の接続を図る観点から、「国家公務員の雇用と年金の接続について」(平成25年3月閣議決定)に基づき、令和2年度の定年退職者等のうち希望者を対象として、公的年金の支給開始年齢まで原則再任用する等の措置を講じる。

地方公務員については、同閣議決定の趣旨を踏まえ、引き続き地方の実情に応じて必要な措置を講ずるよう各地方公共団体に対して必要な助言等を行う。

また、国家公務員の定年引上げについては、国家公務員法等の一部を改正する法律案を第204回国会に提出したところであり、定年の65歳までの段階的な引上げを見据えて、必要な準備を進める。

地方公務員の定年引上げについては、地方公務員法等の一部を改正する法律案を第201回国会に提出したところであり、定年の65歳までの段階的な引上げを見据えて、必要な準備を進める。

オ 労働者の職業生活の全期間を通じた能力の開発

職業人生の長期化や働き方の多様化等が進み、さらには新型コロナウイルス感染症の影響で労働者に求められる職業能力が変化することが想定される中、労働者がその人生において、必要な学び直しを行いライフスタイルに応じたキャリア選択を行うことができるよう、人生100年時代を見据え、リカレント教育の充実等、誰もがいくつになっても新たな活躍の機会に挑戦できるような環境を整備する必要がある。

このため、職業訓練の実施や職業能力の「見える化」を推進するとともに、高齢期を見据えたキャリア形成に向けて、労働者のキャリアプラン再設計や企業内の取組を支援するキャリア形成サポートセンターを整備し、労働者等及び企業に対しキャリアコンサルティングを中心とした総合的な支援を引き続き実施する。

また、在職中も含めた学びの促進のため、教育訓練休暇制度の普及促進を図るとともに、教育訓練給付制度の活用により、労働者個人のキャリア形成を支援し、労働者の自己啓発の取組を引き続き支援する。さらに、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第14号)に基づく専門実践教育訓練給付の給付率の引上げ等(平成30年1月施行)について、着実な施行が図られるよう、引き続き周知徹底を図る。

カ ゆとりある職業生活の実現等

仕事と生活の調和の実現のため、「労働時間等設定改善指針」(平成20年厚生労働省告示第108号)の周知・啓発や、企業における働き方・休み方の改善に向けた検討を行う際に活用できる「働き方・休み方改善ポータルサイト」による情報発信等、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進に向けた労使の自主的な取組の支援を行う。

(2)誰もが安心できる公的年金制度の構築

ア 持続可能な公的年金制度の構築

今後、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる。こうした社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大等の内容を盛り込んだ「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第40号。以下この節において「国民年金法等の一部を改正する法律」という。)が令和2年5月に成立したところであり、その円滑な施行に努める。

イ 高齢期における職業生活の多様性に対応した年金制度の構築

国民年金法等の一部を改正する法律では、働き方の多様化や高齢期の長期化・就労拡大等を踏まえ、在職定時改定の導入、在職老齢年金制度の見直し、年金の受給開始時期の選択肢の拡大等を盛り込んだところであり、その円滑な施行に向けた取組を進める。

ウ 働き方に中立的な年金制度の構築

働きたい人が働きやすい環境を整えるとともに、短時間労働者に対する年金等の保障を厚くする観点から、国民年金法等の一部を改正する法律では、短時間労働者に対する被用者保険の適用について、現行の500人超規模から、令和4年10月に100人超規模、令和6年10月に50人超規模の企業まで適用範囲を拡大することを盛り込んだところであり、その円滑な施行に向けた取組を進める。

エ 年金生活者支援給付金制度の円滑な実施

令和元年度より創設された年金生活者支援給付金制度について、令和3年度以降も、年金生活者支援給付金の認定を継続して受けた方、基礎年金の新規裁定者及び所得が減少した方等で新たに認定を受ける方に対して年金生活者支援給付金を着実に支給していく。

オ 年金制度等の分かりやすい情報提供

短時間労働者等への被用者保険の適用拡大の円滑な施行に向けて、適用拡大の対象者や適用拡大による被保険者のメリット等を含め、周知・広報に努める。また、若い人たちが年金について考えるきっかけにするため「学生との年金対話集会」や、「令和の年金広報コンテスト」の開催や、若い世代向けの年金学習教材を作成する。また、「ねんきん定期便」については、老後の生活設計の選択を支援するため、年金の繰下げ制度に係る制度改正による受給開始時期の選択肢の拡大等について、分かりやすい情報提供を推進する。

(3)資産形成等の支援

ア 資産形成等の促進のための環境整備

勤労者財産形成貯蓄制度の普及等を図ることにより、高齢期に備えた勤労者の自助努力による計画的な財産形成を促進する。

企業年金・個人年金制度については、高齢期の就労の拡大に対応して、確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引上げと受給開始時期等の選択肢の拡大、中小企業向け制度の対象範囲の拡大、企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入の要件緩和等の措置を講ずる国民年金法等の一部を改正する法律が令和2年5月に成立したところであり、その円滑な施行に努める。また、国民年金法等の一部を改正する法律の検討規定や附帯決議に基づいて、確定拠出年金に係る拠出限度額の見直し等について、検討を進める。退職金制度については、中小企業における退職金制度の導入を支援するため、中小企業退職金共済制度の普及促進のための施策を実施する。

NISA(少額投資非課税)制度に関して、「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第8号)において、つみたてNISA(非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度)については期限を5年間延長、一般NISA(少額投資非課税制度)についてはより多くの国民に積立・分散投資による安定的な資産形成を促す観点から制度を見直した上で、2024年から5年間の制度として措置、ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)については延長せず、新規の口座開設を2023年までとすることとされた。引き続き、つみたてNISAの普及に努めるとともに、新しいNISA制度の周知広報を行っていく。

イ 資産の有効活用のための環境整備

リバースモーゲージの普及を図るため、住宅金融支援機構において、公的保証による民間金融機関のバックアップ等を行い、資産の有効活用のための環境を整備する。

低所得の高齢者世帯が安定した生活を送れるようにするため、各都道府県社会福祉協議会において、一定の居住用不動産を担保として、世帯の自立に向けた相談支援に併せて必要な資金の貸付けを行う不動産担保型生活資金の貸与制度を実施する。

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