第3章 令和3年度高齢社会対策(第2節 4)

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第2節 分野別の高齢社会対策(4)

4 生活環境

(1)豊かで安定した住生活の確保

「住生活基本計画(全国計画)」(令和3年3月閣議決定)に掲げた目標(〔1〕「新たな日常」やDXの進展等に対応した新しい住まい方の実現、〔2〕頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まいの確保、〔3〕子どもを産み育てやすい住まいの実現、〔4〕多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせるコミュニティの形成とまちづくり、〔5〕住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備、〔6〕脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成、〔7〕空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進、〔8〕居住者の利便性や豊かさを向上させる住生活産業の発展)を達成するため、必要な施策を着実に推進する。

ア 次世代へ継承可能な良質な住宅の供給促進
(ア)持家の計画的な取得・改善努力への援助等の推進

良質な持家の取得・改善を促進するため、勤労者財産形成住宅貯蓄の普及促進等を図るとともに、独立行政法人住宅金融支援機構の証券化支援事業及び独立行政法人勤労者退職金共済機構等の勤労者財産形成持家融資を行う。

また、住宅ローン減税等の税制上の措置を活用し、引き続き良質な住宅の取得を促進する。

(イ)高齢者の持家ニーズへの対応

住宅金融支援機構において、親族居住用住宅を証券化支援事業の対象とするとともに、親子が債務を継承して返済する親子リレー返済(承継償還制度)を実施する。

(ウ)将来にわたり活用される良質なストックの形成

「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(平成20年法律第87号)に基づき、住宅を長期にわたり良好な状態で使用するため、その構造や設備について、一定以上の耐久性、維持管理容易性等の性能を備え、適切な維持保全が確保される「認定長期優良住宅」の普及促進を図る。

イ 循環型の住宅市場の実現
(ア)既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備

既存住宅ストックの質の向上及び流通促進に向けて、インスペクションの円滑な普及、安心して既存住宅を取得したりリフォーム工事を依頼することができる市場環境の整備、瑕疵保険や住宅紛争処理制度の充実を図るとともに、良質な住宅ストックが適正に評価される市場の形成を促進する先導的な取組や既存住宅の長寿命化に資するリフォームの取組を支援する。

(イ)高齢者に適した住宅への住み替え支援

高齢者等の所有する戸建て住宅等を、広い住宅を必要とする子育て世帯等へ賃貸することを円滑化する制度により、高齢者に適した住宅への住み替え等を促進するとともに、同制度を活用して住み替える先の住宅を取得する費用について、住宅金融支援機構の証券化支援事業における民間住宅ローンの買取要件の緩和により支援する。

さらに、高齢者が住み替える先のサービス付き高齢者向け住宅に係る入居一時金及び住み替える先の住宅の建設・購入資金の確保に資するよう、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関のリバースモーゲージの推進を支援する。

ウ 高齢者の居住の安定確保
(ア)良質な高齢者向け住まいの供給

「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律」(平成23年法律第32号)により創設された「サービス付き高齢者向け住宅」の供給促進のため、整備費に対する補助、税制の特例措置、住宅金融支援機構の融資による支援を行う。また、新たな日常に対応するため、非接触でのサービス提供等を可能とするIoT技術の導入支援を行う。

さらに、高齢者世帯等の住宅確保要配慮者の増加に対応するため、民間賃貸住宅や空き家を活用した住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度等を内容とする新たな住宅セーフティネット制度において、セーフティネット登録住宅の登録促進を図るとともに、住宅の改修や入居者負担の軽減等への支援を行う。

また、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅について、利用者を保護する観点から、前払金の返還方法や権利金の受領禁止の規定の適切な運用の徹底を引き続き求める。

(イ)高齢者の自立や介護に配慮した住宅の建設及び改造の促進

「健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」の普及等によりバリアフリー化等の改修を進める。住宅金融支援機構においては、高齢者自らが行う住宅のバリアフリー改修について高齢者向け返済特例制度を適用した融資を実施する。また、証券化支援事業の枠組みを活用したフラット35Sにより、バリアフリー性能等に優れた住宅に係る金利引下げを行う。さらに、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関が提供する住宅の建設、購入、改良等の資金に係るリバースモーゲージの推進を支援する。

また、バリアフリー構造等を有する「サービス付き高齢者向け住宅」の供給促進のため、整備費に対する補助、税制の特例措置、住宅金融支援機構の融資による支援を行う。

(ウ)公共賃貸住宅

公共賃貸住宅においては、バリアフリー化を推進するため、原則として、新たに供給する全ての公営住宅、改良住宅及び都市再生機構賃貸住宅について、段差の解消等一定の高齢化に対応した仕様により建設する。

この際、公営住宅、改良住宅の整備においては、中高層住宅におけるエレベーター設置等の高齢者向けの設計・設備によって増加する工事費について助成を行う。都市再生機構賃貸住宅においても、中高層住宅の供給においてはエレベーター設置を標準とする。

また、老朽化した公共賃貸住宅については、計画的な建替え・改善を推進する。

(エ)住宅と福祉の施策の連携強化

「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(平成13年法律第26号)に基づき、都道府県及び市町村において、高齢者の居住の安定確保のための計画を定めることを推進していく。また、生活支援・介護サービスが提供される高齢者向けの賃貸住宅の供給を促進し、医療・介護と連携した安心できる住まいの提供を実施していく。

また、市町村の総合的な高齢者住宅施策の下、シルバーハウジング・プロジェクト事業を実施するとともに、公営住宅等においてライフサポートアドバイザー等のサービス提供の拠点となる高齢者生活相談所の整備を促進する。

さらに、既存の公営住宅や改良住宅の大規模な改修と併せて、高齢者福祉施設等の生活支援施設の導入を図る取組に対しても支援を行う。

(オ)高齢者向けの先導的な住まいづくり等への支援

スマートウェルネス住宅等推進事業により、高齢者等の居住の安定確保・健康維持増進に係る先導的な住まいづくりの取組等に対して補助を行う。

(カ)高齢者のニーズに対応した公共賃貸住宅の供給

公営住宅については、高齢者世帯向公営住宅の供給を促進する。また、地域の実情を踏まえた地方公共団体の判断により、高齢者世帯の入居収入基準を一定額まで引き上げるとともに、入居者選考において優先的に取り扱うことを可能としている。

都市再生機構賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対する入居又は住宅変更における優遇措置を行う。

(キ)高齢者の民間賃貸住宅への入居の円滑化

高齢者等の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、地方公共団体や関係事業者、居住支援団体等が組織する居住支援協議会や新たな住宅セーフティネット制度に基づく居住支援法人が行う相談・情報提供等に対する支援を行う。

(2)高齢社会に適したまちづくりの総合的推進

ア 共生社会の実現に向けた「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づく取組の推進

2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)の開催とレガシーとしての共生社会の実現に向けて、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(平成29年2月ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)の具体的施策、障害当事者の視点を施策に反映しながら着実に取り組む。また、パラリンピック選手との交流を契機にユニバーサルデザインの街づくりと心のバリアフリーを推進し、共生社会の実現を目指す「共生社会ホストタウン」の取組が東京2020大会のレガシーになるよう、令和2年5月の第201回国会で成立した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和2年法律第28号)に基づき、ハード対策に加え、心のバリアフリーの取組強化などのソフト対策の推進を図る。

イ 多世代に配慮したまちづくり・地域づくりの総合的推進

高齢者等全ての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、高齢者に配慮したまちづくりを総合的に推進するため、バリアフリー法に基づく移動等円滑化促進方針及び基本構想の作成を市町村に働きかけるとともに、地域公共交通バリアフリー化調査事業及びバリアフリー環境整備促進事業を実施する。

高齢化の進行や人口減少等の社会構造変化や環境等に配慮したまちづくりを進めることが不可欠であるとの観点から、環境価値、社会的価値、経済的価値を新たに創造し、「誰もが暮らしたいまち」・「誰もが活力あるまち」の実現を目指す「環境未来都市」構想を推進するため、引き続き、選定された環境未来都市及び環境モデル都市の取組に関する普及展開等を実施する。

「誰一人取り残さない」社会の実現を目指して、経済・社会・環境をめぐる広範な課題に統合的に取り組むための世界共通の目標である持続可能な開発目標(SDGs)を、広く全国の自治体において積極的に推進するため、地方創生に向けたSDGs推進事業を実施する。令和2年度に引き続き令和3年度においても、SDGs達成に向けた優れた取組を提案する都市を「SDGs未来都市」として選定するとともに、その中でも特に先導的な取組を「自治体SDGsモデル事業」として選定する。そのSDGs未来都市等における取組の普及展開や都市間ネットワークの形成のため、国内外へ向けた情報発信の取組も併せて実施する。

また、SDGsの推進に当たっては、多様なステークホルダーとの連携が不可欠であることから、引き続き、官民連携の取組を促進することを目的とした「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を通じて、マッチングや分科会の取組等に係る支援を実施するとともに、その成功事例の国内外への普及展開を図る。

さらに、地方創生SDGsに取り組む地域事業者とその取組に対して積極的に支援を行う地域金融機関を地方公共団体がつなぎ、地域における資金の還流と再投資を生み出し、全てのステークホルダーが関わる自律的好循環の形成を目的とし、「地方創生SDGs金融」の取組を一層推進する。

さらに、地方創生の観点から、「生涯活躍のまち」について、その徹底活用を図る。具体的には、「「生涯活躍のまち」づくりに関するガイドライン」等を踏まえ、移住者や関係人口と地元住民双方を対象に、個々の施設というよりは、エリア全体の魅力向上や空間デザインという点を視野に入れ、関係省庁により構成される支援チームを活用するなどし、住宅、福祉、健康づくり、就労支援、まちづくり等、あらゆる施策を分野横断的、総合的に活用し、関係省庁が連携した支援を行う。

特に、地域課題を抱える地方公共団体へのフォローアップや、「生涯活躍のまち」の取組に未着手の地方公共団体の新たな掘り起こし等を進めるとともに、「生涯活躍のまち」に関する意向調査の結果等を基に、取組の推進意向のある地方公共団体や関連する取組について支援する。

ウ 公共交通機関等の移動空間のバリアフリー化
(ア)バリアフリー法に基づく公共交通機関のバリアフリー化の推進

バリアフリー法に基づき、公共交通事業者等による旅客施設や車両等のバリアフリー化の取組を促進する。このため、令和2年度に改正した公共交通移動等円滑化基準及び令和2年度に改訂したガイドラインに基づき、整備を進めるとともに、令和2年度に策定した「公共交通機関の役務の提供に関する移動等円滑化整備ガイドライン」に基づき「心のバリアフリー」を推進する。また、鉄道駅等旅客ターミナルのバリアフリー化、ノンステップバス、ユニバーサルデザインタクシーを含む福祉タクシーの導入等に対する支援措置を実施する。加えて、「交通政策基本法」に基づく「交通政策基本計画」においても、バリアフリー化等の推進を目標の一つとして掲げている。

(イ)歩行空間の形成

移動の障壁を取り除き、全ての人が安全に安心して暮らせるよう、信号機、歩道等の交通安全施設等の整備を推進する。高齢歩行者等の安全な通行を確保するため、①幅の広い歩道等の整備、②歩道の段差・傾斜・勾配の改善、③無電柱化推進計画に基づく道路の無電柱化、④エレベーター等の付いた立体横断施設の設置、⑤歩行者用案内標識の設置、⑥歩行者等を優先する道路構造の整備、⑦自転車道等の設置による歩行者と自転車交通の分離、⑧生活道路における速度の抑制及び通過交通の抑制・排除並びに幹線道路における交通流の円滑化を図るための信号機、道路標識、道路構造等の重点的整備、⑨バリアフリー対応型信号機(Bluetoothを活用し、スマートフォン等に対して歩行者用信号情報を送信するとともに、スマートフォン等の操作により青信号の延長を可能とする高度化PICSを含む。)の整備、⑩歩車分離式信号の運用、⑪見やすく分かりやすい道路標識・道路標示の整備、⑫信号灯器のLED化等の対策を実施する。

また、生活道路において、区域を設定して最高速度30km/hの区域規制を実施するとともに、その他の安全対策を必要に応じて組み合わせた「ゾーン30」の整備や、路側帯の設置・拡幅、ハンプ設置等の道路整備等、ソフトとハードが連携した歩行者・自転車利用者の交通安全対策を推進する。

積雪や凍結に対し、鉄道駅周辺や中心市街地等の特に安全で快適な歩行空間の確保が必要なところにおいて、歩道除雪の充実、消融雪施設等のバリアフリーに資する施設整備対策を実施する。

(ウ)道路交通環境の整備

高齢者等が安心して自動車を運転し外出できるよう、生活道路における交通規制の見直し、付加車線の整備、道路照明の増設、道路標識・道路標示の高輝度化、信号灯器のLED化、「道の駅」における優先駐車スペース、高齢運転者等専用駐車区間の整備等の対策を実施する。

(エ)バリアフリーのためのソフト面の取組

高齢者や障害者等も含め、誰もが屋内外をストレス無く自由に活動できるユニバーサル社会の構築に向け、ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進を図る。民間事業者等が多様な歩行者移動支援サービスを提供できる環境を整備するため、施設や経路のバリアフリー情報等の移動に必要なデータについて、他分野と連携した継続的な整備・更新手法等を検討する。また、大規模イベント時において、高齢者、障害者等を含めた人々を対象としたナビゲーションサービス提供等の活用検証を行うとともに、民間事業者との連携を強化し、移動支援サービスの普及を促進する。

「心のバリアフリー」社会を実現し、ハード面のみならずソフト面も含む総合的なバリアフリー化を実現するため、高齢者等の介助体験・擬似体験等を内容とする「バリアフリー教室」の開催等ソフト面での取組を推進する。

(オ)訪日外国人旅行者の受入環境整備

訪日外国人旅行者の移動円滑化を図るため、エレベーター・スロープ等の設置等を、補助制度により支援する。

エ 建築物・公共施設等のバリアフリー化

バリアフリー法に基づく認定を受けた優良な建築物(認定特定建築物)等のうち一定のものの整備に対して支援措置を講じることにより、高齢者・障害者等が円滑に移動等できる建築物の整備を促進する。

窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、バリアフリー法に基づく建築物移動等円滑化誘導基準に規定された整備水準の確保等により、高齢者を始め全ての人が、安全に、安心して、円滑かつ快適に利用できる施設を目指した整備を推進する。

社会資本整備総合交付金等の活用によって、誰もが安心して利用できる都市公園の整備を推進するとともに、バリアフリー法に基づく基準等により、公園施設のバリアフリー化を推進する。

誰もが身近に自然とふれあえる快適な環境の形成を図るため、歩いていける範囲の身近な公園を始めとした都市公園等の計画的な整備を推進する。

また、河川等では、高齢者にとって憩いと交流の場となる良好な水辺空間の整備を推進する。

加えて、訪日外国人旅行者が我が国を安心して旅行できる環境を整備するため、訪日外国人旅行者受入環境整備に積極的に取り組む地域や、訪日外国人旅行者の来訪が特に多い、又はその見込みのあるものとして観光庁が指定する市区町村に係る観光地等において、代表的な観光スポット等における段差の解消を支援する。

オ 活力ある農山漁村の再生

社会福祉法人等による高齢者を対象とした生きがい及びリハビリを目的とした農園の整備等を支援する。

また、農山漁村の健全な発展と活性化を図るため、農山漁村地域の農林水産業生産基盤と生活環境の一体的・総合的な整備を実施する。

さらに、高齢者等による農作業中の事故が多い実態を踏まえ、全国の農業者が農作業安全研修を受講可能な体制を構築する取組等を支援するとともに、農作業安全の全国運動を実施する。

農業人口の減少と高齢化が進行する中、作業ピーク時における労働力不足や高齢農業者への作業負荷の増大等を解消するため、産地が一体となって、シルバー人材等の活用を含め、労働力の確保・調整等に向けた体制の構築を支援する。

加えて、「漁港漁場整備法」(昭和25年法律第137号)に基づき策定された「漁港漁場整備長期計画」(平成29年3月閣議決定)を踏まえ、防風・防暑・防雪施設や浮き桟橋等の就労環境の改善に資する施設整備を実施する。

(3)交通安全の確保と犯罪、災害等からの保護

ア 交通安全の確保

近年、交通事故における致死率の高い高齢者の人口の増加が、交通事故死者数を減りにくくさせる要因の一つとなっており、今後、高齢化が更に進むことを踏まえると、高齢者の交通安全対策は重点的に取り組むべき課題である。

高齢者にとって、安全で安心な交通社会の形成を図るため、令和3年3月に中央交通安全対策会議で決定した「第11次交通安全基本計画」(計画期間:令和3~令和7年度)等に基づき、①生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備、②参加・体験・実践型の交通安全教育、③交通安全教育を受ける機会の少ない高齢者を対象とした個別指導、④シルバーリーダー(高齢者交通安全指導員)等を対象とした参加・体験・実践型の講習会の実施による高齢者交通安全教育の推進、⑤高齢運転者対策等の交通安全対策を実施する。

また、生活道路において、科学的データや、地域の顕在化したニーズ等に基づき抽出した交通事故の多いエリアにおいて、国、自治体、地域住民等が連携し、徹底した通過交通の排除や車両速度の抑制等のゾーン対策に取り組み、子供や高齢者等が安心して通行できる道路空間の確保を図る。

さらに、歩行中及び自転車乗用中の交通事故死者数に占める高齢者の割合が高いことを踏まえ、交通事故が多発する交差点等における交通ルール遵守の呼び掛けや参加・体験・実践型の交通安全教育を実施していくとともに、自転車活用推進法(平成28年法律第113号)により定められる「自転車活用推進計画」に基づく、自転車道や自転車専用通行帯、自転車の通行位置を示した路面表示等の自転車走行空間の整備等により、自転車利用環境の総合的な整備を推進する。

踏切道の歩行者対策として、「踏切安全通行カルテ」や地方踏切道改良協議会を通じてプロセスの「見える化」をし、道路管理者と鉄道事業者が、地域の実情に応じた対策を検討し、高齢者等の通行の安全対策を推進する。

75歳以上で一定の違反歴がある高齢運転者に対する運転技能検査制度の導入及び申請により対象車両を安全運転サポート車に限定するなどの限定条件付免許制度の導入等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律(令和2年法律第42号)が令和4年6月までに施行されることを踏まえ、改正法の適切かつ円滑な施行に向けて準備を進めていく。

加えて、平成29年3月31日には、高齢運転者の安全運転を支援する先進安全技術を搭載した自動車(安全運転サポート車)のコンセプトや愛称「セーフティー・サポートカーS(略称:サポカーS)」等が決定され、官民を挙げて普及啓発の取組を進めている。

高速道路での逆走対策については、引き続き、一般道側からの誤進入対策、行き先を間違えた車に対する安全・適切な誘導や平成30年度に民間企業から公募・選定した逆走対策技術の展開を推進する。また、画像認識用標識を用いた路車連携技術による逆走対策の実用化を推進する。

イ 犯罪、人権侵害、悪質商法等からの保護
(ア)犯罪からの保護

高齢者が犯罪や事故に遭わないよう、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問し、高齢者が被害に遭いやすい犯罪の手口の周知及び被害防止対策についての啓発を行うとともに、必要に応じて関係機関や親族への連絡を行うほか、認知症等によって行方不明になる高齢者を発見、保護するための仕組みづくりを関係機関等と協力して推進する。

高齢者を中心に大きな被害が生じている特殊詐欺については、令和元年6月、犯罪対策閣僚会議において策定した「オレオレ詐欺等対策プラン」に基づき、全府省庁において、幅広い世代に対して高い発信力を有する著名な方々と連携し、公的機関、各種団体、民間事業者等の協力を得ながら、家族の絆の重要性等を訴える広報啓発活動を多種多様な媒体を活用して展開するなど被害防止対策を推進するとともに、電話転送サービスを介した固定電話番号の悪用への対策を始めとする犯行ツール対策や背後にいるとみられる暴力団等の犯罪者グループ等に対する取締り等を推進する。

また、悪質商法の中には高齢者をねらった事件もあることから悪質商法の取締りを推進するとともに、犯罪に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供等の被害拡大防止対策、悪質商法等からの被害防止に関する広報啓発活動及び悪質商法等に関する相談活動を行う。

さらに、特殊詐欺や利殖勧誘事犯の犯行グループは、被害者や被害者になり得る者等が登載された名簿を利用しており、当該名簿登載者の多くは高齢者であって、今後更なる被害に遭う可能性が高いと考えられるため、捜査の過程で警察が押収した際はこれらの名簿をデータ化し、都道府県警察が委託したコールセンターの職員がこれを基に電話による注意喚起を行う等の被害防止対策を実施する。

加えて、今後、認知症高齢者や一人暮らし高齢者が増加していく状況を踏まえ、市民を含めた後見人等の確保や市民後見人の活動を安定的に実施するための組織体制の構築・強化を図る必要があることから、令和元年度に引き続き、市町村において地域住民で成年後見に携わろうとする者に対する養成研修や後見人の適正な活動が行われるよう支援していく。

(イ)人権侵害からの保護

「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年法律第124号)に基づき、前年度の養介護施設従事者等による虐待及び養護者による虐待の状況について、必要な調査等を実施し、各都道府県・市町村における虐待の実態・対応状況の把握に努めるとともに、市町村等に高齢者虐待に関する通報や届出があった場合には、関係機関と連携して速やかに高齢者の安全確認や虐待防止、保護を行う等、高齢者虐待への早期対応が推進されるよう必要な支援を行っていく。

法務局・地方法務局等において、高齢者の人権問題に関する相談に応じるとともに、家庭や高齢者施設等における虐待等、高齢者を被害者とする人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、その結果を踏まえ、事案に応じた適切な措置を講じる等して、被害の救済及び人権尊重思想の普及高揚に努める。また、令和3年度においても、法務局・地方法務局等に来庁することができない高齢者等からの相談について、引き続き電話や書面、インターネット等を通じて受け付ける。

(ウ)悪質商法からの保護

消費者庁では、引き続き、地域において認知症高齢者等の「配慮を要する消費者」を見守り、消費者被害の未然防止・拡大防止を図るための消費者安全確保地域協議会について、地方消費者行政強化交付金の活用や幅広い情報提供などにより、地方公共団体における更なる設置や活動を支援する。

高齢者の周りの人々による見守りの強化の一環として、高齢者団体のほか障害者団体・行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」を開催し、消費者トラブルの情報共有や、悪質商法の新たな手口や対処の方法等の情報提供等を図る。

さらに、全国どこからでも身近な消費生活相談窓口につながる共通の3桁の電話番号である「消費者ホットライン188」を引き続き運用するとともに、同ホットラインについて消費者庁ウェブサイトへの掲載、SNSを活用した広報、啓発チラシやポスターの配布、各種会議等を通じた周知を行い、利用の促進を図る。

また、独立行政法人国民生活センターでは引き続き、消費者側の視点から注意点を簡潔にまとめたメールマガジン「見守り新鮮情報」を月2回程度配信する。

消費者契約法の平成30年改正における附帯決議において、高齢者等の知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権の創設等について、早急に検討を行うこと等とされていることを踏まえ、「消費者契約に関する検討会」において引き続き検討を進める。

(エ)司法ソーシャルワークの実施

日本司法支援センター(法テラス)では、法的問題を抱えていることに気付いていなかったり、意思の疎通が困難である等の理由で自ら法的援助を求めることが難しい高齢者・障害者に対して、地方公共団体、福祉機関・団体や弁護士会、司法書士会等と連携を図りつつ、当該高齢者・障害者に積極的に働きかける(アウトリーチ)等して、法的問題を含めた諸問題を総合的に解決することを目指す「司法ソーシャルワーク」を推進する。

そこで、出張法律相談等のアウトリーチ活動を担う弁護士・司法書士を確保する等、「司法ソーシャルワーク」の実施に必要な体制整備をより一層進めるとともに、福祉機関職員に対して業務説明会を行う等して、福祉機関との連携をさらに強化する。併せて、福祉機関に対して、平成30年1月24日から実施している特定援助対象者法律援助事業の周知を図る。

ウ 防災施策の推進

病院、老人ホーム等の要配慮者利用施設を保全するため、土砂災害防止施設の整備を推進するとともに、激甚な水害・土砂災害を受けた場合の再度災害防止対策を引き続き実施する。

災害時における高齢者等要配慮者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、「要配慮者利用施設における避難に関する計画作成の事例集」を引き続き周知するとともに、高齢者が災害時に適切な避難行動をとれるよう、「平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難のあり方について(報告)」を踏まえ、防災・減災への取組実施機関と地域包括支援センター・ケアマネジャーが連携し高齢者の避難行動に対する理解促進を引き続き図る。

「水防法」(昭和24年法律第193号)及び「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(平成12年法律第57号)に基づき、浸水想定区域内又は土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設への洪水予報又は土砂災害警戒情報等の伝達方法を定めることを推進する。あわせて、市町村地域防災計画において浸水想定区域又は土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設の名称及び所在地を定めるとともに、これら要配慮者利用施設の所有者又は管理者による避難確保計画の作成及び計画に基づく訓練の実施を促進する。

また、「土砂災害防止対策基本指針」(令和2年8月国土交通省告示)及び「土砂災害警戒避難ガイドライン」(平成27年4月改訂)により市町村の警戒避難体制の充実・強化が図れるよう支援を行う。さらに、土砂災害・全国防災訓練では、住民等が主体となりハザードマップを活用した実践的な避難訓練等を重点的に実施する。

さらに、土砂災害特別警戒区域における要配慮者利用施設の建築の許可制等を通じて高齢者等の安全が確保されるよう、土砂災害防止法に基づき区域指定の促進を図る。

住宅火災で亡くなる高齢者等の低減を図るため、春・秋の全国火災予防運動において、高齢者等の要配慮者の把握や安全対策等に重点を置いた死者発生防止対策を推進項目とするとともに、住宅用火災警報器や防炎品、住宅用消火器の普及促進等総合的な住宅防火対策を推進する。また、「敬老の日に『火の用心』の贈り物」をキャッチフレーズとする「住宅防火・防災キャンペーン」を実施し、高齢者等に対して住宅用火災警報器等の普及促進を図る。

災害情報を迅速かつ確実に伝達するため、全国瞬時警報システム(Jアラート)との連携を含め、防災行政無線による放送(音声)や緊急速報メールによる文字情報等の種々の方法を組み合わせて、災害情報伝達手段の多様化を引き続き推進する。

山地災害からの生命の安全を確保するため、要配慮者利用施設に隣接している山地災害危険地区等について、治山施設の設置や荒廃した森林の整備等を計画的に実施する。

災害時に自ら避難することが困難な高齢者などの避難行動要支援者への支援については、改正した「災害対策基本法」(昭和36年法律第223号)、「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(平成25年8月決定)を踏まえ、市町村による個別避難計画の活用等の取組が促進されるよう、適切に助言を行う。

エ 東日本大震災への対応

東日本大震災に対応して、復興の加速化を図るため、被災した高齢者施設等の復旧に係る施設整備について、関係自治体との調整を行う。

「地域医療介護総合確保基金」等を活用し、日常生活圏域で医療・介護等のサービスを一体的・継続的に提供する「地域包括ケア」の体制を整備するため、都道府県計画等に基づき、地域密着型サービス等、地域の実情に応じた介護サービス提供体制の整備を促進するための支援を行う。

あわせて、介護保険において、被災者を経済的に支援する観点から、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う帰還困難区域等、上位所得者層を除く旧避難指示区域等(平成25年度以前に指定が解除された旧緊急時避難準備区域等(特定避難勧奨地点を含む。)、平成26年度に指定が解除された旧避難指示解除準備区域等(田村市の一部、川内村の一部及び南相馬市の特定避難勧奨地点)、平成27年度に指定が解除された旧避難指示解除準備区域(楢葉町の一部)、平成28年度に解除された旧居住制限区域等(葛尾村の一部、川内村の一部、南相馬市の一部、飯舘村の一部、川俣村の一部及び浪江町の一部)、平成29年度に指定が解除された旧居住制限区域等(富岡町の一部)及び令和元年度に指定が解除された旧帰還困難区域等(大熊町の一部、双葉町の一部及び富岡町の一部))の住民について、介護保険の利用者負担や保険料の減免を行った保険者に対する財政支援を1年間継続する。

また、避難指示区域等の解除に伴い、福祉・介護サービスの提供体制を整えるため、介護施設等への就労希望者に対する就職準備金の貸付や全国の介護施設等からの応援職員の確保に対する支援を行うとともに、新たに相双地域から福島県内外の養成施設に入学する者への支援等の実施、介護施設等の経営強化等の支援を行う。

日本司法支援センター(法テラス)では、震災により、経済的・精神的に不安定な状況に陥っている被災者を支援するため、震災以降の取組を継続し、コールセンターや地方事務所等における業務の適切な運用を行う等、生活再建に役立つ法制度等の情報提供及び民事法律扶助を実施する。

(4)成年後見制度の利用促進

認知症高齢者等の財産管理や契約に関し本人を支援する成年後見制度について周知する。

成年後見制度は、認知症、知的障害その他の精神上の障害があることにより財産の管理又は日常生活等に支障がある者を支える重要な手段であり、その利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、平成28年4月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(平成28年法律第29号)が成立し、本法律に基づき、「成年後見制度利用促進委員会」における議論を踏まえ、平成29年3月に「成年後見制度利用促進基本計画」を閣議決定した。基本計画の中間年度に当たる令和元年度においては、基本計画に係るKPI(成果指標)を設定するとともに、各施策の進捗状況や個別課題の整理・検討を行っており、こうしたKPIや中間検証の結果も踏まえ、成年被後見人等の財産管理のみならず意思決定支援・身上保護も重視した適切な支援に繋がるよう、利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善や権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり等の、成年後見制度の利用促進に関する施策を総合的・計画的に推進していく。

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