第3章 令和4年度高齢社会対策(第2節 2)

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第2節 分野別の高齢社会対策(2)

2 健康・福祉

(1) 健康づくりの総合的推進

ア 生涯にわたる健康づくりの推進

健康日本21(第二次)については、令和3年6月より最終評価の議論を開始したところ、今後は最終評価の結果も踏まえ、令和4年夏から健康日本21(第二次)に次ぐ、次期国民健康づくり運動プランの作成に向けて検討を開始する予定である。

平成25年4月に開始した健康日本21(第二次)に基づき、企業、団体、地方公共団体等と連携し、健康づくりについて取組の普及啓発を推進する「スマート・ライフ・プロジェクト」を引き続き実施していく。

さらに、健康な高齢期を送るためには、壮年期からの総合的な健康づくりが重要であるため、市町村が「健康増進法」に基づき実施している健康教育、健康診査、訪問指導等の健康増進事業について一層の推進を図る。

また、医療保険者による特定健康診査・特定保健指導の着実な実施や、データヘルス計画に沿った取組等、加入者の予防・健康づくりの取組を推進していくとともに、糖尿病を始めとする生活習慣病の重症化予防の先進的な事例の横展開等、中長期的な各般の取組を引き続き進めていく。

いつまでも健康で活力に満ちた長寿社会の実現に向けて、地方公共団体におけるスポーツを通じた健康増進に関する施策を持続可能な取組とするため、域内の体制整備及び運動・スポーツに興味・関心を持ち、習慣化につながる取組を推進する。

「第4次食育推進基本計画」に基づき、生涯を通じた心身の健康を支える食育を推進し、健康寿命の延伸に向け、個々の高齢者の特性に応じて生活の質の向上が図られるような食育を推進していく。

高齢者の低栄養予防については、地域の共食の場等を活用した、適切な栄養管理に基づく健康支援型配食サービスを推進し、地域高齢者の低栄養・フレイル予防にも資する効果的・効率的な健康支援につなげるため、「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」を踏まえた適切な配食の提供及び栄養管理を行う配食事業者に対して、管理栄養士等の専門職が継続的に参画できる体制を構築する事業を引き続き実施する。

また、フレイル対策にも資する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の活用に当たっては、フレイル予防の普及啓発ツールの啓発を引き続き進めていく。

高齢受刑者で日常生活に支障がある者の円滑な社会復帰を実現するため、引き続きリハビリテーション専門スタッフを配置する。

また、散歩や散策による健康づくりにも資する取組として、河川空間とまち空間が融合した良好な空間の形成を目指す「かわまちづくり」を推進する。

イ 介護予防の推進

要介護状態等になることを予防し、要介護状態等になった場合でもできるだけ地域において自立した日常生活を営むことができるよう市町村における地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防の取組を推進する。

平成27年度から開始された「介護予防・日常生活支援総合事業」は、多様な生活支援の充実、高齢者の社会参加と地域における支え合い体制づくり、介護予防の推進等を図るものであり、令和3年度から開始した第8期介護保険事業(支援)計画の実施に当たり、介護予防の取組を更に推進し、より効果的な介護予防の取組の展開に資する事業となるよう、研修会の開催等を行い、引き続き市町村の取組を支援していく。

また、新型コロナウイルス感染症流行に伴う高齢者の外出自粛等の長期化による健康への影響を軽減するため、通いの場を始めとする介護予防の取組の再開・推進に向けた更なる広報の強化を図る。

(2) 持続可能な介護保険制度の運営

令和7年や令和22年を見据え、令和2年6月5日に成立した「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第52号、以下「改正社会福祉法」という。)には、地域の特性に応じた、認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進や医療・介護のデータ基盤の整備の推進、介護人材の確保及び業務効率化の取組の強化が盛り込まれており、引き続き第8期介護保険事業計画においても地域共生社会の実現に向けた取組を進めていく。

(3) 介護サービスの充実(介護離職ゼロの実現)

ア 必要な介護サービスの確保

地域住民が可能な限り、住み慣れた地域で介護サービスを継続的・一体的に受けることのできる体制(地域包括ケアシステム)の実現を目指すため、地域密着型サービスの充実、サービス付き高齢者向け住宅等の高齢者の住まいや介護医療院の整備、特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム等)を適切に運用するための支援を進める。

また、地域で暮らす高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法として、全国の地方公共団体に「地域ケア会議」の普及・定着を図るため、市町村に対し、「地域ケア会議」の開催に係る費用に対して、財政支援を行う。

さらに、令和4年度には「地域づくり加速化事業」として、市町村の地域づくり促進のための支援パッケージを活用し、有識者による研修実施や、総合事業等に課題を抱える市町村等への伴走的支援を行う。

あわせて、介護人材の確保のため、「介護助手」等の普及を通じた介護現場での多様な就労の促進等を地域医療介護総合確保基金に新たに位置付け、令和3年度に引き続き、当該基金の活用により、「参入促進」、「労働環境の改善」、「資質の向上」に向けた都道府県の取組を支援する。さらに、介護福祉士修学資金等貸付事業の更なる活用促進等に取り組む。加えて、介護職の魅力や社会的評価の向上を図り、介護分野への参入を促進するため、他業種で働いていた方等の介護・障害福祉分野における介護職への参入促進に係る支援を行い、更なる人材の確保等に向けた取組を推進する。介護職員の処遇改善については、これまでに実施してきた処遇改善に加えて、令和元年10月から、経験・技能のある職員に重点化を図りつつ介護職員の更なる処遇改善を実施しており、引き続き更なる処遇改善に向けた加算の取得促進を進めていく。また、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、介護職員について、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置を令和4年2月から実施しており、さらに令和4年10月以降について臨時の報酬改定を行い、同様の措置を継続することとしている。

また、介護労働者の雇用管理改善を促進する「介護雇用管理改善等計画」に基づき、介護福祉機器の導入等を通じて労働者の離職率の低下に取り組んだ事業主への助成措置や、介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習に加え、事業所の雇用管理改善に係る好事例把握やコンサルティング等を行う事業を引き続き実施する。人材の参入促進を図る観点からは、介護に関する専門的な技能を身につけられるようにするための公的職業訓練について、民間教育訓練実施機関等を活用した職業訓練枠の拡充のため、職場見学・職場体験を組み込むことを要件とした訓練委託費等の上乗せを引き続き実施するとともに、全国の主要なハローワークに医療・福祉分野等のマッチング支援を行う「人材確保対策コーナー」を設置し、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人充足に向けた助言・指導等の取組の強化を図る。また、「人材確保対策コーナー」を設置していないハローワークにおいても、医療・福祉分野等の職業相談・職業紹介、求人情報の提供及び「人材確保対策コーナー」への利用勧奨等の支援を実施していく。さらに、令和3年度に引き続き、各都道府県に設置されている福祉人材センターにおいて、離職した介護福祉士等からの届出情報をもとに、求職者になる前の段階からニーズに沿った求人情報の提供等の支援を推進するとともに、当該センターに配置された専門員が求人事業所と求職者間双方のニーズを的確に把握した上で、マッチングによる円滑な人材参入・定着促進、職業相談、職業紹介等を推進する。

また、介護の業務に従事する際に、在宅・施設を問わず必要となる基本的な知識・技術を修得する介護職員初任者研修を引き続き各都道府県において実施する。

令和3年度に引き続き、「11月11日」の「介護の日」に合わせ、都道府県・市町村、介護事業者、関係機関・団体等の協力を得つつ、国民への啓発のための取組を重点的に実施する。

さらに、地域包括ケアの推進等により住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるような体制整備を目指して、引き続き在宅医療・介護の連携推進等、制度、報酬及び予算面から包括的に取組を行う。

イ 介護サービスの質の向上

介護保険制度の運営の要である介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質の向上を図るため、引き続き、実務研修及び現任者に対する研修を体系的に実施する。

また、高齢者の尊厳の保持を図る観点から、地方公共団体と連携し、地域住民への普及啓発や関係者への研修等を進める等、高齢者虐待の防止に向けた取組を推進していく。

平成24年4月より、一定の研修を受けた介護職員等は、一定の条件の下に喀痰吸引等の行為を実施できることとなった。令和4年度においては、引き続き各都道府県と連携の下、研修等の実施を推進し、サービスの確保、向上を図っていく。

引き続き、マイナポータルを活用し介護保険手続の検索やオンライン申請の可能な「介護ワンストップサービス」(平成31年1月より開始)を推進するため、標準様式の周知等により、地方公共団体での導入促進を図っていく。

ウ  地域における包括的かつ持続的な在宅医療・介護の提供

持続可能な社会保障制度を確立するためには、高度急性期医療から在宅医療・介護までの一連のサービス提供体制を一体的に確保できるよう、質が高く効率的な医療提供体制を整備するとともに、国民が可能な限り住み慣れた地域で療養することができるよう、医療・介護が連携して地域包括ケアシステムの実現を目指すことが必要である。このため、平成26年度に創設した地域医療介護総合確保基金を活用し、引き続き、各都道府県が策定した事業計画に基づき、在宅医療・介護サービスの提供体制の整備等のために必要な取組を実施していく。また、在宅医療・介護の連携推進に係る事業は、介護保険法の地域支援事業に位置付け、市町村が主体となって地域の医師会等と連携しながら取り組むこととしている。令和4年度においては、在宅医療・介護連携に関する取組の推進・充実を図るために、引き続き市町村等職員に対する研修の実施及び市町村支援を行う都道府県への支援の充実等を行う。

エ 介護と仕事の両立支援
(ア)育児・介護休業法の円滑な施行

介護休業や介護休暇等の仕事と介護の両立支援制度等を定めた「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」等の改正により、有期雇用労働者の介護休業取得要件の緩和等を内容とする法令の改正(令和3年6月公布、令和4年4月1日施行)について、引き続き都道府県労働局において制度の内容を周知するとともに、企業において法の履行確保が図られるよう事業主に対して指導等を行う。

(イ)仕事と家庭を両立しやすい職場環境整備

育児や介護を行う労働者が働き続けやすい環境整備を推進するため、「女性の活躍・両立支援総合サイト(両立支援のひろば)」を通じて、「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画の策定等を促進するとともに、企業の環境整備の参考になるよう、好事例を引き続き収集・公表する。

また、中高年を中心として、家族の介護のために離職する労働者の数が高止まりしていることから、全国各地での企業向けセミナーの開催や仕事と家庭の両立支援プランナーによる個別支援を通じて、「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」及び「介護支援プラン」の普及促進を図り、労働者の仕事と介護の両立を支援し、継続就業を促進する。そのほか、ケアマネジャーなど家族介護者を支援する者が仕事と介護の両立について学習できる「仕事と介護の両立支援カリキュラム」を用いた研修の実施等により、当該カリキュラムの普及促進を図る。

そして、「介護支援プラン」を策定し、介護に直面する労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組む中小企業事業主や、その他の仕事と介護との両立に資する制度(介護両立支援制度)を労働者が利用した中小企業事業主、新型コロナウイルス感染症への対応として家族を介護するための有給の休暇制度を設け、労働者が利用した中小企業事業主を助成金により支援する。

(4) 持続可能な高齢者医療制度の運営

全世代型社会保障制度の構築のため、令和3年の通常国会において、後期高齢者(現行で3割負担となっている現役並み所得者を除く。)のうち、課税所得28万円以上(所得上位30%)かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上)の方について医療の窓口負担割合を2割とすることを内容とする改正法が成立し、令和4年10月1日から施行される。また、施行に当たっては、2割負担への変更により影響が大きい外来患者について、施行後3年間、1月分の負担増が、最大でも3,000円に収まるような配慮措置を実施する。

後期高齢者の保健事業について、高齢者の心身の多様な課題に対応し、きめ細かな支援を実施するため、後期高齢者医療広域連合のみならず、市民に身近な市町村が中心となって、介護保険の地域支援事業や国民健康保険の保健事業と一体的に後期高齢者の保健事業を実施する「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」の推進を図っている。

このため、後期高齢者医療広域連合から市町村へ高齢者保健事業を委託し、1. 事業全体のコーディネートや企画調整・分析等を行う医療専門職、2. 高齢者に対する個別的支援や通いの場等への関与等を行う医療専門職を配置する費用等を、国が後期高齢者医療調整交付金のうち特別調整交付金により引き続き支援する。

加えて、後期高齢者医療広域連合や市町村の職員を対象とする保健事業実施に関する研修や市町村の取組状況の把握等を行う「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の全国的な横展開事業」等を通じて、取組の推進を支援する。

(5) 認知症施策の推進

認知症は誰もがなり得るものであり、家族や身近な人が認知症になること等を含め、多くの人にとって身近なものとなっている。認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望をもって日常生活を過ごせる社会を目指すため、令和元年6月に取りまとめられた「認知症施策推進大綱」には、「共生」と「予防」を車の両輪とし、1. 普及啓発・本人発信支援、2. 予防、3. 医療・ケア・介護サービス・介護者への支援、4. 認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援、5. 研究開発・産業促進・国際展開の5つの柱に沿った施策が盛り込まれているところである。

「認知症施策推進大綱」の対象期間は令和7年までとなっており、施策ごとに設けられたKPI/目標の達成に向けて、施策を引き続き推進していく。

(6) 人生の最終段階における医療の在り方

人生の最終段階における医療・ケアについては、医療従事者から本人・家族等に適切な情報の提供がなされた上で、本人・家族等及び医療・ケアチームが繰り返し話合いを行い、本人による意思決定を基本として行われることが重要である。

そのため、人生の最終段階における医療・ケア体制整備事業として、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づき、全国の医療従事者等に向けて、研修を行っていく。

また、本人が望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組(人生会議)の普及・啓発を図るため、今後、国民に対し更に普及・啓発していく。

(7) 住民等を中心とした地域の支え合いの仕組み作りの促進

ア 地域の支え合いによる生活支援の推進

令和4年度に創設する「生活困窮者支援等のための地域づくり事業」等を通じて、地域住民のニーズ・生活課題の把握、住民主体の活動支援・情報発信、地域コミュニティを形成する居場所づくり、多様な担い手が連携する仕組み作りなどの取組を進め、身近な地域における共助の取組を活性化させることで、地域福祉の推進を図る。

また、「寄り添い型相談支援事業」として、24時間365日ワンストップで電話相談を受け、必要に応じて、具体的な解決につなげるための面接相談、同行支援を行う事業を実施する。

令和3年4月に施行された改正社会福祉法に基づき、市町村において、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を整備するため、対象者の属性を問わない相談支援、多様な参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に行う重層的支援体制整備事業の推進を図る。

イ 地域福祉計画の策定の支援

福祉サービスを必要とする高齢者を含めた地域住民が、地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるよう地域福祉の推進に努めている。このため、福祉の各分野における共通して取り組むべき事項や福祉サービスの適切な利用の推進、社会福祉を目的とする事業の健全な発達、地域福祉活動への住民参加の促進、要援護者に係る情報の把握・共有・安否確認等の方法等を盛り込んだ地域福祉計画の策定の支援を引き続き行う。

ウ 地域における高齢者の安心な暮らしの実現

地域主導による地域医療の再生や在宅介護の充実を引き続き図っていく。そのため、医療、介護の専門家を始め、地域の多様な関係者を含めた多職種が協働して個別事例の支援方針の検討等を行う「地域ケア会議」の取組や、情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備等を進め、地域に暮らす高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会を構築していく。

新たなシニア向けサービスの需要の創造、高齢者の起業や雇用の促進、高齢者が有する技術・知識等の次世代への継承等の好循環を可能とする環境を整備していく。

(8)新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に備え、「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」(令和3年11月新型コロナウイルス感染症対策本部決定)に基づき、ワクチン接種、検査、治療薬等の普及による予防、発見から早期治療までの流れを更に強化するとともに、最悪の事態を想定した対応を行う。

オミクロン株の対応に際しては、「全体像」で整備した保健医療体制をしっかりと稼働させることを基本としつつ、その中でもオミクロン株の特徴に対応する対策の重点化・迅速化を図ってきた。

こうした取組により、重症化する患者数が抑制され、病床ひっ迫がこれまでより生じにくくなり、感染拡大が生じても、国民の命と健康を損なう事態を回避することが可能となる。今後は、こうした状況の変化を踏まえ、感染リスクを引き下げながら経済社会活動の継続を可能とする新たな日常の実現を図る。

また、地域医療介護総合確保基金等を活用し、新型コロナウイルス感染症の感染者が発生した介護サービス事業所・施設等におけるかかりまし経費や、多床室の個室化等の設備整備等について措置することとしており、これらの取組を通じて新型コロナウイルス感染症への対応力強化を図る。

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