第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス)

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第3節 〈特集〉高齢者の住宅と生活環境をめぐる動向について(トピックス)

事例4 神奈川県横須賀市 ~市民の尊厳を守りたい、2つの終活支援~

事業の目的・概要

神奈川県横須賀市(人口381,052人、高齢化率32.7%(令和6年3月31日現在))では、平成7年頃から身元が判明しているにも関わらず市民の遺骨が引き取られないという事態が急増していたが、引き取り手がいない場合だけでなく、引き取り手が実際にはいても、その連絡先が分からないことから引き取られないケースが多数存在していた。また、死後の対応についての本人の意思(財産処分の方法、埋葬方法や生前の契約等)も分からないためその意思が反映されないという大きな問題もあった。

そこで、本人の意思と人間としての尊厳を守るため、あらかじめ自身の終活情報を市に登録することで、本人が倒れた場合や亡くなった場合、市が本人に代わって病院、警察、消防、福祉事務所や本人が指定した者からの問い合わせに対し、登録内容を回答するという「わたしの終活登録」事業を平成30年度から開始した。

具体的な取組内容

市民であれば誰でも無料で登録でき、市役所の窓口、電子申請、郵送による申請のほか、電話でも受け付けている。登録できる内容は、緊急連絡先、かかりつけ医、葬儀等の生前契約先、事前に医療・ケアについて意思表示するリビングウィル(人生の最終段階における事前指示書)や遺言書等の保管場所、墓の所在地などで、本人が自由に選択して登録し、登録事項によって開示できる対象を変えることができるなど、万一の時は本人が指定した者や関係機関等からの問い合わせに市が本人の意思に沿って対応している。

事例4のグラフ

事業効果

平成30年5月から開始し、令和5年度には年間の登録者数が200人を超え、これまでの累計登録者総数は令和6年3月末の時点で826人になった。

実際に、同居家族のいない高齢者が緊急搬送された際に、この終活情報として登録していた親族の連絡先を伝えることで入院できた事例や、亡くなった人の親族が把握していない故人の友人の連絡先が緊急連絡先に登録されていたことから判明し、葬儀の連絡ができた事例、遺言書や墓の場所を問い合わせることで発見することができた事例もある。

また、頼れる親族のいない人(所得等の制限あり)については、生前に葬儀会社と死後事務委任契約を結び、本人が事業者に費用を前納しておくことで、事業者は訪問等による安否確認のほか、死後は本人の希望どおりの葬送(火葬から納骨まで)を行い、市もそれを確認するというエンディングプラン・サポート事業も行っており(平成27年7月から開始)、終活登録事業と合わせて利用することで、より効果を発揮している。例えば、本人が意識のない状態で入院した際、病院から市への問い合わせに対しリビングウィルを伝えることができたために、本人の希望どおりに終末期医療を行うことができ、死後は生前契約していた葬儀会社で葬送することができた事例がある。

今後の展開

平成30年の事業開始以降、令和2年度から電話での登録が、令和5年1月からは電子申請が開始され、市役所へ足を運ばずに登録できるようになった。引き続き、多くの市民が簡単に利用できる取組となるよう、市で実施しているまちづくり出前トークなどを活用し本事業を広く市民に周知していくこととしている。

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