第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス)

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第3節 〈特集〉高齢者の住宅と生活環境をめぐる動向について(トピックス)

事例3 愛知県春日井市 ~自動運転ラストマイル送迎サービス~

事業の目的・概要

愛知県春日井市石尾台地区(人口4,419人、高齢化率47.2%(令和6年4月1日現在))は、地盤の高低差が非常に大きく、高齢化率も高いため、高齢者の運転免許証返納後などの移動手段の確保が問題となっている。本来であれば既存の公共交通事業者によるサービス提供が望ましいが、著しく狭い範囲と距離では事業として採算性を確保することは困難であった。

そこで、これらの課題を地域で解決したいという思いから、地域の有志によりNPO法人石尾台おでかけサービス協議会が設立され、春日井市、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学、株式会社エクセイド、KDDI株式会社が連携して地域住民の移動手段の確保を目的としたオンデマンド型自動運転送迎サービスを令和5年2月に開始した。

NPO法人が主体となってサービスを運行しているが、行政(車両提供、総合サポート)、大学(車両の自動運転化)、民間(自動運転技術・運行管理システム提供)などが連携して運営するほか、利用者からの利用料金に加え、地元企業からの協賛金を得るなど、地域全体で持続的な運営を支えている。

具体的な取組内容

自動運転は車両のセンサー装置から対象の物体に向かってレーザー光を放ち、光が跳ね返ってくるまでの時間により物体までの距離や形状を計測することができるLIDARセンサー及び周囲の構造物や標識、信号などが高精度で収められている高精度3次元地図を利用して運行されている。

利用者は年会費及び1回100円の利用料金を支払うことによって乗車できる。利用方法は、利用日前日の電話予約で乗車でき、運行ルート上であれば停留所に関係なく乗降することができる。また、乗降地が異なる複数人が乗車する場合、効率的なルートが運行管理システムにより示され、それをオペレーターから運転手へ伝達する仕組みで運行されている。

事例3の写真

事業効果

運行開始当初約150世帯であった会員は令和5年9月末時点で約350世帯へと増加し、令和4年10月~令和5年9月における利用者数は延べ1,215人(手動運転のみの期間も含む)で、そのほとんどが高齢者であった。利用者からは、一人暮らしなので利用できてありがたい、坂道を重い荷物を持って歩くのが難しくなったがたくさん買い物をしても気にならずありがたい、といった声が寄せられている。

また、本事業によって、利用者と運転手、利用者間のコミュニケーションが生まれたことにより、利用者に些細な変化があってもそれに運転手が気付き、それを地域包括支援センターなどの福祉サービスにつなぐといったハブ的な役割も果たしている。

今後の展開

現在自動運転のレベル2(手動運転と自動運転の組み合わせ)で運行しているが、手動運転の箇所もあることから、今後は自動運転のレベル3又は4(何かあったときのみ運転手が介入)へ上げるための技術開発を行い、運転手やオペレーターの負担を軽減していくとともに、引き続き利用者とのコミュニケーションを大事にした運行を目指していく。

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