第1章 高齢化の状況(第2節 4)

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第2節 高齢期の暮らしの動向(4)

4 生活環境

(1) 65歳以上の者の住まい

ア 65歳以上の者の8割以上が持家に居住している

65歳以上の者について、住居形態について見ると、「持家(一戸建て)」が79.8%、「持家(分譲マンション等の集合住宅)」が3.2%となっており、持家が8割以上となっている(図1-2-4-1)。

図1-2-4-1 65歳以上の者の住居形態(択一回答)
イ 年代別の持ち家率

年代別持ち家率の推移を見ると、近年、74歳以下で減少傾向となっている一方、75歳以上は上昇傾向となっている(図1-2-4-2)。

図1-2-4-2 全世帯における年代別持ち家率の推移
ウ 使用目的のない空き家

使用目的のない空き家を見ると、令和5年は385万6千戸となっており、平成10年(182万5千戸)の約2.1倍となっている(図1-2-4-3)。

図1-2-4-3 使用目的のない空き家
エ 高齢者の入居に対する賃貸人の意識

高齢者の入居に関する賃貸人(大家等)の意識を見ると、「拒否感はあるものの従前より弱くなっている」が44%、「従前と変わらず拒否感が強い」が16%、「従前より拒否感が強くなっている」が6%となっており、7割弱が拒否感を持っている(図1-2-4-4)。

図1-2-4-4 高齢者の入居に対する賃貸人(大家等)の意識
オ 日常生活におけるバリアフリー化等に関する意識

日常生活や社会生活を送る上でのバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化に関する意識について見ると、30歳代以下では「十分進んだ」、「まあまあ進んだ」と回答した者の合計が約5割となっている。一方、60歳代と70歳代では「あまり進んでいない」、「ほとんど進んでいない」と回答した者の合計が6割強となっている(図1-2-4-5)。

図1-2-4-5 日常生活におけるバリアフリー化等に関する意識
カ 外出時の移動手段

65歳以上の者の外出時の移動手段について、都市規模別に見ると、大都市では「バス・路面電車」、「電車・地下鉄」などの公共交通機関の利用割合が高く、一方で都市規模が小さくなるにつれて「自分で運転する自動車」の割合が高くなっている(図1-2-4-6)。

図1-2-4-6 65歳以上の者の外出時の移動手段について(複数回答)(都市規模別)

(2) 安全・安心

ア 65歳以上の交通事故死者数は増加

65歳以上の者の交通事故死者数は、平成28年以降減少を続けていたが、令和6年中の死者は1,513人と9年ぶりに増加した。65歳以上人口10万人当たりの交通事故死者数は、平成26年の6.9人から令和6年には4.2人へと大きく減少した。なお、交通事故死者数全体に占める65歳以上の者の割合は、令和6年は56.8%となっている(図1-2-4-7)。

図1-2-4-7 交通事故死者数、65歳以上人口10万人当たりの交通事故死者数及び交通事故死者数全体に占める65歳以上の割合の推移

また、75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は減少傾向にある。令和6年における運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は、75歳以上で5.2件、80歳以上で7.2件となっている(図1-2-4-8)。

図1-2-4-8 75歳以上の一般原付以上運転者(第1当事者)による死亡事故件数及び75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数の推移

一般原付以上運転者(第1当事者)の交通事故件数を見ると、平成26年以降交通事故件数の総数が減少傾向にあるのに対して、75歳以上については交通事故件数及び総数に占める割合は増加傾向となっている(図1-2-4-9)。

図1-2-4-9 一般原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別交通事故件数の推移
イ 主たる被害者の年齢が65歳以上の者の刑法犯認知件数は減少傾向

犯罪による65歳以上の者の被害の状況について、主たる被害者の年齢が65歳以上の者の刑法犯認知件数を見ると、刑法犯認知件数(人が被害を受けたもの)が戦後最多を記録した平成14年に22万5,095件となり、ピークを迎えて以降、減少傾向にある。なお、同認知件数に対して、65歳以上の者が占める割合は、令和6年は14.7%となっている(図1-2-4-10)。

図1-2-4-10 主たる被害者の年齢が65歳以上の者の刑法犯認知件数
ウ 特殊詐欺の被害者の7割弱が65歳以上

令和6年中の特殊詐欺の認知件数は2万987件で、手口別で見ると、オレオレ詐欺に預貯金詐欺(令和元年まではオレオレ詐欺に包含)を合わせた認知件数は8,927件と前年比で33.1%増加、キャッシュカード詐欺盗は1,376件と前年比で37.9%減少した。被害総額は平成27年以降減少していたが、令和4年以降増加している(表1-2-4-11-1)。そのうち、65歳以上の被害の認知件数は1万3,707件で、法人被害を除いた総認知件数に占める割合は65.4%に上った。手口別の65歳以上の被害者の割合は、オレオレ詐欺66.6%、預貯金詐欺98.9%、キャッシュカード詐欺盗98.2%となっている(表1-2-4-11-2)。

表1-2-4-11-1 特殊詐欺の認知件数・被害総額の推移
区分
平成27
(2015)
28
(2016)
29
(2017)
30
(2018)
令和元
(2019)
2
(2020)
3
(2021)
4
(2022)
5
(2023)
6
(2024)
認知件数(件) 13,824 14,154 18,212 17,844 16,851 13,550 14,498 17,570 19,038 20,987
オレオレ詐欺 5,828 5,753 8,496 9,145 6,725 2,272 3,085 4,287 3,955 6,671
預貯金詐欺 4,135 2,431 2,363 2,754 2,256
キャッシュカード詐欺盗 1,348 3,777 2,850 2,602 3,074 2,217 1,376
被害総額(億円) 482.0 407.7 394.7 382.9 315.8 285.2 282.0 370.8 452.6 721.5
資料:警察庁統計による。令和6年の数値は暫定値である。
(注1)特殊詐欺とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝及びキャッシュカード詐欺盗を含む。)の総称。キャッシュカード詐欺盗は平成30年から統計を開始。預貯金詐欺は従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を令和2年から新たな手口として分類した。
(注2)特殊詐欺については主要な手口のみを掲載しているので足し合わせても合計とは一致しない。
表1-2-4-11-2 特殊詐欺における65歳以上の被害の認知件数及び割合(令和6年)
手口別
65歳以上の被害者の割合
(法人被害を除く)
合計 オレオレ詐欺 預貯金詐欺 キャッシュカード詐欺盗
4,466 9,241 1,123 3,323 305 1,926 311 1,037
21.3% 44.1% 16.8% 49.8% 13.5% 85.4% 22.7% 75.5%
65.4%
66.6%
98.9%
98.2%
資料:警察庁統計による。上記の数値は暫定値である。
(注)特殊詐欺については主要な手口のみを掲載しているので足し合わせても合計とは一致しない。
エ SNS型投資・ロマンス詐欺の被害者の約4割が60歳以上

令和6年中のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は1万164件、被害総額は1,268.0億円と、令和5年下半期以降、認知件数、被害総額共大幅に増加した(図1-2-4-12-1)。そのうち、60歳以上の被害について見ると、SNS型投資詐欺の認知件数は2,726件で、同詐欺の総認知件数に占める割合は42.7%、SNS型ロマンス詐欺の認知件数は1,140件で、同詐欺の総認知件数に占める割合は30.1%となっている(図1-2-4-12-2)。

図1-2-4-12-1 SNS型投資・ロマンス詐欺の認知状況の推移
図1-2-4-12-2 SNS型投資・ロマンス詐欺の年齢層別被害者数及び構成割合(令和6年)
オ 65歳以上の者の犯罪者率は令和5年に増加

65歳以上の者の刑法犯の検挙人員は、平成28年以降減少していたが、全年齢層に係る検挙人員が増加したのと同様、令和5年は前年より増加した。犯罪者率は、平成19年以降は低下傾向となっていたが、令和5年は前年より増加した。また、令和5年における65歳以上の者の刑法犯検挙人員の包括罪種別構成比を見ると、窃盗犯が68.2%と約7割を占めている(図1-2-4-13)。

図1-2-4-13 65歳以上の者による犯罪(65歳以上の者の刑法犯包括罪種別検挙人員と犯罪者率)
カ 契約当事者が65歳以上の消費生活相談件数は約30万件

全国の消費生活センター等に寄せられた契約当事者が65歳以上の消費生活相談件数を見ると、平成27年から平成28年にかけては減少したが、平成29年から増加に転じ、平成30年は約36万件となった。その後は減少傾向にあったが、令和4年以降再び増加し、令和6年は約30万件となった(図1-2-4-14)。

図1-2-4-14 契約当事者が65歳以上の消費生活相談件数
キ 養護者による虐待を受けている高齢者の約7割が要介護認定

令和5年度に全国の1,741市町村(特別区を含む。)で受け付けた高齢者虐待に関する相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが3,441件で前年度(2,795件)と比べて23.1%増加し、養護者によるものが4万386件で前年度(3万8,291件)と比べて5.5%増加した。また、令和5年度に高齢者虐待と認められた件数は、養介護施設従事者等によるものが1,123件、養護者によるものが1万7,100件となっている。養護者による虐待の種別(複数回答)は、身体的虐待が65.1%で最も多く、次いで、心理的虐待が38.3%、介護等放棄が19.4%、経済的虐待が15.9%となっている。

養護者による虐待を受けている高齢者の属性を見ると、女性が75.6%を占めており、年齢階級別では「80~84歳」が25.7%と最も多い。また、虐待を受けている高齢者のうち、71.8%が要介護認定を受けており、虐待の加害者は、「息子」が38.7%と最も多く、次いで、「夫」が22.8%、「娘」が18.9%となっている(図1-2-4-15)。

図1-2-4-15 養護者による虐待を受けている高齢者の属性
ク 成年後見制度の利用者数は微増

令和6年12月末時点における成年後見制度の利用者数は25万3,941人で、各類型(成年後見、保佐、補助、任意後見)で増加している(図1-2-4-16)。

図1-2-4-16 成年後見制度の利用者数の推移
ケ 近所の人との付き合い方について、65歳以上の人の84.6%が「会えば挨拶をする」、61.3%が「外でちょっと立ち話をする」と回答している

近所の人との付き合い方を見ると、「会えば挨拶をする」が84.6%で最も高い。次いで、「外でちょっと立ち話をする」が61.3%、「物をあげたりもらったりする」が47.4%となっている。また、男性よりも女性の方が、「外でちょっと立ち話をする」、「物をあげたりもらったりする」などと回答した人の割合が高い(図1-2-4-17)。

図1-2-4-17 近所の人との付き合い方について(複数回答)(年齢・性別)
コ 孤立死と考えられる事例が多数発生している

東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成24年以降増加傾向となっており、令和5年に4,957人となっている(図1-2-4-18)。

図1-2-4-18 東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数
サ 65歳以上の者の5割弱が孤立死について身近に感じている

65歳以上の者の孤立死に対する意識について見ると、「とても感じる」又は「まあ感じる」と回答した者は48.7%である(図1-2-4-19)。

図1-2-4-19 65歳以上の者の孤立死に対する意識(択一回答)

(3) 60歳以上の自殺者数は減少

60歳以上の自殺者数を見ると、令和6年は7,615人と前年(8,069人)に比べ減少している。年齢階級別に見ると、60~69歳(2,584人)、70~79歳(2,685人)、80歳以上(2,346人)となり、前年に比べ減少している(図1-2-4-20)。

図1-2-4-20 60歳以上の自殺者数の推移
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