第2章 令和6年度高齢社会対策の実施の状況(第1節 3)

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第1節 高齢社会対策の基本的枠組み(3)

3 高齢社会対策大綱

(1) 基本的考え方

令和6年9月13日に閣議決定された「高齢社会対策大綱」(以下本節において「大綱」という。)では、「我が国の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は年々上昇し」、「少子化の影響等により高齢化率は引き続き上昇を続け」、「高齢化率の上昇に伴い、生産年齢人口は2040年(令和22年)までに約1,200万人減少することが見込まれており、労働力不足や経済規模の縮小等の影響が懸念されるとともに、地域社会の担い手の不足や高齢化も懸念される」中、「約20年間で、平均寿命は男女共に約3歳延伸し」、「医学的にも、様々な科学的根拠を基に高齢者の体力的な若返りが指摘され」、「65歳以上の就業者数は20年連続で前年を上回って過去最高となり、就業意欲の高まりもみられている」としている。これらを踏まえ、年齢に関わらず、それぞれの意欲や能力に応じて、経済社会における様々な活動に参画する多様な機会を確保し、その能力を十分に発揮できる環境を創っていく重要性が高まる一方、今後一人暮らしの高齢者や認知機能が低下する人等の更なる増加等が見込まれるとともに、人と人とのつながりの希薄化や、望まない孤独・孤立に陥るリスクの高まりも懸念されており、地域社会のつながりや支え合いによる包摂的な社会の構築が求められるといった高齢社会をめぐる様々な変化が急速に進んでおり、これらの変化に伴う社会課題に適切に対処し、持続可能な経済社会を構築していくため、以下の3つの基本的考え方にのっとり、高齢社会対策を推進することとしている。

  • ① 年齢に関わりなく希望に応じて活躍し続けられる経済社会の構築
    • 高齢期における就労や社会活動等多様な活躍の機会が得られる環境の整備
    • 若年世代における労働生産性の向上を図る
  • ② 一人暮らしの高齢者の増加等の環境変化に適切に対応し、多世代が共に安心して暮らせる社会の構築
    • 高齢期においても地域で安全・安心に暮らせるよう地域社会を構成する様々な主体がそれぞれの役割を効果的に発揮できるような体制づくりや制度整備
    • 幅広い世代の参画の下で地域社会づくりを行える環境を整備し地域のセーフティネット機能を高める
  • ③ 加齢に伴う身体機能・認知機能の変化に対応したきめ細かな施策展開・社会システムの構築
    • 高齢期におけるそれぞれの置かれた状況や生活上のニーズについて解像度を上げて実態を把握し、それぞれの実態に応じた活動ができる環境整備や社会システムの構築

(2) 分野別の基本的施策

高齢社会対策の推進の基本的考え方を踏まえ、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、研究開発・国際展開等の5つの分野で、基本的施策に関する指針を次のとおり定めている。

  • ① 「就業・所得」

    年齢に関わりなく希望に応じて働くことができる環境の整備、公的年金制度の安定的運営、高齢期に向けた資産形成等の支援を図ることとしている。

  • ② 「健康・福祉」

    健康づくりの総合的推進、持続可能な介護保険制度と介護サービスの充実、持続可能な高齢者医療制度の運営、認知症施策の総合的かつ計画的な推進、がん対策の推進、人生の最終段階における医療・ケアの体制整備、身寄りのない高齢者への支援、支援を必要とする高齢者等を地域で支える仕組みづくりの促進、加齢による難聴等への対応を図ることとしている。

  • ③ 「学習・社会参加」

    加齢に関する理解の促進、高齢期の生活に資する学びの推進、地域における社会参加活動の促進を図ることとしている。

  • ④ 「生活環境」

    豊かで安定した住生活の確保、高齢社会に適したまちづくりの総合的推進、金融経済活動における支援、消費者被害の防止、認知機能の変化に応じた交通安全対策、情報アクセシビリティの確保、公共交通機関や建築物等のバリアフリー化、高齢期の特性に配慮した防災・防犯対策、成年後見制度の利用促進を図ることとしている。

  • ⑤ 「研究開発・国際展開等」

    高齢社会に資する研究開発等の推進、健康・医療産業の国際展開及び国際社会への知見等の発信を図ることとしている。

(3) 推進体制等

高齢社会対策を総合的に推進するため、高齢社会対策会議において、大綱のフォローアップ等重要事項の審議等を行うこととしている。

また、高齢社会対策の推進に当たっては、基本的考え方を踏まえ、様々な施策分野にわたる高齢社会対策を総合的に講じていくため、以下の点に留意することとしている。

  • ① 内閣府、厚生労働省その他の地方公共団体を含む関係行政機関の間において緊密な連携・協力を図るとともに、施策相互間の十分な調整を図ること。
  • ② 大綱を実効性のあるものとするため、各分野において「数値目標」及び「参照指標」を示すこと。また、政策評価、情報公開等の推進により、効率的かつ国民に信頼される施策を推進すること。
  • ③ 「数値目標」とは、高齢社会対策として分野別の各施策を計画的かつ効果的に進めていくに当たっての目標として示すものであること。短期的な中間目標として示すものについては、その時点の達成状況を踏まえ、一層の推進を図ること。「参照指標」とは、我が国の高齢社会の状況や政策の進捗を把握し、課題の抽出、政策への反映により、状況の改善、展開を図るためのものであること。
  • ④ エビデンスに基づく政策形成の推進を図ること。このため、高齢化の状況及び高齢社会対策に係る情報の収集・分析・評価を行うとともに、これらの情報を国民に提供すること。
  • ⑤ 施策の推進状況の検証・評価を踏まえ、必要な改善を行うための仕組みの構築を図ること。
  • ⑥ 高齢社会対策の推進について広く国民の意見の反映に努めるとともに、国民の理解と協力を得るため、効果的な広報、啓発及び教育を実施すること。
  • ⑦ 地方公共団体において、地域の企業・団体、NPO、個人等の多様な主体との連携を密にし、地域の特性を活かしたきめ細かな施策の展開ができるよう後押しすること。

なお、大綱については、政府の高齢社会対策の中長期的な指針としての性格に鑑み、経済社会情勢の変化等を踏まえておおむね5年を目途に必要があると認めるときに、見直しを行うこととしている。

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