第3章 令和7年度高齢社会対策(第2節 3)
第2節 分野別の高齢社会対策(3)
3 学習・社会参加
(1) 加齢に関する理解の促進
児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため、学習指導要領に基づき、引き続き小・中・高等学校におけるボランティア等社会奉仕に関わる活動や高齢者との交流等を含む体験活動の充実を図る。
(2) 高齢期の生活に資する学びの推進
① デジタル等のテクノロジーに関する学びの推進
デジタル推進委員について、関係府省庁のデジタルリテラシー向上やデジタル格差の解消に向けた取組等と連携し、携帯電話ショップに加え、自治体・経済団体・企業・地域ボランティア団体への拡大を図るとともに、図書館や公民館、鉄道駅や薬局など身近な場所の活用を含め、継続的にきめ細やかなサポートができるよう、相談体制の充実を図っていく。また、民間企業や地方公共団体等と連携し、高齢者等のデジタル活用の不安の解消に向けて、スマートフォンを利用したオンライン行政手続等に対する助言・相談等を行うデジタル活用支援の講習会を、携帯電話ショップがない地域も含め、全国において引き続き実施する。
② 社会保障教育及び金融経済教育の推進
社会保障制度に関する知識を得てあらかじめ備えを行うことにより、高齢期における病気や資金不足といった様々なリスクを回避することができる。こうしたことから、早い段階からの社会保障教育やライフステージに応じた啓発の充実を図る。特に、学校教育段階においては、小・中・高等学校学習指導要領に基づく社会保障の意義や役割等に関する教育について、教育委員会等への周知とともに、教職員向けの研修会の実施や、教員にとって使いやすい資料の提供等を通じて、社会保障教育の十分な機会の確保を図る。
より公平・公正な社会保障制度の基盤となるマイナンバー制度については、情報連携の本格運用に伴い、各種年金関係手続のほか、介護保険を始めとした高齢者福祉に関する手続を含む事務において、従来必要とされていた住民票の写しや課税証明書、年金証書、戸籍謄本等の書類が不要となっている。本格運用の対象事務は順次拡大しており、こうしたマイナンバー制度の取組状況について、地方公共団体等とも連携し、国民への周知・広報を行う。
また、引き続き、J-FLECを中心とした関係機関と連携し、社会保障分野も含めた金融経済教育の充実に取り組む。
③ 消費者教育の推進
「消費者教育の推進に関する法律」及び「消費者教育の推進に関する基本的な方針」に基づき、消費者教育を推進する。消費者教育コーディネーターの配置・育成の支援として「消費者教育コーディネーター会議」の開催等を行い、地方公共団体での啓発活動等の取組事例を収集することや、消費者教育ポータルサイト等で情報発信を行うことにより、地域、家庭等の様々な場での消費者教育の推進を図る。また、体験型教材「鍛えよう、消費者力 気づく・断る・相談する」を活用した啓発活動を推進し、悪質商法等の消費者被害の未然防止に引き続き取り組む。さらに、多様な高齢者の実態や社会のデジタル化を踏まえ、高齢者及び福祉関係等の見守り活動の担い手に対して消費者教育教材や啓発資料、取組事例等の情報提供を行い、見守り活動における啓発活動を促進する。
④ 身近な場やオンラインでの学習機会の充実
ア 社会教育の振興
地域住民の身近な学習拠点である公民館を始めとする社会教育施設等において、高齢者を含む幅広い年齢層を対象とした多様な学習機会の充実を促進するとともに、高齢者の主体的な地域活動への参画事例を含む社会教育を基盤とした取組について全国の優れた実践事例を収集し、広く全国に情報共有等を図る。
イ 学校機能・施設の地域への開放
学校は地域コミュニティの核となることから、複合化等を行う公立学校の施設整備に対して国庫補助を行うとともに、好事例を収集・横展開することを通じて、高齢者を含む地域住民の積極的な利用を促進するような施設づくりを進めていく。
ウ 文化活動の振興
国民文化祭の開催等による幅広い年齢層を対象とした文化活動への参加機会の提供、国立の博物館等における高齢者に対する優遇措置やバリアフリー化等による芸術鑑賞機会の充実を通じて多様な文化活動の振興を図る。また、博物館・美術館等を中核として、社会的・地域的な課題への対応に先進的に取り組む事業を補助する中で、文化活動の推進を図る。
エ スポーツ活動の振興
いつまでも健康で活力に満ちた長寿社会を実現するため、「スポーツによる地域活性化推進事業」を活用し、スポーツを通じた地域の活性化を推進するとともに、スポーツ行事の実施等の各種機会を通じて多様なスポーツ活動の振興を図る。
オ 自然とのふれあい
国民の誰もが自然とふれあう活動が行えるよう、国立公園ビジターセンター等の自然とふれあうことができる施設や自然体験イベント等に関する情報をインターネット等を通じて提供する。
(3) 地域における社会参加活動の促進
① 多世代による社会参加活動の促進
ア 地域社会における課題解決に向けた担い手確保等の仕組みの構築・活用促進
地域を支える人材の高齢化や人手不足が進む中で、幅広い世代の参画の下、地方公共団体、NPO、地域住民等の多様な主体の連携により、地域社会の課題解決に取り組むプラットフォームのモデル構築を図るため、「多世代参画による地域活力プラットフォーム構築調査事業」を行う。
イ 高齢者の社会参加と生きがいづくり
高齢者の生きがいと健康づくり推進のため、地域を基盤とする高齢者の自主的な活動組織である老人クラブ等や都道府県及び市町村が行う地域の高齢者の社会参加活動を支援する。また、国民一人一人が積極的に参加し、その意義について広く理解を深めることを目的とした「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」を令和7年10月に岐阜県で開催する。また、退職教員や企業退職高齢者等を含む幅広い地域住民や企業・団体等の参画を得て、地域全体で子供たちの学びや成長を支えるとともに、「学校を核とした地域づくり」を目指して、地域と学校が相互にパートナーとして連携・協働して行う「地域学校協働活動」を推進する。さらに、企業退職高齢者等が、地域社会の中で役割を持って生き生きと生活できるよう、有償ボランティア活動による一定の収入を得ながら自らの生きがいや健康づくりにもつながる活動を行い、同時に介護予防や生活支援のサービスの基盤整備を促進する「高齢者生きがい活動促進事業」を実施する。
また、地域支援事業において、有償ボランティア活動等の就労的活動の場を提供できる団体・組織と就労的活動を実施したい事業者とをマッチングし、高齢者個人の特性や希望に合った活動をコーディネートする人材の配置を引き続き推進する。
加えて、高齢者等が安心して旅行ができる環境を整備するため、「観光施設における心のバリアフリー認定制度」の見直し・改善の取組を進めるなどユニバーサルツーリズムを推進するほか、観光施設や宿泊施設におけるバリアフリー化への改修等の支援を実施する。
また、地域の社会教育を推進するため、社会教育を行う者に対する専門的技術的な指導助言を行う社会教育主事等の専門的職員の養成等を図る。
さらに、地域住民が主体となって地域の様々な課題解決を図る取組を通じた安全・安心で活力ある地域形成を促進するため、高齢者の主体的な地域活動への参画事例を含む社会教育を基盤とした取組について全国の優れた実践事例を収集するとともに、その効果等の客観的な分析を行い、広く全国に情報共有等を図る。
高齢者の社会参加や世代間交流を促進するため、「高齢社会フォーラム」を開催する。また、エイジレス・ライフ実践者や、社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を紹介する。
ウ 国立公園等におけるユニバーサルデザインの推進
国立公園等において、主要な利用施設であるビジターセンター、園路、公衆トイレ等についてユニバーサルデザイン化や、利用者の利便性を高めるための情報発信の充実等を推進し、高齢者にも配慮した自然とのふれあいの場を提供していく。
エ 高齢者の余暇時間等の充実
高齢者等がテレビジョン放送を通じて情報アクセスの機会を確保できるよう、字幕放送、解説放送及び手話放送の充実を図るため、平成30年2月に策定し、令和5年10月に改定した「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」に基づいて、引き続き、放送事業者の自主的な取組を促す。同時に、字幕番組等の制作費や設備整備費等に対する助成を行うこと等により、放送事業者等の取組を支援していく。
② 地域住民を支援する専門人材・団体の活動基盤の整備
市民やNPO等の活動環境を整備するため、認定NPO法人等の寄附税制の活用促進やNPO法の適切な運用を推進する。また、市民活動に関する情報の提供を行うための内閣府NPOホームページや、ポータルサイト等の情報公開システムの機能向上に取り組む。さらに、NPO法人運営に係る手続の簡素化・効率化の観点から、NPO法に基づく各種事務をオンライン化したシステムの利便性向上と利用の促進を図る。
また、開発途上国からの要請に見合った技術・知識・経験を有し、かつ開発途上国の社会や経済の発展への貢献を希望する国民が、JICA海外協力隊員(対象:20歳から69歳まで)として途上国の現場で活躍する、独立行政法人国際協力機構を通じた事業(JICAボランティア事業)を引き続き推進する。
NPOや企業等の多様な主体と連携・協働して、社会教育施設における活動のみならず、環境や福祉、まちづくり等の社会の多様な分野における学習活動の支援を通じて、人づくりや地域づくりに携わると期待される「社会教育士」の称号を取得できる社会教育主事講習を引き続き実施する。また、社会教育士等の社会教育人材の継続的な学びの機会の確保等を図るとともに、社会教育人材ネットワークを構築するため、引き続き、令和6年度から開始した社会教育士フォローアップ研修を実施する。