「高齢者の交通安全行動調査」の概要
1.調査の目的
65歳以上の高齢者を対象に交通安全教育受講の有無、運転免許所有の有無、日頃の交通行動等を調査し、今後の高齢者の交通安全教育のための基礎資料とする。
2.調査の方法等
全国の36市町村(大都市7市、人口10万人以上の市12市、人口10万人未満の市7市、町村10町村)から、それぞれ100人の高齢者計3,600人を調査対象者とし、面接により調査を行った。
実際の調査においては当初の3,600人に、予備の437人を加えた4,037人に対して調査を試み、そのうち、回収できたのが3,503人(回収率86.8%)であった。
3.調査対象高齢者の概要
1)性別
男性60.7% 女性 39.3%
2)年齢
65~69歳 | 34.3% | 前期高齢者 | 64.0% |
70~74歳 | 29.7% | ||
75~79歳 | 18.6% | 後期高齢者 | 35.6% |
80歳以上 | 17.0% |
3)家族形態
単身世帯 | 10.9% |
1世代 | 31.3% |
2世代 | 34.7% |
3世代 | 22.4% |
その他 | 0.7% |
4)職業
有職 | 28.3% |
無職 | 71.3% |
もっぱら家事 | 18.3% |
特に仕事をしていない | 51.3% |
5)老人クラブへの加入状況
加入している | 55.7% |
加入していない | 44.0% |
4.調査の結果
主な調査の結果は、以下のとおりである。
- (1)
- 高齢ドライバーの運転実態
- 1)
- 高齢ドライバーの車依存度は非常に高い。
- 運転免許の保有率は29.9%、免許を保有している高齢者の75.6%は、週3~4日以上運転しており、都市規模別では町村の場合は運転している高齢者の85.9%(大都市は63.3%)
- 2)
- 運転に不安を感じても、運転から引退したくない高齢ドライバーがかなり多い。
- 「運転に不安を感じた」場合「運転から引退する」が52.9%、「その時になってみなければ分からない(やめたくない)」が32.3%
- (2)
- 高齢者の外出特性
- 1)
- 高齢者の外出割合は極めて高い。
- 高齢者の95.9%は外出しており、外出しない高齢者は2.9 %
- 2)
- 高齢者の外出頻度はかなり高い。
- 「ほぼ毎日」外出する高齢者が25.2%、「週1回以上」外出する高齢者は66.6%
- 3)
- 高齢者は、日中に外出しており、「午後6時以降」の夜間の外出はかなり少ない。
- 高齢者の外出時間帯は「午前9時~正午」が49.3%、「正午~午後3時」が23.4%、「午後3時~午後6時」が23.7%で「午後6時以降」は5.5 %
- 4)
- 高齢者が外出する際、「公共交通機関」よりもプライベートな交通手段を利用する。
- 高齢者の利用交通手段は、「徒歩(単独)」が37.8%、「自動車(自分が運転)」が18.8%、「自転車」が16.5%に対し、「公共交通機関」は14.5%
- 5)
- 高齢者の外出目的は「買い物」「通院」が多い。
- 「買い物」で外出する高齢者が63.6%、「通院」で外出する高齢者が58.1%、以下「趣味」が31.3%、「健康維持」が23.3%、「友人宅訪問」が22.2%
- (3)
- 反射材については、かなり知られているが、あまり使われていない。
- 反射材について「知っており、ふだんから使用している」高齢者は22.0%、「知ってはいるが、使用していない」と回答した高齢者は49.0%、「知らない」と回答した高齢者は27.2%
- (4)
- 高齢者は、夜間や雨の日に外出時の服装の色にあまり配慮していない。
- 「夜間や雨の日は運転者から見えにくいので、できるだけ明るい色(白・黄色)の服装や持ち物に心がけている」高齢者は29.6%、「特に配慮していない」高齢者は67.9%
- (5)
- 事故を経験している高齢者は少ないが、ヒヤリ・ハット体験をしている高齢者は少なくない。
- 事故を経験した高齢者は全体の5.5%、ヒヤリ・ハット(交通事故に至らないが、ヒヤリとしたり、ハットしたこと。)を体験した高齢者は全体の38.8%
- (6)
- 交通安全教育を受けたことのある高齢者は、案外多いが、受けている場合も内容は講義中心のものである。
- 交通安全教育を受けたことのある高齢者は41.7%、内容は講義中心型は84.4%、実技中心型は10.7%
- (7)
- 交通上の悩みとしては、高齢者は運転環境、歩行環境についてかなり苦労している。
- 高齢者が交通の上で困っていることは、多い順に「若者のマナーの悪さ」が47.1%、「無灯火の自転車」が35.6%、「階段や歩道橋の上り下りがきつい」が29.1%、「歩道が狭かったり、歩道がない」が28.1%、「まわりの車のスピードの速さ」が27.3%
- (8)
- 高齢者の交通安全対策に対する要望は、自分たちの問題と考えるよりは、むしろ国や地域社会あるいは他の世代への要望といったニュアンスが強い。
- 交通安全対策についての要望は、「歩行者等の心がけ」が57.6%、「道路整備」が47.3%、「違反取り締まり」が44.1%、「安全施設の整備」が38.4%、「教育の徹底」が23.5%
5.提言
- 多くの高齢者は夜間の外出を避けているにもかかわらず、夜間の歩行者事故が多発しており、十分な指導や対策がなされるべきである。
- 高齢者の交通上の悩みからして、歩行環境の整備、自転車の安全走行対策が必要である。
- 高齢者の交通安全対策に対する要望をみると、自分たちの問題として考えるよりは、国などへの要望というニュアンスが強い。自分たちの問題としてとらえてもらうために、参加・体験・実践型教育の一環として、交通安全をめぐるボランティア的活動を高齢者自身に担ってもらうことが望ましい。
- 反射材の使用等については、交通安全教育に参加してもらうことが効果的であり「参加してみよう」という意欲を持たせるような交通安全教育の展開が期待される。
- 高齢ドライバーが運転に不安を感じたときに、やめられるように、高齢ドライバーによる支援システムの確立も有効な方法である。