平成28年度交通安全フォーラムの開催結果について

テーマ
みんなにやさしい自転車の安全運転
~ルールを守ろう、もしもに備えよう~
日時
平成28年10月27日(木) 午後1時から午後4時30分まで
場所
和歌山県民文化会館 小ホール
和歌山県和歌山市小松原通1丁目1番地
主催
内閣府、和歌山県、和歌山市
後援
警察庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省
協賛
交通安全フォーラム推進協議会構成団体
一般社団法人 日本自動車工業会 一般財団法人 全日本交通安全協会
一般社団法人 日本自動車連盟 公益財団法人 三井住友海上福祉財団
公益財団法人 国際交通安全学会 一般財団法人 日本交通安全教育普及協会
  • 内閣府では、国の重要施策並びに開催都道府県が実施する交通安全対策上の諸問題を踏まえ、学識経験者等の専門家による研究発表、討議等を通じて、交通事故防止のための有効適切な提言を得て、国民の交通安全意識の高揚を図ることを目的とした「交通安全フォーラム」を毎年各地で開催している。
  • 平成28年度は、10月27日、和歌山県・和歌山市との共催のもと、『みんなにやさしい自転車の安全運転~ルールを守ろう、もしもに備えよう~』をテーマに、和歌山県民文化会館で開催した。
  • 今回で36回目となるフォーラムでは、専門家から自転車事故の原因や自転車事故を防ぐ効果的な安全教育の在り方、自転車保険加入の重要性が提言され、自転車の交通事故防止に向けて、国民一人一人の理解と社会全体での取組が必要であることが改めて確認された。

専門家からの提言内容

基調講演

吉田 章 氏の写真
元筑波大学大学院 人間総合科学研究科教授
吉田 章 氏

『個人のマナーから社会のマナーへの意識を持って自転車の活用を』

 我が国の自転車をめぐる状況を見ると、戦後復興期における荷物運搬という実用的価値を主体とした第1次ブーム、昭和30年代の趣味としてのサイクリングブーム(第2次ブーム)があり、そして近年では、自転車利用の多様化が進み、自転車活用促進型社会としての第3次ブームが到来しています。
 あらためて自転車は、健康的で自然に優しく、経済的な素晴らしい乗り物なのですが、一方で現代的な課題も存在しています。それは、日常の生活空間としての道路を、歩行者・自転車・その他の車両が混在して共有し、かつ無秩序な状態すら認められ、多くの事故が発生していることです。事故を防止し、これらが共存していくための安全教育は、地域的・世代的・時代的・行動的な観点からそれぞれの特性を踏まえた上で具体的に展開して、対象者に正しく理解され、実行されることが重要です。さらに、事故を起こした時のリスクマネジメントや、いざという時の心構えと事故回避のための行動についても周知し、交通リテラシーの向上に努めることも必要です。
 また、交通ルールに関する意識調査では、自転車・歩行者・自動車の関係性による互いの事実を共有し合うことの重要性が検証されました。自転車に対する誤解や不理解をなくし、自主性・主体性を尊重した安全指導を通してルールの徹底とマナーの実現を図り、そして、個人のマナー(自己流)から社会のマナー(共通理解)へという意識を持ち、自転車を活用したコミュニケーションの促進を通じて、安心・安全で明るい交通社会の実現をみんなで目指しましょう。


(「基調講演」開催状況)

パネルディスカッション

[コーディネーター]

吉田 章 氏の写真

元筑波大学大学院 人間総合科学研究科教授
吉田 章 氏


[パネリスト]

岸氏の写真

弁護士
岸 郁子 氏

『交通ルールの遵守で事故防止を、もしもに備えて自転車保険に入りましょう』

 自転車は、交通事故の被害者(車)にも加害者(車)にもなります。死亡や重大な障害に至る事故では、賠償金額が数千万円に及ぶこともあります。自分や家族が加害者になった場合、被害者になった場合に備え、自転車保険への加入が必要です。現在では、様々な種類の自転車保険がありますので、被保険者の範囲や保険金額、支払方法など内容をよく見て選ぶことが大切です。ただし、保険はもしもへの備えにすぎません。事故は、それ自体が大変ショックな出来事であり、特に子供を事故の加害者、被害者にしないため、家庭を含む社会全体での安全教育、交通ルールの遵守が何より重要です。

坂部氏の写真

和歌山県警察本部 交通部参事官兼交通企画課長
坂部 義人 氏

『自転車も車両という意識を持って交通ルールの遵守を』

 和歌山県の交通事故発生件数は減少傾向にありますが、自転車が関係する事故の割合は常に1割以上を占めています。自転車事故抑止対策として、危険行為を行う歩行者及び自転車利用者を対象に警察官が現場指導時に交付するセーフティカードの活用や自転車を含む全ての車両運転者の交通安全意識向上を目的としたマナーアップ宣言活動、主に中・高校生を対象としたスケアード・ストレート教育技法による自転車安全教室の開催等を推進し、一定の成果があがっています。自転車事故防止に向けて、「自転車も車両である」という意識を持っていただき、基本的な交通ルールを遵守すること、また、事故時の被害軽減のため、ヘルメット着用をお願いします。

田川氏の写真

歌手
田川 寿美 氏

『子供の自転車教育は親と乗用中からスタート』

 4年前の出産を機に、久しぶりに自転車に乗るようになりました。関西出身の母の見立てで水玉模様の電動自転車を購入したのですが、吉田章先生から派手で目立つ自転車は交通安全面でお勧めですとお褒めをいただきよかったです。母が自転車運転中に転倒したことをきっかけに、自転車保険に入ることにしたのですが、今はインターネットなどで補償内容等を簡単に調べることができるので、手軽に保険に加入できました。まもなく、子供の自転車デビューを迎えますが、自転車教育は親と一緒に乗っている時から始まっているというお話を聞き、自分自身の交通安全に対する意識が変わりました。

吉田 長裕 氏の写真

大阪市立大学大学院 工学研究科准教授
吉田 長裕 氏

『発達段階に応じた実践的な安全教育の充実を』

 世界において日本の自転車利用状況は比較的高く、国内では自治体によって利用率や事故率に差がみられます。特に子供の時期には、小、中、高と年齢があがるにつれて自転車死傷率が高くなっています。一方で、交通安全教育の受講率は非常に低く、さらに、小、中、高とだんだんと受講率は下がっており、交通安全教育の実施状況に課題があると考えられます。また、交通安全教育内容の観点から見ると、海外先進事例では、歩行時、自動車同乗時とともに自転車利用時に関しても継続的かつ体系化された教育プログラムが用意されており、誰がどこで教育を受けたのか履歴が残り、交通安全教育の機会が保証されているところもあります。さらに、プログラムの内容においては、家庭や学校において発達段階に応じた自転車スキル(実技)の向上を重視しています。我が国でも、実際の交通場面においてルールやマナーを実践して学べるように教育手法を改善していく必要があります。



(パネルディスカッション開催状況)

過去10回の開催状況(平成21年度までは、「交通安全シンポジウム」として開催)
平成18年度 秋田県秋田市 交通事故のない安全で安心な社会を目指して-高齢者の交通事故防止を考える-
平成19年度 栃木県宇都宮市 飲酒運転の根絶を目指して-家庭・職場・地域の果たす役割-
平成20年度 福井県福井市 長寿社会の交通安全を考える-高齢者の交通事故の減少を目指して-
平成21年度 広島県広島市 飲んだら、乗るまぁ、乗らすまぁ-飲酒運転の根絶は あなたから-
平成22年度 北海道札幌市 冬の交通事故の減少を目指して-積雪期における交通安全を考える-
平成23年度 熊本県熊本市 飲酒運転の根絶を目指して-運転は 飲んだらせんごつ させんごつ-
平成24年度 奈良県橿原市 効果的な反射材の普及を目指して-「大和路から キラリ広がる 反射材」-
平成25年度 香川県高松市 高齢者の交通事故抑止対策について~なしにせないかん。高齢者の交通事故~
平成26年度 岡山県岡山市 自転車の安全利用について~人と街にやさしい交通環境の創出~
平成27年度 静岡県静岡市 誰もが安全、安心を実感できる交通社会の実現に向けて ~高齢者を交通事故から守るために~