平成30年度交通安全フォーラムの開催結果について

テーマ
飲酒運転の根絶に向けて
~富士山に誓って なくそう!飲酒運転~
日時
平成30年11月8日(木)午後1時から午後4時30分まで
場所
甲府市総合市民会館 芸術ホール
山梨県甲府市青沼3丁目5-44
主催
内閣府、山梨県、甲府市
後援
警察庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省
協賛
交通安全フォーラム推進協議会構成団体
一般社団法人 日本自動車工業会 一般財団法人 全日本交通安全協会
一般社団法人 日本自動車連盟 公益財団法人 三井住友海上福祉財団
公益財団法人 国際交通安全学会 一般財団法人 日本交通安全教育普及協会
  • 内閣府では、国の重要施策及び開催都道府県が実施する交通安全対策上の諸問題を踏まえ、学識経験者等の専門家による研究発表、討議等を通じて、交通事故防止のための有効適切な提言を得て、国民の交通安全意識の高揚を図ることを目的とした「交通安全フォーラム」を毎年各地で開催している。
  • 平成30年度は、11月8日、山梨県・甲府市との共催のもと、『飲酒運転の根絶に向けて~富士山に誓って なくそう!飲酒運転~』をテーマに、甲府市総合市民会館芸術ホールにおいて開催した。
  • 今回で38回目となるフォーラムでは、専門家から飲酒による自動車運転への影響や飲酒運転を防ぐための安全教育の在り方、取組等が提言され、飲酒運転根絶に向けて国民一人一人が意識し社会全体で取り組むことが必要であることが確認された。

専門家からの提言内容

基調講演及びパネルディスカッションパネリスト

山本 美也子 氏の写真
NPO法人はぁとスペース代表 山本 美也子 氏

『思いをつないで飲酒運転も交通事故もない社会の実現を』

 我が家は7年前、長男を飲酒運転の車により命を奪われた飲酒運転被害者遺族です。あっという間に遺族になり、本当に大変な7年間でした。当時16歳の長男とその友人が突然亡くなったことで、明日が当たり前に来ることはなく、この瞬間、瞬間がまるで奇跡のような素敵な時間で、だから、私たちはこの奇跡の時間を一生懸命に生き抜いていかなければいけないと、2人に教えてもらったような気がします。
 亡くなった2人のお通夜とお葬式にはたくさんの友達に来ていただきました。そして、この子たちのように16歳という若さで友達の葬式に出なければならないというつらい思いを二度とさせてはならないと、私たち大人を本気にさせたのです。
 7年間、学校などいろいろなところでお話しさせていただいています。子どもたちにも、ちょっとでも飲酒をしたら運転してはいけないと、大人がちゃんと教える必要があります。
 飲酒運転はなかなかなくなりません。でも、言い続けていれば社会は変わると信じて頑張っています。大切な命がなくならなければ変わらない社会はおかしいと思います。自分の命も人の命も大切にできる、そんな社会になったら、交通事故や飲酒運転も減っていくと思います。
 私の住む福岡県は、いろいろな皆さんにお力をいただいて、昨年、飲酒運転での死亡者が初めてゼロになりました。少しずつ福岡県も頑張っています。山梨県の皆さんも、飲酒運転だけではなく、交通事故をゼロにするように、一緒に頑張りましょう。



(「基調講演」開催状況)

パネルディスカッションコーディネーター

山中 達也 氏の写真

公立大学法人山梨県立大学人間福祉学部准教授
山中 達也 氏

『皆さんひとりひとりが飲酒を理解し、行動することで飲酒運転を根絶しましょう』

 飲酒運転根絶に向けて、私たちは何ができるのでしょうか。言動の一致、すなわちアルコールや飲酒に関しての知識を知ること、今日から飲酒運転をやめよう、隣の人に伝えていこうという思い、それと併せて、私たち自身が行動していくこと、この言動の一致がキーワードなのではと思っています。
 このフォーラムでアルコール、飲酒に関する知識を得ることができました。次に、お酒に関して寛容で、飲酒運転を見て見ぬふりをしていたのであれば、それは改めるべきです。そして、私たち一人一人が行動していくことが大事です。
 教育の充実や相談体制の整備も重要です。山梨県内の中学校にアルコールや薬物の防止教育に伺った時、生徒だけでなく親御さんも話を聞いてくれ、これは誇るべきことです。小さな子どもから高齢者まで、お酒に関する教育をしっかりしていくことが大事です。


パネルディスカッションパネリスト

窪田 豊 氏の写真

山梨県警察本部交通部参事官兼交通企画課長
窪田 豊 氏

『本人の「しない」と、周囲の「させない、許さない」で飲酒運転根絶』

 飲酒運転による人身交通事故は、平成13年以降、罰則強化もあり減少傾向でしたが、近年は下げ止まっています。事故は夜間に多発しますが、日中でも全体の約3割が発生しており、二日酔い、飲酒常習者による運転が少なくないことがうかがえます。
 飲酒運転は、正確な運転はもとより、危険発生時の回避行動にも影響を及ぼし、結果として重大な交通事故を発生させるおそれが高まります。さらに、発覚を恐れ、現場から逃亡し、大きな罪を重ねることもあります。
 そして、飲酒運転は、その違反者の運転免許だけではなく仕事やこれまでの生活も失わせ、後悔しか残りません。
 飲酒運転を根絶するには、本人の「しない」という強い意思が必要であると同時に、「させない、許さない」という周囲の協力や環境づくりも大切です。
 山梨県警察では、関係機関・団体等と連携し、県民の規範意識の高揚を図り、総力を挙げて飲酒運転根絶対策を推進して参ります。


瀧村 剛 氏の写真

独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター精神科医師
瀧村 剛 氏

『アルコールを正しく理解して、上手に付き合いましょう』

 飲酒運転が厳罰化されてからも根絶されない背景には、アルコール依存症が潜んでいることが考えられます。その根拠として、私たちの調査では、飲酒運転での検挙回数が増えるほどアルコール依存症の疑われる方が多くなっています。お酒が心配な方は、医療機関への相談をお勧めします。
 アルコールを分解する早さは人によって全然違います。また、お酒に強いからといって、早く分解できるとは限りません。一番お勧めなのは、呼気チェッカーで運転前に確認するのが安全です。
 日本の法律では、呼気で0.15mg/l以上の場合を酒気帯び運転としておりますが、0.15mg/l未満なら大丈夫ということではなく、0.10mg/lくらいの状態でも運転への影響はでてきます。
 職場、地域、仲間でお酒を飲むときは、ハンドルキーパーの徹底や運転代行利用の仕組作りがよいのではないでしょうか。


鈴木 徹 氏の写真

義足のハイジャンパー・山梨市観光大使
鈴木 徹 氏

『家族や職場などの自分の周りを思い責任ある行動をとりましょう』

 私は高校卒業間際、自損事故で右足を失い、義足となりました。大学進学も決まり、運転免許を取りましたが、限度がわからず2,3時間だけの睡眠でアルバイトや仲間との遊びをするという生活を続けていたところ、寝不足で居眠り運転をしてしまいました。同乗していた仲間は軽いケガだけで済みましたが、もし亡くなっていたらと思うと今でも恐怖を感じます。そして、動けるようになると家庭裁判所に呼ばれ、退院後は半年ほど保護観察の方の家に通い、運転免許という資格の重さなどを学ぶこととなりました。
 私は事故を起こしてしまったことで家族や周りのいろいろな方々に迷惑をかけました。この経験からお伝えしたいことは、飲酒されるときは、自分一人で生きているのではなく、家族や職場の仲間といったものが常に自分のチームとしているのだということ、この周りのサポートが何より大事で失ってはならないものだと強く認識し行動していただきたいと思います。



(パネルディスカッション開催状況)

過去10回の開催状況(平成21年度までは、「交通安全シンポジウム」として開催)
平成20年度 福井県福井市 長寿社会の交通安全を考える - 高齢者の交通事故の減少を目指して -
平成21年度 広島県広島市 飲んだら、乗るまぁ、乗らすまぁ - 飲酒運転の根絶は あなたから -
平成22年度 北海道札幌市 冬の交通事故の減少を目指して - 積雪期における交通安全を考える -
平成23年度 熊本県熊本市 飲酒運転の根絶を目指して - 運転は 飲んだらせんごつ させんごつ -
平成24年度 奈良県橿原市 効果的な反射材の普及を目指して-「大和路から キラリ広がる 反射材」-
平成25年度 香川県高松市 高齢者の交通事故抑止対策について ~ なしにせないかん。高齢者の交通事故 ~
平成26年度 岡山県岡山市 自転車の安全利用について ~ 人と街にやさしい交通環境の創出 ~
平成27年度 静岡県静岡市 誰もが安全、安心を実感できる交通社会の実現に向けて ~ 高齢者を交通事故から守るために ~
平成28年度 和歌山県和歌山市 みんなにやさしい自転車の安全運転 ~ ルールを守ろう、もしもに備えよう ~
平成29年度 千葉県船橋市 高齢社会の交通安全を考える ~ 事故にあわない、おこさない ~