令和4年度交通安全フォーラムの開催結果について
- テーマ:
- 新たなモビリティに対応した交通安全対策
- 日時:
- 令和5年1月24日(火)
午後4時00分から午後5時50分まで - 開催方法:
- 交通安全フォーラムの様子をインターネット配信
- 主催:
- 内閣府、神奈川県
- 後援:
- 警察庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省
- 協賛:
- 交通安全フォーラム推進協議会構成団体
・ 一般社団法人 日本自動車工業会
・ 一般財団法人 全日本交通安全協会
・ 一般社団法人 日本自動車連盟
・ 公益財団法人 三井住友海上福祉財団
・ 公益財団法人 国際交通安全学会
・ 一般財団法人 日本交通安全教育普及協会
- 内閣府では、国の重要施策及び開催都道府県が実施する交通安全対策上の諸問題を踏まえ、学識経験者等の専門家による研究発表、討議等を通じて、交通事故防止のための有効適切な提言を得て、国民の交通安全意識の高揚を図ることを目的とした「交通安全フォーラム」を毎年各地で開催している。
- 令和4年度は、令和5年1月24日、神奈川県との共催のもと「新たなモビリティに対応した交通安全対策」をテーマとして開催した。新型コロナウイルス感染症予防のため交通安全フォーラムの様子をインターネットで同時配信した。
- 今回で42回目となるフォーラムでは、専門家から基調講演の後、パネルディスカッションにおいては、コーディネーター及びパネリストにより、本テーマについての有益な提言がなされた。
- また、本フォーラムには、電動キックボードの将来の利用者となり得る高校生がパネルディスカッションに参加した。
専門家からの提言内容
基調講演及びコーディネーター
田中 伸治 氏
『新たな移動手段と道路空間』
PMV(パーソナル・モビリティ・ビークル)とは、近年登場した主に1人乗りの電動タイプの移動手段です。自動車による移動は5km以内の短距離移動が約半数、1~2人での移動が大半を占めており、これをPMVに代替すれば渋滞削減や環境負荷低減につながると期待されています。
しかし、PMVに近い使われ方をされる自転車を見ると、道路右側を逆走する等の不適切な通行が横行しており、自転車関連交通事故の割合も近年増加傾向です。PMVも利用が拡大すると交通事故が増加するおそれがあります。
安全に走行するためには、安全な利用環境整備も重要です。自転車については関係省庁等からガイドラインが発行されており、通行空間として自転車道・自転車専用通行帯・矢羽根型路面標示の設置、交差点部では自転車横断帯を撤去し通行位置を矢羽根で表示するようになっています。
海外では日本よりも早く自転車のための整備がされており、メルボルンの例では道路空間を自動車、自転車、PMV、路面電車、路上駐車等でシェアする工夫がされています。
日本の道路は道路構造令に基づき整備されます。最近は、車道中心の構成から自転車レーンや賑わい空間等に再構成する道路空間再配分のための社会実験が各地で行われており、PMVも利用しやすくなると思われます。
改正道路交通法は本年7月から施行されます。PMVの利用拡大に備え、通行空間の整備、使用ルールの周知、ルールの遵守とともに、自転車の使用方法の再確認も必要となると思われます。
パシフィックコンサルタンツ株式会社 社会イノベーション事業本部 交通政策部 都市再生室 チーフプロジェクトマネージャー
渡邉 健 氏
「新たなモビリティ」とは、法律上の位置づけが不明確または位置づけられたばかりの「乗り物」であり、交通分野の行政計画などで未だ取り扱っていない「乗り物」になると考えています。
この「新たなモビリティ」が今後社会実装されていくには、①安全性、②必然性、③普及性の3つの要素を満たす必要があると考えます。
「安全性」は安全な乗り物であることは勿論、利用者マナーや交通法規対応などの交通安全も含まれます。
「必然性」は、そのモビリティが社会課題解決など社会のためになることです。
「普及性」は、広く多くの人に利用されることと共に、インフラや利用の仕組みなどの利用環境が整うことです。
「新たなモビリティ」に対する今後の展望として、速く大量に人やモノを輸送するだけではなく、多様化した移動ニーズの下で皆が平等に移動でき、そして移動自体そのものも楽しむことができるようなモビリティ社会実現への寄与が期待されます。
モビリティジャーナリスト
森口 将之 氏
海外における電動キックボードは、フランス、ドイツ、イタリア等の欧州では広く普及しており、アジアでは、韓国、タイ、シンガポールにおいてある程度普及していますが、韓国では厳格なルールを設けられており、中国では乗ること自体が禁止されています。
フランスでは、既に免許不要でヘルメット着用も任意ですが、二人乗り運転やながら運転も多く、是非について住民投票が予定されており、電動キックボードのシェア事業者も減少傾向です。
フランスにおける交通安全教育は、小学校、中学校においてそれぞれ交通安全に関するテストがあり、テストに合格した児童・生徒には交通安全証明書が発行され、この証明書がなければ運転免許が取得できないことになっています。こうした制度があるため、中学校卒業時点でほとんどの人が基本的な交通安全知識を得ることができます。
神奈川県警察本部交通総務課事故対策官
久保田 恒美 氏
本年7月に改正道路交通法の施行が予定されておりますが、施行後、一定の基準に該当する電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」に位置付けられ、運転免許は不要、16歳未満の運転は禁止、ヘルメットの着用は努力義務となります。
電動キックボードの交通違反や交通事故の実態を踏まえると、電動キックボードの普及に伴い、交通ルールの知識が十分でない利用者の増加と、それに伴う交通違反や交通事故の増加が懸念されるところであります。
昨年、神奈川県警察では、電動キックボードのシェアリングや販売を行う事業者に対し、利用者等に正しい交通ルールを普及してもらうため、電動キックボード安全利用の取組として、「電動キックボード安全利用アドバイザー研修会」を開催しました。今後も改正道路交通法の施行に向け、あらゆる機会を通じて交通ルールの周知を図っていきたいと考えております。
神奈川県エアロビック連盟会長
関口 美惠子 氏
交通安全フォーラムに先立ち、電動キックボードを試乗しました。
運転自体はすぐにできましたが、一般道で運転できるかどうか不安に感じました。
高齢者の場合、筋力の低下に伴い体幹バランスを長く維持することが難しく、平らな床で片足立ちをしてもうまくコントロールできない方が多いため、狭い乗車板の電動キックボードで足を揃えた立位での運転は、難しいのではないかと思います。
また、高齢者は視野が狭く、耳も聞こえにくくなります。そのため、歩行中の高齢者は、音の小さい電動キックボードが接近しているのに気づかず、追い越しの際に驚いて転倒をする危険があるため、歩道を走行する場合には十分な注意をしていただきたいです。
(フォーラム開催状況)
令和3年度 山口県 (インターネット配信) |
地域で子どもを守る交通安全活動 |
令和2年度 東京都 (インターネット配信) |
安全に移動できる地域を目指して |
令和元年度 佐賀県佐賀市 | 追突事故と高齢者の交通事故防止を考える ~ すすめ、安全なミライへ ~ |