令和5年度交通安全フォーラムの開催結果について

テーマ:
日本一安全で安心な交通社会の実現に向けて
~飲酒運転及び歩行者事故のない美ら島沖縄へ!!~
日時:
令和5年12月20日(水)
午後2時30分から午後5時30分まで
場所:
浦添市てだこホール(大ホール)
(沖縄県浦添市仲間1丁目9-3)
主催:
内閣府、沖縄県、沖縄県議会、沖縄県警察
後援:
警察庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省
協賛:
交通安全フォーラム推進協議会構成団体
  • 一般社団法人 日本自動車工業会
  • 一般財団法人 全日本交通安全協会
  • 一般社団法人 日本自動車連盟
  • 公益財団法人 三井住友海上福祉財団
  • 公益財団法人 国際交通安全学会
  • 一般財団法人 日本交通安全教育普及協会
  • 内閣府では、国の重要施策及び開催都道府県が実施する交通安全対策上の諸問題を踏まえ、学識経験者等の専門家による研究発表、討議等を通じて、交通事故防止のための有効適切な提言を得て、国民の交通安全意識の高揚を図ることを目的とした「交通安全フォーラム」を、前身の行事も含めて昭和56年から毎年各地で開催している。
  • 今回で43回目となる令和5年度は、沖縄県と共同で「日本一安全で安心な交通社会の実現に向けて~飲酒運転及び歩行者事故のない美ら島沖縄へ!!~」をテーマとして開催した。飲酒事故体験談や地域における様々な官民の取り組み事例の紹介を通じ、飲酒運転の根絶と歩行者事故対策を考える集いとした。
  • 当日はあいにくの雨模様にもかかわらず約600名の聴講者が来場。交通安全に関心のある市民や高校生、交通安全に関わる団体職員など、幅広い層の聴講者がともに交通安全への決意を新たにした。

専門家からの提言内容

【基調講演】

大田 房子 氏の写真
一般社団法人おきなわASK代表理事
大田 房子 氏

 アルコール依存症が原因で夫が飲酒運転による事故を起こし、飲酒運転の悲惨さや苦悩を加害者家族として身をもって経験しました。その後、夫婦で依存症を克服、これまでの自身の体験をもとに、アルコール依存症や飲酒運転の予防を呼びかける活動をおこなっています。
 アルコール依存症はお酒をやめたくてもやめられず、常に体内にアルコールが残っている状態です。アルコール依存症は、一時的に改善しても元の状態に戻ってしまうことが多く、車を所有しているかぎり、飲酒運転を防ぐのは難しいのが実情です。家族が注意しても認めず、拒むことで、家庭内での争いや暴力に発展する恐れもあります。専門相談機関や医療機関の支援を受けて、改善に向けた行動をおこすことが大切です。


【パネルディスカッション】

コーディネータ:

神谷 大介 氏の写真

琉球大学工学部工学科准教授
神谷 大介 氏

 私は、土木計画学の視点から、自動車交通や公共交通、歩行者空間や社会基盤施設の設計とデザインを考えています。今回のテーマである飲酒運転や歩行者事故の防止は、人の行動容が必要です。そのためには、法制度や道路を整えるといった構造的な方法と、心理的な方法の2つのアプローチがあります。私の専門は土木ですが、実は心理的なアプローチも重視すべきだと考えています。当事者たち自身が、楽しい雰囲気を持って取り組んでいかなくては、どのような活動も継続が難しいからです。「楽しい」を視点に入れることが、地域の交通安全活動を継続させるための鍵ではないかと考えています。


パネリスト:

親川 直樹 氏の写真

沖縄県警察本部交通部参事官 兼 交通企画課長
親川 直樹 氏

 沖縄県では、飲酒運転の検挙件数が増加し、特に飲酒運転による人身事故と死亡事故が増加傾向にあります。人身事故に占める飲酒絡み事故の割合は、全国平均の約3倍と高い割合となっております。
 歩行者事故では、高齢者と子供が被害を受けることが多く、特に高齢者が事故に遭う件数が増加しています。夜間の道路横断で事故に遭うことが多く、反射材や目立つ色の服装を身につけるなど、歩行者自身の対策も事故予防には効果的です。
 沖縄県警察では、取締りの強化や啓発活動を通じて飲酒運転の根絶を目指すとともに、腹話術や模擬信号機といった学童向けの楽しい視点の交通安全教育も交えて、歩行者事故を含む交通事故を抑止してまいります。皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。


一般社団法人おきなわASK代表理事
大田 房子 氏

 お酒はストレス発散や楽しいコミュニケーションの一部として広く受け入れられていますが、飲酒運転の問題が根強く残っています。飲酒運転を避けるためには、アルコールの脳や身体に与える影響について、正しい知識が必要です。酔いとはどのような状態なのか、ほろ酔いや酩酊状態となるアルコール摂取量、アルコールを体内で分解するために必要な時間などです。
 アルコールを摂取すると運動機能、注意力、判断力が低下し、自制心も弱まります。飲酒運転はぜったいにしてはいけません。仮に運転代行やハンドルキーパーがいても飲み過ぎには注意しましょう。飲酒運転の問題を回避し、安全な社会を築くために、節度ある適度な飲酒を守り、正しいお酒とのつき合い方を身につける「アルコール教育」を推進してまいります。


親川 修 氏の写真

特定非営利活動法人バリアフリーネットワーク会議代表
親川 修 氏

 私たちの「しょうがい者・こうれい者観光案内所」では、障害者や高齢者の方々が沖縄観光を楽しんでいただくために、ベビーカーや車椅子の貸出しを行っており、年間で約7,000件の利用があります。これらの歩行補助具の利用は、今後、ますます増えていくものと思われます。その活動を通じて注意する必要がある歩行者事故対策についてご紹介します。
 車椅子のリフト車を使用する際やシニアカーでの走行は、道路が平坦でない場所や段差のある場所での事故が懸念されます。介護施設での送迎時にはシートベルトの着用が大切です。シートベルトをかけ忘れると、事故時に座っている人が飛ばされる危険性があります。周りの人々が注意を払うことが必要です。
 視覚障害者や聴覚障害者への配慮も必要です。反射板を使ったタクシーサインや白杖のサインを理解し、助けの手を差し伸べることが大切です。障害者と共に安全な社会を築くために、これらの小さなサインを見逃さないようにしましょう。


兼本 絹枝 氏の写真

沖縄県学童保育連絡協議会副会長
兼本 絹枝 氏

 車社会の沖縄県では、子どもたちが学校や学童保育施設へ通学するときに、とりわけ車に注意を払う必要があります。ルールを守らない大人がいることも念頭に、子どもたちに安全な歩き方を身につけさせる必要があります。学校や警察など関係機関と連携し、交通ルールを教育する取り組みが必要です。年に一度の安全教育や事故情報の共有を通じて、子どもたちと保護者に安全意識を浸透させましょう。
 子どもたちは、身体で気候を感じながら自分の足で通学路を歩くことを通して、社会や自然への感性を養います。安全に歩行する練習を重ねることで、身の回りの環境や危険に気付けるように育っていきます。



(フォーラム開催状況)
過去3回の開催状況
令和4年度 神奈川県
(インターネット配信)
新たなモビリティに対応した交通安全対策
令和3年度 山口県
(インターネット配信)
地域で子どもを守る交通安全活動
令和2年度 東京都
(インターネット配信)
安全に移動できる地域を目指して