第10次交通安全基本計画(中間案)に関する公聴会 議事録

日 時:平成27年11月6日(金)13:00~15:00
場 所:中央合同庁舎8号館第1階講堂

  • 牧参事官補佐 それでは、定刻でございますので、ただいまから「第10次交通安全基本計画(中間案)に関する公聴会」を開催させていただきます。
     本日は、御多忙にもかかわらず、公述人の方を初め、大勢の御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
     本日、司会を務めさせていただきます、内閣府交通安全対策担当の参事官補佐をしております、牧と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
     それでは、開催に当たりまして、内閣府大臣官房審議官の安田より御挨拶を申し上げます。
  • 安田審議官 内閣府で、交通安全対策を担当しております、大臣官房審議官の安田でございます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
     本日は、大変お忙しい中、多数の方にお集まりをいただき、誠にありがとうございます。
     第10次交通安全基本計画の中間案に対する公聴会の開催に当たりまして、一言、御挨拶を申し上げます。
     昨年中の道路交通事故による死者数は4,113人と、過去最悪であった昭和45年の1万6,765人に比べますと、4分の1にまでなったところでございます。
     その一方で、近年は高齢者人口の増加、シートベルト着用率等の頭打ち、飲酒運転による交通事故の下げどまりといった死者数が減りにくい状況が顕在化しております。
     昨年まで14年連続で減少させてまいりました、交通事故死者数につきましても、前年同日比、昨日現在で3,352人となりまして、前年同月比のマイナス6名という状況で、大変予断を許さない情勢であると認識をしております。
     悲惨な交通事故をなくし、安全・安心して暮らせる交通社会を築くことは、全ての国民の切なる願いであり、依然として重要な国家的課題であると考えております。
     こうした中、今回、内閣府におきまして、第10次交通安全基本計画の中間案を策定したところでございます。
     中間案におきましては、引き続き、人優先の交通安全思想を基本理念といたしまして、例えば、道路交通においては、安全運転義務違反に起因する死亡事故が依然として多いという状況に鑑み、「交通事故が起きにくい環境づくり」の視点を新たに設けることなどを掲げさせていただいたところでございます。
     また、鉄道、海上及び航空の各分野におきましても、一たび事故やトラブルが発生した場合には、被害者多数の重大な事故となるおそれが常にあることから、より一層の安全対策が推進されるよう、計画の充実を図っております。
     本日の公聴会、この中間案についての公述人の方々から直接御意見をお聞かせいただく貴重な機会であると考えております。公述人の皆様には、忌憚のない御意見を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
     また、交通安全基本計画について御審議をいただいている専門委員会から、お忙しい中、赤羽座長と蓮花委員に御出席をいただいております。両委員には、公述人の皆様の御意見を直接お聞きいただきます。
     あわせて、そのほかの専門委員会の委員の方々に対しましても、本日、いただいた御意見を報告し、審議に役立てていただくこととしているところでございます。
     最後になりますが、本公聴会への御出席をいただきました皆々様に対しまして、改めて厚く御礼を申し上げまして、私からの挨拶とさせていただきます。
     よろしく、どうぞお願い申し上げます。
  • 牧参事官補佐 続きまして、中央交通安全対策会議の専門委員に御就任いただいております、お二人の委員を御紹介させていただきます。
     初めに、専門委員会議の座長を務められておられます、千葉工業大学工学部建築都市環境学科教授の赤羽弘和座長でございます。
     帝塚山大学副学長・心理学部教授の蓮花一己委員でございます。
     続きまして、お手元に封筒で配付させていただいております、資料の確認をさせていただきます。
     内閣府からは、本日の次第と第10次交通安全基本計画(中間案)を配付させていただいております。
     また、公述人の方が御用意されました資料としまして、佐藤様からは2点、1点目は「第10次交通安全基本計画(中間案)に関する公述人意見書」。特定非営利活動法人KENTO、代表理事、児島早苗様の資料になります。
     2点目は「世界道路交通被害者の日」というカラーの資料になっております。
     続いて、吉野様からは2点、1点目は、一般社団法人日本自動車補修溶接協会「第10次交通安全基本計画(中間案)に対する意見『車両の安全性の確保』に対する意見」という横書きのものでございます。
     2点目は「車体整備の高度化・活性化に向けた対応(中間報告)」、平成27年5月、車体整備の高度化・活性化に向けた勉強会という資料になります。
     続いて、中西様からは1点「第10次交通安全基本計画に対する提言」、平成27年7月、一般社団法人日本自動車工業会という資料になります。
     続いて、前田様からは3点、1点目が「交通死傷ゼロへの提言(案)」という資料。
     2点目が「北海道交通事故被害者の会」という資料。
     3点目が「世界道路交通犠牲者の日・北海道フォーラム2015」「交通死傷ゼロへの提言」という両面カラーの資料になります。この資料は、封筒の上に置かせていただいたものになります。
     続いて、大塚様から1点「第10次交通安全基本計画公述人意見書」交通事故被害者遺族の声を届ける会という資料になります。
     続いて、加山様から2点、1点目が「第10次(平成28年度~平成32年度)交通安全基本計画~中間案についての意見~」。踏切事故遺族の会紡ぎの会という資料になります。
     2点目が、第10次交通安全基本計画に盛り込むべき事項」紡ぎの会という資料になります。
     以上、お手元の資料に漏れ等がございましたら、お知らせいただければと思います。
     よろしいでしょうか。
     それでは、内閣府からの説明に入らせていただきます。
     第10次交通安全基本計画(中間案)につきまして、内閣府交通安全対策担当参事官の福田より御説明申し上げます。
  • 福田参事官 参事官の福田でございます。本日は、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
     私からは、お手元にお配りさせていただきました中間案につきまして、その概要を、簡単ではございますが、御説明をさせていただきたいと思います。非常に分量がある計画でございますので、なるべく新しく盛り込まれた事項を中心に、お話をさせていただきますが、皆さん、いろいろ御関心の点、多様であると存じますけれども、不足の分は、どうか御容赦いただきたいと思います。
     それでは、表紙を1枚めくっていただきますと、まず「まえがき」のところがございます。交通事故の経緯などが書いてございますが、下から数行目のところで、本計画につきましては、平成28年度から32年度までの5年間に講ずべき計画であるということを記載しております。
     その後、目次が続いておりますが、2枚ほどめくっていただきますと、計画全般の基本理念の部分がございます。
     先ほど、審議官からの御挨拶でも触れさせていただいたところでございますが、本10次計画におきましても、引き続き、究極的には交通事故のない社会を目指すべきこと。また、人優先の交通安全思想を基本とすることなどについて記載をさせていただいているところでございます。
     5ページからが、陸上交通の部分に入ってまいります。
     冒頭、道路交通の安全に関する部分でございます。
     6ページに、道路交通の関係の理念が幾つか書いてあるところがございます。要素は多様でございますけれども、例えば、交通事故者数の一層の減少に取り組むとともに、事故そのものの減少についても、引き続き積極的に取り組んでいくこと。
     また、依然として多く発生している安全運転義務違反に起因する事故の抑止を図っていく必要があること。それから、交通事故が起きにくい環境づくりを図っていく必要があること。こういった内容について、理念の部分で記載をさせていただいているところでございます。
     次に、道路に関する目標の部分でございますが、11ページをごらんください。
     10ページから11ページかけまして、この目標を設定するに当たって行いました長期見通し、5年後どのぐらいの事故死傷者数、負傷者数になっているであろうかという予測の結果を書かせていただいておりますけれども、死者数につきましては、幅がございますが、2,500から3,600人、負傷者のほうにつきましては、51万から61万人という推計をさせていただいたところでございます。
     こういったことも含めて検討した結果この10次計画におきましては、24時間死者数を2,500人以下とし、引き続き、世界一安全な道路交通を実現するというふうにさせていただいているところでございます。
     また、死傷者数については、50万人以下にするというふうにしております。
     あわせまして、11ページの下のほうでございますが、死者数の構成率が比較的高い歩行者、歩行中、自転車乗用中の死者数を、道路交通の死者数全体の減少割合以上の割合で減少させることを目指すということも、あわせて記載をさせていただいてございます。
     12ページからが道路交通に関する視点の部分でございます。
     視点を今回、大きく2つに分けて記載をさせていただきますが、まず、1つ目は、交通事故による被害を減らすために、重点的に対応すべき対象という部分でございます。
     この中には、従来、視点で書かせていただいたところを多分に引き継いでおりまして、1つは高齢者及び子供の安全確保。2つ目が歩行者及び自転車の安全確保。3番目は地域住民の日常利用に供される生活道路における安全確保といった3本について柱を立てさせていただきました。
     今回、新しく16ページでございますけれども、交通事故が起きにくい環境をつくるために留意すべき事項という柱をもう一つ立てさせていただきました。
     これは、安全運転義務違反が、依然として多いというような背景を踏まえたものでございます。
     この中も3つございまして、1つ目が、道路交通実態等を踏まえまして、情報の活用なども含めて、きめ細かな対策を推進していくということ。
     2つ目が、地域ぐるみで、交通安全対策を推進していくべきこと。
     3番目が、先端技術、安全運転支援のシステムなどを含めた、先端技術の活用を推進していく。こういったことに留意しながら各般の施策を講じていくべきであるという内容でございます。
     道路に関する具体的な施策につきましては、17ページ以降の記載でございますけれども、例えば、18ページからは、まず、視点でもございました「生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備」という柱を立てさせていただいております。
     内容的には、生活道路の安全対策というのを、立てておりまして、ゾーン30のお話ですとか、ビッグデータの活用による潜在的危険個所の把握、解消、それから、歩車分離式信号の整備なども含めて、いろいろと記載をさせていただいております。
     19ページ、右側のページに移りますと、通学路等における交通安全の確保、その下には、高齢者、障害者等の安全に資する歩行空間の整備ですとか、バリアフリー化などについての記載がございます。
     20ページ、(2)のところでございますけれども「高速道路の更なる活用促進による生活道路との機能分化」というものがございます。事故率の低い高速道路などの利用を促進し、一方で、生活道路における通過交通などを排除していこうという内容でございます。
     (3)につきましては「幹線道路における交通安全対策の推進」ということで、24ページまで、こちらについても引き続き、しっかりと取り組んでいくということで、さまざまな内容を記載させていただいております。
     26ページ「(8)自転車の利用環境の総合的整備」という内容で、自転車の交通安全について記載をさせていただいております。
     内容的には、自転車道、専用通行帯、駐車場などを整備するほか、沿道の状況に応じた駐停車等の規制をしていくといった内容が入っているところでございます。
     27ページ、高度道路交通システム、ITSと呼ばれる分野ですが、こういったものの活用についても記載をさせていただきました。VICSですとか、ETC2.0の整備によりまして、道路交通情報の収集や提供を促進していくということでございます。
     次に、道路の分野の2つ目でございます。35ページをごらんください。
     「2.交通安全思想の普及徹底」という部分でございます。この35ページの中には、高齢者の方に身体の能力の低下などを含めた状況を、みずからも意識を高めていただくとともに、また、高齢者などを取り巻く、周りの人々も高齢者に対する配慮が進むように啓発をしていく必要があるといった内容を書かせていただいております。
     次の36ページ以降が、心身の発達段階やライフステージに応じた体系的な啓発について書かせていただいているところでございまして、幼児、小学生、中学生、高校生、成人、高齢者といった分野ごとに、それぞれの記載をさせていただいております。
     例えば、39ページに高齢者の記載があるところでございますけれども、高齢者の中でも運転免許をお持ちの方、また、運転免許がない中で交通社会に参加されている方、いろいろありますので、そういった特性を踏まえた対策をとるとか、地域ぐるみの見守り活動など、安全確保をしていくといったことを書かせていただいたところでございます。
     42ページに飛んでいただきますと、ここには、自転車の安全利用の推進について記載をさせていただきました。
     ここもいろいろ中身はございますけれども、例えば、スマートフォン等を注視して運転することの危険性の周知ですとか、それから、高額賠償が世の中で出ているという状況を踏まえた、損害賠償責任保険への加入の促進といった内容についても新たに記載をしたところでございます。
     43ページ、チャイルドシートの正しい使用の徹底という部分がございます。この中では、例えば、母子健康手帳等を通じて、チャイルドシートの正しい使用方法をきちんとお届けして、周知していくといったことも新たに記載をさせていただきました。
     44ページには、飲酒運転の根絶の関係の記載がございます。従来の内容も当然書いてございますし、また、その地域の情勢を踏まえて、アルコール依存症対策に関する広報啓発等についても言及をさせていただいたところでございます。
     次に3番目、安全運転の関係というのが47ページからございます。
     運転者教育の充実について記載をさせていただきますが、例えば、48ページから49ページにかかる部分でございますけれども、こちらで高齢運転者対策の充実、もしくは高齢運転者支援の推進という部分がございまして、内容的には、高齢者の方への講習、認知機能検査といった比較的新しい取り組みの内容、また、高齢者の方などが免許を返納しやすい周囲の環境整備も推進していくといった内容について記載をさせていただいたところでございます。
     50ページ、事業系でございますが「(4)自動車運送事業者の安全対策の充実」というところ。
     また、52ページ、こちらも高度通信の関係でございますが、テレマティクス等を活用した安全運転の促進などについても記載をしたところでございます。
     54ページからが「4 車両の安全性の確保」でございます。
     56ページに、先進安全自動車の開発・普及の促進についての記載をさせていただいたところでございます。
     また、こういった技術につきましても、発達段階がさまざまであることも踏まえまして、例えば、衝突被害軽減ブレーキなどにつきましては、義務化も含めた保安基準の拡充・強化。また、ドライバーの異常のときに対応するシステムにつきましては、実用化に向けた取り組みを進めていくこと。
     さらには、最終的なオートマティックな自動運転技術につきましては、引き続き、開発や普及に努めていくといった内容を記載しているところでございます。
     また、57ページは、自動車のアセスメントについて記載させていただいておりますが、新たに始めました予防安全性能についてのアセスメントも含めまして、自動車のユーザーに正しい情報が行きわたるように取り組みをしていくということを書かせていただきました。
     次に5番目の柱、60ページでございますが「5 道路交通秩序の維持」の部分でございます。
     こちらにつきましては、交通事故の抑止に資する指導取締りの推進ですとか、61ページからは、背後責任、使用者責任も追及していくこと。
     それから、自転車の利用者に対する指導取締りという内容も記載しております。
     62ページからは、暴走族対策も引き続き推進していくということでございます。
     64ページが「6 救助・救急活動の充実」の部分でございます。大規模な事故が発生したときに、消防やDMATが連携していくべきことですとか、AEDも含めました応急手当ての普及啓発活動を推進していくことを、まず、64ページあたりに記載しております。
     65ページには、救急救命士の養成、配置、それから、ちょっと駆け足ですが、66ページの中段あたりでは、現場急行支援システム、それから、緊急通報システムなどを整備していくべきこと。
     67ページでは、ドクターヘリ事業の推進についても記載をしているところでございます。
     69ページが「7 被害者支援の充実と推進」という題でございます。
     こちらは、この10次計画において、被害者支援という形でタイトルを統一というか、見直しをしたところでございます。
     内容につきましては、70ページが、被害者の方が行う損害賠償請求に対する援助活動についての部分。
     71ページにつきましては、交通事故被害者の心情に配慮した対策の推進ということで、自治体における相談事務なども含めまして、いろいろと記載をさせていただきました。
     72ページの部分が新しいところですが、公共交通事故被害者への支援というところが加わっているところでございます。
     73ページが「8 研究開発及び調査研究の充実」の部分でございます。
     75ページにかけましてですけれども、安全な自動走行の実現のための制度のあり方に対する調査研究でございまして、内容としては、自動走行時に、運転者も含め、どういうふうに責任が課されていくのかといったこと。また、実証実験のためのガイドラインについて、調査研究をしていくこと。
     また、76ページにおきましては「(2)道路交通事故原因の総合的な調査研究の充実強化」という中で、救命救急医療機関等との医工連携による新たな交通事故データベースの構築、活用。また、ドライブレコーダー等の交通事故分析への活用の検討といった内容が含まれているところでございます。
     以上が道路の分野でございまして、78ページから、鉄道の安全の部分になってございます。
     鉄道については、80ページに目標を記載させていただきました。
     2つございますが、1つは、乗客の死者数ゼロ、こちらは近年ずっとゼロが続いているところでございますが、引き続きゼロを目指すこと。
     もう一つが、運転事故全体の死者数の減少、これも近年減少傾向をずっと示しておりますが、引き続きの減少を目指すという内容でございます。
     具体的な施策につきましては、81ページ以降に記載をしているところでありますけれども、まず、鉄道施設の安全性の向上という観点からは、地下鉄等の浸水対策の強化ですとか、駅や高架橋等の耐震化、ホームドアの設置などについて記載をしております。
     82ページには「2 鉄道交通の安全に関する知識の普及」ということで、利用される方の意識も高めていただきたいということから、ホームにおける「ながら歩き」の危険性の周知、注意喚起といったことも記載しております。
     そのほか、保安監査の実施ですとか、84ページですけれども、被害者支援の推進ということも記載させていただいております。
     86ページからが、踏切道における交通の安全の部分でございます。
     踏切道関係の目標は、88ページに記載をしております。
     平成32年までに踏切事故件数を27年と比較して1割削減するということでございまして、9次計期間中も同様の削減目標を立ててございましたけれども、10次計においても、さらに、また削減をしていくという目標を立てているところでございます。
     具体的な施策につきましては、89ページから書いてございますが、踏切道の立体交差化、構造の改良、歩行者等立体横断施設の整備の促進。
     また、90ページ、踏切保安設備の整備等で、例えば、高齢歩行者対策としての全方位型警報装置、障害物検知装置の高規格化の推進などを記載しております。
     また、その下の3でございますが、踏切道の統廃合の関係で、第3、第4種踏切道などの統廃合の促進についても記載をさせていただいてございます。
     以上、陸上交通でございまして、92ページからが海上交通の部分に入るところでございます。
     海上交通の目標につきましては、95ページに記載がございます。少し長くなってございますけれども、2020年、ですから、これから14、15年先になるわけでございますが、少し先を見まして、船舶事故隻数については、それまでに、今の半減をさせていきたいという目標を一方で持ちつつ、この10次計画の期間である平成32年までには、少なくとも2,000隻未満まで減らしていくという目標を立ててございます。
     2番目として、ふくそう海域で、まずは、既に発生水準が低くなっている衝突等の事故の発生率、これについては、そのまま低い状況を維持するとともに、社会的影響が著しい大規模海難については、その発生数を引き続きゼロとする目標を立てございます。
     3番目に、日本の海難の救助率が非常に高い率を出しているわけでございますが、これを引き続き維持するという観点から、救助率95%以上という目標を立ててございます。
     具体的な施策につきましては、96ページ以降に記載がございますが、例えば、97ページから98ページにかけましては、今、出てきましたふくそう海域における安全性の確保について記載がございます。
     少し飛びますけれども、104ページからは小型船舶の安全対策充実というのがございまして、やはり、小型船舶の事故が多いということも背景に、ここについては、ヒューマンエラーの防止として、AIS、船舶自動識別装置の普及ですとか、ハザードマップ等の情報提供の推進。また、ライフジャケット着用率の向上などを記載してございます。
     108ページのあたりは、迅速的確な救助勢力の体制充実・強化ということで、ヘリコプターの活用なども書いてございますし、108ページの一番下のところからでございますけれども、被害者支援の推進についても記載をさせていただいているところでございます。
     最後に、111ページからが航空交通の安全の部分でございます。
     航空交通の目標につきましては、113ページから114ページにかけて記載をしております。
     1つ目は、本邦航空運送事業者が運航する定期便につきまして、死亡事故発生率及び全損事故発生率を、引き続きではございますけれども、ゼロを今後も目指していくという部分でございます。
     もう一つは、航空事故の発生率もしくは事故には至らないものでありますけれども、重大インシデントとして認識されるものの発生率、これにつきまして、14パターンの指標を新たに設定いたしまして、直近5年間の実績の平均値との比較で、毎年7%の削減を図っていくと、こういった目標を立てているところでございます。
     具体的な施策につきましては、115ページ以降でございます。
     まず、冒頭にございますのが、航空安全プログラムのさらなる推進でございまして、こちらにつきましては、国際民間航空機関であるICAOからも推進するようにというお話が出ている部分でございます。
     それから、少し飛びますが、118ページの(5)の部分で申しますと、こちらも航空の分野の事故の多数を占めている小型航空機などの安全対策の推進ということで、1つは操縦を行う2年前に特定操縦技能検査というものに合格している必要があるという制度が既に運用されていますが、これを引き続き適正に運用していくという。また、大型航空機の安全確保に向けた航空ごとのきめ細かい対策を推進するとしております。
     また、119ページにおきましては、航空機検査の実施ですとか、増大する航空需要への対応について、また、122ページの5番でございますけれども、ドローンなどを含む、無人航空機の安全対策として、安全な運航の確保ですとか、健全な利活用に向けた制度の構築について書かせていただいております。
     最後、124ページでございますが、この分野におきましても、被害者支援の推進についての記載をさせていただいているところでございます。
     非常に駆け足で恐縮ですが、以上、簡単に御説明をさせていただきました。
  • 牧参事官補佐 ただいまの第10次交通安全基本計画(中間案)につきまして、公述人の方から御意見をいただきたいと思います。
     なお、時間の関係上、お一人8分までということでお願いいたします。
     それでは、初めに、佐藤清志様、お願いいたします。
  • 佐藤氏 トップバッターということで、NPO法人KENTOの佐藤清志が発表させていただきます。
     本日、代表の児島が別件により参加できないということで、代理の佐藤が発言させていただきます。児島より意見を持ってまいりましたので、それをもとに話をさせていただこうと思っております。
     本法人は、交通事故被害者遺族と支援仲間たちから成り立っております。
     法人名KENTOは、K・交通事故を、E・永遠に、N・なくす、T・友達の、O・輪を謳っております。
     大手運送会社トラックにより18歳の長男の命を奪われた代表とともに、以後、第2の犠牲者をなくしていくべく活動を続けております。
     交通事故をなくしていくために、ここで公述人として2つのことを述べさせていただきたいと思っております。
     第1に、交通事故被害当事者・遺族・家族が、国・地方公共団体・関係民間団体とともに参加・協働していくために、門戸を広げ、かつ協働参加の具体的施策を文言で示してください。5年に一度、このような公聴会で意見を述べ、また、聞いていただくだけではなく、年に一度、交通事故被害者団体を集め、基本計画の進捗状況の周知や被害当事者ならではの事故撲滅への有益な意見交換に耳を傾けてほしいと思っております。
     第2に、国と国民が一体となる目標設定のため、交通事故死者・重症者ゼロをうたうビジョン・ゼロを国会決議すべく第10次の中で取りかかっていただきたいと思います。
     以上、2つの理由について述べさせていただきます。
     私たちが暮らす国では、もはや誰も阻止できない情報化社会が到来し、それと同時に隠蔽や癒着などの不正が顕在化し、それらの情報のもとに国民は今やみずからの力で判断する時代になってきています。
     そんなさなか、交通安全基本計画策定に向けて、交通事故被害者団体及び個人に対して、初めて門戸が開かれたのが2007年でした。そのころの被害者の言葉の中で、例えば、歩車分離信号の設置の呼びかけがあったと思うのですけれども、その呼びかけに真摯に取り組み、すぐにこの普及があったならば、今、起こってしまっている青信号横断中の被害者、子供たちの命が幾らでも救えたということ、このことを考えると、悔しい思いでいっぱいであります。
     歩車分離信号の設置だけではなく、交通事故被害者・遺族・家族たちは、事故撲滅に向け、常に真剣に、注意深くさまざまな方策を考えるとともに行動を続けています。5年に一度私たちを集め、意見を聞くだけではなく、ともに考えていく、協働という形をつくり、整えていただきたいと思っております。
     第2に、ビジョン・ゼロについてなのですけれども、国民は、第10次交通安全基本計画を知らなくても、登下校中に生徒の列に車が突っ込んでしまう被害あるいは青信号を渡って人が亡くなってしまうこと。ブレーキとアクセルの踏み間違い、飲酒運転がなかなかなくならない。脱法ハーブによる被害あるいはひき逃げが絶え間なく続いていること。また、高齢者の被害が多く出ていること。また、自転車においても重症被害が出てしまっていること。このことを毎日報道などで聞かされ、なぜなくならないのかと、毎日考えている、そういうことが続いていると思います。
     そんな国民の成長の動きは、署名活動の場でも顕著に見られています。14年前に私たちが開始した街頭での署名呼びかけのころから比べれば、今は格段に自ら関心を持ち、立ちどまり、署名をする人たちが格段にふえています。国民が他人ごとではないということに気づいているからでありましょう。
     この署名活動で反映されている国民の意識の高まりに、今こそ目をとめてほしいと思います。死人に口なし、泣き寝入りの言葉がまかり通る悪弊を食いとめ、事故の原因を個人に帰する習慣から脱却すべく、現状の交通システム全体を見直し、科学捜査を含めた死亡・重症事故の徹底した捜査の実施を取り入れるなど、わかりやすい官民一体となって推進できるビジョン・ゼロに向け、すぐに取りかかっていただきたいと思っております。
     この2つの要望を効果的に行っていくためにも、あわせて3つのことを要望させていただきたいと思っております。
     まず、第1に、中央交通安全対策会議専門委員の中に交通犯罪被害者・遺族の代表を参加させていただきたい。これは、今回、この公聴会でも、この開催が、開かれることすら、私たちは知らないままでした。ホームページでたまたま見つけ、ようやく知ることで、仲間たちに知らせ合うことによって、本日、この多くの遺族が参加できる運びとなりました。
     こういうことをなくしていくためにも、やはり、いつもこのことを考えている遺族・被害者団体が、こういった委員の中に入っていくべきではないかと思っております。
     また、この専門委員会の中での議事録を見させていただきますと、目標に関する議論を読んでいても、死者や被害者の思いとは別の場所で会話をしている、そんな言葉が並んでいるように感じてなりません。こういうことをなくしていくためにも、被害当事者が入っていくことが必要ではないかと思っているのです。
     2番目に、被害者の実態をより正確に把握するため、ドライブレコーダーの全車搭載を義務化していただきたいと思っております。このこともかなり前から、私たち遺族が訴えていたことです。ビジョン・ゼロということを申し上げましたけれども、このビジョン・ゼロというのは、発生してしまった一つ一つの事案を分析し、真相究明に重きを置いております。そのためにも、証言などに頼らぬ、真の真相究明のためにも映像証拠が必要となってきています。
     また、現在、東京モーターショーがちょうど開催しているところではありますけれども、その中でも、被害軽減ブレーキなどの運転支援システムあるいは自動運転などが多く取り上げられています。
     こういうことが普及していくかもしれない中でも、その何か起こったときのバックアップのためにも、ドライブレコーダーが必要となってくることは言うまでもありません。
     最後に、国連が定めた「世界道路交通被害者の日」、犠牲者の日の啓発活動を被害者・遺族とともに国が率先して行っていただきたいということ。各地の遺族団体は、7、8年前から、既にこの活動を趣向を凝らしながら行っております。
     今回、目標として出されている2,500人以下、このことが達成されることによって、世界一安全な道路交通社会が達成できるというふうに言われておりますけれども、その中で被害に遭った方々にとってみれば、私たちと同じ、全くその苦しみ、悲しみは変わらないのです。別世界の言葉にしかならないのです。
     交通安全とは、被害者を出さないこと、ならば、被害者の実態を正確に理解しなければ、その抑止効果にはならないと思います。
     そのためにも、国連加盟国である、我が国の交通安全の中に、この世界道路交通被害者の日、こういった活動をぜひ盛り込んでいただきたいと思っております。
     時間になりましたので、これで私の発言を終わりにさせていただきます。
     どうもありがとうございました。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     続きまして、吉野一様、よろしくお願いいたします。
  • 吉野氏 皆様、こんにちは。一般社団法人日本自動車補修溶接協会の吉野と申します。
     本日は、第10次交通安全基本計画の車両の安全性の確保に対する意見を陳述させていただきます。
     申しわけありませんが、パソコンの操作を兼ねてやりますので、着座にてお願いしたいと思います。
     まず、冒頭、簡単ですが、当協会の役割、組織というものについて、簡単に触れさせていただきます。
     自動車は、事故を起こした場合でも再利用されることが非常に多く、いわゆる板金塗装屋さん、国家資格で車体整備士というのがあるのですけれども、その言い方で言うと、車体整備事業者が直します。
     ところが、近年、自動車のボディーというのが、非常に様変わりしてきまして、車体の材料なども高度化している。そういった事情があって、非常に修理の溶接の難易度が上がっている。この溶接のところが不良になってしまうと、危険な車が公道を走るということになりますので、それを抑止するために、やはり、事業者に対して、正しい溶接とは何かというのを啓蒙していかなければならない。
     そういった教育や情報収集の場というのを提供するために、当協会が設立されて活動しています。
     組織としては、溶接機メーカー、当然そうなのですけれども、自動車メーカーさんにも、損害保険さんにも参加していただいて、バランスのとれた情報発信ということに努めているところでございます。
     全ては安全・安心な車社会実現のためにと銘打っておりますけれども、簡単に言うと、世の中のニーズは、予防安全性を当然向上させる、環境性能を上げる、衝突安全性能を向上させることにある。
     これに対して、自動車メーカーさんは、車両の電子化、いわゆるASVを発達させ、あとは、燃費のために車両を軽量化する。軽くして弱くなったのでは、今度は衝突安全性能が維持できないので、衝突安全性能を上げるための構造の変更をする。
     一たびぶつかると、これは、ぶつかる程度というのがいろいろありますが、その事故車両というのは、廃車にならない以上は、車体整備を実施して、再度、利用されるケースが多いと。
     この現実に対して、直す側は、やはり電子化への対応、それから、車体には高張力鋼板と言われる鉄鋼材料を多用しているわけですが、そこへの対応というのが迫られている。
     この車が公道を走るわけですから、やはり、環境性能、予防・衝突安全性能の回復というのが絶対の命題であると、このように考えております。
     電子化と車体整備の関係性みたいなものというのも、スライドには載せてはあるのですけれども、何分時間が短いもので、取り組みのほうを先に説明させていただきます。
     実は、お手元の資料は、今回の意見の資料ともう一つ「車体整備の高度化・活性化に向けた対応(中間報告)」と、この2つの資料を提出していますけれども、2番目の資料というのは、実は国土交通省さんと、事業者団体と当協会で勉強会をやって、その勉強会の中間報告を出しているという、そういう書類になります。
     詳細は、後で目を通していただければよろしいのですが、そこで報告として決議したことというのは、自動車の新技術に対応した車体整備技術の高度化、これについては、やはり電子化対応の機器、それから、新しい材料に対する接合のための機器、このようなものを設備する必要があるということ。
     あとは、国家資格である車体整備士の資格の取得の促進等、あと、保有者の再教育、一度取ったら再教育の場が余りないということなので、この人材育成をやらなければいけない。
     それから、安全・安心な車体整備の確保について記録簿を備える等々の施策というのを打っていこうと、これが中間報告の骨子となっております。
     それを国民の皆様に知っていただかなければならない。要するに、これは、国民の皆様は車をぶつけたときに、どこで直すのかというのは選択できるわけなのですけれども、ちゃんとした知識に基づいて直している、そういう工場というのは、一体どこにあるのかというのが、国民の皆様にはわかりづらいので、これを見える化していきましょうと、要するに安全・安心な車を修理するための見える化、これを行うための方策というのを決議しております。
     この見える化の方策というのは、事業者団体のほうが自主的な取り組みということで行っていくと、こういうような形になっておりますが、私どもは、この中間報告を踏まえ、交通安全基本計画の中間案に対する意見として、次のような意見を提示させていただくことになりました。
     これは、簡単に読み上げさせていただきます。
     第10次交通安全基本計画(中間案)でも触れているように、自動車の検査制度や点検整備は陸上交通の安全性の確保にとって大変重要な要素であり、その技術が自動車の進化に即して高度化されるべきことは疑うべくもないが、それは車体整備についても同じことが言える。
     そもそも、自動車は事故を起こした場合でも鉄道や船舶と違い再利用されるケースが多く、車体整備を実施した数多くの自動車が、再び公道を走ること、中古車として市場に流通すること、外国に輸出されることなどを考えあわせれば、新技術・材料に対応した車体整備の実施、すなわち車体整備における自動車の環境性能、予防・衝突安全性能の回復は、絶対の命題である。
     しかし、車体整備は、その業としての重要性や技術高度化の必要性に比して、車体整備とは何か、点検整備とは何が違うのかなどの基本的な概念が、自動車ユーザーに正しく理解されているとは言いがたい。
     一方で、国民が交通安全に関する課題や国の取り組みについての認識のよりどころとしている交通安全基本計画は、現状、自動車整備を検査及び点検整備としてのみ捉えた内容となっており、車体整備の重要性に目配りしているとは到底言えない。
     したがって、当協会は、交通安全基本計画は、車体整備を点検整備とは別の独立した項目として取り扱うことで、車体整備そのものの見える化を積極的に実施し、その業としての重要性や技術高度化の必要性を国民に広く啓蒙する役割を果たす必要があると考える。
     これが意見ということになります。
     端的に言うと、我々の活動で、優良な工場の見える化はやるのですけれども、そもそも何を見える化しているのか理解する前提として、点検整備、車体整備、この区別というのを、やはり国民に知らせる必要がある。そのためには、この基本計画のところに、それを反映させていく必要があるだろうと、そのように我々は考えているというところでございます。
     時間になりましたので、意見の陳述を終了させていただきます。
     ありがとうございました。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     続きまして、中西盟様、よろしくお願いいたします。
  • 中西氏 皆様、こんにちは。日本自動車工業会の中西でございます。
     このたびは、中間案に対しまして意見を述べさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
     本日は、皆様方にお配りしました、当会の提言書につきまして、特に強調したい部分をパワーポイントを使いまして、御説明をさせていただきます。
     操作の関係上、ちょっと座らせていただきます。
     まず、提言書の概要を簡単に御説明いたします。
     提言では、I、IIで第9次計画の振り返り、当会の考え方を整理した上で、III以降、16項目の提言をしております。
     IIIでは、数値目標について、高齢者対策への重点化を、IV以降では、ひと(社会)、車、ITS、道路環境の各領域につきまして言及をしております。
     まず、交通安全対策に対する当会の考え方を申し上げたいと思います。
     1つ目は、この計画が持続可能な活力ある社会の構築と矛盾しない前向きな施策であることでございます。車の有用性を損なうことなく、広く国民の理解の上に立って、活力ある社会と安全の両立を目指すものであってほしいということでございます。
     2つ目は、中間案に示されております高い目標値、これを達成するためには、事故そのものを減らす予防施策の一層の充実が必要であるということでございます。
     そのためには、人、道路、環境、車の3要素、さらにはITSを活用した総合的な取り組みが重要であり、効果的な施策を効率的に実施していただきたいと思います。
     また、今一度、交通安全に対する国民の関心を高めなければなりません。利用者の安全意識と、正しい利用があってこそ、道路や車の安全機能が発揮されることを再認識すべきだと思います。
     ひと(社会)につきましては、4つの提言にまとめております。交通安全教育につきましては、チャイルドシートについては保護者が、自転車につきましては、小中高等学校において、それぞれ発育段階に応じた教育が必要であると考えております。
     また、参加体験型実践形式の教育を進めていただきたいと思います。当会が開発いたしました高齢ドライバー向け教育プログラム、生き生き運転講座は、これまで1,000を超える自治体、団体で実施されておりまして、住民参加を促すツールとしても活用できるプログラムとなっております。
     また、認知症など、高齢運転者への運転能力低下への対応につきましては、地方など、自家用車が必要不可欠な存在となっていることも踏まえまして、それぞれの健康状態に応じた支援体制を、ぜひ、つくっていただきたいと思います。
     4つ目でございますが、Distracted Driving、いわゆる、ながら運転の危険性や、あるいは中高年ライダーによる事故死者増加といった今日的課題についても啓発活動が必要と考えております。
     車についての提言は3つでございます。
     医工連携統合事故データベースの拡充といった交通事故調査分析体制の強化・充実。安全技術の国際標準化や基準調和。ASV普及のための制度づくり、いずれもより安全な車づくりの研究開発普及のために必要な施策だと考えております。
     このうち、提言の1と3につきましては、少し説明したいと思います。
     まず、提言1の調査・分析体制についてです。図にお示ししたとおり、事故調査分析は、研究開発、安全技術の市販化の出発点となります。
     具体策は3つでございます。1つ目に、高齢運転者のどのような運転特性が事故につながるのか、特性を把握すること。
     2つ目は、予防安全技術の信頼性向上のため、対歩行者、自転車の事故やニアミスについての分析。
     3つ目は、事故状況と処置内容、医療画像などを含め、総合的な分析を可能とするためのデータの統合化でございます。
     いずれも、より安全な車を開発する上で重要な情報となるものでございます。
     安全装備の普及拡大については、3点提案させていただきます。
     1つ目は、事業用車両の運行管理機器の活用です。デジタルタコグラフの普及拡大、機能の統合、拡充等、運行管理制度の充実を図っていただきたいと思います。
     2つ目は、緊急通報システムの普及促進です。現在、民間サービスとして導入されておりますけれども、まだ普及が進んでおりません。公的サービスに近い形でインフラ整備等普及促進策が望まれております。
     3つ目は、先進安全自動車の普及についてでございます。
     JNCAPによる情報提供に加えまして、優遇税制、補助金、保険割引等、インセンティブを拡充していく必要があると考えております。
     ITSにつきましては、官民ITS構想ロードマップ2015が、この6月にまとめられております。ロードマップに記載された計画、安全運転支援システムの実用化普及、自動車走行情報の活用といった施策を着実に進めることが世界一安全な道路交通社会の実現には不可欠でございます。
     これらの施策を交通安全基本計画にも、ぜひ記載し、着実に実行していただきたいと考えます。
     安全運転支援システムにつきましては、2020年までに効果を上げる短期の施策の実施を望みます。
     特に②の情報提供型の安全運転支援端末の実用化普及、すなわちDSSSですとか、ETC2.0につきましては、通信インフラの整備と車載機器の普及促進が必要となります。
     自動車走行情報につきましては、公共データのオープン化の加速と、プローブ情報の活用推進を提言いたします。表にお示ししたように、公共が保有するデータを民間が活用することにより、交通事故のみならず、交通流の円滑化も期待できます。
     また、民間が保有するプローブ情報は、既に活用されており、調査、モニタリングの低コスト化や、精度向上等、有益なデータです。個人情報の問題など、課題解決を図りながら活用を進めていただきたいと思います。
     最後に、道路の提言でございます。
     こちらに書かせていただいたように、5つ提言をさせていただいております。
     いずれも重要な施策だと思いますので、ぜひ、着実に推進をお願いしたいと思います。
     最後の5番目について少しお話をいたします。
     自動二輪のバス専用レーンの走行につきましては、都道府県で二通りの規制がございまして、間違えてしまうライダーも少なくございません。自動二輪車の安全走行に効果的な施策になりますので、バス専用レーンも含む、複数の通行帯を走行できるよう、規制を見直していただきたいと思います。
     最後になりましたけれども、この10次計画に対する提言のうち、強調したいところを中心に紹介させていただきましたので、詳しくは提言書をお読みになっていただきたいと思います。
     最後に、当会としましても、この10次、5カ年計画に対しまして、ぜひ協力をさせていただきたいと思いますので、ぜひ、よろしくお願い申し上げます。
     以上でございます。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     続きまして、前田敏章様、よろしくお願いいたします。
  • 前田氏 本日は、意見表明の場を与えていただき、ありがとうございます。
     北海道の会は、発足以来、被害根絶のための活動を重視してきました。よろしくお願いいたします。
     私の長女は、前方不注視の車に後ろから轢かれるという、通り魔殺人的被害に遭い、わずか17歳で、その全てを奪われました。20年経ちましたが、長女の無念を思う悲しみと苦しみ、加害者への憎しみに何の変わりもありません。楽しい明日を考えることができず、抜け殻のようになった自分を自覚します。犠牲を無駄にしてほしくない。娘から託された使命を果たすためだけに生きています。
     私たちの共通の思いは、こんな悲しみ、苦しみは、私たちで終わりにしてほしい、この一言に尽きるのです。
     私は、被害の深刻さというのは、単年度の数ではなく、累積で見るべきと思います。戦後70年間での交通死者は90万人を超えました。負傷者は4,300万人にも及びます。物質的には豊かになったと言えるかもしれません。しかし、肝心な心の豊かさは、人と人との関係性はどうでしょうか。悲しみ、苦しみ、憎しみの情は、交通死傷によって広く、深く社会に積もり続けているのではないでしょうか。
     意見の要点は3つです。命の尊厳を第一義とした目標値に修正していただきたい。速度の抜本的抑制と規制をその基本に据えていただきたい。そして、生活道路での交通静穏化を直ちに実現し、歩行者や子供、高齢者の命を完全に守り切る社会にしていただきたい。この3点です。
     このことにつきましては、これまでも何度もパラダイム転換の必要性として強調させていただいたところです。
     北海道では、毎年11月の第3日曜日、世界道路交通犠牲者の日にフォーラムを開催し、お手元の資料にもある「ゼロへの提言」に、その思いを集約してきました。ぜひ、お酌み取りください。
     まず、目標値についてです。ゼロを見据えた中期目標、これを再設定し、目標値を上方修正、減らしていただきたい。日本学術会議が2008年に提言した中期目標は、死傷者数を10年間で10分の1とするもので、それに向けてのロードマップを示していました。大変貴重な提言だったと思います。
     お考えください。本来、豊かな生活のための道具であるべき車が、今なお、年間70万人もの人を傷つけ、6,000人もの命を奪う凶器ともなっている。被害数は、身体犯被害数の96%を占める、これは、まさに異常なことだと、捉え直さなければなりません。利便性のために、ある程度の犠牲は仕方ないという車優先社会の感覚麻痺を改めていただきたい。
     中間案の目標値では、5年間で~厚生統計に修正していますけれども~1万8,000人以上の交通死、250万人以上の負傷者を「仕方がない」と容認し、車優先社会の感覚麻痺を追認することにもなると思います。
     これまでの関係方面の御尽力で減り続けていることは重要です。しかし、市民が感じているのは、日常的被害への恐怖です。危険な状況を紹介します。
     毎年、命の大切さを学ぶ教室で行っている札幌の高校での調査結果です。高校3年生、18歳になるまでに、半数以上が歩行・自転車乗車中にクルマにより身の危険を感じています。そして、およそ1割、10人に1人が、実際に事故に遭い、入院や通院、この赤の部分ですけれども、これはおよそ100人に1人になります。まとめると、こういう数字になります。
     生徒は、こんな感想を述べています。こんな現状は変えなければなりません。パラダイム転換を支持する世論の変化も近年顕著です。犯罪被害者等基本法から10年、被害者の視点に立った施策が各分野に広がっているからです。私たちが道内で行ってきた体験講話は、中高生を中心に、この16年間で850回、17万人にも及びます。
     中間案6ページの国民意識のグラフでは、被害数は減っていながら、「交通事故情勢の悪化と感じている人」が、5年前より7ポイントふえて39.2%、事故の大幅減少を願う声は85.4%、圧倒的多数の国民です。こうした意識変化にも依拠すべきと思います。
     第2は、これまで膨大な犠牲を強いてきた高速文明を見直し、抜本的な速度抑制と外部規制、これを実現することです。レール上をATS付きの車両を走らせる鉄道輸送に比べ、歩行者がいる道路を、不安定な人の認知、判断、操作に委ねて走る車の危険性、これは明白です。安全と速度の逆相関関係も証明済みです。危険な速度での走行をさせないように、中間案では、「先端技術の活用推進」が強調されていますが、既に実用可能な技術を速度の抑制と規制に生かすこと、このことこそが求められていると思います。
     段階別速度リミッター、ドライブレコーダーの装着義務化などにより、安全な速度管理、これを徹底すべきです。飲酒運転をさせないためのインターロックも含め、お願いしたいと思います。
     第3の生活道路の交通静穏化による被害ゼロの施策ですが、これは、中間案でも強調され、具体的にゾーン30、低速度規制という、今後、画期となる施策も明記されていることは大変重要で、心強く思います。
     求めたいのは、その推進徹底の速度です。例えば、私たち被害者団体が交差点での構造死をなくしてほしいと求めた歩車分離信号の普及ですが、この効果は明らかであるにもかかわらず、導入推進がうたわれた8次計画から10年経た今も普及率は4%にとどまっております。貴重ではありますけれども。
     中間案には、平成15年より、引き続いて、「世界一安全な道路交通」という目標が11ページにありますけれども、一方で、歩行者及び自転車の被害率が欧米に比べて極めて高い。この遅れを、やはり8次計画以来、同様に指摘せざるを得ない。これは、おかしいと思います。先ほどの高校生の調査を思い起こしてください。ゾーン30と低速度規制、これは、間違いなく被害ゼロの交通社会実現にとっての柱となる施策ですので、速やかな普及と徹底の方策も明記すべきと考えます。
     これは、私のうちの近くの札幌市で新たに指定されたゾーン30です。貴重な一歩と感じました。
     しかし、この指定は、広く面的なものではなくて、極めて狭い線的な指定にとどまっているのです。市内全域がゾーン30となり、車は歩道が整備された限られた幹線道路のみ例外的に40から60キロ以内の指定速度で走らせることができる。こういうシンプルで安全な社会が求められていると、私は思います。
     ヨーロッパでの進んだ取り組みに学び、道路イコール車道の観念から脱却させる計画にしなければならないと思います。これは、ヨーロッパでの住民用街路の標識です。これは、車道を削って自転車道を整備し、車道と自転車道と歩道の幅が1対1対1になっています。これは、車は歩くような速さで走らせましょうという標識です。
     課題は、ほかにもあります。安全運転の問題、刑法の問題、免許制度の問題、多々ありますけれども、今期の安全計画につきましては、パラダイム転換を明記した10次計画にしていただきたい。交通死傷ゼロの社会の実現こそが、真の社会進歩である。そのことを私は確信します。目標値の見直し、そして、中間案5ページに8つの柱がありますけれども、この1番目に速度の抜本的抑制、そして、2番目に生活道路の交通静穏化、これを明記するなど、パラダイム転換が浮き彫りとなる計画にしていただきたい。そのことを切にお願いいたします。
     以上です。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     続きまして、大塚つや子様、よろしくお願いいたします。
  • 大塚氏 ただいま紹介していただきました、交通事故被害者遺族の声を届ける会の大塚と申します。よろしくお願いいたします。
     交通事故の被害者となって、最初に感じることは、交通事故は事故なんかではないということです。交通事故は犯罪なのだということは、恐らく遺族となってしまった全ての方々が感じるであろう衝撃の考えなのではないかと思います。事故という概念は誤りであるということです。
     この基本計画の根底に交通事故は犯罪であるという概念をきちんと位置づけていただきたいと思います。
     当時21歳だった娘は、17年前の2月、24歳の男性会社員が運転するトヨタのハイラックスサーフの全面にカンガルーバーをつけた車に轢かれ、命を落としました。ほとんど即死の状態でした。
     加害者は逮捕されたものの、罰金刑だけの略式起訴となり、原因の究明も何もなく終わりました。
     私どものようなケースが死亡事故にもかかわらず、ほとんどを占めています。死亡事故であるにもかかわらず、原因究明すらされていません。刑事裁判など、どこか遠くの話です。
     基本計画の文言には、分析と調査という言葉がたくさん出てきます。もし、文字どおり分析と調査を重要視するのであれば、まずは事故現場を見て分析と調査をすべきではないでしょうか。現実には、警察のみの独占捜査が行われているだけです。第三者も加わった、より科学的な捜査、調査、分析を行っていただきたいのです。
     鉄道や飛行機事故の死者数を大きく上回っているのが、道路交通事故の死者数ではないでしょうか。前者は既に警察のみではない、事故調査委員会が設置されています。せめてメディアが注目するような重大な事故に関しては、事故調査委員会を設置し、捜査、調査、分析をし、その結果を発表すべきと考えます。
     毎日多くの人が道路交通事故により、大切な命を奪われています。犯罪とも捉えられず、殺人であるにもかかわらず、社会の片隅に追いやられているのが実態です。社会が関心を持つ大きな事故に関しては、きちんと向き合っていただきたい。これは、基本計画の中の大きな位置を占める、国民の交通安全への意識への大きな影響をもたらすものと考えます。早急な実現を望みます。
     事故当時、トヨタは、車が未来になっていくというCMを毎回、何回も流していました。車によって未来を奪われている、私たち遺族ことをどう考えているのか非常に疑問でした。お客様相談室に電話し、危険なカンガルーバーと遺族の心情への考慮のないCMをやめてほしいということを訴えると、トヨタの相談室は、私たちには、事故は関係ない。あくまでも運転する人のマナーの問題だと言い放ちました。
     その後も、毎日車が未来になっていくというCMは流れていました。そのたびに胸が痛みました。果たして、メーカーは、これでよいのかと思います。毎日起こっている死亡事故の全てとは言わないものの、その一端の責任を果たすべきと考えます。
     基本理念3の「交通安全に関する教育、普及啓発活動を充実させる」の部分の推進のためにも、CMの中に、例えば、車は凶器です。安全運転をお願いしますというような文言を入れることを義務づけるといった方策を考えていただきたいと思います。大きな効果を期待できる1つと考えます。
     娘が歩行中に車に轢かれたように、日本における、いわゆる弱者の死亡事故は、欧米諸国に比べると非常に多く、バイク等を加えれば、7割にも達します。
     私は、川崎市の宮前区というところに住んでいます。自転車にもよく乗り、たまに遠出もしますが、自転車用道路というものを見たことがありません。しかも今は、道交法によれば、車道を走らなければなりません。ミラーもウインカーもない自転車に対して、何を言っているのと憤りを感じるのは、私だけでしょうか。弱者に対しての対策は、やはり欧米諸国に比べて相当遅れていると言わざるを得ないのが事実です。弱者の命を救うためにも、他の先進国を見習ってほしいものです。
     また、通学路における子供たちの安全確保については、2012年4月に京都府亀岡市で、児童ら10人が死傷した事故を受け、13年から毎年春と秋に実施されている取締りにおいても27年には、前年を1,908件上回る、1万879件の違反が摘発されています。
     依然として、子供たちは、毎日命の危険にさらされていることになります。さらなる取締りと啓蒙の徹底を強く希望します。
     日本における交通事故の年間死亡者数は、24時間内のものが国民に表示されています。せめてヨーロッパと同じように、30日以内、死亡者数を国民に示すことにより、より真実と実態に近いものを認識できるのではないかと考えます。
     これは、10年間にわたり、千葉県警が交通事故死者数を少なく計上していたことに通じる心情のように感じてしまいます。国民に真実を隠すようなことは重い罪なのではないでしょうか。
     国連で議決された世界道路交通犠牲者の日は、今年は、今月の15日ですが、日本の政府においては、何らの参加もありません。日本の交通安全意識は非常に遅れています。犠牲者を慰霊することによる国民への交通安全の啓発に力を注いでいただきたいと思います。
     また、基本計画の中で、世界一安全な道路交通を目指すと言っておられたものの、実際には6位から9位に後退しています。この現状を打破するためにも、以上、述べさせていただいたことの早急な実現を要望します。
     私は、事故から17年たった今でも、ごくごく親しい人の中でも、娘の話をできるのは限られた人だけです。時々親しい友人が、私のつじつまの合わない話になったとき、何かと質問してくるものの、それに答えることができず、いつもその場を濁します。この悲惨な経験をしている人と、していない人との間に埋めることのできない深い溝を感じているのだと思います。
     二次被害、三次被害の苦しさは、決して理解することができないとわかっているからなのだと感じます。
     こんな私のような一般社会から逸脱せざるを得ないような事故や社会構造をなくしてほしいと心より願います。
     以上です。ありがとうございました。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     続きまして、小沢樹里様、よろしくお願いいたします。
  • 小沢氏 きょうは、お呼びいただきましてありがとうございます。私は、関東交通犯罪遺族の会よりまいりました、小沢樹里と申します。
     まず、第10次交通安全基本計画の中間案を拝見いたしました。人優先の安全対策を重視した内容となっており、また、随所に、あいの会でも提言させていただきました、犯罪被害者の声が反映されているものになっていることに、まず、もって感謝いたします。
     その上で、交通犯罪をなくすために、あいの会として特に力を入れていただきたいと考える点についてお話をさせていただきます。
     私たちの会では、自転車が加害者となった御遺族もいて、また、自転車に対する被害に遭った方が増減して、私たちのもとへ相談に来ています。
     その中で、今回は、時間も少ないということもあり、自転車について、主にお話しさせていただこうと思います。
     まず、1つ目、日常生活に密着した交通政策を積極的に推進していただきたいと思います。生活道路の改築の上で、地域が主体となって進められるべきことはもちろんですが、地域任せきりにするのではなく、子供やお年寄り、障害や持病を抱えている人のことも十分に考え、歩行の安全のため、国、都道府県、そして、市区町村、地域の方の声をよく聞き、人優先のまちづくりをしていただきたいと思います。
     また、自転車が交通犯罪において被害者となるだけではなく、他方で、加害者にもなり得ることは、人優先の交通安全対策を検討する上で、極めて重要です。
     その視点から、自転車専用通行帯や自転車の目線の標識など、積極的に設けるなど、歩道と区別をより一層明確にし、「暮らしの道」の機能分化を徹底してほしいと思います。
     その際、自転車の専用通行帯を子供やお年寄りにもわかるように、もっとわかりやすく表示し、他方、道路標識においては、自動車側だけではなく、自転車を運転する者にもわかりやすいように設置していただきたいと思います。
     高速度での走行する自転車によって引き起こされる重大な結果をもたらせる事故が多くありますが、その多くが、自転車運転の事故でも明らかであり、自転車と自動車の関係に重点を置き、自転車が車道の走行をするときの安全確保のための具体的な措置を検討するだけではなく、自転車と歩行者との安全対策の面で、自転車にも速度制限を設けるなど、特に坂道における安全確保、そして、通行または整備などの具体的な措置を実施していただきたいと思います。
     交通安全対策では、教育を果たす役割は非常に大きいものと思います。特に自転車は、子供もこれに乗って車道や歩道を走行し、そのために被害者となったり、逆に加害者となることもあり得ます。子供の安全のためには、学校において年1回の自転車の安全な走行に関する講習を義務化するなど、策が講じられるべきだと思います。
     自転車が被害者となる事故も、加害者となる事故も、自転車の走行に問題のある事故が多々あることも否定できません。そこで、自転車の道交法違反に対して厳しく処罰し、違反常習者に対しては講習を義務化していただきたいと思います。
     今年の6月、道交法改正で危険自転車への講習が義務化されましたが、全く改善されていないとの報道が目立ち、実際に町を歩いていても、それを実感します。取り締まりの強化を図ると同時に、講習実施も徹底し、また、講習状態も随時開示して、掲示していただきたいと思います。
     また、自動車の自動運転について、現段階で、これを積極的に推進することについては、様々な意見があり、単に、これを進めるというだけではなくて、多方面から幅広く意見を聞き、慎重に検討していただきたいと思います。
     また、これと並行して検討しなければいけないのは、お年寄り、そして、障害がある方、医学上の理由で運転を制限される、生活を余儀なくされたりする方についてです。この方々たちは、ひきこもり状態に陥ったり、または移動手段に困り、孤独な生活を余儀なくなれたりしています。
     また、運転をすることが重大事件の引き金にもなりません。ですから、まずは、医療、福祉が積極的に動き、サポートする体制をつくっていただきたいと思います。
     そして、犯罪被害者の保護を強化していただきたいという思いをお話しさせていただこうと思います。
     自転車による死亡事故や重篤な障害が発生する事故が数多くありますが、自動車と異なり、強制保険がありません。被害者は十分な補償を受けることができず、また、加害者は大きな負担を負わなければならないということにもつながっています。
     自転車事故による犯罪被害者の救済のためにも、自賠責などの強制保険を創設することを急務として考えていただきたいと思います。
     また、このために、自転車に小さなものでもいいです。ナンバープレートをつけて登録制度も必要だとも考えます。
     次に、都道府県や市区町村において、より身近で生活支援につながる犯罪被害者支援条例も制定し、きめ細やかな支援をしていただきたいと思います。
     また、今回、このような場に呼んでいただきましたが、犯罪被害者団体に意見を求める際、ぜひ、1カ月以上の期間を設けて、私たちにも通達をしていただきたいと思います。
     私たちは、同じ会社にいるわけではないので、ぜひ、意見の討論の場を積極的に活用させていただきたい。そのためにも、ぜひ、次はその期間を十分に設けていただければと思います。
     最後になりましたが、私自身、今、11歳と6歳の子供の母親です。その子供はたちに道路の上で、自転車は左側通行だから左側を走りなさいと言います。ですが、実際、今の道ではその左側を安全に走れるような道ではありません。だからこそ、法律も道路も子供たちでもわかりやすく、シンプルなものにしていただきたいと思います。
     御清聴ありがとうございました。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     続きまして、加山圭子様、よろしくお願いいたします。
  • 加山氏 私は、踏切事故遺族の会の加山と申します。
     このたびは、第10次交通安全基本計画の中間案についての意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
     また、第9次第交通安全基本計画においては、踏切の安全対策を積極的に進めていただいて、ありがとうございます。
     昨年、意見聴取会、第10次交通安全基本計画について意見を述べさせていただきましたが、今回の中間案につきましても、いろいろと反映させていただいていると思います。どうもありがとうございます。
     私の母は、10年ほど前に竹ノ塚駅近くの踏切で、準急電車にはねられて即死いたしました。踏切保安係が、電車が来るのを忘れて遮断機を上げてしまったために、踏切内に通行人が多数入り、私の母を含む4人が死傷いたしました。
     事故後から安全対策が積極的に進められ、踏切の拡幅やカラー舗装、踏切の自動化、エレベーターつき跨線橋などが事故から1年以内に完成いたしました。
     また、鉄道高架化の事業も着実に進められておりまして、平成32年度には完成する予定でございます。
     この踏切の事故から、国のレベルでは、全国の踏切約3万6,000カ所のうち、先行的に2,600カ所を抽出、交通実態の点検をしていただきました。緊急に踏切の対策が必要なところとして1,960カ所リストアップし、様々な対策がとられてきております。
     また、鉄道事業者さんからは、鉄道事故の届出をされるわけですけれども、その届出をもとに、毎年、鉄軌道輸送の安全にかかわる情報といったものを国土交通省のほうで発表されておりまして、これをもとに、また、事故対策が進められているところでございます。
     今回の中間案についてでございますけれども、まず、この中間案の理念について幾つか評価していただきたいというものについて述べさせていただきます。
     事故の原因や背景などを調べないと、事故を防ぐ対策というものは出てこないのではないかと思いますが、中間案の理念の中で、事故調査体制の充実といったものを、ぜひ掲げていただきたいと思っております。
     事故調査をすることで、再発防止、また、同じような事故の防止に役立つものと考えております。
     例えば、昨年、鉄道のほうでは、運輸安全委員会が、遮断機のない踏切、第3種、第4種踏切と言っておりますけれども、この踏切の死亡事故について、事故調査を始めました。
     それまで、毎年10件前後、この遮断機のないところでは死亡事故が起きていたのですけれども、その事故が、平成26年度は6件に減りました。また、今年は、まだ2件しか起きておりません。
     このようなことを考えますと、事故件数の少ない事例で申し訳ございませんけれども、やはり、死亡事故を公的な専門機関が事故調査をするということになりますと、事故を防ぐことに繋がっているのではないか。事業者さんや、行政のほうで、いろいろ対策をとっていらっしゃるのではないかと、私、想像しております。ぜひ、事故調査体制を充実させるということを、全ての交通の分野で考えていただくことが必要ではないかと思っております。
     次に、事故の情報ですが、今のことと関連するのですが、事故の情報というのは、同じような事故を防ぐ上で重要ではないかと思っております。どんな事故が、どんなところで、どのように起きているのか、先ほど来、何人かの方が、やはり、事故をきちんと科学的に調べてほしいということをおっしゃっておりましたけれども、そういった情報というものは、やはり、いろいろな方々が共有することで、事業者さんだけではなく、専門家の皆様、周辺の住民の方、また、利用される市民の皆様と共有することで、事故を防ぐ英知というものがつくられていくのではないかと思っております。
     踏切事故の場合は、「運転事故等整理表」であるとか、毎日聞くニュースを見るだけでも似たような事故が大変多く見受けられます。このような事故を分析して得た知見や対策というものが、やはり、多くの方に共有されることで事故を防ぐということに繋がっていくのではないかと思っております。
     私どものほうでは、「運転事故等整理表」というものを毎年情報公開させていただいて、いろいろ分析というと、ちょっとおこがましいのですけれども、させていただいておりますが、この中で、特に、年齢とか性別というものを平成22年度から事業者さんに書いていただくようにお願いいたしました。
     その結果、このように集計いたしましたところ、60歳代以上の方の事故が非常に多いということが、踏切事故についてもわかりました。
     このように、年齢とか性別といったものは、やはり事故を分析する上で、非常に重要だと思われますので、ぜひ、情報公開していただきたいと思っております。
     ちなみに、平成25年度から、性別や年齢が公開されておりませんので、分析が24年度までになっております。ぜひ、今後、年齢や性別などについても情報公開していただきたいと思っております。
     第3章の踏切道における安全についてでございますけれども、踏切の事故というのは、減少傾向にあると思いますけれども、依然として、毎年100人前後の方が、やはり亡くなっております。踏切の事故というのは、踏切に入った人のマナーが悪いというふうによく言われる方がいらっしゃるのですけれども、毎年100人もの方が亡くなっている。ここ10年間の累計にしますと、1,200人余りの方が亡くなっているということを考えますと、このように、いわゆる悪い人がどんどん亡くなるのであれば、踏切事故もなくなるのではないかと、私は思うのですが、やはり、事故がなくならないというのは、ただ、単に個々の踏切を渡る方のマナーの問題だけではないのではないかと思っております。
     交通安全の目標というものですが、86ページに、平成32年度の目標として、第9次の終わった、平成27年度ですね。これに対して、約1割の死亡者の減を目指すとございますけれども、実際に、どの程度の方が亡くなっているのかということを調べますと、平成23年度、これは、第9次交通安全計画の初年度でございますが、この年には、死亡者が119人おりました。26年度は90人に減っております。本当にいろんな方々の御努力、御尽力で死亡者数が減ってきていると思いますけれども、24%減っている。
     これを見ますと、第10次交通安全基本計画の約1割減というのは、実績よりも後退してしまうのではないかと思います。
     実績のせめて2倍の50%、踏切事故を半分にしていただきたいと思っています。
     それから、2番目に踏切安全通行カルテについてですけれども、今回は、この中間案の中で踏切の実態を把握しようということで、踏切安全通行カルテを策定するという案を検討していただいております。ありがとうございます。
     踏切事故の再発防止に大きく役立つものではないかと期待しております。ぜひ、踏切というのは、道路と鉄道が交差するところですので、事業者さんだけではなく、道路を管理する行政の皆様、自治体の皆様にも積極的に検討していただけるようにと思っております。
     ちょっと長くなりましたが、最後、被害者支援についてです。こちらのほうは、先ほど来、道路であるとか、鉄道であるとか、いろいろなところで被害者支援ということが言われていますが、踏切道については、この記述がございません。ぜひ、公共交通にかかわることでございますので、こちらでも支援について実施をしていただきたいと思っております。
     長くなりましたが、簡単でございますけれども、意見を述べさせていただき、ありがとうございました。
     御清聴ありがとうございました。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     続きまして、井上郁美様、よろしくお願いいたします。
  • 井上氏 飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会、幹事をしております、井上郁美と申します。きょうは、機会をいただきまして、どうもありがとうございました。
     今日は、8分間という恐ろしいほど短い時間での意見を述べる機会ですので、余りたくさんのことを申し上げましても、散漫になるかと思いまして、私どもの会がずっと取り組んできました、飲酒運転、それに加えてひき逃げ、悪質な交通事犯に対する法律の適正な運用について、それについてのみ求めたいと思っております。
     私どもの提言としましては、たった1点でございます。交通事故に適用される各種法律が正しく解釈され、適正に運用されることを求めます。その1行でございます。
     このためには、例えば、捜査を担当されていらっしゃる警察官、検察官、その方々への研修、そして、ベストプラクティスの紹介と普及を1つお願いしたいと思います。
     大変高度なすばらしい捜査を展開してくださる、警察官、検察官もいらっしゃれば、とても人の命が奪われてしまったとは思えないようなずさんな捜査で、事故を処理してしまう。そのような残念な警察官、検察官もいらっしゃいます。
     ですので、悪いところばかり文句を言っていますが、本当にすばらしい捜査をしてくださった警察官、検察官たちの、その技術をぜひ、全国に水平展開してもらいたいと。
     交通事故被害者は、被害を受ける場所を選ぶことができません。裁判を受ける裁判所を選ぶことはできません。担当の警察官や検察官も選ぶことはできません。同じような事件なのに、なぜ、こちらの裁判所では実刑判決がくだり、こちらの裁判所では執行猶予つきの判決がくだってしまうのか、大変残念ながら不公平感を感じてしまわざるを得ないような状態があります。
     例えば、具体的に申し上げますが、最近起きている事件の2、3を申し上げます。
     ことしの5月に大阪の心斎橋、アメリカ村で起きた事件です。1.9リットルもビールを飲んだ加害者が駐車場を出て逆走し、その駐車場から出た直後に自転車2台に衝突し、さらに店に突っ込みましたが、検察は、危険運転致死傷罪は適用できない。なぜなら、駐車場を出た直後であり、運転を開始し始めた直後であり、走行距離が足りないからというふうなことが理由の1つに挙がっていました。
     一方では、昨年の北海道の小樽の飲酒ひき逃げ事件、あるいはもっとはるか昔の2006年8月に起きました、福岡の3児死亡事件のように、事故現場まで何キロ運転できたから、だから、それゆえに危険運転には当たらないと、そのような理由を述べられる検察官が多い中で、このように、大阪のアメリカ村の事件のように、事故現場が運転開始直後で、余りにも直後に起きたために危険運転は該当しないというふうな理由を述べられて、検察官は、それ以上の説明をすることもなく、危険運転致死傷罪の適用を見送ったと。
     現在も、8月から被害者遺族の方々が大阪の街頭に立って、毎週末、署名を集められています。それでも、まだ検察は、訴因の変更をしておりません。
     そのような中で、非常に残念なことに、1カ月前には、長野県の佐久の事件では、飲酒運転をして、中学3年生の卒業間近の男の子を横断歩道上ではねて、救護をせずに、コンビニに行ってブレスケアを買って、それを半分ほど、その場で服用して、飲酒の事実をごまかそうとし、救急車も呼ばなかった加害者に対して、禁錮3年、執行猶予5年の判決が言い渡され、確定してしまいました。
     私が、住んでおります、千葉県花見川区の事件ですが、特に飲酒が絡んでいるわけではなく、同じように、横断歩道上で、小学校1年生の男児を死亡させてしまった加害者に対して、1カ月前、求刑禁錮3年6カ月に対して、禁錮2年の実刑判決が言い渡されました。これが当たり前なのではないかと、2年でも足りないのではないかと、被害者遺族の心情を思うと、そのように思うのですが、なぜ、裁判所によって、これほどの判断の開きがあるのか、なぜ、検察官によって当たり外れがあるのか、このようなことはあってはならないと思っています。
     ですので、繰り返し申し上げますが、ベストプラクティス、いい事例を水平展開していただいて、そのような不公平な事態が生じないようにしていただきたい。とりわけ、昨年から施行されています、危険運転致死傷罪の中での、いわゆる準危険運転致死傷罪の適用あるいはアルコール等影響発覚免脱罪の適用についても、非常に適用基準が曖昧だと、現場を見ておりますと、そのように感じざるを得ません。
     被害者は、繰り返し申し上げますが、検察官、警察官を選ぶことができないことからして、十分な説明をもって、なぜ、その罪が適用できないのか、なぜ、その法律が適用できないのかというふうなことをもって、説明していただくことが最大の被害者支援ではないかと思っています。
     辛い言葉になりますが、この中間案の中の71ページ、72ページのところに、特に、72ページを申し上げます。法務省の方も、今日、いらっしゃっているということで大変うれしく思っています。
     4段落目のところです。「また、検察職員に対し、各種研修において、犯罪被害者支援に携わっている学識経験者等による講義を実施するほか、日常業務における上司による個別の指導等を通じ、交通事故被害者等の精神的状態等に対する理解の増進に努めるなど」と、精神的状態の理解に努めていただくことも大事かもしれませんが、最も大事なのは、警察官、検察官の職務の中枢である捜査、起訴に対して、真っ向から対応していただいて、それをきちんと被害者遺族に説明していただく、それが一番の配慮であり、被害者の精神的な被害を軽減する最短の方策ではないかと思っております。
     ほかにも多々申し上げたいことがございましたが、短い時間ですので、あと一言だけ、このような私の訴えというのは、何も特別なことではありません。残念ながら、いろいろな裁判所、いろいろな被害者遺族からも同じようなことが、いろいろな裁判所で聞かれてしまっています。それは、本当に氷山の一角にすぎないと思っています。声を上げることもできずに、ただただ、気がついたら刑事裁判が終わってしまっていた。このようなものだと、検察官からも説明されてしまったと、本当に泣き寝入りをされていらっしゃる被害者遺族がたくさんいらっしゃいます。
     そんな中で、このような被害者からの声が出たときには、それをきちんと受けとめて評価して、その苦情の内容の分析とか、根本の原因は何なのか、それを関係者にフィードバックする仕組みをつくっていただきたいと思っています。
     どなたかもおっしゃっていましたが、このような公聴会、たくさんの方がいらっしゃって聞いていただいているのは結構ですが、1回限りではなくて、何年に一度ということではなくて、継続的に、それをもっとシステマティックに被害者遺族の声が、ちゃんと諸策に反映されるような仕組みをつくっていただけたらと思います。
     どうもありがとうございました。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     公述人の方からの発表は、以上となります。
     それでは、ここで専門委員会議の赤羽座長及び蓮花委員からコメントをいただきたいと思います。
     赤羽座長、よろしくお願いいたします。
  • 赤羽座長 本日は、公述人の皆さんから、貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございます。
     私は、道路交通の制御だとか、管理を専門にしております。例えば、今日の御意見の中でも触れられていました、交通安全の目標をどのくらいにするかということに関して、私たちも専門家として意見を求められました。
     そのときに、私たちがどんなふうに考えるかというと、ほかの人は違うかもしれませんけれども、専門の立場からどんな対策をとったら、どのくらい被害を減らせるかという見方があります。それを組み立てて、これまでの対策に対してプラスアルファーの努力をすると、このぐらいまで減らせるかなという考え方をします。
     それとは別に個人的には、私自身が事故の加害者になったり、あるいは家族が被害を受けたりということも、やはり考えます。専門家としての技術的判断が目標を決めるということではなくて、どんな技術、どんな対策を組み合せて、どんな事故の減らし方をするかというのは、最後は世の中の選択だと思うのです。
     今日はいろんな方に、その面から御意見を伺って、私自身も考えを改めるところがありました。こういうことが世の中の意見として大きくなっていくことが、目標の立て方にもかかわってくるのだろうと考えています。
     私たちが専門家としてどのくらいの時期に、どのくらいの努力をすると、どのくらいの効果があるかというときに考えますのは、例えば、私の専門分野に含まれる生活道路の事故対策でも、技術が決まれば、あるいは方針が決まれば、すぐに世の中に広まるということではありません。現場で対策に直接かかわる人たちが、それなりの技術や知見を持って対策に当たる必要があるわけですね。
     今日は、自動車補修溶接協会の方からいろんな御提案がありました。やはり、いろんな分野で、現場でかかわっている人たちの認識なり技術力が改善されるということが、こういう対策で不可欠だと再認識しました。それには、やはりそれなりの時間がかかってしまうと、私たちは考えてしまうのです。
     それから、1つの例として、完全自動運転までいかなくても、その前に、それを実現するためのいろいろな要素技術を使って、安全運転支援をなるべく早く世に出し、少しでも早く事故を減らしましょうという御提案がありました。私も賛成です。
     その普及速度を上げるためには、世に出た技術がどのくらい事故を減らしているかを正確に評価して、世の中の人にそれを知ってもらうことが不可欠だと思います。
     そのためには、今日の御提案にもありましたとおり、事故のデータを、それにかかわる医療のデータと連携させて専門家が分析するという体制を整えるべきであると、専門委員会でもいろんな方が提案されています。
     ただ、今日の御意見にもありました、個人情報保護との兼ね合いをどうするかという議論もあります。しかし、不特定多数の人にそういう情報を開示するのと、専門家が目的を持って分析するのとでは開示の仕方も違うでしょう。一定のルールを定めて開示していただき、専門家はそのもとで秘密を守りつつ分析をさせていただきたいという提案を、何人かの方が、私も含めてしているところです。
     皆さんからいただいた貴重な御意見を糧に私たちも専門的な議論をしていきたいと思います。
     今日は、どうもありがとうございました。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     蓮花委員から、お願いいたします。
  • 蓮花委員 本日は、どうも貴重な御意見をありがとうございました。
     いろいろ我々も参考にさせていただく面が多かったと思います。
     私も委員会の中で申し上げておったのですけれども、やはり、事故の情報というのをどれだけ住民や国民にオープンにしていくかと、見える化と、わかりやすくは言うかもしれませんけれども、事故情報の公開というのは、やはり、全ての基本にあるのではないかなと考えております。
     数年前と比べますと、例えば、インターネットで事故情報を提示している県もあります。そういうところでありますと、それがベースになって、いろんな議論であるとか、対策の基礎ができ上がってくるだろうと。
     今、外の世界からも道路を見たりすることができるわけですから、別にそこに住んでいなくても専門家が、そこを行ったのと同じような形で議論ができて、もちろん、現地は行くべきですけれども、その基礎的な資料としてリスク情報をそれだけ開示するかというのは非常に重要だろうと思います。それは、単に事故情報を地図に載せるだけではなく、ドライブレコーダーの映像であるとか、車両情報のデータベースを使うとか、医工連携のデータベース等々も含めてなのですけれども。
     それから、人間にかかわる、これは非常に難しいところですけれども、例えば、高齢者の事故が多いとなれば、それは、どういうことなのかということで、単に高齢なのか、それとも病的加齢のようなものが関係しているのか等々の、そういう情報も今後は必要だろうと思います。
     また、いろんな方がおっしゃっていましたように、事故ミクロ分析といいますか、事故調査委員会の必要性も、私も述べましたし、いろんな方が述べておりますけれども、例えば、先進的な国、フィンランドなどでは、もう40年ぐらい前から、死亡事故の全数の事故調査が行われていますし、私も少しおりましたので、何度かその委員会に参加したことがありますけれども、そういうところで貴重な情報が得られて、それが、またオープンにされているわけですね。それが対策の基本になるということで、リスク情報というのは、これから大きく取り組むべきだろうと考えております。
     それから、時間が限られていますので、余り細かくは言いませんけれども、2番目に協働という話が、どなたかおっしゃっていまして、この協働というのは非常に重要なことであろうと思います。
     国民が事故を自分のことと考えると、これは非常に大事なことですけれども、実際、そうでない人も非常に多いわけですね。我々も対策をしていきますと、非常に多くぶつかるのは、総論は賛成だけれども、自分の前の道路は走りたいという声です。例えば、速度は出したい、この道は塞がないでほしいと述べられます。いろんな人が関係していて、多分、自治体の関係者は、そういう安全第一と言いながらも、便利さを求める国民との交渉であるとか、対応であるとか、非常に苦労されていると思います。
     しかし、それは当たり前のことで、我々一人一人が人生を生きておりますので、生活がかかっておりますから、そういう意見も、それは1つの意見なのですけれども、その中で、安全をどういうふうに取り上げていくかという、重視していくかというところについて、いろんな協働の仕組みづくりみたいなものが必要になってくるだろうと思いますし、本日、多くの被害者の会の方が述べられたような、そういう声というのは、非常に仕組みづくりの一端を担えると考えております。
     あと、1点だけですが、何人かの方がおっしゃったように、専門家への支援ですね、それから、専門家の育成、研修とか、これは非常に待ったなしです。先ほど、検察の話がありましたけれども、それ以外に、私は交通心理学を専門にしており、事故分析とか、ずっとかかわっておりますけれども、大学でもそうしたことをやっている専門家自体が非常に少なくて、先細りというのは現実です。ですから、専門家をどう育成していって、その専門家同士がネットワーク化して協力するというようなことを、ぜひ考えたいなと思っております。
     いろいろと私も思うところがありまして、大変貴重な経験となりました。
     どうもありがとうございました。
  • 牧参事官補佐 ありがとうございました。
     本日の公聴会につきましては、後日、議事録を内閣府ホームページに掲載させていただく予定でございます。
     また、第10次交通安全基本計画の中間案につきましては、11月18日まで内閣府ホームページでパブリックコメントとして意見募集をしておりますので、そちらのほうの御活用もいただければと思います。
     なお、本日の公聴会やパブリックコメントなどでいただいた御意見につきましては、専門委員会議にも報告させていただくとともに、第10次交通安全基本計画の作成に活用させていただくこととしております。
     それでは、これをもちまして、第10次交通安全基本計画(中間案)に関する公聴会を終了させていただきます。
     どうもありがとうございました。