中央交通安全対策会議専門委員会議(第1回)議事要旨
日時:令和2年6月26日(金)
13:00~15:00
中央合同庁舎8号館1階 講堂
13:00~15:00
中央合同庁舎8号館1階 講堂
出席者
【委員】
赤羽座長、伊藤委員、川端委員、北島委員※、久保田委員、古関委員※、古笛委員、服部委員、藤森委員※、三国委員※、水野委員※、三好委員※、森本委員、守谷委員、山内委員※、李家委員※、蓮花委員※、渡邉委員※
(※印の委員はオンライン出席)
【内閣府・事務局】
嶋田政策統括官(共生社会政策担当)、田中大臣官房審議官、近藤参事官(交通安全対策担当)
【オブザーバー】
警察庁交通局 早川交通企画課長、消防庁救急企画室 神谷課長補佐、文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課 粟井安全教育推進室長、厚生労働省医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室 新井救急医療対策専門官、厚生労働省政策統括官(総合政策担当)付政策統括官室 阿部室長補佐、経済産業省商務サービスG物流企画室 柴田係長、国土交通省総合政策局総務課 神田交通安全対策室長、国土交通省道路局 岸川道路交通管理課長、国土交通省鉄道局酒井安全管理官、国土交通省鉄道局施設課 林地下施設安全企画調整官、国土交通省自動車局 石田安全政策課長、国土交通省自動車局 野津技術・環境政策課長、国土交通省海事局安全政策課 山倉安全監理室長、国土交通省航空局安全企画課 細川主査、運輸安全委員会事務局総務課 松澤課長補佐、海上保安庁交通部企画課 上山海上交通企画室長
概要
○ 衛藤特命担当大臣挨拶(嶋田政策統括官代読)
- 道路交通事故による死者数は、過去最悪であった昭和45年の5分の1以下となったが、未だ厳しい状況が続いている。昨年は、幼児が犠牲となる事故、高齢運転者による事故が続いたことを踏まえ、総理の指示のもと「緊急対策」を決定し、推進してきたところ。
- 鉄道、海上、航空関係の事故も、近年着実に減少してきているが、一たび発生すれば、多くの人命が失われる危険も否めない。
- 安全で安心して暮らせる社会を実現することは国民全ての願い。交通安全は、国民の日々の暮らしに直結している。昨年末の関係閣僚会議において、総理より、家族や地域、国民の皆さんのニーズをしっかりとらえた未来志向の対策が求められている旨の発言があった。
- 道路交通、鉄道、海上、航空にわたる総合的な計画として、これからの時代のニーズや課題に的確に応える第11次の交通安全基本計画を作成してまいりたい。
○ 委員紹介及び事務局提出資料説明
- 事務局から、出席委員及びオブザーバーの紹介を行った。
- 座長を赤羽委員とすることに決定した。
- 事務局から、内閣府提出資料1~7について説明を行った。
○ 委員からの主な発言
【計画全体】
- これからの5年、かなり社会システムが変容するようなことが起きてくると思う。個々の技術とか、一つ一つの技術を子細に検討するということも大事だが、社会システムの変化というのを5年の中でどれくらい起きるかを考えた上で、社会システムが変化すると移動行動が変容していくので、順を追って考えていければ。
- 5年前に考えられなかった移動の仕方、ものの運搬の仕方が出始めてきており、これから5年で本格化すると考えられる。これまでと違う、予防のような形の交通安全対策を先立って考えていく必要がある。
- 希望を持って夢を持って移動するということは、太古の昔から人間にとってとても大事なことで、未来につながるようなそういう言葉も、ぜひとも表示していただけたらと思う。
- 将来どうなるかということを今回の計画に盛り込むべき。具体的には、世界交通学会というのがあり、そこでコロナに対応した交通のあるべき姿というのをいろいろ提言しているが、アクティブ・トランスポーテーションというのが非常に重要になってくるということで、個別の行動、パーソナルモビリティの中でも自転車の移動、こういうものが重要になってくる。見逃さずに、将来にどう変わるかという中に具体的な例として挙げたら良いと思う。
- 国内の交通事故を我々は議論してきたが、第10次まで50年間かけて、非常に大きな成果を上げてきたのも事実。世界に目をやると年間135万人の方が亡くなられていて、そのうちの9割は途上国。これを我々が蓄積した知見を世界に向けて情報発信をしながら、世界と共通の目標を持ちながら進んでいくこともこれからの大きな方針の一つではないか。そういった意味で、少しグローバルな視点も入れて御議論いただきたい。
- 交通事故の死者数でいうと、最悪な頃に比べれば少なくなったとはいえ、例えばマスコミに出るニュースの大きさ、あるいはそれに対する国民の反応ということから考えると、今、極めて大きい。あるところで子供が犠牲になったということが、非常に大きなニュースになる。つまり、国民は交通安全ということに非常に敏感であるということを我々は強く認識をした上で、今後の5年間についても考える必要があるということを、まず肝に銘じたい。
- 自動車メーカーのCMでは、既に交通事故をゼロにというワードを出しているのを耳にする。具体的な数値目標を立てることも大切だが、大まかなスローガンとして交通事故ゼロ、もしくは交通死ゼロ、被害者ゼロをうたうことは、国民の交通安全意識を高めるに当たり重要ではないか。
【先端技術の活用推進等】
- 高齢化ということに対して、技術でこれをどう乗り切っていくかというところがポイント。
- 自動化の推進には安全性を高めるものと、安全性に懸念が出てくるところとあるが、懸念が出てくるところに別の安全対策を施すということで、全体としては安全性は高まるという解を導いていくのが技術者としての責任。
- 航空分野では航空事故の調査委員会があり、鉄道もある。道路でも導入されているが、例えば子供の事故、高齢者の事故はかなり国民的な関心も高いし、非常に重要な課題。期間限定でもいいので、事故調査の体制「ミクロ分析の体制」を立てていただきたい。もう一つは、ETC2.0などのように事故ではないが様々なリスク行動の分析体制というのが必要ではないか。
- 今まさに、車の情報化技術が大きく進展している状況下。例えば運転者支援とか車車間通信、自動運転などの技術をさらに進めて、交通事故をどう減らしていくか考えていく必要がある。技術をさらに発展させるために、開発環境をメーカーあるいは研究者、技術者にいかに整えていくかというのが、交通事故死傷者数ゼロを目指すために重要。
- 技術開発のためには、事故における映像データというのが人的要因を見るために非常に有用なツール。ただこれはプライバシーの問題があって非常に使用が難しいのだが、こういったものをデータベース化して研究者や開発者が使うことができれば、交通事故防止のための技術開発に役立つと思う。
【新型コロナウイルス感染症の影響等】
- 新型コロナウイルス感染性の影響で、交通行動が大きく変わっている。従来の交通安全対策に加えて、Society5.0、スマートシティというのは一つの方向性ではないか。運転の技術に自信のない高齢者の交通行動を変容させたり、医療機関への通院の仕組みを変えたり、安全な交通行動を起こすための方向にもなるのではないか。
- ポストコロナで、従来なかったようなモビリティが、サービスに乗っかって出てくる。そういった従来なかったものを考えられるような仕組みがこの委員会では検討できると良いと思う。
- 交通事故の法律相談や、自動車保険の事故受付を通じて、移動しなければ事故は減ることを感じている。自粛の期間中、交通事故の相談は目に見えるぐらい減った。移動がなければ事故はその分少なくなると感じる。
- ポストコロナにおいて、自転車を利用する機会が増えたという話もあるが、そのためか、自転車事故の相談は逆に増加傾向にある。移動自体がいけないとか移動をやめるべきだということではないが、やはり自己にとっても他者にとってもリスクの低い移動手段というものを選択するというアプローチ、そういう視点も必要なのではないか。
【道路交通】
[高齢者の安全確保]
- 特に高齢ドライバーなどに対する支援としていろいろ介入手法があるが、やはりサポカーというのは一つのトピックス。非常に重要だと思う。サポカーの研究に、高齢者というのを対象にした行動分析とか、高齢者に優しい仕組みづくりを取り入れていってもらって、教習所等の教育の中にどう組み込むかというのを、この次の5年間の中で集中的に分析していただければいいのでは。
- 第10次計画の時にかなり高齢運転者にも焦点が当たってきた。この5年間で考えると、非常に大きいと思っているのが事業用自動車であり、かなりの業界で運転手の高齢化というのが大きな問題になってきている。第11次計画においてはかなり大きなテーマの一つになるのではないか。
- 免許返納後に自転車に乗る方も増えたが、実際、自転車に高齢になっていきなり乗っても、体幹も弱っていて乗れない。車も利用するし、自動車も乗るけれども自転車も場合によっては乗るなど、いろいろな交通モードを普段から活用するのが良い。
- 高齢者の家族の問題で、認知症を抱える、または予備軍の方たちが、家族が免許を返納してくださいとお願いしてもなかなかそれを受けてくれない、怒ってしまう。特に、実子ではなくて息子の嫁であったり、義理の関係の子供たちがお願いしたら余計に怒ってしまってトラブルになってしまったということがある。家族を支える意味でも高齢者向けのサービスが提供できれば良い。
- 高齢者の免許返納の施策はさらに進めていってほしいところだが、特に地方では返納した後の生活の足の喪失という側面があるかと思う。代替の交通手段や新しい生活様式の提案などの工夫も並行して進めていってほしい。
[子供の安全確保]
- 文部科学省において、中学生がスマホを持って登校することを認めるという方針のことが報道に出ていた。学校では使わないということだが、登下校中は恐らく、ながらスマホをやる可能性がある。自分が怪我をするだけではなくて加害者になってしまうということもある。中学校の交通安全も少し見直していかなければいけない。
- 子供の事故が増加傾向というのはとても残念。子供への交通安全教育は必須であるし、今後も家庭教育、学校教育の中での成長段階に合わせ継続するべき。
[交通安全教育・啓発]
- 地方では交通安全のために親が子供の行動を制限して、自動車で送り迎えすることがだんだん当たり前になり、子供の自立した交通安全行動をする機会を奪っていることに親自身が気付いていない。子供の成長にとって必要な交通に対する社会的意味を親に理解してもらうことが大切ではないか。
- 道路交通法が改正された、いわゆるあおり運転について、あおりをやめるよう啓発しようというだけではなくて、基本的なところにこういうものを組み込んでいくことが必要ではないか。教育をやはり考え直して、根本的に見直すという姿勢が必要ではないか。
- 立哨をしていると、交通戦争というか本当に死と隣り合わせのような状況。マナーの悪いドライバー、例えばスマホを片手に運転しているとか、ごみのポイ捨てとか、そんな人にマナーを守れというのはなかなか難しい。教習所なり学校などでそれなりの教育を受けて今に至ったと思うドライバーに対して、それを止めること、注意することもできない。交通事故のないように、我々も春の交通安全、秋の交通安全、年末の交通安全等でドライバーにリーフレットを配ったりしてそのような啓発活動をしているが、なかなかうまくいかないのが現状。
- 啓発でいろいろやっていても全く無視されたりとか、そういった思いもたくさんしてきた。今はしかもコロナの影響で、様々な啓発活動も中止状態で、本当に手も足も出ないという状況になっているが、夏の交通安全運動からは規模を小さくしながらも啓発活動をやっとスタートできる運びとなってきた。徐々にウィズコロナで付き合っていきながら、できる範囲内の啓発をしていかないと仕方がないのかと思っている。
- 大学生が最近は運転免許を取らなくなってきている。小中学校以来、交通安全についてきちんと教育を受けるのはやはり免許を取得するとき。免許を取らない学生たちは、新しい交通規則についてきちんと学ぶ機会がなく、交通安全の教育が青年期にぷつっと途切れてしまう。高齢者だけではなく青年期の人たちにもきちんとそういう教育が入るような仕組みができたら良い。
- 一般のドライバーへの交通安全教育をさらに深めることはできないか。業界によって、安全意識が高い会社、低い会社の差がある。
[生活道路対策]
- 生活道路について、この5年で、ゾーン30や技術基準等が進んだところ。この次の5か年こそ、日本の生活道路はヨーロッパに比べて全く遜色ないというところに持っていくべき5年。
- ゾーン30は、大変効果があった。目標の3,000か所は達成しているとのことだが、さらなる必要な箇所があれば増やしていってほしい。
- 環境整備、歩道の拡充など、人優先の思想はそのまま継続し、深めていってほしい。
[自転車の安全確保]
- ヨーロッパではアクティブモビリティという考え方が非常に出ていて、動力に頼るだけではなく自分自身の体を使うモビリティを大事にしていくのも必要ではないか。
- 今回の資料を見ると、ヘルメットの使用という観点が抜けているように思う。自転車はヘルメットの着用率を上げれば、かなりの重傷者数が減ると思う。
[救急・救助活動の充実]
- 日本の交通事故に対する救急医療体制がこれでいいのか、よくなってきているのは分かっているが、世界基準でどのレベルなのか。海外と比べて日本の患者搬送システムがどうなのかということを、客観的な評価をしておかなければいけない時代になってきている。
- 交通事故による外傷の損傷の重症度を世界基準で測る方法があり、そうしたデータを少しずつ出していくようにしたらいいのではないか。そうすると、世界の中の日本における交通事故に対する医療体制の評価ができるのではないか。
[被害者支援の推進]
- 国土交通省が報告されている被害者支援の充実と推進に、損害賠償や救済措置だけではなく心理的ケアという項目が入ることを望む。交通事故センターなどで、交通事件事故の被害者の心情の特性を捉えて心理ケアが提供できれば、さらに被害者支援の充実につながると思う。
【鉄道交通】
- 鉄道に関わることとして運転の自動化というのが現在、具体的に検討が始まっている。そこを重視していくという点が大事。
- ディスエイブルド、ハンディキャップの人たちが、鉄道事故に巻き込まれことがあるが、そのときに一番ポイントになるのは、ホームドア、ホーム柵であるが、まだ遅れている事業者もいる。
【航空交通】
- 従来は(1) 航空需要が大幅に伸びるであろうからパイロットが不足する恐れがある、(2) 現在、国産航空機の開発等が行われており、その安全性を証明し続ける体制の重要性、(3) まだ構想段階だが、空飛ぶ車という新しい飛行体の概念が出ているので、その安全確保、という3点が非常に重要な要素になると考えていたところ、新型コロナウイルスの影響で現在、航空関係では、旅客数が大幅な減少になっており、新しい機体や操縦士に関する需要の見通しがちょっと変わってくる。2024年頃にようやく旅客需要が元のレベルまで回復するのではないかと予測されており、国内線の方は徐々に回復していくが、国際線は時間を要するのではないかと、今は言われている。計画の5年の中に入ってしまうので、かなり影響を受けると思う。
- 安全確保というのが一番重要なものだが、それ以外に環境適合性というのも非常に重要なトピックスで、地球温暖化関連とも関係づけられてきた。これらの2つにこれまでは重点が置かれていたが、今後は感染症の関係で、飛行機に乗っても健康を維持できることが重要視されるようになり、すなわち、「安全・安心」というのが航空では、安全だけに限らず重要になってくる。