中央交通安全対策会議専門委員会議(第2回)議事要旨
13:00~15:00
中央合同庁舎8号館講堂
出席者
【委員】
赤羽座長、伊藤委員、川端委員、北島委員※、久保田委員、古関委員、古笛委員、中土委員※、服部委員、三国委員※、水野委員※、三好委員※、守谷委員、山内委員※、李家委員、蓮花委員※、渡邉委員※
(※印の委員はオンライン出席)
【内閣府・事務局】
難波大臣官房審議官(政策調整担当)、寺本参事官(交通安全対策担当)
【オブザーバー】
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 根津企画官、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 古賀参事官、警察庁交通局 佐野交通企画課長、消防庁救急企画室 増田係長、文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課 粟井安全教育推進室長、厚生労働省医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室 富田室長補佐、厚生労働省政策統括官(総合政策担当)付政策統括官室 野中室長補佐、農林水産省生産局技術普及課 藤澤課長補佐、経済産業省商務サービスG物流企画室 柴田係長、国土交通省総合政策局総務課 久保交通安全対策室長、国土交通省道路局 石和田道路交通管理課長、国土交通省道路局環境安全・防災課 濱田道路交通安全対策室長、国土交通省鉄道局 森安全監理官、国土交通省鉄道局施設課 東課長補佐、国土交通省自動車局 石田安全政策課長、国土交通省自動車局 久保田技術・環境政策課長、国土交通省海事局安全政策課 山倉安全監理室長、国土交通省航空局安全部 小熊安全企画課長、運輸安全委員会事務局総務課 松澤課長補佐、海上保安庁交通部企画課 上山海上交通企画室長
概要
○ 難波大臣官房審議官挨拶
- 昨今の道路交通情勢は、8月末現在の交通事故死者数は1,745名で、前年比マイナス180名。特に7月の交通事故死者数は191名で、月別に統計が残る昭和31年以降、月当たりの数字としては最少。これについては、交通安全への取組、安全性能の向上などに加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う外出自粛等の影響も考えられるところ。
- この状況が推移すると、年間の死者数の推計は2,822名という予想が出ている。とはいえ、今後、新たな生活スタイルが確立され、人の移動が増加すれば、交通事故の発生可能性が高まることも考えられ、道路交通を始め各分野の交通事故対策を検討する上で、引き続き情勢を見守っていく必要がある。
- 第2回目の会議ということで、第11次交通安全基本計画の骨子(案)や道路交通の目標に関する資料等を提示。それぞれの分野における知見から忌憚のない御意見を出していただき、計画作成に向けて議論を深めてまいりたい。
○ 提出資料説明
- 警察庁、文部科学省及び国土交通省から、それぞれ資料に基づき、今後の交通安全施策等について説明を行った。
- 事務局から、その他資料について説明を行った。
○ 委員からの主な発言
~各省の資料について~
- 警察庁から生活道路における安全確保として「ゾーン30と生活道路対策エリアを組み合わせたゾーン・エリア対策」について書かれているのは、非常にすばらしいことだと思う。「生活道路対策エリア」という国土交通省の施策をこの資料で説明しているというところが極めてすばらしい。システム化をしていただきたい。
平成8年の「コミュニティ・ゾーン」のときは、交通規制についてもエリア速度規制だけでなく、一方通行、幹線道路の中央線変移、交通規制もいろんな対策を組み入れていただいていたので、総合的なことをやる時期がついに来たのだと思う。
~骨子(案)について~
【計画全体】
- 「ビジョン・ゼロ」の「ゼロ」という言葉が交通事故被害者の当事者、あるいは国民の方からも聞かれるということで、どこかに「ゼロ」を入れてほしい。「交通事故のない社会を目指して」というのであれば、「交通事故ゼロ社会を目指して」というような言葉に変えられないか。
- 基本理念の中に被害者の救済や、支援ということが謳われていなくて、被害者団体のアンケートや国民のアンケートにも「ゼロ」という言葉があったり、「被害者の支援」ということがあるため、その部分を入れていただきたい。
- 2005年には国連で「世界道路交通犠牲者の日」というのが11月の第3日曜日に定められているが、国民に意識してもらうような取組、慰霊をするような機会があるとよい。
- ビジョン・ゼロの考え方としては、交通事故は起きてしまうものから事故は防げるものとして、個人の注意すべきことからシステムとして防止することを実行するには、国・県・市道路管理者と警察、有識者などの連携が必要だと思う。
- 基本理念にビジョン・ゼロの考え方を取り入れても良いのではないか。
- 少しターゲットを絞ってビジョン・ゼロを順番にやるべき。数字は難しいとすれば、特に生活空間を歩いたり、自転車に乗ったりしている子供の事故は根絶を目指して、国中であらゆる力を結集してこの5年間でやるのだという意思を示す。そういうことでこの5年間の施策のターゲットがくっきりと絞られるのではないかと思う。
- 基本的な考え方としては「究極的には、交通事故のない社会を目指すべきだ」という文言があるが、それをどういう表現にするかということ。それと、目標設定について、どういう道筋でゼロを実現していくのか。あるいはマイルストーンをどこにどういうふうに設定するのかと、基本理念とは分けて考えていったほうがよいのではないか。
【道路交通】
[今後の道路交通安全対策を考える視点]
- 先端技術の積極的活用は、データ連携であったり、それを活用してどういったメリットがあるか、そのメリットの中に交通安全というものが含まれていくという形の議論もできたらいいのではないか。
- 将来、安全技術というのを社会システムとどのように協調していくか。日本は一度整備したものが今、保守・保全の段階にあるので、そういった社会インフラの再構築に当たって、一旦そういったところを見直していくことも重要だと思う。
- 市内生活道路と郊外農村集落を貫く道路の時速30キロから20キロの速度規制を提案したい。高齢者の問題はこれから5年間ますます重要になってくると思う。郊外の農村地帯では朝とか畑帰りの高齢者の方が犠牲になるような事故が多く聞かれる。海外のデータを見ても、時速50キロ以上のスピードで車が人にぶつかると、死亡者も重傷者もかなり多くなるため、自動車の適材適所のスピードコントロールは必要だと思う。
- 地域のきめ細やかな交通事故調査分析からシステムとして事故を防止する対策を取ることについて提案したい。
- コロナになって二輪車が改めて見直され、乗っている人が増えてきたようだが、リターンの人もたくさん学ばなければいけないことがある。私の周りでも、去年は講習会をたくさん開いたりしていたが、今年は新型コロナの影響で省略されたりしている。ただ、「交通安全に主体的に携わる民間団体等の活動の推進」は重要だと思っていて、これを具体的にどうやって二輪業界でも広めていくか考えている。地方地方で、どういうところでそれが補助なのか、指導員の育成にプラスアルファの何があるのかなど、いろんなことが考えられるが、二輪車の事故を減らすためにはその辺りがすごく重要なのではないかと思う。ニュースでも55歳以上のライダーの事故率が増えたと書かれるのは本当であるように、高齢者の二輪車事故がとても増えているので危惧している。四輪と二輪と併せて啓蒙していければと思う。
- 高齢者に対し、正しい歩行などについて説明するのは簡単だが、実際にやってもらうのは大変なことである。
[道路交通環境の整備]
- ワイヤーロープというのが自動車専用道路の対策であるが、正面衝突事故を防ぐためにも、下り坂やカーブ、一般道路や幹線道路、あるいはもう少し狭い道路でも使えるように、事故が起こりやすいところでは事前に設置するよう考えていただきたい。工学的な、あるいは自動車技術的な対策も取っていただきたい。
[交通安全思想の普及徹底]
- 幼児、小学生、中学生ぐらいまでは交通安全教育というのが段階的にあるが、高校に入ると、特に東京近郊は、自転車を使って通学する機会が増えるにもかかわらず、指導があまりないような印象を持っている。加害者になってしまう可能性、被害者になってしまう可能性を含め、被害者側の思い、あるいは賠償、保険などを含めて総合的に行う講習があるとよいと思う。
- 若者に対して、運転すると事故に遭って大変な目に遭うよというところから入るよりは、交通と交通安全について積極的に考えるようなプログラムを考えたほうが、強制するよりもよい。
- 国際会議の場というのは、SDGsというのも交通安全と関連しながら扱っており、交通安全というテーマだけではなくて、そこにSDGsをきちんとはめ込んで勉強するような機会もあるので、その世代に必要とされる知識に合わせた交通安全指導が必要。国際性だったり、SDGsを盛り込んだ交通安全の勉強のプログラムというのがない限り、若者が積極的に興味を持つというのはなかなか難しい。
- 安全教育は、ICTの普及やシミュレーターの利用などが行われているが、バーチャルリアリティの利用について、どのように普及していくのか。日本は体験型のものというと、防災はすごく進んでいるが、交通安全については、子供が学べるような体験的な施設はなかなかない。交通安全だけでつくるのは難しい部分があるかもしれないが、優れた技術を使った指導、学べるような施設をつくるなど、普及の工夫を今後考えていただきたい。
- 交通安全教育については、子供たちだけではなく、保護者に対しても同じように、家庭の役割が大切なのだということを何らかの形で示すようなものがあればよいのではないか。
- 高齢者にしろ子供にしろ、被害者になるだけではなく、加害者になってしまうこともあるので、交通事故教育にそういった部分も入れていただきたい。
- 交通ボランティアの高齢化が進んでいる。活動の中心が平日の昼間ということで、まず働いている人が啓発に参加できないという実情がある。若者をどのようにして取り込んでいくのか。休みだったら少しの時間でも参加するという気持ちを持ってもらうためには、どのようにしたらよいか。
- 道路交通に関して、安全の意識みたいなものがかなり低下している印象がある。交通安全の教育の計画を立てているが、どこに重点を置いたらいいかもう少し考えていただきたいと思う。
- かなり年齢の高いところまで道路交通の安全の意識とか教育というのを徹底させないと、あおり運転などの危険性が伝わってこないのではないかと思う。
[安全運転の確保]
- 昨今問題になっているあおり運転とか飲酒運転についての処分者講習に力を入れていただきたいのですが、アンガーコントロールであるとか、依存症とかの治療的なアプローチも必要になってくるので、そこは1回の講習でやるのは難しいという印象を受けました。
[車両の安全性の確保]
- 高齢運転者対策に関していろんな形で対策が練られていている。例えばサポートカーの開発、警察庁はサポートカー関係の限定免許制度の導入もあるので、そういう政策は非常に大切だと思う。
- 高齢ドライバーの死亡事故の場合、正面衝突や単独事故で自身が亡くなるケースが非常に多い。一つは車両の改善でサポートカーでもある程度そういう効果はある思うが、例えば、身体の脆弱な高齢者でも受け止められるシートベルトなどを導入できるようにしたらよいのではないか。
- 「新しいタイプのモビリティ」に何が入るのかという定義がなされていない。例えば超小型車などがここに入ると、この安全性をいかに確保するかというのも重要な問題だと思う。
- 運転支援システム、ADASとかそういったものを充実させて、その後、自動運転で死亡者数を減らしていくのが通常の流れとだと思う。ASVという形で書かれているのかもしれないが、その流れを分かるように書いていただきたい。
[救助・救急活動の充実]
- 救助時、救急活動時、医療者による精神的・心理的なケアがあると、当事者や支援者はありがたいと思う。
[被害者支援の充実と推進]
- 現在の病院の数では少ないのではないかと思う。歴史的には、非常に少なかった状況から増やしていただいているというプロセスなので、それは非常にうれしいことですが、それでもまだ足りないので、さらに充実させていただきたい。
- 例えば、家計を支える働き盛りの方が交通事故に遭われて、重傷であるという話になると、行政のサービスの説明を聞いたり書類を準備するために、日常の家族を支える生活を維持しながらいろんな部署に出かけ、掛け合って対応しなくてはいけないということに関して非常に労力のいる作業になる。こうした作業を患者の側に立って親身に考え積極的に支援できる部門があったらいいのではないかなと思う。
- 療護施設の病院というのは、最終的には自宅で療養するための施設なので、病院退院後のフォローもしっかり継続していただきたい。つまり、在宅でもリハビリテーションが継続できるようにもっと力を入れていただきたい。
[研究開発及び調査研究の充実]
- 研究開発の部分で、シミュレーションを認証試験とかアセスメントなどに入れて、多様な衝突とか事故の安全性を見ていく、あるいは認証試験のコスト削減をするといったことも考えてよいのではないか。
【鉄道交通】
- 旅客の行動というのも安全を考えるときには非常に重要。スマホを見ながら歩くことに対して、いろいろキャンペーンを行い努力はしているが、この問題はますます広がってくる。オンライン会議に出ながら移動するという新たな日常が出てきているので、「正しい旅客行動」を促すための広報などをキーワードとして加えていただきたい。
- 国際化とか外国の方に対する対策が消えてしまっている気がする。現在断面では日本人しか動いていないような社会になっているが、3年、4年、5年、さらに中長期のことを考えれば、国際化とか外国人の方にどう対するかということは非常に重要な問題である。外国の方にも分かりやすい安全な行動の情報提供や発信というキーワードは入れていただきたい。
- 「鉄道の安全性向上に関する研究開発」に関して、「運転の自動化を実現する中での安全性の確保」ということを、研究開発項目の中でキーワードとして加えていただきたい。
【海上交通】
- 船舶の事故の隻数で死者数・行方不明者数を減少させるということを目的として、救助率を95%以上維持するといったことが明記されているのが、これも一つの手段で、どういった方々の命を守ることを想定しているかということを整理した方がよい。
- 海の交通は、フェリーや渡し船などに乗る乗客、船員、あるいはプレジャーボートで遊ばれる方、漁業のための漁船の方など非常に多岐にわたっており、そういった方々を踏まえた上で、最終的に何を失いたくないのか、人命なのか、けがをすることを防ぎたいのか、あるいは陸上の施設など、というところが整理できるとよいのではないかと思う。
目標を人命にするといったような設定ができた場合には、次にその目標を達成するために、例えば、事前の教育、交通環境の整備、あるいは万一事故が発生してしまったときの救命、復旧作業、周辺の環境を保護するための手段などの総合的な対策が整理できるのではないかと思う。 - 「新しいタイプのモビリティ」、「自動運航船への関心の高まり」という話があるが、どちらも最終的な目標として交通安全ということであれば、ヒューマンエラーのどのような問題がどういった事故につながり得るかということに対して、自動運航についても同じように考えられるかと思う。これは一気に大型の船が自動になっていくということを想定していくというよりは、色々な船で船員さんのひとつひとつの作業のサポートという観点から、どんな機能がついたら安全になっていくのかという議論として進められるのではないかと思う。
自動運航の安全に関しては、フェリーや渡し船といった船舶では、一般の方が交通手段として使われることがあるので、やはり安全面が重要だと思う。自動化によって新たな危険が発生しないかなど、考えていけたらよいと思う。
【航空交通】
- パイロットの飲酒問題についての対策が、今後5年間続くということで、5年の間に徐々に忘れられるようなことにならないよう、しっかりとウオッチしていく必要がある。
- 小型航空機の事故が大型機に比べるとかなり多くなっており、小型航空機の事故を減らすということをかなり注意して取り組んでいかなければいけないと思っている。どのように安全を確保していくのか、引き続き積極的に考えて行くべき。
- 「無人航空機等の安全対策」ということで、ドローンや「空飛ぶクルマ」など、こういった新しい航空機が今後有人地帯で飛ぶようになると、安全確保ということは非常に重要な問題になる。また、これまで航空機を飛ばしたことのない方、新たにこの分野に参入してくる方が無人航空機を飛ばすようになるということで、そういった方への安全文化の醸成、教育といったところも積極的に行っていくべき。