中央交通安全対策会議専門委員会議(第3回)議事要旨

日時:令和2年11月5日(木)
14:00~16:00
中央合同庁舎8号館講堂

出席者

【委員】

赤羽座長、伊藤委員、川端委員、北島委員、久保田委員、古関委員、古笛委員、中土委員、服部委員、藤森委員、三国委員、水野委員、三好委員、森本委員、守谷委員、李家委員、蓮花委員、渡邉委員
(※印の委員はオンライン出席)

【内閣府・事務局】

難波大臣官房審議官(政策調整担当)、寺本参事官(交通安全対策担当)

【オブザーバー】

内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 根津企画官、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 古賀参事官、警察庁交通局 佐野交通企画課長、消防庁救急企画室 若味課長補佐、文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課 粟井安全教育推進室長、厚生労働省医政局地域医療計画課 新井専門官、厚生労働省政策統括官(総合政策担当)付政策統括官室 野中室長補佐、農林水産省生産局技術普及課 藤澤課長補佐、国土交通省総合政策局総務課 久保交通安全対策室長、国土交通省道路局 石和田道路交通管理課長、国土交通省道路局環境安全・防災課 濱田道路交通安全対策室長、国土交通省鉄道局 森安全監理官、国土交通省鉄道局施設課 林企画調整官、国土交通省自動車局安全政策課 春名安全監理室長、国土交通省自動車局 久保田技術・環境政策課長、国土交通省海事局安全政策課 山倉安全監理室長、国土交通省航空局安全部 小熊安全企画課長、運輸安全委員会事務局総務課 松澤課長補佐、海上保安庁交通部企画課 上山海上交通企画室長

概要

○ 難波大臣官房審議官挨拶

  • 本年6月26日の第1回の専門委員会議以降、新型コロナ感染症の影響もあって2回という限られた回数ではあったが、委員の皆様に検討を重ねていただいた。
  • 本日は、これまでの本会議での検討の結果を踏まえ、第11次交通安全基本計画の中間案を用意したところ。委員の皆様に、それぞれの分野における知見から忌憚のない御意見を出していただきたい。
  • 皆様からの御意見を踏まえ、できる限り速やかに計画案をまとめた上で、今月中にはパブリックコメントを実施し、また来月上旬には公聴会を開催してまいりたい。

○ 提出資料説明

  • 事務局から、内閣府提出資料1~3について説明を行った。

○ 委員からの主な発言

~中間案について~

【計画全体】

[計画の基本理念]

  • 「知見の共有」について、世界全体の交通事故者数として100万人以上と記載されているが、2018年のWHOの報告書によると、死者数は既に年間135万人と報告されているので、数値記載を修正した方が良いのではないか。
  • その文章の後半に「我が国の知見を世界と共有し、活かしていく視点も重要である。」と記載されているが、「国際的な連携や協力関係の構築を推進していく」という文章の追記を検討していただきたい。

[陸上交通の安全]

  • 陸上交通に関して、技術が発展すると人間の受容性、いわゆる社会受容性が大変重要になってくるので、「社会受容性」という言葉を入れた方が良いのではないか。
    歩行者側も交通事故を防ぐような教育をなされていくというのが、今後非常に重要なので、「社会受容性の熟成」、「社会の浸透」という言葉を入れていただきたい。

【道路交通】

[今後の道路交通安全対策を考える視点]

  • 最高速度20キロの交通規制について、ヨーロッパでは近年、ゾーン20規制が多くみられる。都市部ではゾーン30というのがよく見られて、定着していると思うが、郊外部の農村集落内の通過交通の多い道路が生活道路と同じような規制速度を導入することはできないか。そういうところは高齢者も多く、横断歩道もないことから、運転者もスピードを出して通過するので、注意喚起の意味からも必要ではないか。高齢化の進展への適切な対処としても必要なことではないか。
  • ゾーン30で制限速度30キロというのは、子供たちの通学時間帯だと30キロでも速い。通学時間帯はゾーン20という設定はできないのか。
  • 住民の合意形成について、「地域の専門家を交えた取組を進めるなど、住民の合意形成も重要であり」という書き方は日本語として分かりにくいのではないか。また、住民の合意形成も重要というのはもちろんだが、合意形成というのはむしろ結果で、合意形成を促すには何が必要かということを記述する必要があるのではないか。
    つまり、対策を実施していく上では、対策着手段階からの一貫した住民の関わり、あるいは関与、インボルブメントが必要だということを強調していただきたい。
    最後に在り方を検討すると書いてあるが、在り方はある意味明らかなので、むしろ進め方の検討がこれからは必要ではないか。
  • 「地域が一体となった交通安全対策の推進」について、地域の中で交通安全というものがうまく循環するようなネットワークを行政主導でやるのか、民間のJAFや安全協会、いろいろな組織などを関わらせるのかという問題はあるが、きちんとしたネットワークのそのまた中枢というものを、ぜひ都道府県別でも構わないので少しずつ作っていっていただきたい。
    継続的なネットワークを組織化するということを、入れていただきたい。

[道路交通環境の整備]

  • 「自転車利用環境の総合的整備」の「ア 安全で快適な自転車利用環境の整備」に、「また、自転車通行の安全性を向上させるため、自転車専用通行帯の設置区間や自転車と自動車を混在させる区間では、周辺の交通実態を踏まえ、必要に応じて、駐車禁止又は駐停車禁止の規制を実施する。あわせて、自転車専用通行帯をふさぐなど悪質性、危険性、迷惑性の高い違法駐停車車両については、取締りを積極的に実施する。」とあるが、自転車専用通行帯では規制をかけていないと取締りができないのか。

[交通安全思想の普及徹底]

  • 子供や高齢者、病気で外出困難な方、主婦などは情報から離れてしまうことがあるので、社会から分断されがちな方に対してのテクノロジーの進展の情報支援というのは欠かせないと思う。
  • 交通安全思想や交通安全教育について、自己の安全や他の人々の安全を守ることが大切だということは記載しているが、そのことはまさに自分や他人の命、身体など大切な法益を守ることそのものであるということ、そういった命を守るということが大切だということ、一人一人に責任があるということをどこかで記述していただきたい。
  • 子供たちへの交通安全教育について、発達段階に応じて教材などを取り入れてもらっているが、知的障害とか発達障害のお子さんもいたりするということを加えると、バリエーションのある教材の開発というところに、もう一歩踏み込んでいただきたい。
  • 「スケアードストレート」という交通安全教室について、ショーになってしまっているので、一層丁寧に扱っていくと同時に効果検証が必要である。10年以上やっていて、果たしてそれが必要なのかということも検討していただきたい。
  • 来年度から全面実施になる中学校の学習指導要領の保健体育の中に初めて自転車事故を起こすことによる加害責任についても触れることになった。中学校のところ、「他の人々の安全にも配慮できるようにすることを目標とする。」とあるが、自転車に乗って加害者になることもあるのだということをもっと明示した方が良いのではないか。
  • 子供をトラックに乗せて、自転車を周りに置いて、子供から見える、見えないなどのチェックを子供自らにさせるというような体験が必要。例えばVRやゲームのようなもので、子供たちへの喚起というのをできるのではないか。
  • 交通安全教育の推進について、自転車乗車時のヘルメットの着用に関して、48ページに全年齢層について書かれているが、12歳以下の幼児、小学生に関してはもう少し強調しても良いのではないか。
  • 自転車について、条例で責任保険の加入なども規定されているとおり、賠償責任保険である程度カバーできるということもあるので、そういったことを記述するか、あるいはそのような点を教育の中に配慮していただきたい。
  • ハイブリッド車が普及し、電気自動車も少しずつ普及を始めた中で、やはり音が気づきにくいので、ハイブリッド車、電気自動車の普及に伴う指導というのが必要ではないか。
  • この先自動運転など出てくるが、車の機能がどんどん伸びていくと同時に、それに合った交通安全指導が必要になってくるのではないか。
  • 幅広くボランティア経験をしていただくための国の施策として、学生たちはボランティアをすれば履修にポイントがつくとか、就活にプラスになるとか、そういったメリットを与えるなど、ボランティアの底辺を広げるための何らかの対策が必要。
  • 衝突被害軽減ブレーキについて、自動運転車のユーザーへの情報教育に加えて、周りの歩行者や自転車に乗る人についても、飛び出しとかは対応ができないので、歩行者や自転車乗員が交通法規を守るということがより一層重要になるということをどこかに入れると良い。
  • 交通の安全に関する民間団体等の主体的活動の推進について、「また、交通ボランティア等の高齢化が進展する中、交通安全の取組を、着実に次世代につなげていくよう幅広い年代の参画に努める。」と書いてあるが、ただ「参画に努める」というのではなく、参画に努めるような事例を出した方が良いのではないか。

[安全運転の確保]

  • 高齢運転者対策(ウ)の改正道路交通法で運転技能検査制度が導入されるのは良いことだと思うが、高齢運転者が起こしやすい事故はどのような運転行動が関連しているかということについて、かなり基礎的な研究も踏まえて、何を測ればこの試験として、検査として適切なのかという議論を早めに始めていただきたい。
  • 高齢運転者対策(ウ)の安全運転サポート車に限定するなど限定条件付免許制度が導入されることも良いことだと思うが、例えば教習所で色々聞いていると、高齢者に限らず、一般のドライバーも含めて、安全運転サポート車とは何たるものかということをほとんど理解していない。教習所などでサポートカーの体験をするような制度を導入していただきたい。
  • 高齢運転者対策(オ)の「高齢者支援施策の推進」の中に「自動車等の運転に不安を有する高齢者等が運転免許証を返納しやすい環境」とあるが、本来は不安というよりむしろ運転能力が大きく低下している高齢者に免許返納を勧めるというのが本筋で、元気な方はどんどん運転していただいた方が良いのではないかと思う。「不安を有する」という漠然とした言い方よりも、運転能力が大きく低下したというような表現を考えていただきたいと思う。
  • トラックやバスの対策について、高度ドライバー支援の導入は事業者が負担するので、値段が高いのでつけないという事情がある。これは、法的な推進策がない限り、なかなか浸透しないのではないか。税法の支援だけでは難しいと思うが、そういった事業所に対して、安全推進をしているという認証をするとか、そういった施策があった方が推進できると思う。

[車両の安全性の確保]

  • 車両の安全性に関する基準等の改善の推進について、事業用自動車、トラック、バスなどが見えてこない。トラックやバスの衝突被害軽減ブレーキがもっと性能向上すれば、高速道路などでの悲惨な事故が防げると思うので、こういったところの衝突被害軽減ブレーキの性能向上をお願いしたい。

[被害者支援の充実と推進]

  • 犯罪被害者支援について、交通事故に遭われた方、親族を亡くされた方たちなどの支援の相談を警察の方や心理の方が受けているのだが、その方たちもメンタルに悩んだり、苦労されていることを考えると、そういう方たちをフォローアップするスーパービジョン制度のようなものをきちんと構築して、支援者の支援という視点がプラスアルファされると、より充実した相談活動ができるのではないか。
  • 被害者支援の充実と推進に「大きな不幸に見舞われており」という表現があるが、「不幸」とか「見舞われる」という表現は適切ではないと感じる。交通事故事件被害者というのは、自然災害に遭ったわけではないので、「見舞われる」という表現は如何なものなのか。
  • 自転車保険について、交通事故に遭ったときの保険が各保険業者で売り出されているが、ネットでの販売で、高齢者にはアクセスしにくかったりするため、簡単な形で保険に入れるような施策を随時強化していただきたい。
  • 「交通事故被害者支援の充実強化」について、自宅で療養生活を送るような自動車事故の後遺障害者の方たちで、介護が難しくなる場合に環境整備を推進するということなのだが、こういう方たちにもリハビリテーションが必要なので、リハビリテーションの環境整備なども入れていただきたい。
    また、在宅の方たちにもリハビリテーションの環境整備をお願いしたい。
  • 支援の充実について、「心情に配慮した対応」だけではちょっと不足だと感じる。どこかで心理的ケアを受けられるような体制は取れないのかなと思う。
  • 行政処分について、問合せがあれば迅速にという表現もあるが、求めに応じるだけでなく、まずは支援できるメニューを警察でも検察でも確実に提示を提唱していただくことが大切。
  • 交通事故事件は、不起訴率が大変高いので、不起訴の場合でも今は該当する検察庁の検察官、副検事の判断で丁寧な対応も一部取られているとは思うが、明記してあった方が全国的、一律的に対応が定まるのではないかと思う。
  • 警察における最大の被害者支援は適正な捜査、真摯な捜査であると思っているので、被害者支援として明示するのは困難かもしれないが、該当の省庁の方には知っていただきたい。

[研究開発及び調査研究の充実]

  • 研究開発及び調査研究の充実について、高齢者の交通事故防止は必須だと思うが、子供も視野が狭いという特性があるので、そういった研究に対しても対策を取ってほしい。
  • 総合的な調査研究の充実について、救命救急医療の交通事故データベースの構築といったところに関して、全国の救命救急センターを中心としたデータベースが存在しているので、それを利用してデータの実態をもう少し明らかにしたいと思っているので、支援していただきたい。
  • 「その他の研究の推進」(ウ)と(エ)、被害者遺族の活動や思いについて調査研究をして、結果を広く広めてほしい。交通被害に特化したような包括的なアンケートを、可能であればこの5年の間に行っていただきたい。

【鉄道交通】

  • 「訪日外国人にも対応するため、事故発生時における多言語案内体制の強化を指導する。」とあるが、訪日外国人という書き方だと何となく観光客というイメージになってしまう。留学生や、日本で働いている方を含めて、旅客としてかなり重要な部分があると思う。
  • 自動車の所の記述で、自動車の情報提供に関して「定住外国人」という書き方をされているが、自動車と道路交通が定住外国人で、鉄道は訪日外国人というのは、バランスが悪い気がする。「訪日及び在日ないし在住外国人」という書き方をしていただいた方が良いのではないか。

【海上交通】

  • 意見一覧表52、53「新しいタイプのモビリティ」等については今後検討されるということが記載され、具体的にヒューマンエラーの防止やサイバーセキュリティー等が記載されているが、海上交通の中で今後、無人船や動化船舶が入ってきたときに、従来船舶と無人船との間でどういった問題が発生していくとか、今後何をしていかなければいけないかなど、議論を全体的にしていくことが必要なのではないか。
  • 「交通安全基本計画における目標」3番について、「海難における死者・行方不明者を減少させるためには救助率95%以上とする」という目標が記載されているが、海難における死者・行方不明者を減少させることを目標にするのが良いのではないか。
    救助率95%というのは1つの手段で、この手段によって達成するべき目標は死者・行方不明者を減らすということではないか。
  • 「ボートパーク、フィッシャリーナ等の整備」について、直接的に安全という意味でどのように寄与していくのかが分かりづらい。

【航空交通】

  • 操縦士のアルコール摂取に関する問題について、内容的には全く問題ないが、唐突にこれが出ている気がする。「航空会社における一連の飲酒に関わる不適切事案に伴う航空従事者の飲酒対策について」、「平成30年から令和元年にかけて操縦士の飲酒に関わる不適切事案が相次いで発生したことを受けて」などの追記を検討いただきたい。