中央交通安全対策会議専門委員会議(第2回)議事要旨
10:00~12:00
中央合同庁舎8号館 講堂
出席者
【委員】
赤羽座長、伊藤委員、岩貞委員、小川委員※、川端委員※、古関委員※、古笛委員、小竹委員、竹脇委員、田村(節)委員、田村(道)委員、中井委員、中土委員、畑中委員、森本委員、守谷委員(※印の委員はオンライン出席)
【内閣府・事務局】
松林大臣官房審議官(共生・共助担当)、児玉参事官(交通安全対策担当)
【オブザーバー】
警察庁交通局交通企画課 今井課長、こども家庭庁成育局安全対策課 山内課長補佐、消防庁救急企画室 竹田課長補佐、出入国在留管理庁政策課 高月補佐官、文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課安全教育推進室 合田室長補佐、厚生労働省政策統括官(総合政策担当)付政策統括室 大川原室長補佐、農林水産省農産局農産政策部技術普及課 土岐課長補佐、経済産業省経済産業政策局 小林課長補佐、国土交通省総合政策局総務課交通安全対策室 田中室長、国土交通省道路局道路交通管理課 大井課長、国土交通省道路局環境安全・防災課道路交通安全対策室 神山室長、国土交通省道路局参事官(自転車活用推進)付 岩渕係長、国土交通省物流・自動車局安全政策課 谷合課長、国土交通省物流・自動車局技術・環境政策課 今村室長、国土交通省鉄道局安全監理官 竹島安全監理官、国土交通省鉄道局施設課 岡本課長補佐、国土交通省海事局安全政策課 山本安全監理室長、国土交通省航空局 八田専門官、観光庁参事官(外客受入担当) 濵本参事官、運輸安全委員会事務局 辻企画官、海上保安庁交通部企画課 花野海上交通企画室長
概要
○ 松林大臣官房審議官挨拶
- 交通事故死者数は、5月15日時点で900人であり、前年比プラス38人、プラス4.4%と、増加傾向で推移している。
- 本年の3月24日には、静岡県で自転車に乗った小学生4人が軽自動車に突っ込まれ死傷し、4月26日には東北自動車道で逆走多重事故により複数名が死傷する痛ましい事故が発生している。
- こうした悲惨な事故を無くしていくためには、悪質・危険な運転への対策はもちろん、交通事故が起きにくい環境づくりの必要性を改めて感じている。
- 前回に引き続き、第12次交通安全基本計画作成のため、討議をお願いしたい。
○ 専門委員の出席状況および事務局提出資料説明
- 事務局から、専門委員の出席状況についてお知らせした。
- 事務局から、内閣府資料1~6について説明を行った。
- 警察庁から、資料7について説明を行った。
○ 委員からの主な発言
【道路交通】
[総論]
- 交通事故が下げ止まる前に、状況が良い方向に変わったもの、何も変わっていないもの、状況が悪い方向に移動したものという3つに分けて、今後のことを考えていく必要がある。
- 今は下げ止まり状態になっており、何かを一つやれば大きく数値が下がるというやり方ではなく、細かく丁寧に行う必要がある。
[長期予測]
- 長期予測の報告があったが、このケースのうちどれが実際に起こるのかを見極めるのはなかなか難しいと思う。
- コロナ前は、第11次計の目標達成には年率7%程度の死者数減が必要とされ、実現可能と判断されていたが、近年ではプラスマイナスゼロ、直近の対前年同期比では4%以上増加している。これがコロナ禍の揺り戻しの範囲なのか、構造的な変化であるのかなどを見極める必要があり、そのためにも、第12次計ではデータを分析、モニターする活動を強化し、必要に応じて新たな挑戦ができるような体制にしていただきたい。
[外国人の事故と安全確保]
- 外国人の交通安全対策については、統計データを分析し、どういうことがどういう規模で起こっているのか把握することが基本になる。
- 関係する行政機関や業界等の協力を得るためにも、分析したデータを共有し、状況認識を共有することが重要である。
- 全体の交通事故件数を母数とするのではなく、外国人運転者数を母数にした場合の、外国人運転者による事故件数の割合が気になる。
- 観光客として訪れている訪日外国人が運転する場合と、長期在留者が仕事で運転する場合とで、教育について違う対応が必要なのではないか。外免切替等の厳格化をもう少し進めていく方が、交通事故に関する全体の数値を減少させていくにはいいと思う。
- 比較的交通量の多いと思われるところで、外国人がエンターテインメント目的で公道カートに乗り、隊列を組んで道路を走行しており、WEB上でも安全に関する危惧が示されているので、これについても議論をしていただくとありがたい。
- どんな言語を話す外国人でも日本で運転できるよう、言語のハードルをなくすことは重要だと考えられるので、例えば、ドライバーアプリのようなものを導入するといった来日ドライバー向けアプリみたいなものをデジタルデバイスで使用することができないか。
- 国によっては事故を起こしても警察に届ける必要がないところもあるが、日本では救護義務があること、事故を起こしたら必ず警察に連絡をしなければいけないことをしっかりと伝える対策をしていただきたい。
- 交通事故の件数の中で、レンタカーによる事故件数が示されているが、レンタカーによるものは数パーセント程度でしかなく、大半は何なのか疑問に感じる。
- レンタカー会社では、保険会社からの保険金の支払いが重要であり、事故の再発防止や分析はそこまで行われておらず、どこの国の人にレンタカーを貸して、その人がどのような事故を起こしたのかまでは、データの紐づけがされていない。
[こどもへの安全教育]
- なぜ、そのルールが必要なのか分かるように伝えていく必要がある。
- 小学校での交通安全教室について、量として不十分であると思うのでドリル等を活用し、繰り返し伝えていくことが必要である。
[高齢者の安全確保]
- 現在の車は、40年前に比べて安全性能が向上している一方で、高齢運転者によるアクセルとブレーキの踏み間違い事故が起こっている。
- 地方部では免許返納後の代替交通がかなり厳しい状況になっており、免許返納という決意は難しいのではないか。
- 自動車の新しい技術を知っていただくために、日々の身近なイベントを通して、高齢ドライバーの再教育の機会を設けていくことが必要ではないか。
- 運転支援システムを導入すればいいというデータがあったが、実際に自分が使っても大丈夫なのか、いざというときに何が起きるのかといった点も含めて十分な理解と納得が得られなければ、受け入れることは難しいのではないか。
- 血液をサラサラにする薬等を服用していると、比較的軽度な外傷でも重症化するため、高齢者こそヘルメットを着用する必要がある。
- 75歳以上になったら免許を取り上げるというのは難しいと思うが、その年齢になったら、少し厳しい認知機能検査や技能テスト等を行うのはいいのではないか。
- 運転支援機能に関する認識について、良い技術があっても知らなければ適切には使えないため、より一層の周知徹底が必要なのではないか。実際に見て、触って乗ってみる機会が増えるといいと思う。
[自転車等の事故と安全確保]
- 高校生、大人、高齢者、外国人の方を含め、歩道を徐行せずにスピードを出して走行する光景をよく目にする。
- 私たち大人がルールを守らなければ、こどもたちもルールを守らない。
- 自転車のルールは複雑だが、命を守るためにはルールの周知と定着を強化する必要がある。
- こどもがヘルメットを着用するよう大人が率先してヘルメットを着用し、手本を見せる必要がある。
- 高校生がヘルメットを購入しやすくするため、ヘルメットやヘルメットロックの購入費用の補助を検討してほしい。
- 自転車の法的位置づけについて、状況ごとのルールを明確化し、全ての世代に周知することが必要である。
- 自転車は加害者にもなり得る乗り物であることから、人と自転車が優先ではなく、優先順位を人、自転車、車に分けることで、より歩行者を守ることができるのではないか。
- 逆走の自転車がいると、車の自動運転の導入も非常に厳しいのではないかと感じる。
- 全ての人が分かりやすいルール、また守りやすいルールにしていく必要性が非常に高いのではないか。
- 新たなモビリティの増加により、法規制と実態が乖離しているのではないかと感じている。
[先端技術の活用]
- 資料3では、75歳以上の高齢者の先端技術への関心が低いことが示されているが、別のデータでは75歳以上は免許返納率が高いことも分かっており、この2つには何らかの関係があるのではないか。また、関東や近畿の公共交通が発達している地域では、自動運転の利用意向が低い傾向にあり、地域の特徴が影響していると考えられる。セーフシステムアプローチという考え方で、少し包括的な面でこのデータ分析の結果を使っていただきたい。
- 高齢者自身が自らの運転能力を客観的に理解し、安全な生活維持のためには、どのような支援技術が必要であるかを想像できることが必要であり、そのためにはどのような時間帯に、どのような人が、どのような場所で、どのような車両を運転し、どのような事故が発生しているかについてデータ収集し、その情報を共有することが大事である。
[交通安全教育等]
- 障害のある方向けの運転教育マニュアルが作成されているが、それは障害のある方だけでなく誰にとっても分かりやすい教育になると思うので、交通安全の教育を専門にしている業界等の力を借りるのもいいのではないか。
- ゴールド免許制度以外にも、良いドライバーを評価し、良い見本を増やす方法があるといいのではないか。
- 境界知能にあたる方も含めて全ての人に対して、有効な交通安全に関する資料や動画を作成いただければ、交通事故を減らすことに繋がるのではないか。
- 大人でも分かりにくい標識があるため、ピクトグラムを路面に書くなどして、見て分かるような工夫をしていただきたい。
[救急・救助活動の充実]
- 病院に対し、事故現場をできるだけ早く知らせる情報送信システムや事故現場から病院までの信号を自動的に青にするシステムを整備していただき、位置情報確認システムを含めた情報共有を救命センターにしていただきたい。
- 車の運転中に救急車のサイレンが聞こえにくくなっていることが心配である。
- 視野障害やSASのほか、若年層でも脳・心疾患で突然死をする事業用自動車ドライバーがいる。トイレを避けたり渋滞を恐れて水分を摂らないで、同じ姿勢で運転し続けることでこうしたことが起こるので、いかにして防いでいくかという視点も持ってほしい。
[データ改ざん]
- 日本は世界でも最も厳しい安全基準を設けていると思うが、それを満たすために自動車メーカーにおけるデータの改ざんが発覚している。安全基準を厳しくするのは良いが、自動車メーカーには、それに対応するような技術が伴っていないのではないか。
- 基準値を満たすために不正で改ざんされていたら元も子もないため、改ざんが行われていないかもう一度監査していただきたい。
【鉄道交通】
- 地方の財政的に苦しい場所では、第4種踏切をなかなか減らせない問題があり、これについては、踏切自体の削減、低コストで踏切のグレードを向上させる技術の開発といった議論があげられる。また、勝手踏切への対策が必要であり、政府レベルでの財政的支援を行うことが、道路と鉄道の安全なアクセス改善に繋がるのではないか。
- 鉄道事故による死者数は、平成16年は296人で、そこから大体300人前後を推移しながら令和6年は268人となっており、対策の効果が少し発現しにくい状態になっていると見受けられるが、踏切事故については一定の減少傾向が確認できる。