まえがき

 交通安全対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、昭和45年6月、交通安全対策基本法(昭和45年法律第 110号)が制定された。これに基づき、5次にわたる交通安全基本計画を作成し、昭和46年度以降、国、地方公共団体、関係民間団体等が一体となって各般にわたる交通安全対策を強力に実施してきた結果、陸上、海上及び航空交通の安全対策は、着実な進展を続けてきたところである。

 しかしながら、近年、道路交通事故件数はほぼ一貫して増加しており、道路交通事故による死者数は、昭和63年以来8年連続して1万人を上回っている。今後の「くるま社会」の進展を考えれば、一層多くの死傷者が生じることが予想され、極めて厳しい状況にある。また、鉄軌道、海上及び航空交通においては、事故件数は増加傾向にこそないものの、一たび交通事故が発生した場合には、多数の死傷者を伴う重大な事故となるおそれがある。

 このような状況から、交通事故の防止は、従来にも増して国、地方公共団体、関係民間団体、さらには、国民一人一人が全力を挙げて取り組まなければならない緊急かつ重要な課題となっており、引き続き、人命尊重の理念の下に、交通安全対策全般にわたる総合的かつ長期的な施策の大綱を定め、これに基づいて諸施策を一層強力に推進していかなければならない。

 この交通安全基本計画は、このような観点から、交通安全対策基本法第22条第1項の規定に基づき、平成8年度から12年度までの5年間に講ずべき交通安全に関する施策の大綱を定めたものである。

 この交通安全基本計画に基づき、国の関係行政機関及び地方公共団体においては、交通の状況や地域の実態に即して、交通の安全に関する施策を具体的に定め、これを強力に実施するものとする。